ハッシュ・イル・カスラース105『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『何としても『正義のヒーロー』になりたいハッシュ』の話
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』
『ヒート・アプリ族』がずっとイスティたちに隠していた『財宝』の存在が知られ、ここでハッシュが『遊牧民は貧乏に決まっている』という『西方』の偏見から『財宝がすべて略奪品』だと決めつけていた。だがそれに対してカムサは『東方の知識』を用いて『冷静になるよう』に働きかけている。
※注:ちなみにだが一応補足しておくと、『クノム人世界』は『警察』も『検察』も存在せず『裁判官』はどの『都市国家』でも『アマチュア市民』が務めてるため、『普通の一般市民』でも自主的に『正義のヒーロー』となって罪人を逮捕することが『美徳』とされていた。この世界の人たちは『転生者』からみると基本的に『お節介』であり、『正義の執行』に対してものすごく敏感なのだ(だがこの文化は少しづつ『クノム人世界』でも徐々に廃れ始めていることもこれまでに述べた通りである)。
※注:そして基本的に『クノム人世界』というか『夢の世界』は『悪いやつを倒すのが正義』かつ『正義の行いをすれば過去の悪行は打ち消せる』という考え方が一般的で『社会制度』にも組み込まれているのでハッシュが『ヒート・アプリ族』の『粗探し』を行うのは『ガラン神やガズミ神の怒りを避ける』ためにどうしても必要なことなのである。
※注:ちなみに上記の『アマチュア市民』は例えば『寡頭制の国や君主制の国で裁判権などを独占している王侯貴族』たちも含まれている。彼らは基本的に『専門機関での統一されたカリキュラム』で教育を受けておらず、『試験による審査』も受けていないので『現代日本にいる法曹専門家』よりも『レベル(曖昧な表現だが)』が低いのだ。このことも留意しておくべきかもしれない。
「はぁ? いやお前もクノム人ならクノム語喋れや! 『同族』が『蛮語』いってんじゃねーぞ!(苛立ち)」とハッシュ。
『ご主人様☆ カムサさんは『西方の遊牧民は貧乏人ばかりだけど、東方の遊牧民は豊かな部族が多い』と言っているんです☆ だから『ヒート・アプリ族』は嘘をついていないということですよ☆』とデージャ。
「ハッシュ先輩、カムサ先輩の言うことは事実ですよ(クノム語)。失礼しましたマーレト族長殿、『クノミア(クノムティオ)』では『都市に住まない者達は貧乏、遊牧民は皆未開人』という『常識』があるのです。私たちは『東方の遊牧民』が『交易』に従事し裕福な生活を送っていることを知りませんので(トゥルエデ語)」とイスティ。
「……マジで? じゃあ『ヒート・アプリ族』が宝持っててもおかしくないのか??」とハッシュ。
『……でもマーレト族長さんが『嘘』ついてたのも事実だよね??(トゥルエデ語)』とニムル。
そういうとマーレト族長が苛立った様子で『宝が積まれた荷車』の上に『敷物』をかけてかくして、
「……いきなり『盗賊』に襲われたら『宝』を隠すのが『常識的行動』だ。それに『西戎』どもはどいつもこいつも我ら『ガラニア人』を見ると勝手に『貧乏』だと思い込んでるから都合がいいと思って利用していただけだ……」とマーレト族長。
するとそこでカムサが『悪い顔』になって『荷車』にかぶせられた『敷物』を再度剥がし、マーレト族長に対して脅しをかけた。
「……この『宝物』が大事ならなおさら私たちにおとなしく従って『ガラン神殿』まで案内していただきますわ。私たちに反抗するたびにこの宝物を『1六千銀貨』ずつ没収しますわよ! 逆に私たちは『身の安全』が保障されればそれでよいのです、宝物なんていりませんわ。さぁ早速私に反抗して宝物を没収されたいですの!? すぐに神々に誓いを立てなさい!!」とカムサ。
予想通りの展開になったのでマーレト族長は『苦虫を嚙み潰したような』顔になったが『降参』した。
「……くそったれやっぱりこうなるか……その『宝物』は後で貴様らに『復讐』する際に『助っ人』を雇うための大事な資金だ(威嚇)。『ガラン神殿』までは『牧羊犬』のように忠実に案内してやるから手を出すな盗賊ども。犬にも劣る未開人どもめ(威嚇2)」とマーレト族長。
「ずいぶんと『素直』になったようで私は嬉しいですわ。ですが『本音』を少しは隠しなさい、それとも『ぼけて』しまわれて『子供』にかえっているのかしら? 私たちの気分を害したら『子供』を一人置き去りにもするのでそれもお忘れなく(暗黒微笑)」とカムサ。
「全員『病気』で死んでしまえ娼婦どもめ……(ふつうの声量)」とマーレト族長。
※注:『クノム人世界』の『金言』には『老人は子供にかえる(痴呆になると幼児退行することを指している)』というものがある。
かくして前回も一回こんなことがあったような気がしたがマーレト族長がやっと、いや今度こそ『おとなしくなった』……かもしれない(自信なし)。なので早速『宝物』の中にあった『過去にユート王が発行したと思われる金貨』を『くすねよう』としていたハッシュの手をカムサが叩いてやめさせたのだった。
「だから触らないっていったでしょハッシュ! 本当に『手癖』が悪いわね!」とカムサ。
「いってぇ! くそったれ暴力お嬢様が! なんでだよあたしらの方が貧乏なんだからちょっとくらい分けてもらってもいいじゃねーか!? 『ガラニア人』ってのは『気前の良さ』を美徳としないのかよ!?」とハッシュ。
「普通に盗むのはダメですよ先輩、『気前の良さ』とは自分の意思で示すものです(呆れ)」とハッシュ。
「うるせぇイスティまで! 『教養人』みたい議論がしたいわけじゃねぇよあたしは! これは『戦利品』だ! あたしらが『アプラス(ヒート・アプリ)族』を打ち負かした正当な権利だし、こいつらが隠していた財産を見つけ出して見せたあたしの『功績』への正当な評価だろうが!!」とハッシュ。
『今回はいつもより意固地だねハッシュ……』とニムル。
「そら『女』であることをあそこまで馬鹿にされたら許せねぇだろうが! 『合理的な判断』くそくらえだねこっちは! 馬鹿にされても『はいはいそうですね』って流しててもあたしらの『女としての名誉』は回復しねーんだよ! あーくそ思い出したらもっとムカついてきた! 糞爺こんどはてめぇがあたしと『博打』しようじゃねーか、『決闘』でどっちが生き残るか賭けるんだよ!」とハッシュ。
確かに『マーレト族長』の『口汚い罵倒』はイスティ、カムサ、ニムルにとっても『聞き続けるには堪えがたい』ほどひどい言葉だった。そしてその『罵倒』を『冷静にスルー』していても『ヒート・アプリ族』たちは別に『感心』もせず、ただ『自分たちに反抗されると困るから強気に出れないんだ』と『なめてかかる』だけだったようだ。
そこで『黒い槍』が『クノム語』でいったのである。
『……もし今の僕たちが『非力』で、『ヒート・アプリ族』を『暴力』で従わせられないのなら事実、『このまま馬鹿にされ続けても妥協して『冷静』を続ける』ことしかできないよね『僕』たちは。例えば『体を鍛えてない貧弱な女の子』たちが『自分達よりはるかに数で勝る老人や女子供』たちを『暴力』で従わせるなんて絶対不可能だ……でも『僕』たちは違うよね??』と『黒い槍』
それを言われてイスティとカムサが『硬直』する。まさか『死神』が自分たちに『話しかけてくる』なんて思わなかったからだ。
次回へ続く。




