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マストカ・タルクス㉖『冒険者の町:バラン』と妖術師の拠点『イサルダ城』攻撃の話

人間の命がとっても安いです。

 戦争と聞くと、俺は無双シリーズを思い出す。

 まあ実際の戦争が武将1人で決まるものだなんて思わないさ。本当は戦術とか新兵器とか色々頭使うんだろ?

 そう思ってたけど、どうやら俺が甘かったらしい。

 作戦も何もなく突っ込むだけの戦争もあるんだね。



『GYAAAAAAAAAAAAA!!』

 シュナ率いる正面部隊が坂道を登って丘の上を目指す。雑多な冒険者の群れなので整列してないし、纏まりもなにもあったものじゃない。

 その頭上に巨大な鳥が3匹ほど現れた。後ろの冒険者達が叫ぶ。

「『ラマク(巨大鳥)』だ! 来るぞ!」

『ラマク』は巨大な鳥型の下位魔獣だ。下位と言っても相当強いけど。

 巨大鳥が急降下し、かぎ爪に3人ほどの冒険者を引っかけてそのまま飛び上がった。

「うああああああああ!?」

 空中に運ばれた人達が遥か上空で放り出され、そのまま部隊の上に落下して下に居た人達を押しつぶす。

「応戦してください! 『唸れ焔よ! 燃やし貫け!』」

 シュナが叫んで『火槍の呪文』を放つ。他の魔術師達も一斉に炎の魔法で攻撃した。

 すると今度はイサルダ城の壁から弓兵が現れて一斉に矢を放った。

「呪いの矢だ! 食らったら錯乱して味方を襲いだすぞ!」

 大量に飛んできた黒い光を纏った矢を食らった冒険者達が次々と呪いの力で周りを襲い始める。あっという間に部隊は大パニックになった。

「うがああああああ!」

「うおお!? 破ぁ!」

 錯乱した冒険者が襲ってきたので俺は思わず首を斬った。

 錯乱してる奴なんて動きが単純だから対処は楽だ。だけどさすがにこれだけの人間が集まってると効果絶大だ。

 こ、これが前にシュナが言ってた『戦略的魔法防御』か! 魔術の中でも最も重要視される『戦争で使用される魔術』というものを俺は初めて見た。


「やべぇ! お前らマストカを守れ! こいつが死んだら給料もらえなくなるぞ!」

 シャイザルが近寄ってきて叫ぶと、周りの冒険者が眼の色変えて俺を守り始めた。次第に正気な冒険者達が俺の周りに集まってくる。

「な、なんかありがとうシャイザル」

「ていうかなんでお前がここに居るんだ馬鹿! 貴族なら安全地帯で見物してやがれ!」

「いや、そういうのは出来ないことになってて……」

 ふと前方を見ると、イサルダ城の門が開いた。そこから大量の全身ネズミ色の兵士たちが突進してきた。

「若殿よく見てください。あれは人間ではなく兵士の石像ですわ。魔法の力で動いているのです。知能はなくてただ目の前の動く物を攻撃することしか出来ませんわ」

 いつの間にか背後にシュナがいた。俺が叫んだ。

「シュナ! さっきも言ったけどなんで俺をここに連れて来たの!? 滅茶滅茶危ないじゃん!」

「死ななければ私が治療するので問題ありませんし、死んでも死体に使い魔を取り憑かせて動かすのでやっぱり問題ありませんわ」

「俺は人形か! どんだけ冷血なの!?」

「あら、若殿が絶対そうならないと信じてるからですわ。戦うなら愛しい人に背中を任せたい、乙女心ですわ♪」

 どんな乙女心やねん!

 ツッコミを入れようとしたら頬にキスされた。途端に『まあいいか』と思えてきた。

「……なんかいいように操縦されてる気がする」と俺。

「でも嫌いじゃないでしょ?」

 飛んできた呪いの矢を俺が剣で払い、接近してきた石像をシュナが魔法で砕いた。

「確かになんか悪くない気分かも……はは」

 仕返しに俺がシュナの頬にキスしようとしたら、唇にキスされた。

 はぁ、やっぱり勝てないなぁシュナには。

 ていうか俺ってMなのかな……とほほ。


 全然統制がとれてなかった冒険者達が俺の周りに集まってきたことで纏まりが産まれた。

「盾を持つ者が前に出て矢を防いでください! 魔術師は城壁を攻撃! 上空の鳥と石像兵は戦士が担当!」とシュナ。 

 1か所に集まってきたから命令もよく行き届く。

 盾を持つ者達が矢をブロックし、魔術師達が同時に魔法を撃って城壁の弓兵を攻撃する。

 そこに巨大鳥が急降下、何人もの戦士達が鳥の身体にしがみついて執拗に攻撃し始めた。悲鳴を上げて振り落とそうとする巨大鳥。


 かたや地上、突進してくる石像兵は本当に知能がなかった。前に走って動く物に持ってる石の剣や槍を刺しにくるだけだ。

「ぐらぁ!?」

 カイバルは石像兵に飛びつき、剣の柄で指を砕いて武器を奪った。その石像はそのまま存在しない武器を振り回し続け、石の武器で他の冒険者に破壊された。

「チッ! この武器ただの石だ、使い物にならねぇ! 防具も全部石だし略奪の旨味がねーじゃねぇか糞ったれ!」

 略奪の旨味がないと分かると冒険者達は石像兵を転ばせたりして横をすり抜け、無視して城門を攻撃し始めた。

 振り返って追いかけようとした石像兵をシュナが手際よく魔法で破壊していく。

 前もそうだったけどなんかシュナ1人でやってる感じだなぁ。俺必要ないよね。

 彼女の横でフォローしながら俺は思った。


 城門は閉じようとしていたが、冒険者達の魔法で破壊されてフリーパスになった。

「おっし中に入った! 妖術師をぶっ殺せ!」

「おい町長が人質になってるんだろ!? 俺顔知らねぇぜ!」

「俺も知らねぇよ! 死体でもいいって話だから問題ねぇぞ!」

「おい手伝ってくれ! 死んだ冒険者の持ち物奪えるチャンスだ!」

 ……纏まってたと思ったらもう崩れ始めた。

 城の中に我先にと駆け込む者、死んだ仲間の装備を剥いで回る者、略奪品を奪い合って殺し合いを始める者。

 それらにシュナが魔法で威嚇しながら叫ぶ。

「何をしていますの!? はやく城の中に行きなさい! 略奪は妖術師を殺した後にやりなさい!」

 瀕死の状態で倒れていた奴を殺して所持品を奪おうとしていた男の足元に『火槍の呪文』を打ち込むと、慌てて城の中に飛び込んでいった。

『GOAAAAAAA!?』

 俺達の近くに巨大鳥が墜落して息絶えた。身体には沢山の冒険者が張り付いていて武器で鳥の身体を刺しまくっていた。

「うぐぐ、いってぇちきしょう……」

 鳥の身体から振り落とされた冒険者が地面に大の字になる。

「ご苦労様ですわ。さぁこれを飲んでください。回復薬ですわ」

 シュナが怪しげな薬を渡すと、飲んだ冒険者達が骨が折れてるはずなのに元気よく立ち上がった。

「すっげぇ! 骨が折れてるのに全然痛くねぇ! こいつはすげぇや!」

「肋骨の痛みが消えたぜ……ありがとうよ魔術師さんよぉ!」

 皆感謝して城の中に駆け込んでいく。目が血走っていて明らかにおかしい。

「……何飲ませたのあれ? 回復薬じゃないよね?」

「痛覚を麻痺させる薬ですわ。でも本人が回復したと思ったなら回復薬なんですよ、きっと」

 つまり回復してねーんじゃねぇか!

「さあ若殿、我々も行きましょう。今まで見ていてもうお分かりでしょうが、冒険者という生き物には忠誠心がありませんわ。あるのは欲望だけ。ですから若殿を連れて来たんですよ」

「さっきみたいに、俺を守ろうとして纏まるから?」

「その通りですわ。若殿を守ろうと集まってこなければ私の声が聞こえませんし、私の言うことも聞かないでしょうね。他人に命令されると死ぬと信じてる人達ですので」

「守りたいのは俺じゃなくて俺の家が払う金だしね……」

 するとまた巨大鳥が落下してきた。今度はとりついていた冒険者は全員下敷きになって死んでいた。

 どうやら全ての巨大鳥が死んだようだ。戦場も城壁の中に移っている。

「さぁ、そろそろ私達も行きましょう。先に冒険者達が駆け込んでるので罠もうないと思いますわ」

 ……シュナってやっぱり冷血なんじゃ……。

 俺とシュナ以外、もうここに生きてるものはいない。砕かれた石像、冒険者の死体、地面に流れ出た血が川になって坂道を流れている。

「……これだけ人が死んだのです。きっと数年経ったらこの丘には綺麗な花が咲き誇ることでしょうね。『花の妖精』達は血が大好きで、餌が沢山ある場所に住み着いて花を咲かせるといいますから」とシュナ。

「なにそれ? アラトアの伝説?」

「いいえ、魔族の習性の話をしているのですわ。ほら、見てください」

 シュナが指さした先には、背中に翅が生えていて花びらで出来た服を着た小人族が集まって嬉しそうに血を舐めていた。

 それだけでなく、小型の魔族も集まってきて血を舐めたり死肉を食らったりし始めた。

 辺り一帯がもうもうと黒い煙のようなもの、『瘴気』で覆われ始める。

「……ここも『魔界』に沈みますわ。来年にでも『浄化』して一緒にお花を見に来ましょうね若殿? さぁ行きましょう」

 シュナに言われて、俺も城の中に入った。


連休中なので更新がはやいです。

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