ハッシュ・イル・カスラース76『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『使い魔制御術』と『近づいてきた客人』の話
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』
前回の続き、『魔界で突然聞こえてきた謎の笑い声』の正体を一向につかめない『使い魔』たちに『ゴブリンたち』が苛立って『罰』を与え始めたことにより、『理不尽な扱いを受けた』として『使い魔』たちが目に見えて反抗的になり始めていた。
そうなると結果的に『使い魔を全部失う羽目』になるためイスティは阻止したかったのだが、『奴隷(使い魔)は信用できないから厳しくしつけないとちゃんと働かない』と固く信じているハッシュとカムサは取り合わなかったし、また彼女たちも『笑い声を無視していい』が全く理解できなかったのでイスティに異議を唱える。そうなるとイスティはゴブリンたちを止めることができなかった……、
のだが、ニムルとハッシュ頭の上から姿を現したデージャが異口同音に呟いた以下の内容で『場』が『鎮静化』したのであった。
『『……何者かが近づいてきたよ(ましたよ☆)』』とニムル&デージャ。
途端に『ピタリ』と全員が硬直し、次の瞬間にはゴブリンたちが『使い魔』に『招集命令』をかけて呼び戻し、ハッシュもデージャを再び戻して戦闘態勢になり、そのままカムサとイスティに無理やり『黒い馬車』の中に強制避難させられた(割と暴れたがデージャも協力したのであっさり押し込まれた)。
「いてて! おいなんで馬車に押し込めるんだ!? あたしだって戦えるぞ!(鼻息荒い)」とハッシュ。
「本当に学習しないお馬鹿! あなたは弱いの! 前にサガサ族と戦っても大して何もできなかったでしょうが!」とカムサ。
「いや少なくとも敵兵一人は殺してるからな!? 本当に何もしてねーのはお前だろカムサ!!(逆切れ)」とハッシュ。
「ムキーーーー!! その『驕慢』の代価は高くつくわよおおおお!!(激高)」とカムサ。
「ああ、こんな時に喧嘩してる場合では……あ、カムサ先輩がハッシュ先輩ともみ合ってくれた方がいいですね、それでいいです(白目)」とイスティ。
『黒い馬車』の中でカムサとハッシュが激しい『もみ合い』……いや『殴り合い』を初めて『バタバタ』暴れまわり、その間にゴブリンたちがもう一度当たりを警戒すると、自分たちから割と離れた地点に『遊牧民』と思われる家畜を引き連れた集団がいることを突き止めたのだった。
『……先生、どうやら『死神』と『偽鶏』が発見した者達を我らも『捕捉』しました。おそらく『遊牧民』が『移動』しているんだと思います。やつらの『冬営地』が近くにあるのかもしれません。季節はそろそろ『冬』が明けるころですし……それに連中が我らに気づいている様子はありません』とゴブリンたち。
どうやらゴブリンたちの使い魔が確認したところニムルとデージャが見つけた集団は『ガラニア人の一部族』だったようである。今彼女たちがいる『タルマリク州』には『アラマン左翼軍:ノミス&テルミオス隊』が『治癒者ケリミーン』の軍隊と戦闘していた影響で大量の『ガラニア人』たちが『タルマリク州』に侵入しており、その集団一つのようだった。
そこでイスティは『偵察ありがとうございます』とゴブリンたちに告げてから……自分の前に並んでいる使い魔たちを指してゴブリンたちに指示した。
「……それでは『ダボス族』の皆さん、使い魔の皆さんに『褒美』を与えてください。危険な偵察任務をしっかりこなした『褒美』をです」とイスティ。
言われたゴブリンたちは一瞬何を言われたかわからなかったが、
『……せ、先生? 突然何を……?』とゴブリンα。
『なぜ使い魔に『褒美』なんぞ……こいつらは本来の仕事をしただけですし……』とゴブリンβ。
『そもそも今我らには与える『褒美』なんてありませんよ……』とゴブリンγ。
「だめです、こればかりは譲れません、『ちゃんと仕事をしなかった』ことに『罰』を与えるのなら『ちゃんと仕事をこなしたこと』に『褒美』を与えないと筋が通りません。私は当然の『正義(筋)』を通すべきだと言っているのです。『奴隷を大切に扱うのが主人として理想的なふるまい』ですよ」とイスティ。
『奴隷は奴隷だけどもできる限り大切に扱うべき(そうでないとすぐに逃亡や反抗されるため)』という教訓は『西方』にも存在する。もちろんイスティがこんなことを言うのは先ほどゴブリンたちが使い魔に『存在しないはずの敵を見つけてこい』と無茶な命令をして『罰』を与えたことを咎めてこんなことを言っているのである。
だがもしゴブリンたちに直接『理不尽な命令をしたことを謝れ』とは言わなかった。なぜなら『奴隷化』はそもそも『殺さないで生かしておいてやる代わりに自分に奉仕しろ』という『慈悲』が『建前』であり、なので『主人が奴隷に謝罪する』ことは『慈悲をかけたことを謝る』という意味が分からないことになってしまうからだ。まあ『夢の世界』の住民もその『建前』を本気で信じているわけではないが、『奴隷に対して過ちを認めることは主人の威厳を喪失させなおのこと奴隷の逃亡や反抗が増える』ことは固く信じていたので絶対に謝れないのだった。なのでイスティはその線ではなくあくまで『奴隷の働きに少しは報いてあげてください』と主張しているのであった。
そこでさらにカムサに小声で『助言』されたニムルがおずおずと、
『……あの、じゃあ僕が今から何かの動物の『肉』をもってくるから、それをゴブリンさんたちにあげるよ。そこから『ご褒美』をあげて。もちろん僕が持ってくる『肉』はあくまでみんなのための食事用だから……』とニムル。
「そうよ。私たちは今お腹がすいてるから『食事』にするの。奴隷(使い魔)たちも『ご相伴』にあずかる権利を与えてあげるわ! 感謝なさい! おーっほっほっほ!」とカムサ。
「だからなんでお前が一番偉そうなんだよ(律儀にツッコミ)」とハッシュ。
「……それでよろしいですね?」とイスティ。
『……我らは先生には逆らいません、ご命令に従います……』とゴブリンたち。
『……(唖然)』と使い魔たち。
なのでゴブリンたちは渋々だが了承し、ニムルが早速『狩り』に出かける。彼女は『黒い馬車』を仲間たちのもとに残し、『黒い槍』を握りしめて一人当たりの森の中に分け入っていった。
すると『黒い槍』の穂の表面に『眼と口』が現れて喋る。
「……使い魔を使役するって大変だね。『僕』は正直『奴隷』の人たちの扱い方がよくわからない……『前世』でもよく怒られてたし……」と『黒い槍』
その声は紛れもない『人間時代のニムル』の声質だった。一方『死神』そっくりの声になっているニムルは不思議そうに、
『そうだねぇ……そういえばイスティたちは『僕』の『夢』をのぞき見していたって言ってたけど、なんでそんなことができたんだろう?? デージャさんが僕の心でも読んだのかなぁ?』とニムル。
「さすがに体内に侵入されたらわかるけどね。ていうかデージャさんが『僕』の中に入れるのかなぁ? 死んじゃうんじゃない?」と『黒い槍』
『え? 死ぬの?』とニムル。
「だって『僕』の体の構造は『人間族』のそれとも『魔族』のそれとも違うんだよ? そんな『よくわからない構造』の体の中に入って何ができるのさ? 例えば止まっている心臓を動かそうとしても、そもそも『僕』に『心臓』ってあるの?」と『黒い槍』
もはや『死神』はその存在自体が『『謎』という概念の神格化』かと思うほど何もわからないことだらけだった。次回へ続く。
作者です。これはまだ具体的な形になってるわけではないのですが、実は今連載してるこの話とは全く別に『新しい話』を書こうと思ってまして、その作品は何らかの『コンテスト』に応募しようかなと思っています……と言いたいところですがまだプロットの段階で一文字も書いてないですけど(汗)。
マストカ「なぜそんな話をここに書くの?? 関係なくない??」
シュナーヘル「こうやって宣言することで自分に発破をかけてるのですわ。しかしそれですと『gliters』はどうするつもりなのでしょうね? もうあっちは『エタッてる』状態では??」
……『glitters』も何とかしたいとは思っているのですが、続きを書くべきかそれとも一から書き直すべきか……ずっと悩んでて答えが出ません(汗)。




