マストカ・タルクス㉗『冒険者の町:バラン』と魔法の罠の話
戦争などで沢山の死人が出ると、戦場となった場所に『瘴気』が満ち始める。これは死んだ人達の生命力の残り香とか、生き物が元々持っている魔力が肉体から漏れ出したものとか諸説言われている。
『瘴気』はアラトア語を直訳すると『死の魔力』となる。
この未知の不思議なエネルギーは魔族に力を与えるのだ。魔族は『瘴気』の濃度が高ければ高いほど元気になる。逆に低ければ本来の力を出せない。
瘴気の濃度が一定以上高い地域を『魔界』と呼ぶ。『魔界』の定義は『強力な魔族が大量にいて人間が居住不可能な場所』だ。『瘴気濃度』を正確に計測する機器のようなものは存在していない。
瘴気濃度が高いほど強力な魔族が現れやすくなる。逆に低い場所には下級の魔族しか現れない。また魔族自体も身体から瘴気を放ち、強力な個体ほど放つ瘴気の量も増える。
昔から人間達は『神官』と呼ばれる人達が上昇した瘴気の濃度を下げて魔族の活動を抑えてきた。これを『浄化』と呼ぶ。
エイルが前にマムール州でやってたのもこの作業だ。
イサルダ城の中は魔法の罠だらけだった。城門を潜った瞬間門の柱から大量の槍が飛び出した。
「『禁よ破れよ! 戒めを解けよ!』」
すかさずシュナの『魔法解除の呪文』で槍が消滅した。門の周囲には気絶している冒険者が何人もいる。
今の槍は幻覚か……よく一瞬で見破ったなシュナ。
防御魔法なら別に『結界の呪文』も存在するが、こちらの耐久力は攻防両方の魔術師の力量(契約魔族の強さ)に左右されやすい。『結界』にヒットするまで敵の攻撃の威力が分からないので、『魔法解除』を使った方が確実という場面が実戦では多いらしい(シュナ談)
ただし、『魔法解除の呪文』は相手の魔法がなんの呪文か分からないと効かないらしい。こっちは防御側の知識と観察力に依存している。
……『魔術戦』の実践理論らしいけど難しすぎるだろ!
ゴゴゴゴゴゴゴッ!
門を抜けて少し歩くと今度は巨大な岩石が転がって来た。本物の岩なので『魔法解除の呪文』では防げない。先ほどの『魔術戦理論』の応用だ。
魔法を直接打ち込む攻撃を『純粋魔法攻撃』とよび、それに対して物理攻撃に魔法を付与するor魔法を動力にして物理現象を起こす攻撃手段を『付与魔法攻撃』と呼ぶ。この岩石は後者になり、これを見せ球にして相手の『結界』の耐久力を試すような使い方をするのがセオリーとかうんぬんかんぬん……。
てそんなこと言ってる場合じゃねぇ! 避けなきゃ!
沢山の冒険者が逃げ切れず押しつぶされていく。
「『巍々たる高城、天険たる壁よ!』」
シュナの『結界の呪文』が発動し、岩石が勢いよくぶつかって粉砕した。
強いなシュナ……やっぱり俺要らないんじゃないか?
ホー……ホー……、
さらに先に進むと1体の石像が現れた。フクロウみたいな声を発していて、像の目と口の部分に光る石が嵌めこまれていた。
「なんだありゃ!? とりえあえず食らえ!」と冒険者達。
「ダメです! 攻撃してはいけません!」
シュナが止めたが意味がなかった。冒険者数人が矢や魔法で攻撃すると、石像を覆っていた透明な壁が攻撃を全て反射した。
カァアッン!
「ぎゃあああ!?」
自分達が放った矢や魔法を食らって倒れる冒険者達。シュナは結界の呪文で防ぐ。
次から次へと色んなものがでてくるな……。これが魔術師の戦い方かぁ。
反射石像が1体、また1体と増え始める。全部武器を持っていてこちらに向かって突進してきた。
シュナが俺に振り向いて言った。
「あの石像は魔法が効かないので、私ではどうすることも出来ませんわ。ですから若殿、お願いしますね? 魔法で支援しますわ」
「え、でも物理攻撃も跳ね返してたけど?」
「矢は飛ぶ方向を変えただけですわ。剣ならそんなことは出来ません、『星空の剣』で斬っちゃってくださいな♪ さぁさぁ」
シュナが俺に強化魔法をかけてから背中を押した。
はは、もしかして俺が手持無沙汰だから活躍の場をくれたのかな? 本当に俺の扱いがうまいなシュナは。
そんじゃあちょっくら期待に応えていきますか!
「うおおおおおおおお!」
突進するしか能のない石像なんて俺の相手じゃない。強化された腕力と『星空の剣』でパンを斬るように全てバラバラに分解してやった。
倒れていた冒険者達が驚いて立ち上がる。まさか貴族が最前線で活躍してるなんて考えもよらなかったからだ。
むしろなんで貴族だったらダメなんだ? なんで冒険者だったら良いんだ?
勝手に決めるな! 俺は俺だ!
俺は石像兵が湧いてくる穴を見つけた。大きな塔の壁にあった。
「うおおりゃああああああああ!」
剣を力いっぱい横に振ると、魔力の輝きと共に塔が斜めに斬られた。
倒れた塔に巻き込まれて中の石像兵達が全ておしゃかになった。
よし! これで邪魔は無くなった!
それから後ろを振りかえり、まだ動ける冒険者達に向かって叫んだ。
「行くぞ冒険者ども! 金が欲しかったら俺より活躍してみせろ!」
俺が上空に剣を突き上げると茫然としていた冒険者達もハッとして狂暴な声を上げた。
「ちきしょう貴族の坊ちゃんが吹かすじゃねぇか! やってやろうじゃねぇか!」
「切り込み隊長は俺だ! 出しゃばった真似は許さねぇ!」
「舐めんじゃねーぞ金持ちのボンボンが! 流れ魔法に気を付けるこったな! うおおおらあああああああ!」
走る俺達の目の前に敵の本丸が見えた。イサルダ城の居館(人が住む建物)だった。
更新がはやいです




