キャラ設定
「じゃあ……僕の画材ここに持って来れますか?」
「画材?君がここに来る時に手に持ってたやつ?」
「そうです」
「あるよ。ていうか君持ってるはずだよ?」
持ってませんが。
絶賛手ぶらなのですが。
「それはどういう……?」
「ああ、厳密にはここに来れるのは人の魂だけじゃなくてね。ここに来る前のその者が身に着けていた情報全てをこっちでコピーして再構成するって言った方が正しいのかな?だから、君が欲しいと思ったらその袋に入ってた物は呼び出せるはずだよ。逆にそれは僕では手出しできない代物なんだ」
「え……。じゃあカッターナイフ」
うわっ!
ホントに出た!
「手出しできないっていうのは?」
「僕が呼び出したのは君の座標であって、それは呼び出す上で固定されてしまう。つまり、君が身に着けているものは全て君の意思で操作できる。僕はその君が操作している部分については、君の一部となってしまった今手出しできないんだ」
「……じゃあスマホ」
これは出ない。
「スマホは向こうの世界ではオーバーテクノロジーだから世界の境界ではじき出されてしまう。その前に僕が回収することになってるんだ。今ここにあるよ」
「あー……スマホは持っていけないんですよね?」
「そうだね。残念ながら」
「じゃあそこに入ってたデータは持っていけませんか?」
スマホの構造がオーバーテクノロジーなら、データそのものは含まれないかもしれない。
「データ?データ自体ならいいよ。でもどうやって?」
「頭にインプットするとか」
「記憶に刻み込むとか?時が経てば忘れると思うけど?」
「じゃあそれを保存できる物は異世界には無いんですか?」
「保存、保存かぁ。持っていきたいデータはそれだけでいいんだよね?あと記憶と」
「そうです」
「ちょっと待ってね?ああそうだ。他の人にはもう選ばせているんだけど……。説明するの忘れてた。この本から好きな能力取っちゃって!君ともう一人の死なせちゃった人は他の人より倍選べるようにしてあるから。僕は保存できる方法を探してみる」
「分かりました」
あのデータが無くちゃ僕のやりたいことが出来なくなってしまう。
出来れば僕のUSBメモリのデータも欲しかったけど……。
あの時持ち歩いてなかったから手元にないんだよなぁ。
それにしても能力か。
本当に異世界に行くんだね。
本をめくる。
何々?
『この本は世界を渡る際、神の権限によって所持が許される権利一覧です。あなたは混沌の神ケイオスの加護が付与されているため、全ての範囲から選び出すことが可能です。また、混沌の神ケイオスにより上限突破が許可されているため、通常の選択数の倍数となっています』
成程。
これさっき言ってくれたことだね。
もう一枚ぺらり。
いっぱい書いてある。
どうやって選ぶんだろう?
「これ、どうやって選択するの?」
「うん?長押しで詳細が視れて、一回押すだけで獲得できるよ。もう一度押せばキャンセルできる。ああ、最初のページじゃなくて、後のページのレア度が高い能力から取っていきなよ?倍にはしててもすぐ埋まっちゃうから」
「分かりました」
最初じゃなくて後、後っと。
お?
『ゴッズ……神にのみ許された権利』
全部黒色で押せないようになってる……。
「そこは僕らしか所持を許されていない能力だから探しても無駄だよ?」
「そうなんですか」
まあ、全知全能とか創造とか不死とかあるし。
世界のバランス崩れそうなものがゴロゴロ載ってる。
『ゴッズ』の前は?
『アルティメット』か。
じゃあ後は?
『 』
空白?
「それは未分類だね。どこに入れたらいいのか分からないからそこに放置してるんだ。ゴミすぎるものも全然あるからおすすめしないよ?『アルティメット』は『ユニーク』の一つ上で、さっき女性が言ってたオリジナルの魔法は『ユニーク』に入るよ。オリジナルの魔法や能力はその人さえ努力すれば、能力そのものの進化ができるようになる。派生する時もあるけどね。その進化後がそれかな」
「『ユニーク』も『アルティメット』も選択できるんですか?」
さっきはその人にしか使えないって言ってたけど、違うのかな?
「向こうに行ってからは身に付けられないってだけだよ。ここでなら習得できる」
「成程」
「さっきから凄い未分類を眺めているけど、良いものはそんなに無いよ?」
「はい……」
「聞こえてないね、これは……。まあ自由だけどね」
使えないものがあるわけじゃない。
ただ使いどころが圧倒的に難しいだけで。
例に挙げるとしたら、【拍手】【やせ我慢】【破壊】こんなところかな。
【拍手】は一人しか叩いていないのにさも大勢に拍手されているように聞こえるというもの。
【やせ我慢】は耐性の権利を取りやすくする権利らしいけど、取れるまではただ苦しいだけになってしまう。
【破壊】は強そうだけど、触れた物全てを壊し、近辺にいるもの全てに適用されるらしい。
【破壊】は過去に破壊神が持ってたんだけど、不便すぎて返しに来たんだって。
いくら破壊神と言えど、何でもかんでも破壊し続けてたら何にも出来なくなって病んだらしい。
神様でも病むことってあるんだね。
まあでも中には面白そうなものもある。
選べるというのであれば、ちょっと貰っておこう。
あとは取りたい能力をっと。
「できたかな?」
「はい!」
「結局五つも未分類枠から選んだんだね。まあそれで君がいいなら僕からは何も言わないことにするよ」
「それで、データの件どうなりました?」
「君には全力で優遇するって言っちゃったし、これを授けようと思う」
「これは?」
本?
分厚い本だ。
広辞苑レベルとまではいかないけれど、A4サイズで厚さが辞書。
めっちゃ重いんだけど。
「これは憶録書って言ってね。記憶目録っていう神器の下位互換なんだけど、ある一定の記憶を記すことが出来るんだ。これは最初に設定した者しか使用できず、使い方もちょっと難しいんだけど、記録目録程ではないよ。記録目録は既に人にあげちゃっててね。今手元にないんだ。ごめんね」
「どうやって使うんですか?」
「君の血をその本の表紙に一滴でいいから垂らしてごらん?」
え。
痛そう。
「あはは、そう怖がらないで。一滴だけでいいからさ」
「う……分かりました」
ぽちょん。
血の垂らした場所から波紋として広がるように本が光る。
赤く、まるで僕の血のようだ。
「これで登録が完了したよ。君が思い出そうとすれば、そこに記載されるようになった。それと、持ち歩くのは辛いだろうから、重さは軽減しておくよ。これはアイテムボックスとかには入れれないから気を付けてね」
「え、盗まれたりしないんですか?」
「大丈夫だよ。君の血を登録してある以上は持ち主に帰ってくるから」
「血の上書きとかは?」
「君が許可しない限り、心配するようなことは起きない」
「分かりました。ありがとうございます」
「いいよ。こちらも満足したようで良かった」
これで終わりかな?
「あと、そうだ。参考までに向こうに行ってから何をするのか聞いてもいいかな?」
「ああ、それはデータにも関係するんですけど……」
「あっはっはっはっは!!!それ面白いね!!その時は僕の名前とか出していいよ?」
「いいんですか?」
「じゃあこれとこれも付けとこう!!」
「え、こんなに良くしてもらって大丈夫なんですか?」
「いいのさ!!僕が楽しいんだから!!君がこんなに面白い人だとは思わなかったよ!」
え、ええ……?
「じゃあ、一先ず皆を集めようか。最後に言わなきゃならないこともあるし」
「分かりました。色々ありがとうございました!」
「ほいっと」
神様が手の平を裏返す。
皆が戻ってきた。
最後に言うことって何だろう?
「皆準備ができたとのことなので、最後に注意点だけ言って向こうに送るね。君らは僕の加護が付いてる。それは周知だよね?その加護がある限り、同じ加護を持っている人の能力は盗み見れないし、直接的には争うことも出来ない。まああまりここまで手に塩をかけたもの同士で争わないでほしいけどね」
「努力はしてみるわ」
「善処する」
「時と場合に依るな」
「まあなるようになるじゃろ」
「……」
一応頷いておく。
「うん。じゃあ良い第二の人生を!!」
眩しい。
下から目も開けられないほどの光が当てられている。
一瞬の浮遊感の後、足の裏にしっかりとした感触が伝わってくる。
これで目を開ければ、異世界だ。