漆黒令嬢には記憶がない
書き直しました。今日中に、頭痛くて寝込んだ日と、昨日仕事でダウンして書けなかった分を書きます。
一週間に一度。私は祝福を与えるために動く。だけどそれ以外の日は、日がな一日部屋から動かない。朝起きて、窓際の椅子に座り外を眺める。食事とトイレ以外はずっと。
することが、命令がないから。でも、夜の少しの時間だけは私以外の生き物が部屋に来るようになった。
黒い動物の形をした何か。呼吸をしていないこれは、生き物ですらないんだと思う。あの影が集まったようなそれは、私が作ったわけじゃない。いつの間にか夜に表れて部屋にたたずんでいる。
初めて祝福をしたあの日部屋に戻ってから、ずっと毎日。狼のような姿の時もあれば、鳥の姿をしていることもある。でも動物の形をして毎日会いに来た。
でも命令がないから私は反応しなかった。
三回目の祝福の後、声をかけるようになった。命令もなくどうして声をかけたのか。私が祝福をするたびに、私という個が確立されていった。私は黒の巫女、モノクロ教の聖女。
「お前は……なに」
私の声に黒い動物反応して、私のもとに近寄ってくる。私の手に顔を擦り付けてくる。触れたところから思念が流れ込んでくる。
「そう、あなたも自分が分からないのね」
自分がなんなのか、この動物もわかっていなかった。次に流れてくるのは、どこかの景色。町の中,
攻撃されて逃げている。なぜ攻撃されているのかわからないけど。痛そうだ。
「ここ以外の建物に入ってはだめ。町にも入ってはだめ。遊ぶなら外で遊びなさい、建物の中は狭いから」
私の言葉を理解したのか、黒い動物は首を動かしてスっっと消えていった。森の中なら自由に遊べるはず。
それから毎日動物は私の部屋に来た。流れ込んでくる思念は森の景色、森の中で遊んでいるみたいだった。森の中、草原、色んな場所の景色。馬車の中と、この場所以外を知らない私にとって、外の景色は珍しいものだった。
四回目の祝福も終わり、五回目の祝福が今終わった。部屋に戻ればまた黒い動物が待っている。教会の外の状況は、黒い動物からしか聞けない。私はそれを楽しみにしていた。
でも、部屋で待っていたのは黒い動物ではなく。黒い服の人だった、信者の誰かが部屋に入っていた。私は落胆した、今日は外を知れないのだと
部屋の扉が閉まり、私は黒い服の人を見つめ。黒い服の人は私を見つめる。
「ノッテ……様。やはりノッテ様!」
声は喜びに満ちていて、私は動かないままに抱きしめられている。私よりも背の高い人。それにこの声に私は聞き覚えがある気がした。でも誰の声だろう、もうずっと声を聴いてないからわからない。私の失われた記憶の一部なのだろうか。
「私です、チェロです!」
黒いフードの向こうには、濃紺の髪をした少女がいた。私はこの少女を知らない。しかし、この少女は私のことを知っているようだった。
「あなたは誰、私の何を知っているの」
「チェロです。二月前に雇われた、チェロです。ルーナさんやミシェルさんが心配しています。早く逃げましょう!」
「知らない、あなたのこともほかの誰のことも。私のことすらも」
私の言葉がチェロを止めた。私の言葉の意味が解らないからなのか、それとも驚きからなのか。それのしても、私が攫われてから二月立ってるなんて。ここにきて五回祝福をした。ここに来るまでひと月も馬車に乗ってたことになる。ここはどこなの。
「覚えていらっしゃらないのですか」
「何も覚えてはいない」
「あなたの名前はノッテというんです。ノッテ・ルークイン子爵」
「知らない」
「ルーナ様のことは」
「知らない」
チェロ、ノッテ・ルークイン、ルーナ。名前だと思うそれは、どれも私の記憶にはないものだった。ノッテという名が私の名前らしいがそんな記憶はない。私にあるのは闇の巫女としての名と記憶。この少女は、私の知らないことを知っているのだろうか。黒い動物も知らないことを。
「私は黒の巫女。それ以外の名前はない。でも、お前から外の話が聞きたい。今日はあれがいないから」
「外の話をすればいいんですね」
「そう」
少女は、確かチェロという名だった。チェロは外の話をしてくれるようだった。
「外は今荒れています。一月前、黒い何かが空を覆いました。月の明かりがさえぎられて、街は暗闇に閉ざされました。すぐに闇は晴れてなくなりましたが、黒い獣が現れるようになりました」
一月前、私が初めて祝福をした日。黒い獣は黒い動物だろうか。あれは私が生み出した存在だったのか。だから何も知らなかった。
「黒い獣は人を襲い、祝福の力でしか倒すことができませんでした。夜になると現れ街を人襲う、まさに地獄でした。でも二週間前から黒い獣は建物の中や、街に近寄らなくなりました。なので今は少し落ち着いています」
二週間前、初めて私が声を出した日。黒の動物に、建物と街に入らないようにと言っていた日。私の言ったことが黒い動物に通じていたなら。私は黒の獣を操れるのだろうか。
「そして最近になってモノクロ教という宗教が台頭してきました。黒の獣が現れてから。彼らは黒の祝福には力があると、そう言って力を使い教会を破壊し始めました。そして教会に不満を抱いていた、黒を持つ人た日が続々とモノクロ教に集まり始めました」
祝福に参加する人数が多くなったのは、人が集まっていたから。でもなぜ教会を破壊するのだろうか。私にはわからない。
「ルーナ様が、ノッテ様はモノクロ教にいるかもしれないと言って。私が潜入することになりました。祝福の力も教えてもらって、今ではこんなこともできます」
チェロの周りに水が集まりだし、チェロの周りをくるくる回りだした。私もおなじことができるかもしれない、でもそれに意味が見いだせない。
「それで、こうしてノッテ様を探しに来て。今に至るんですけど」
「そう。祝福は何に使うもその人次第。私はただ与えるのみ」
「やっぱり、ノッテ様が黒の祝福を」
「それが私の使命だから」
沈黙が続いた。静けさが部屋を包んで、私もチェロも離さない。そしてどたどたと足音が聞こえてきた。チェロの体がこわばって、窓に向かっていく。彼女は逃げなくてはいけないのだろうか。だとしても、まだ聞きたいことがあるどうすればいいだろう。捕まえればいいのか。
影を操り、チェロという少女を捕まえる。
足音は止まっては動いて止まっては動いて、ついにこの部屋まで来た。見つかれば離せなくなるかもしれない。見えなくすればいい。部屋の影と私の影をどうかさせればいい。
男が一人入ってきた
「これは巫女様、不審者が教会に潜り込みました。この部屋にだれか来ていませんか」
入ってきたのは、私をここまで連れてきたあの男。
私は首を横に振った。声を出せとは命令されていないから。首をふるうことで否定する。真実を話せともいわれてはいないから。
「そうですか、部屋の前に護衛を待機させていますら。安心してお休みください。それでは」
出て行った。もう隠さなくてもいい。影をも出せば、チェロは驚いた顔をしていた。
「あなたは私に外の世界を教えてくれた。これはそのお礼」
「ノッテ様……」
「私はここから出ることができない。籠の中の鳥」
私はチェロに近寄っていく。
「でもあなたはまだここから出れる。黒の祝福をあなたに」
私の言葉で、影がまたチェロを覆った。でも影は薄くなり、見えなくなっていった。祝福は力を与えるだけではない。私の影を与えることもできる。
「あなたはここから出るまで、誰にも見えない気付かれない」
私は手をチェロの頬にあてた。黒の動物のように思念が分かるわけではないけど。触れてみたかった。その頬に。暖かかった、わたしにはないもの。
「あなたはここから逃げて、私のことを教えてくれてありがとう」
「ノッテ……様」
「ほら逃げて」
チェロが、窓に足をかけて。最後に私を振り返って。出て行った。チェロの頬は赤く染まっていた気がした。私は窓の椅子に腰かけて、月を眺めていた。
明日、黒の動物は来てくれるだろうか。
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補足しないとわからなさすぎと後悔してます。えっと次回から闇落ちノッテちゃんっで行きます。簡単に言えばすごく書きずらいので何なら改変するかもです今回のと一つ前のを。内容変わらず、闇落ちノッテちゃんになるだけです。多分
闇落ちノッテちゃん、クールドライです。受け攻めでいけば攻め側。なので、チェロちゃんを落としたなと、思ってます。ハイ、今日はこんなのですみません。明日から頑張ります。
ダメダメな私を叱ってもいいんですよ。皆さんにはその権利あるので