イスティ・イル・フィズラース124『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『『救世主』に必要な『優しさ』の『質』』の話
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』
ニムルは『レグレス』たちを『庇おう』として一人『異論』を掲げ始める。だがこれは『ヒート・アプリ族』たちだけでなく仲間たちも怒らせるものだった。ハッシュとカムサが『問答』する横でイスティも参戦してニムルを『説き伏せ』にかかる。
「ニムル先輩……この『強盗』たちには情けはかけないでください。そもそも彼らは『いきなり』私たちを攻撃してきたんです……いえ、具体的にはカムサ先輩をです。確かに『ヒート・アプリ族』たちは関係ないといえるかもしれませんが、私は彼らに『奴隷』として引き渡すべきと考えています。これは絶対譲れません、ですから今回はニムル先輩が引いてください」とイスティ。
『なんでイスティまで……だって『サガサ族』に対しても『ヒート・アプリ族』のみんなに対してももっと『穏健』に接してたのに、なんで『レグレスさん』たちだけはそうじゃないの??』とニムル。
「今申し上げましたが『理由もなくいきなり襲ってきた』からです。しかも『危うくカムサ先輩が、いえ、他の人たちも殺されそうになったから』です……」
そこでイスティは『死神の言ってることは正しいぞ』と言いたげなマーレト族長と長老たちに向かって、
「……つまり『サガサ族』や『ヒート・アプリ族』たちの方は『襲ったのが私たちの側』だったので『それは反撃されたとしても私たちの非がある』とみなせます。ですが『レグレスさん』たちに対して私たちは『非』がありません。なのでこういう判断になるわけです。別に私たちの行動は『矛盾』してるわけではありません。『非』は『貸し借り』と言い換えてもいいでしょう、私たちは『ヒート・アプリ族』の皆さんには『借り』がありますが、『レグレスさん』にはそれらがないのです」とイスティ。
言われて長老の一人が鼻で笑って、
「……は! ようは『我らヒート・アプリ族は弱くて言うことを聞かせられそうだから生かしておくが、この『クノム人冒険者』どもは強くて制御が難しそうだから『奴隷』に落として(拷問して)しまえ』と言ってること同じだ。それを『貸し借り』云々などと『屁理屈』をこねおって……」と長老α。
「どのように『言い換えられて』も構いませんが私の認識は今話した通りです(不動)。そしてニムル先輩も今の『理由』で納得してください。納得してくださらないと私たちがとても困ります」とイスティ。
そういって彼女はまっすぐニムルの眼を見る。ニムルの方は『ためらいがち』だが見返して、
『……僕も正直イスティが言ってることは今の(長老の語った)話と同じにしか聞こえない……だからそれは聞くことはできないよ、ごめんねイスティ……』とニムル。
ニムルは相変わらず『頑固』だ。しかし最近色々なことがあったのでイスティにも『意地』があった。
「いいえ、今回は言うことを聞いてもらいますよ先輩。『サガサ族』との戦闘中なのにさらに『敵』を自分の周りに侍らせて何の意味があるんですか? そしてこの冒険者たちは『強い』のですから、次はニムル先輩が『間に合わず』に誰か死んだらどうするんですか? あるいは殺されなくても人質を取られたりこっそり『ヒート・アプリ族』の誰かでも誘拐してどこかへ逃げてしまったら? それだって立派な『復讐』です。そうなったらニムル先輩はどうするんですか?」とイスティ。
※注:『夢の世界』の『復讐』に関してだが、基本的にどの地域や民族でも『復讐方法』に対する具体的な取り決めや制限は存在しない。なので例えば『レグレス』たちがニムルに『復讐』するために『ヒート・アプリ族』の人間を一人をこっそり誘拐して行方をくらまし、どこか遠くの土地でその人質を拷問してから殺しても『古の法』的には『OK』になるのである。『そんな卑劣なことして何になる』という言葉もありそうだが、『夢の世界』では『卑劣』は『弱者が強者に復讐するために神々が許した』という言説もあるくらいである。『嘘』に関してもそうだが、『卑怯』をよしとしない文化の方がこの世界では少数派なのであった(しかし批判もないわけではない。だがいつも通り自分の時だけは都合よく忘れるのだが)。
『た、確かに『レグレス』さんたちがそういう『復讐』を選択する可能性はないとは言い切れないよ……でも……それは『僕』が監視してちゃんと防ぐから……』とニムル。
「『監視』とは? 例えば『レグレスさん』たちが一度私たちの元を離れたあと『サガサ族』と合流したら? それが一番可能性の大きいことですし、『サガサ族』だって大喜びで仲間に迎え入れるでしょう。もしかしたら今現在の私たちを遠くから監視しているかもしれません『サガサ族』の方が……まあその可能性は低いと正直私は思ってますが、『レグレスさん』たちが今後も私たちと共に行動することはまずありえません。ですから『奴隷化』して行動の自由を奪うのです。それ以外の方法でどうやって『監視』をするつもりで? 現状『サガサ族』だってどうすることもできないのに」とイスティ。
彼女の『強い口調』にニムルがたじろいだ。その耳元で『もう一人のニムル』がニムルにだけ聞こえる声でささやく。
(やっぱり『弁論術』じゃイスティには勝てないよ。でも『力』なら絶対に負けないでしょう?)と『もう一人のニムル』
言われたニムルは咄嗟に──やむに已まれないと思ったからとはいえ──『黒い槍』をイスティに向けて『脅し』をかけた……かけてしまったのである。
『……イスティ、本当はお姉ちゃんはこんなことしたくないけど、やっぱり『レグレスさん』たちの『奴隷化』には反対だよ僕は。理屈じゃないんだ、これは理屈じゃないんだよイスティ……僕は彼らを『奴隷化』しても『恨み』は消えないと思ってる。それに僕たちは過去に『奴隷』にされたことがあるんだから他の人も奴隷にはしたくないんだ……『タルキウス先生』だって『奴隷制度』には反対してたじゃん、だから僕は……』とニムル。
──僕は『救世主』としてこの異世界に呼ばれたんだ。確かに今まで『救世主』らしいことは何一つできなかったどころか『逆』のことばかりしてきたけど、もうそんなことやめたいんだよ僕は……! ──
……とは言えなかったが、その『想い』は言葉の端々からほとばしっている。そして彼女の『背後』から『複数の『僕』たち』と『亡者』たちが叫ぶのだ。
『もう『次』はないよ『僕』! 『僕』は『贖罪』しなければならない時迫ってるんだ! これ以上の『先延ばし』はもできないよ!』と『もう一人のニムル』
『『今は仕方ない』なんて言い訳は無しだよ! そうやって『僕』は『ずるずる』と今日まで『罪』を重ね続けてきたんだから!』と『黒い馬』
『これは『救世主』以前の問題だ! 『誰かを殺したらダメな』なんだよ『夢の世界』でも『現実世界』でもさ! でも君は殺した! どんな理由であれ殺したのなら幸せになるなんて、罰を受けないなんて絶対に『世界』が許せないぞ!!』と『黒い槍』
『『『そうだそうだ! たとえ『襲われてしかなかった』なんて言い訳も通じない! 『殺人者を殺した奴も殺人者』なんだよ!』』』と『亡者』たち。
この『声』をニムルが無視することは絶対にできなかったのだった。次回へ続く。




