きせきの朝
嵐の夜があけ、おだやかな朝が来ました。
草木のうえでは、きのう降ったあまつぶが、朝焼けのなか、ひかりかがやいていました。
ことり達が、空を元気にとびまわり、さえずっていました。
その声にふと、目をさました、みのりは、『あぁっ!』と、おどろきの声をあげました。
見ると、一本だったみのりの足が二本にわかれ、ごていねいに地下足袋まではいているのでした。
みのりは、おどろきとよろこびで、しばらくのあいだ、とんだりはねたりしていました。
しかしすぐに、はっと、我にかえりました。
(おっと、いけない!あそんでる場合じゃなかった!)
みのりは急いで、ちかくにあったトマトやキュウリを、両手いっぱいに抱えると、おじいさんとおばあさんの家に向かいました。
美味しそうに育った作物をもっていってあげたら、きっと、ふたりが元気になって、また畑に来てくれると思ったからでした。
おじいさんとおばあさんの家は、畑から少し離なれた林の向こう側にあります。
ゆるやかな丘をのぼって、3軒目。赤いやねの平屋です。
みのりは、おおきく息をすって、ゆっくりとはきました。
なんだかとても緊張します。だって、自分からふたりに会いに来たのなんて、これが初めてのことでしたから・・・。
みのりは、また息をおおきくすうと、今度は、おおきな声で言いました。
『おじいさ~ん、おばあさ~ん。おはよー!
わたしだよー。畑にいる案山子だよー。
お野菜が、こんなに育ったよ!見て!美味しそうだよー!』
しかし、返事はありませんでした。
それから、何度も、何度も、呼びましたが、やはり返事はありませんでした。
とびらは鍵がかかって、えんがわもかたく閉ざされていました。窓だって、カーテンが閉まっていて、なかを見ることもできません。