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粟島優莉⑧『魔女の秘密』と『魔王の嘘』と『世界の驚異』の話

マストカ編の『商業都市バラン』のあたりを読み返してる時に、ちょっと説明不足な気がしたのでその補足回です(滝汗)。あの話は自分の力量の低さを見せつけられるようで読んでて心苦しいです(でも殺意を漲らせる魔女や嘘つきアハーマのキャラは好きです)。


実はマストカ編の途中までは『使い魔(というか魔法全般)』の設定がしっかりできていなかったので、ちょっと引っかかるところがあると思います(正直)(あえて書き直しませんけど)(ぶっちゃけ他にもいろいろ後付けしてます)(笑)。

 粟島優莉の記憶が流れ出す

 これはかつて彼女が『魔女』と呼ばれていたころのことだ。



「……『シュナーヘル』だと? それは一体どこの言葉だ? どんな意味だ?」

 まだ若かったころオルバース・タルクスが聞いてきた。

(……確かあれは、激しい戦いの後だったはず……)と優莉。

「古代マムール語で『秘密』という意味ですわ」とシュナーヘル。

「は! 古代マムール語? そんなものは存在しない! 『古代マムール帝国』なんぞは大昔の『西方クノム人』が作り出した空想物語だ! 『クノムティオ』は『獅子王』と『双角』の時代になるまで一度も政治的に統一されたことなどなかったんだぞ!」

 まだ髪があり皺がなかったアルヘイムが叫ぶ。彼はクノム人だが祖先にアゴラ人がおり、また生まれも育ちも『ムンディ・アクナ』、自分のアイデンティティに対して複雑な思いを持っていた。


 オルバースが目を丸くして、

「そ、そうだったのか? アラトアには古代マムール語の本も残ってるぞ!? じゃああれはなんなんだ!?」

「大方『暗黒時代』以前のクノム語か、滅び去ったビカルニア語といったところだオルバース! 『魔女』め! お前知っておきながら嘘をつくのか!?」とアルヘイム。

「嘘はついてませんわ。『古代マムール』は古い時代のクノム人たちが得ていた様々な国や民族の伝承がごちゃ混ぜになったものですもの。確かに『古代マムール』という名前の国は存在しませんが、元ネタはあります。恐らく『シュナーヘル』はビカルニア語かクノムティオ原住民の言葉でしょう」とシュナーヘル。

「やはり『外の世界』は驚きの連続だな……では『魔女』は?」とオルバース。

「トゥルエデ語で女性名詞の『呪術師』、『魔法』と称して詐欺行為を働くえせ祈祷師に対する蔑称ですわ。それがレビン語とクノム語に入ったのです」

「ほう、ならアラトア語なら『ディメルダ(女祈祷師)』だな。しかしなぜ蔑称を自分で名乗っているのだ?」

「私がこの世界のどこにも属さない人間だからですわ」

「?? それはどういう意味だ? 『冒険者』という意味か? それとも君は本当は『転生者』なのか?」

「……『秘密』は女をより一層美しくするものですよ?」


 またこれは、『バラン』の町での一幕。

 ヒーバル神殿の神官団とバランの大商人を粛正し終えた後、シュナーヘルは『魔王アハーマ』に尋ねた。

「……あなたの話はころころ変わってなにがなんだかわかりませんわ。あなたが最初若殿に話した『惚れ薬を売っている謎の仮面魔術師』の話はなんだったのですの? あなた確かその後『惚れ薬は町長に売らされた』て言ってましたわよね?」

 アハーマがくねくねしながら、

「あら~ん♡ シュナーヘルちゃんなら察してると思っただけどぉ~ん、あんな話全部嘘よ~ん! いきなりマストカちゃんに『町長に売らされてる惚れ薬あげる~』なんて話したら引かれるでしょ~ん? だから嘘ついたのよ~ん♡」

 シュナーヘルはこめかみを押さえて、

「……私もオルバースと同じくあなたの『呪いの言葉』で頭痛がしてきましたわ。『耳長族』は嘘しか喋れないのですか?」

「娼館の中はめくるめく空想物語、あの場所自体が演劇の舞台よ~ん? 『クノムティオ』で芽吹き『アゴラ』で咲き誇った文明の精華『演劇』! 素晴らしいじゃな~い? 役者の台詞を『あれは嘘だ』なんて指摘することほど野暮なことはないわ~ん? そうでしょ~ん?」

「あなたの悪行が娼館の内側で済んでるのならこちらも文句は言いませんわ。あなたがアラトアにやってきた理由もおおかた自分が蒔いた種では?」

「ひっど~い! 私は頑張って人間に尽くしてたのにぃ、迫害したのは『ザーラの民』よ~ん!? シュナーヘルちゃんだって『イシスス神』に追い出された仲間でしょ~ん? なのにそんな言い方あんまりすぎるわ~ん!」


「……『ザーラ』という言葉はあまり口に出さないほうがいいですわ。アラトアの神々はその名を呼ぶだけで『イシスス神を賛美している』ととらえますわよ?」

「あらやだこわ~い♡ じゃあ以後気を付けるわ~ん♡ うふふ、また私に『秘密』ができちゃったわ~ん♡ 私もシュナーヘルちゃんも同じく『秘密』で着飾る神秘的な女よねん♡ 私あなたに仲間意識感じてるんだから~ん♡ そんなに『邪視』しないで~ん、お友達になりましょ~ん?♡」

「あなたと同類扱いとか極めて不愉快ですわ」

『嘘つき』と『秘密主義』を一緒にされて優莉はぷりぷり怒っていたのだった。


 その後、アハーマの一件が落着してから『船遊び』にでる間のある日、シュナーヘルは用事があって一人でバランの町を歩いていた。

「……あら?」

 ふと彼女は視界の隅に奇妙なものを見つける。近寄ってみてみると、それは民家と民家の間にある看板だった。


『↓ここの隙間にもう一軒家があるそうです。見つけた人は右の家まで申し出てください』


「……な!? これはアハーマの作り話では……?」

 魔女はためらいつつも、まずは『使い魔』を放って右の家やこの辺り一帯を捜索させた。

 だが特に怪しい気配は見つからなかった。仕方なくゆっくりと右の家に入る。

 中は暗く、様々な家具が置かれているがすべて埃をかぶっていた生活感がまるでなかった。

 シュナーヘルはすぐに魔法の明かりをともして部屋の中を照らす。すると隅の方に仮面をかぶった魔術師が座っていた。 

 魔女が近づいて仮面に触れ、

「……これは人形。特に魔力も『瘴気』も感じない……一体だれがなんのために?」

 再度念入りに『使い魔』に探させ、さらに魔女自身も探したが、魔術師も惚れ薬すらも見つからなかった。


 仕方ないので再度アハーマに尋ねたのだが、本人は『だから創作だってぇ~ん♡』の一点張り。

 読心術が使える使い魔にこの嘘つき魔王を調べさせると、

『……この耳長族の記憶には多くの欠落があります、どうやら記憶を一部消されてるようです。私が読める範囲では本当に創作らしいですご主人様』と使い魔。

「ええ~!? うっそ~ん!? 私記憶消されてたの~ん!? やだこわ~い!♡」とアハーマ。

 結局魔女は『これ以上は無駄ですわ』と思ってやめたのだった。


『魔術師たちのギャングスタ』でもアピテが自分の記憶を使い魔に預けてダカリスの読心術を回避していましたので、アハーマも同じことをしたのか、あるいは別の人間が何かの目的でやったのか……結局終わったことなんですけど(ていうかアハーマは魔術師なのでしょうか?)(謎)。


マストカ編を読み返してると、シュナーヘルとイスティのキャラが全然違うことに作者自身びっくりしました(時間をおいて読み返すとやっぱり印象変わりますね)。

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