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高橋大輔⑪見た目と中身の話

 ガキィンッ!

 俺とアルヘイムの剣が何度も火花を散らす。

「よし! 一旦休憩にしましょう」

 アルヘイムがそう言って、模擬戦が中断した。『模擬』と言っても真剣を使ってやる実戦訓練だ。

 アルヘイムが剣をしまって、

「15歳とは思えない太刀筋ですぞマストカ様。あなたは私の弟子の中で最も才能がある。私が保障しましょう」

「ぜぇ、ぜぇ、アルヘイムは俺以外にも弟子がいたの?」

 肩で息をする俺が聞くとアルヘイムが遠い目をして、

「昔のことです。アラトアに来る前に私は千人もの弟子を持っていました。まあある戦いで私しか生き残れませんでしたがね……」

「……詳しい話を教えてくれない?」

「心苦しいですが、お断りします。さあもう一度真剣勝負ですぞ」

 アルヘイムは絶対に自分の過去を話さない。今の弟子云々の発言も思わず口が滑った感じだった。

 ガキィンッ! ギィンッ!

 再度何度も剣同士がぶつかる。ふとアルヘイムが呟いた。

「……マストカ様は『アルヘイム』になりたいですか?」

「はぁ? なんだって?」

 俺が聞き返すとアルヘイムが頭を掻いて、

「……いや、なんでもありません。今日は疲れたのでこれくらいにしておきましょう」

「?? はぁ……」

 訳が分からず茫然とする俺を置いてアルヘイムは難しい顔をしながら立ち去った。

『アルヘイムになる?』どういう意味だ??



「髪型だよ髪型! 人間の見た目は髪型が8割だって言うじゃねぇか! 髪型を変えればマジでモテるからお前は!」

 いつもと変わり映えがし無さすぎて嫌になる、ここはこちらの世界の僕が通っている高校の教室。

 石田が斎藤に髪型の重要性を熱弁していた。

「お前の三次元嫌いは非モテのせいだろ!? その寝ぐせでボサボサの髪型を変えてみろって! マジで世界が変わるって!」

 斎藤がスマホを弄りながらウザそうに、

「しつこいですよさっきから。面倒くさいからいいって言ってるじゃないですか。それに私は自分から女子を避けてるんですよ。近づいてきてほしくないんですよ、ドゥーユーアンダスタン?」

「だからそれはモテない僻みだろって言ってんじゃねーか! 騙されたと思って髪型変えてみろって!」

 ……石田も非モテだと思うのだが、なんで他人にお節介焼いてるんだろう?

「髪型が変わろうが変わらなかろうが私は私ですよ。こんな三次元嫌いの人間に近づく女子はいませんよ」と斎藤。

「何言ってんだよ! お前も異世界行ったなら分かるだろ!? 人間はガワが変われば性格も変わるんだよ! だからこっちでも自分を変えてみろって! 俺は自分の匂いに気を付けるようになったぜ!?」

「え!? マジで!?」

 僕が試しに石田の脇の辺りを嗅いでみたら、やっぱり臭かった。

「臭いじゃん!? どこが気を付けてるんだよ!?」と僕。

「え? 嘘吐け~、制汗剤つけるようになったんだぜ?」と石田。

「匂いの元を根絶しろよ! 毎日風呂入るだけだろ!」

「え~? 面倒くせぇ~!」

 騙されたと思って毎日風呂入れよ。マジで世界が変わるから。


 斎藤がスマホをしまって、

「ガワが変わっても性格は変わらないでしょ。少なくとも私は変化ありませんよ。高橋君もそうでしょ?」

 斎藤の断定的な口調に僕は戸惑いながら、

「さぁ? 自分じゃあ分かるものじゃないと思うけど……。う~ん、僕は変わるかなぁ? あんまり変化ないと思う……」

 正直シュナからは弟みたいに扱われてる所があるので、やっぱり向こうでも情けないと思う。まあ年齢的には当たり前なんだけど……。

 石田が言った。

「待て待て大輔。お前は異世界だと戦争起こしたり魔族や妖術師を討伐したりしてるんだろ? こっちのお前からは想像もできないほどアグレッシブじゃねぇか? 十分変わってるだろ」

 いやあれはどちらかと言うとやらかしただけのような……まあ確かに『アグレッシブ』なのは間違ってないな(汗)

「言われてみればガワで性格が変わってる気がしないでもない……」と僕。

「よっしゃ! 多数決で俺の勝ちだ! 斎藤はジュース奢れよ~♪」

「何勝手に勝負にしてるんですか。石田君はどうせ異世界でも風呂入ってないから臭いんでしょうが」

「そもそも砂漠で水がない土地だから誰も風呂入ってませ~ん! 俺ではどうしようもできましぇ~ん!」

 2人が売り言葉に買い言葉してる横で僕は粟島を見た。

 ……確かに見た目は昔と今では全然違う。でも中身は変わってないだろうさ。やっぱりガワで人間が変わるわけないな(確信)


「私も髪伸ばそっかなぁ……」

 上島が自分の髪と粟島の髪を触りながらぼやいた。

「手入れが大変だから短い方がいいと思うわよ?」と粟島。

「……そう言う本人は腰まで髪を伸ばしてるというね。佳も優莉も長いし私だけ短いのはな~、優莉は枝毛とかないけどなんか高いシャンプーとか使ってんの?」と上島。

「前も言ったけど別に特別なことはしてないわよ? あえて言えば規則正しい生活かしら」

 上島がその場で唾を吐いて、

「ほら出ましたよ『私は何もしてません』アピール……元の素材が良いから努力の必要ないってか? ケッ! これだから美人は……」

「えぇ……」と粟島。

「嫉妬心強すぎっしょ……」と里中。

「佳はどうなのさ!? コンビニの安いシャンプーしか使ってないとか言ったら鼻に唐辛子詰めの刑な!」

「割とえぐい刑……まあ私はオーガニックの高い奴使ってるね。ちっこいボトルで3000円くらいのやつ」

「高!? 却下で」

「高いのも安いのもダメとかどないせぇっちゅうねん!」

 なぜか関西弁になった里中に締め上げられて上島が悲鳴を上げた。

「なんで急に髪を伸ばしたくなったの?」と粟島。

 里中に解放された上島が駄々をこねた。

「そんなんお前ら2人がモテるからでしょーが! 私だってモテたい! モテまくって群がってくる男子どもを全部振って『あんたが私と釣り合うわけないでしょ!』とか言ってみたい!」

「結局振るんかい」と里中。

「モテても良い事なんて一つもないわよ? 一回一回断るのに気を遣うし、他の女子から嫉妬されるし、ストーカーになると面倒だし……本当出来ることなら変わってほしいくらいだわ……」

 粟島はそう言ってため息を吐き、上島と里中が顔を寄せ合って言った。

「まあ聞きました奥さん!? この人嫌味じゃなくて素で言ってますわよ!?」と上島

「いつかストーカーに自宅に侵入されればいいのに!」と里中。

「いつも思うけど2人とも私の扱い酷くないかしら?」と粟島。

 僕は絶望して机に突っ伏し、

「ぐぐ……! リア充が妬ましい……! 僕も『モテるとストーカーに付きまとわれるから他の誰かに変わってほしい』とか言ってみたい……!」

「いや普通に警察沙汰じゃねーか、嫌だろ」

 珍しく石田のツッコミは冷静だった。


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