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イスティ・イル・フィズラース115『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『ヒート・アプリ族長が語るサルザル人の誕生神話後編』の話

『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』


『ヒート・アプリ族長』が『見え見えの時間稼ぎ』として話し始めた『サルザル人誕生神話』は前回までが『前半』でここからが『後半』といえるだろう。『レーム北部』の『原住民』たちが『民族意識』に目覚めたとき、あるいははっきりと自分たちの『存亡』を意識してそのためには『民族』の枠組みを超えて『同盟』を模索しようとしたときが『アリシア帝国』による侵攻の時点だったそうだ。彼らはその『同盟』によって『バリフ・アルネレイア』へのしぶとい抵抗を続け、完全な『支配』には屈しなかったのである。



 そして彼らにはさらに『幸運の女神』も味方した。『アリシア帝国』が『山の竜ギルネ人』との戦争で王国が崩壊したのである。するとその隙をついて『ガラニア王』と『ネイア王』は奪われた自分の国に舞い戻って『アリシア人植民団』を追放した。するとこの二人の王の『偉業』にすっかり感心した『キュトン王』、『ルトリア王』、『フィズミク王』がこんな提案したそうだ。


『あなた方はなんと優れた王者であらせられるのか。どうか我らと『兄弟』の契りを交わしていただきたい』とキュトン王。


『お互いに花嫁を出し合って『姻戚同盟』を結ぶのです。そして我らの家のうちどこか一つでも自分の領国を追い出されればこれを無償で保護し帰国を支援する協定を結ぶのです』とルトリア王。


『そしてもしどの王家でも滅ぼされるようなことがあれば全員で復讐を完遂し、また我らの一族が新たな王国を築いたのなら、その王家も仲間とみなす。そして我らの間は基本的に平等である。それを誓いましょう!』とフィズミク王。


『『それがいい! その誓いを取り結びましょう! 義兄弟となる我らに幸多からんことを!』』とガラニア王&ネイア王。


『『『そうでありますように!』』』とキュトン王&ルトリア王&フィズミク王。


 結果彼らは『姻戚同盟』を結んで『血族』となった。具体的には『キュトン王』と『ガラニア王』の子供同士が結婚し、『ネイア王』は『フィズミク王』と『ルトリア王』の二人から嫁を迎えたのだ。


 その後『ネイア王国』は『フィズミク』や『ルトリア』にも『宗主権』をえて勢力を拡大し、周辺一帯の無数の都市や田園を支配する『大国』になった。そして『キュトン』と『ガラニア』も同じ国になって勢力を拡大したが、戦争には力を使わずに『ガラン神』の『大神殿』を建設した。すると周辺の多くの国から参拝者が現れて、この神の名は『ハリスキーナ』にもとどろいたという。


 その後『ネイア王国』はさらに『アリシア人』に対して『遠征』を行ったが、この軍隊を率いた『王子』は道中『マウハナー河』のほとりに地味の良い住みよい土地を見つけたのでそこに住み着いた。これが『都市国家アドマジア』の始まりとなり、『ネイア王国』とは遠い親戚となった。


 また一方で『ガラニア王』の『二人の王子』も『ガラン神の宮』を他の土地に建てようと思って『長男』が『東』を進み、『次男』は『南』へ進んだ。『長男』は『カリラトゥム』という土地を見つけてそこに住み着き、この男の息子が『カリラトゥム』のすぐ北にある『カルシャン』の町に『王』として迎えいられ、名を『アシェル・ガズミ』と名乗った。


 一方『次男』はそのまま『アリシア人』の土地にすみついた。この当時『アリシア人』たちは『エルモンの王』が倒れて混乱状態にあり、そのために簡単に住み着くことができた。この『次男』はそのまま都市を建設し、そこを『サッジャート』と名付けた。この男の息子が『ハンマルセル』である。


 そのため『アドマジア王』が『古ギルミーナ王国』によって自分の国から追放されると彼を保護したのが『ネイア王国』であり、また『ハンマルセル大王』の『ハリスキーナ統一』の偉業は親戚筋である『古ギルミーナ王国』の『アシェル・ガズミ』の助けなしには成立しなかった。彼らはこれによって世の人々から『サルザル人』と呼ばれるようになったのである……。



 そこまで語ってから族長が締めくくった。


「……貴様らはきっと『なぜか途中から展開が急に雑にったな』と思っただろ。だが残念だな、それは私が途中から『要約』したからだ(謎のどや顔)。この話は全部話そうとすると長すぎるのでな……そしてこの神話が意味するところは分かったか? これが『サルザル人誕生』の神話だ」と族長。


 カムサがそこで反論した。


「ちょっと待ってくださいまし! その『神話』はおそらく『東方の歴史』を要約してお話しされているのでしょうけど、私はその『前提』にある知識がありませんわ! 『アシェル・ガズミ』と『ハンマルセル』は名前だけは聞いたことがありますが、その者達は『王』なのですか? もしそうであるならいったいいつの時代のどこの『王』なのですか!? いったい何の話をしているのか全然わかりませんわ!」とカムサ。



 ここでカムサは『自分は全く『東方』に関しての情報がない』ことを痛感する。マーレト族長が喋っている内容が『東方人であれば知っていて当たり前の知識』を前提にしていることは嫌でもわかるのだが、たとえ『トゥルエデ語』が理解できてたとしても話していることが全くわからないのだ。まさか『中つ海』を間に挟むだけでここまで『情報』が流れてこないとは思ってもみなかった。



 そしてこんなことを言うと族長はまた『無教養な蛮族だ』と馬鹿にする……とおもいきや、彼は予想に反してつまらなさそうに言う。


「……知らんだろな『西戎アヒヤワ』どもよ。お前らが知っているのは精々『暗黒時代』までだ。クノム人冒険者には何度も関わったことがあるが、どいつもこいつも『暗黒時代以前』の話をすると『クノム神話』か『英雄叙事詩』の話しかしなくなるから、ガラニア人である私も『ローメイダ』と『シードラム』の内容を半分くらい覚えてしまったぞ……だが貴様らが『暗黒時代』以前の話をできない理由も私は知っている。まず一つ目はお前たち『クノム人』が『コロコス帝国』によって『くびき』を打ち込まれているからだ。それも深く太い『軛』をな……具体的には『銀などの鉱物資源』と『奴隷や傭兵(冒険者)』を大量に『コロコス帝国』に提供させられているからだ。特に『人間』を持っていかれることは本当に『過酷』なことだ。お前たちは慣れすぎて全く理解できていないだろうがな……」と族長。


 そういう族長は本当に、本当に心底『同情』しているようだった。その顔を見てイスティも思わず黙ってしまう。だがカムサは『脈絡いきなり哀れまれて』本気で困惑し、


「はぁ? 確かに昔は『オリシア人商人』が『クノムティオ』にやってきて鉱山を開発していたという伝説はありますけど、もう『オリシア人の王』は『クノムティオ』にはいませんわよ?? 『軛』なんて『クノムティオ』にはありませんわ! だって私たちは『コロコス人の侵略を撃退した』のですから……」とカムサ。



 次回へ続く。

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