漆黒令嬢は聖女の着せ替え人形になる
二話目
「ノッテ!」
「はいっ!」
私は部屋にいた。何をしていたのかと言えば遅れていた分の課題を済ませていた。ルーナがお茶菓子を持ってくるといっていたから、それまでできる分やろうと思っていたんだけど。
扉が開く音も無しに、部屋の中に急にルーナが私を呼ぶ声がして。声が大きくて、反射私も大きな声で返事をしていた。
「大変なことを忘れていたわ。ノッテ、あなた明日何の服を着ていくつもり!」
「え、え、え?」
すごい勢いで近づいてきた、ルーナに聞かれたのは明日の服のことだった。
「明日の服よ」
「服って、この前と同じのを着るつもりだけど」
「やっぱり。だめよあんな地味なの、もっと着飾らなくちゃ。ミシェル、服の用意をしてちょうだい。私はノッテを部屋に連れて行くから」
「はい、ルーナ様」
どこからともなく現れたミシェルさんが、すぐにまたいなくなって。私はルーナに腕を引かれて、部屋に連れていかれることになった。
「帽子と眼鏡とかつらとそれじゃ行くわよ」
「へ、部屋ってどこの」
「私のよ」
「ルーナの部屋って、誰かに見られたら!」
「大丈夫よ、今のノッテはノッテに見えないし。私の部屋に人が来るのはよくあることだから」
「え?」
部屋に人が来るのがよくあることって、。ルーナ友達沢山いるんだ。
「なんか違うこと考えてる気もするけど、まあいいわ」
ルーナに連れられて、ルーナの部屋の前まで行ったんだけど。扉からして普通じゃなかった。すごく豪華。装飾が扉の淵からドアノブに至るまでしてあるし。
「さあ、入って」
「お邪魔します」
扉もすごかったけど、中も豪華だった。広さも私の部屋以上にあるし。こんな部屋にルーナは住んでるんだ。
「ミシェルが戻ってくるまでは、昨日約束したお茶しましょう」
「でもミシェルさんが」
「私だって紅茶くらい淹れれるわ。ミシェルと同じようにはできないけど」
「凄い」
「ノッテにもできるわよ、やってみる?」
「いいの?」
「悪いことなんてないわ。ほらこっち来て」
「うん」
ルーナに呼ばれて、ルーナの側に行く。それからゆっくりと入れ方を教えてくれた。
「まずは茶葉をスプーンで二つくらいポットに入れる。そのあと沸かしたお湯を注いで五分くらい蓋をして完成。まあ、茶葉によって時間は変わるしお湯の温度も変わるんだけど。基本はこんな感じよ」
「出来た。でも、覚えなきゃいけないこと沢山あるんだ」
「そのための使用人よ。紅茶一つでも、その家の品格を表すことになるから重要なのよ」
「その辺は大丈夫。私が嫌いでも仕事はこなす人たちだから。お爺様がいるからこっちに連れてこれなかっただけ」
「公私分けれる使用人なのね、ノッテが嫌いなのは気に食わないけど」
淹れたばかりの紅茶を飲みながら、ルーナと話す。
嫌いでも辞めないでくれているから、少しうれしい。それに本当にいらっている人はお父様が辞めさせていたみたいだし。
「ルーナ様、用意ができました」
またどこからともなく現れたミシェルさんが、ルーナの後ろにいた。
「それじゃあ、行きましょう。こっちの部屋よ」
ルーナに連れてこられたのは、部屋の中にあったもう一つの扉の向こう。その扉の向こうには、たくさんの服があった。見たことも触れたこともない生地の綺麗な服。
「これ」
「私のお古よ。手直しすればまだ使えるわ。さて何がいいかしら」
「こちらなどいかがでしょうか」
「白のワンピースとは洒落てるじゃない。。ノッテ着てみて」
「えっでも」
「いいからほら、ミシェルやっちゃって」
「はいルーナ様。ノッテ様失礼します」
「えっ、ちょ、やぁっ!」
へんなとこさわらなぁ!
「いいわね、黒に白も」
「とあるルートから入手した黒のドレスもございます」
「この国じゃ見ないデザインだし、輸入品かしら」
「はい。我が国では葬儀以外では黒を着ることがありませんので、外国からの輸入品です。合わせて装飾品もあります」
「じゃあ次はそれね」
「また、着るの。なんで黒の。明日の服じゃないの」
「私が見てみたいから。ミシェル」
「はい」
せめてかくさせっ
「どうしてもノッテの黒に負けちゃうわね」
「いい値段がしたのですが。気を取りなおして次は……」
途中から着せ替え人形の気分が分かって、考えることを私はやめた。
「やっぱり最初のがいいわね」
「どうも、服の色が負けたり服の色が強かったり。といいものがありませんでしたからね」
「あとは帽子と、かつらと眼鏡を決めないとね」
「用意してあります」
「まだするの、もう疲れちゃった……」
「それもそうね。休憩しましょう」
「お茶菓子の準備をしてまいります」
やっとなのか一時的になのか。着せ替え人形から解放された。最初以外ルーナが着せたい服を着せてた気もするしそれ以外理由が見つからない、楽しそうにしているし。
「パウンドケーキです」
「おいしそうだけど。暖かい?」
「ミシェルの手作りよ。作り立てが一番おいしいもの」
「お粗末様です」
「美味しい!」
「ほらノッテ、あーん」
あーんとルーナがパウンドケーキを私に差し出してきて。これは私が食べないといけないんだよね。だってにこにこしてるし。
「ルーナ。そ、それは」
「ほら、あーん」
「ルーナ様、私にもください」
「はい」
「ルーナ様!」
空いてる左手で、パウンドケーキをせっせとミシェルさんの口に運んでる。作業みたいに淡々としてて、主従がが逆転してるような。でもミシェルさんもうれしそうだし。
「ほらノッテ、食べて」
「食べないと……だめ?」
「だぁめ。食べるの、ほらあーん」
「あ、あーん」
さっきまで食べてたパウンドケーキと味が違うような。いや同じなのかな。でもさっきより美味しいような。ルーナに食べさせてもらってるからなのかな。
「美味しい?」
「う、うん」
「それじゃあ、食べ終わったことだし。続き始めましょう」
「やらなきゃ、だめ?」
「だめ、出かけるなら可愛いノッテと出かけたいもの。デートだし」
「デート?」
「ルーナ様、デートなら私と!」
「ちゃんと連れて行くから安心しなさい」
「はい!」
デートって私とルーナが。明日って案内所に行くために出かけるって、言ってた気がするけど。
「案内所は?」
「もちろん案内所に行くわよ。でもそのあとにデートしましょ。ただ案内所に行くだけじゃつまらないしね」
「ほら時間はかからないから」
「うん」
私は明日デートすることになった。いつのまにか、ルーナと。嫌じゃないし嬉しいし。でもデートって何すればいいんだろう。
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はい、ルーナがノッテに紅茶を教えてるときには。後ろから手取り足取り教えてます。ちなみに歳を書いてないですが。ルーナが18、ノッテは15です。貴族院は高校みたいなものですね。つまりは高校生と思うとあれなわけです。
ちょっと補足。スルーしてもいいですよ。喪服が黒なのは、死んでいった人が不幸にならないように。黒をまとって死者から不幸を遠ざけるって意味があります。