漆黒令嬢は聖女とデートの前に使用人を雇う
三話目
「はぁ、可愛いわ可愛いわ。やっぱり外に出るのやめましょうよ。このまま一日部屋で過ごしましょう」
「一日過ごすならこのミシェルと」
「ミシェルとは毎日いるでしょ」
「そうでした。いつまでも一緒にいます、ルーナ様!」
「ルーナ動けないから離して」
私は今、ルーナの部屋にいる。着せ替え人形にされていたのは昨日の話で、今日は出かけるためにルーナの部屋で着替えていたんだけど。着替えてからルーナが離してくれなくなった。ずっと後ろからだきしめてて、私は動けないままここにいる。
「案内所に行かなきゃ。あとデートするんでしょ?」
「そうよデートよ。忘れてたわ、行きましょう」
「その前にルーナ様お着替えを。寝起きのままです」
「忘れてたわ」
そう、ルーナは寝起きのままで私に抱きついてきてて。その色々当たってた……
私よりおっきくて柔らかくて、なんか恥ずかしかった。ルーナはそんなつもり無かったんだろうけど。
帽子とメガネはかけることになったけど、かつらは被らないことになった。私が色ごまかしたら、元も子も無いからって。よく考えたらそうだった。
それで替りにというか、そういえばというか。ルーナの変装のことを忘れてて。慌ててルーナの変装を考えることになった。だって忘れそうになっちゃうけど、ルーナは聖女様で。髪色ですぐに聖女様って分かっちゃう。だから私よりも、ルーナの方が考えないとダメだった。
それで色々やって決まったのが。
「あぁルーナ様! まるで私の妹のようで、大変お可愛らしいです。お持ち帰りしたい」
「あなたの帰る場所はこの部屋でしょ」
「はっ、もうお持ち帰りしているなんて。ルーナ様はなんて罪作りなんでしょう」
「罪を重ねてるのはあなたよ、ミシェル。早く離さないと私のお世話、一週間禁止よ」
「離します、離しますからそれだけは!」
「よろしい。さっ行きましょう、ノッテ」
「う、うん」
赤いカツラを被るのがルーナの変装だった。ルーナの一番の印象はその純白の髪。だから髪さえ隠してしまえば、意外とばれない。と、ルーナが言ってた。本当かはわからないけど。何度かこれで行っているけどばれてないみたい。それで今回は赤いかつらなんだけど、ミシェルさんと似ているから。ミシェルさんがすごく喜んで、だっきみたいになった。二人って仲いいよね。
三人で案内所に向かってるんだけど。ミシェルさんとルーナの間にいて、その。私が一番小さいから周りが見えない。久しぶりにこういう所に来て、実は少し楽しみにしてたんだけど。デートの時なら楽しめるのかな。
「さて、案内所に着いたわけなんだけど。なんか騒がしくない」
「先に入って見てまいりますので、ルーナ様はこちらでお待ちください」
「わかったわ」
そういってミシェルさんは、案内所の中に入っていきました。案内所の中から聞こえてくるのは女性の声と女の子の声。ほどなくして声が止んで、ミシェルさんが出てきました。
「戻りました」
「それでどうだったの」
「どうやら、少女が使用人として案内所に登録しようとしていたようで。受付でもめておりましたので私が仲介に入りました」
「声が聞こえなくなったということは、収まったってことでいいのかしら」
「条件付きで、ですが。ノッテ様、彼女を使用人とするのはどうでしょうか」
「彼女って何処に」
ミシェルさんが言う彼女というのは、どこにいるんだろう。案内所の扉を見ても出てくることはないし。それとも身長が低くて、と思って下を見てもいない。いったいどこにその彼女はいるんだろう。
「案内所の扉にも下にもおりません。私の後ろです」
「「後ろ?」」
私とルーナの声がかぶさった。ミシェルさんの後ろって、ミシェルさんのほうを向いてもそこには人の姿は見えなくて。
「隠れていては、使用人にはなれませんよ」
そういったミシェルさんがしゃがむと、なんとミシェルさんの後ろに彼女と呼ばれた少女がいた。いたんだけど、私の視線は上を向くことになって、少し首が疲れる。確かミシェルさんは少女っていってた気がするんだけど、私より背大きくない?
髪は黒くて、眼鏡の隙間から見える目は、空のような青をしている少女だった?私より背が高くて少女と呼べるのかわからないけど。私の身長は、同じ年齢では一般的な身長だと思っている。だから、仮に彼女が少女だとして一体何歳なんだろう。
「自己紹介を」
「は、はい。チェロと言います。十五歳……です」
その言葉に私は衝撃を受けた。十五歳、と少女は言った。私も十五歳だから私も少女と呼ばれるからそれはいい。どうして、十五歳で、私と同じ年なのに、私より背が大きいの。どう押して私は背が小さいの……毎日ミルクだって飲んでるのに……
「仕える相手がいる以上、使用人は案内所に登録していなくてはいけません。なので彼女に使える相手がいれば問題なく登録することができます」
「髪色も黒でノッテと似ているからいいかもしれないわね」
「ルーナ様。黒に見えますがこれは濃紺という青系統の色になります」
「青系統だったのね、色がとても濃くなったのねじゃあ」
「黒じゃないの?」
私から見てもチェロという少女の髪色は黒に見えた。
「日の光の下であればわかりやすいでしょう。チェロさんこちらに」
「は、はい」
案内所の影から日の光が当たる場所に来ると、黒かった髪が青みがかってるのが分かった。
「本当だ、濃い青」
「色というものはその濃さを増すごとに黒に近づいていきます。色の濃さは祝福の強さの証、相当強い祝福を宿しています。そして貴族ではないのにこの色を宿しているのは逸材と言えます。鍛えれば護衛としても動けるでしょう」
「いいんじゃないかしら、チェロさんと言ったかしら。あなたさえよければノッテに仕えないかしら」
「私なんかでいいんでしょうか、黒いから雇われないと受付で言われていたんですけど」
「そうなのミシェル?」
「そのような会話をしていましたね確か。登録できないと言われ連れてまいりましたので、忘れておりました。あの受付は色を見る目がなかったようですね」
「好都合ね。ノッテ、どうかしら」
私に似た黒に近い青の少女。受付に言われた言葉と言い、どこか私を重ねてしまう。でもいいんだろうか、私は本当の黒で、チェロは濃い青。私とは全く違う、近くて遠い場所にいるのに。
「目も髪もどっちも黒い私でもいいなら、チェロを雇いたい。私はノッテ・ルークイン子爵と言います」
「私はチェロです。宜しくお願いします!」
「さてミシェル、手続きしてきてくれるかしら。すぐ行くから」
「わかりました」
「はいはい、行くわよ。早くしないと、面倒なことになちゃうから」
「うん」
「はい!」
受付で、私の名前と印を。チェロの名を紙に書いて登録は終わる。これで晴れてチェロは使用人にとして案内所に登録できて。私は使用人を雇うことができた。
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そして今日あとがき入れて約九千文字。ほぼ一万文字書いた私を誰か褒めて……
新キャラです。チェロちゃん。濃紺の髪に空色の目に眼鏡をかけた使用人。つまりはメイドさんです。服はクラシカルメイド。なんちゃってメイドではなく、リアルなロングスカートメイドです。服はお母さんのおさがり。そして背の話が出てきたのでお話を。
ノッテちゃんは144センチ
ルーナちゃんが163センチ
ミシェルさんが170センチ
チェロちゃんが166センチ
となっています。ルーナちゃんとミシェルさんは同い年ですし、平均より高いなってくらいなんですが。ノッテとチェロちゃんの身長差はもう……
平均身長は今と変わらない感じです。貧困してるわけでもないですし、平民も栄養あるの食べてます。なのでノッテちゃんは平均より少し小さい。チェロちゃんは言わずもがな、すごく大きい。ついでに胸もノッテちゃんよりあります。
流石に胸の話は、ノッテちゃんたちに怒られるのでしません。どうしてもって声があれば書かなくもないですけど、ね……
私はノッテちゃんの味方ですから。ルーナちゃんとかうらやましいですよね……