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カムサ・イル・アサランシス93『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『刺激された『深い深い心の傷』』の話

『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』


 前回の続き、カムサは族長から『東方の歴史を何も知らない無教養』とののしられたことに『女であることを馬鹿にされたこと』よりも『強いショック』を受けていた。イスティはそこで『かつてカムサは『詩と教養』によって『紺碧海の女王』で『無くした自信を取り戻したこと』を思い出して『ハッ』としたのである。


(……いまやっと『理解』できた気がします……カムサ先輩は『故郷が滅亡』した『心的外傷トラウマー』にずっと苛まれている……それを普段は『教養自慢』で『覆い隠して』いるだけなんですね……だからそこを崩されると途端に弱ってしまう……これは全く想像してませんでした……ですがそんなの当然そうなりますよね……)とイスティ。


 結局彼女たちはずっと『亡霊ダイモーン』に付きまとわれながら『旅』をしているのだ。そしてそれはハッシュだってニムルだって同じだろうし、もちろイスティもそうだった。そして彼女は結局『自分のトラウマから自分が目をそらしたいから仲間たちのトラウマにも想像が及ばなかった』ことを自覚したのである。


 だがそれがわかったからといってどうすることもできないのも事実である。今少なくともイスティができることは『的確にトラウマを刺激されてもただ耐えて冷静さを保つ』ことだけだった。



「『勉強』だなんて……ただ『世間知らずの小娘』だって馬鹿にされてるだけじゃない……『女』というだけで馬鹿にされるのは耐えられるけど、『教養がない』と言われることだけはどうしても我慢できないわ……私から『教養』を取り除いたら何が残るの? 何も残らないじゃない……(ネガティブ)」とカムサ。



『女というだけで馬鹿にされることに耐えられる』というのは『敬愛する父から真正面で『お前が息子だったらどんなに良かったことか』といわれた経験があるから慣れている』ということである。イスティはその言葉に思わず『耐えられなくなって』族長をにらみつけ怒鳴ろうとしてしまった。


『あ、あなたは言っていいことと悪いことの区別もつかないんですか!? カムサ先輩に『無教養』だなんて、そんなの『死ね』というよりなおたちが悪い! 『クノム人』は『名誉』が何よりも大事なのに、その一番大事なものを奪おうとするなて許せません!』とイスティ。



 また同時に『亡きシルリス市長』にも『強烈な義憤』を感じたが、カムサは亡き父を敬愛しているので──『グッ』と歯が砕けるかと思うほど顎に力を入れて耐えて──何も言わなかったのである。


(……それにしてもカムサ先輩のお父上『ファーバス市長シルリス殿』は『ひどい父親』ですね……『一人娘に掛けてはいけない言葉』をかけて苦しめ、なのに『よき父』として振舞うことでカムサ先輩に嫌われないようにし、最後は『娘一人だけ助かるようにして自分は戦死した』なんて……せめて『頼れる用心棒』でも予め用意しておき一緒に逃がせばよかったのに……ニムル先輩とハッシュ先輩が偶然生き残ってなかったらカムサ先輩も普通に死んでましたよね……まあ『コロコス帝国』の『攻撃』を直前にしてどうすることもできなかったのでしょうが……)とイスティ。


 彼女もかつて『魔術師フィフ』が見せた『ファーバスの幻影』に参加していたので『シルリス市長』はある程度は知っていた。そんな『複雑な思い』を抱えつつ、じっと自分たちを様子見していた『ヒート・アプリ族長』に向き直って、


「……私はたとえあなたに『無教養で品性のない蛮女』と延々さげすまれても『講和』のための努力を続けますし、こうやって『クノム人』全体を馬鹿にされても『勉強』だと思って根気強く耳を傾けます。今の私たちはそれくらい『東方』の情報を欲しているんです。これから私たちは『コロコス帝国』の領土を通り抜けてさらにその『東』に行かないといけないので……」とイスティ。


 彼女の言葉には『堅い覚悟』が宿っていた。その様を見て『ゴブリンたち』は『先生の覚悟は固いようだぞ』とやっと理解して黙って従うことを決める。


 この流れで族長も『なんかよくわからんが強い意思を感じるから少しは敬意を払ってやろう』とか、『どうやら口にしている『寛容』は本物っぽいから一応は認めてやろう』とか……とにかく何でもいいから『イスティの『意気』を第六感で感じ取って態度を改めてくれる』……、


 ……とかならよかったのだが残念ながらそなことはなかったのである(残念)。なのでイスティの言葉にはそれほど関心をさず以下の通りに返した。


「……お前らが何をしているのとか、なぜここにいるのかとか、そういうことは私たち『ヒート・アプリ族』にとっては本当にどうでもいい話だ。だから好きにするがいい。私の方は『腹立たしい盗賊ども』を『口先』だけで『困らせる』ことができて『非常に胸がすく思い』だがな!(喜悦) それに『さんざん罵倒』してやったのに『勉強』などと……まるで『奴隷』が『主人』の怒りをなだめるために媚びているようにしか聞こえん。だがよくわかっていると誉めてやろうじゃないか、その通り『クノム人』は本来『帝国クシャサ』では『奴隷』なのだ! やっと自分たちの『あるべき立場』を自覚したようで何よりだ!(目いっぱいの嘲り)」と族長。


『こ、こいつ人間族の分際で……!!(いい加減黙ってられなくなって立ち上がる)』とゴブリンたち。

「お? なんだ『使い魔』どもめ! やるってなら受けて立つぞ!?」とマーレト族長。

「ま、待ってください……! 暴力に訴えたらだめです、まだ『講和』の道は……!!(小声で慌てて止めようとしている)」とイスティ。


 ここで『追撃』をうけたカムサはこらえきれずに泣き出す……かと思ったらカムサはそこで『ガバッ』と顔を上げてすかさず切り返した。


「は! 残念ですけど『トーラニア(トーランティオ)地方』は『コロコス帝国』の統治下なのですから、『クノム人』たちもあなた方『ガラニア人』と同じく『帝国クシャサに暮らす自由市民アウィールム』の一員ですわ! 全然『奴隷民族』じゃないんですけどね! まさかそのこともお知りでない?? 偉そうに語っていてももう『知識の底』が見えてきたようですわね!」とカムサ。


 彼女が言い返したことでゴブリンたちが『魔法攻撃』するタイミングを逸して『ちょっと右往左往』する。そして『ゴブリンたち』に備えて自分も腰を浮かせていた族長は視線をカムサに戻して目いっぱい怒鳴り返した。


「『トーラニア地方』のことくらい知っておるわ!!(怒) そもそも貴様ら自分で『クノミア』から来たと言ってるだろが! 『外』から来た奴が『帝国市民』なわけあるかたわけが! お前らは『トーラニア』のクノム人ではないだろうが!!」と族長。


『トラウマ』があってもカムサは変わらずカムサのままだった。次回へ続く。

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