漆黒令嬢は聖女との関係を見つめる
最初から最後までなんだかシリアスに……
こんなつもりでは
ゆめ、夢。
これは恐ろしい夢なんだ。
私はそう思わずには居られなかった。
私は街のどこかに立っていた。辺りは暗いのに、良く見えている。
奥から四人の男性が歩いてくる。酔っていてふらふらと歩いてくる。
家に帰るのか、それとも他のお店に飲みに行くのか。肩を組んで歌を歌いながら陽気に歩いていく。
どんな街でも見かける夜の風景、でもそれはすぐに別のものになる。男達の後ろから犬が近ずいできたからだった。逃げた飼い犬でも野良犬でもない、黒い体の犬。走り出した犬、とその音に気が付き振り向いた男の視線が交差して。
「なんだ?」という声はすぐに悲鳴に変わる。友の絶叫に酔いが覚めて、一人が犬を蹴飛ばすも。犬は痛みを感じないのか、直ぐに男たちに向かってくる。
別の男が、祝福の炎で犬を焼くと犬は力つきたのかドロリと溶けて消えていく。消えた場所には何も残っていた、残ったのは血匂いと痛みに喘ぐ声だけだった。
何度も、何度も何度も。別の場所、別の人たちが怪我をする光景を目にする。中には一人で襲われる人も居た。
途中で光景が切り替わりどうなったのかわからない分恐怖が増す。死んだのか生きているのか。一体、どうなったのか……
黒い動物が人を襲う、似たような別の光景が。次から次へと流れていく。
体は動かないし、声も出ない。私は何も出来ないまま、見ていることしか出来なかった。
また、人が襲われる。また見ていることしか出来ない。黒い動物が近ずいてくる、襲われる。
でも、襲われなかった。急に光が差し込んで世界を照らす。動物が消えて、私が見ている光景も消えて。見えるもの全てが光に変わった……
「見なさい、あなたには守ることは出来ても。ノッテを救うことは出来ないのよ」
「あなただって、救えても守ることは出来ない。あなたのそばに居ればノッテが危険に晒される」
「その危険を呼び込むのは誰かしらね?」
「心が酷く歪んだ人間しか、お前のそばにいないからだろう。家にいればそんなことは無い」
「このっ!」
「やるか?」
うるさい、そばで喧嘩してるのは。誰?
喧嘩する声に目を覚まして、目を擦りつつ起き上がると。背中に影をゆらめかせたシェイと拳に光を集めてるルーナがいた。
「何してるの二人とも?」
「「こいつが!」」
「「シェイが!」」
「ノッテの不幸の原因なのよ!」
「えっと、どういうこと?」
言ってる意味が分からないし、そもそも何かどうなって私の不幸に繋がるのかも分からないし。
「こいつが、シェイが、ノッテを不幸にしてるのよ。黒の祝福は影を操るだけじゃない。人の負の感情を増幅するのよ。だからシェイが黒の祝福がノッテを不幸にしてるの。ノッテが教会で暴行されてたのも今回の誘拐だってそう」
「増幅させるにも限度がある。ルーナの近くにいる人間の心の歪みが大きいのが悪い。家にルークインの屋敷にいれば、平穏に暮らせる」
えっと二人の言ってることをまとめると。
黒の祝福は人の負の感情を増幅させる。
普通の人は大丈夫だけど、負の感情が大きい人は増幅されるとおかしくなって。私が教会でルーナと会った時みたいになる。
ルーナは負の感情を増幅させる、黒の祝福がシェイが私を不幸にしてると思ってて。
シェイは負の感情が大きい人がルーナの周りに沢山いるから。ルーナが私を不幸にしてるって思ってる。
これってどっちも悪いような、悪くないような。
「どっちも悪くないよ。祝福は仕方ないことだしルーナの周りにいる人はルーナには選べないし」
「それもそうね、すまなかったわねシェイ」
「気にしてないから、ルーナ」
仲直り出来て良かった。それで、なんでここにいるのかな。
「ここは?」
「あの後ノッテが寝たから、街に連れてきたのよ」
「眠くしたのはルーナだけど」
「眠くしたってどういうこと?」
シェイが気になることを言ってきた。
眠くしたってなんなんだろう。色々あった反動で眠くなったんじゃ。
「白の祝福は浄化だけじゃなくて、精神を安定させたりとかが出来るから。疲れてる時とかは眠れるようにすることもできるってだけ」
「それだけじゃないでしょ、まだノッテに隠してることがあるはず。私が喋ってもいいけど」
ルーナが秘密にしてることっていったい……
「黒と白は引かれ合うのよ……」
「えっと?」
「光があるところに闇があるように、夜には月が出るように。光と闇はどうやっても切り離せない。白の祝福を持つ人は黒の祝福を持つ人に引かれる。その逆もまた然り。黒の祝福を持つ人は、白の祝福を持つ人を求める」
それって、ルーナは私が黒だから私を好きになった? 私はルーナが白だからルーナが好きになってるの? ルーナが白だからドキドキするの?
白だったら、私は誰でも好きになってたの?
「私は! 私は黒だから乗ってが好きになったんじゃない。ノッテだから好きになったの、色なんて関係ない!」
「あなたがそう思っていても、色の強いノッテも、ルーナも。祝福の関係性の影響を受けやすい。関係ないとは言わせない」
「ルーナが白だから……」
「ノッテ!」
「私はしばらくチェロの影にいる。私が離れれば祝福の力が一時的に弱まるから。その間にちゃんと考えるといい。なんで好きだったのか」
「ノッテ……」
「一人に……一人にして」
「わかった……」
どうして、どうして私はルーナを好きになったんだっけ?
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まあ、はい。これももっとラブラブになる試練だと思えば。
今回は感想を期待してない私なのでした




