イスティ・イル・フィズラース104『東邦大遠征:サガサ族からの逃避行』と『亜人族ニムルについての『歴史』と『魔法』分野の研究』の話。
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』
前回の続き。『ニムルは亜人族なのか?』というデージャとゴブリンたちの『推察』を否定したイスティが『なぜ亜人族が迫害され人間世界から観察されなくなったのか』について前回考えていたことはいかのとおりである。
(……いえ、恐らくそれも違います。実態は『亜人族』たちも『魔族』の『範疇』に押し込められたというだけでしょうね……もともと『亜人族』は絶対数が少なかったようでして──実は魔族の中には人間と子供を作れなかったり、子供は作れても『人間族が受け居られる類』の夫婦生活を営めない種族が多く──『亜人族』は数をあまり増やせなかったのです。いえ、そもそも『夢の世界』の生命は『種族』に関係なく自分たちの数が増えることを『食料が足りなくなる』と恐れて抑制する傾向がありますが……しかし『魔法族』であったために『四英雄国時代』に『抑圧』の対象となったのでしょう、おおよそ理由はそんなところなんでしょうね……)とイスティ。
『人間と子供を作れない種族』の代表例は『耳長族』、『子供は作れても『人間族が受けいれられる類』の夫婦生活を営めない種族』とは例えば『アンフィスバエナ』などの『人間の女に子供を産ませた後、その女は子供の餌にする』といった生態をもつ魔族のことを指す。『夢の世界(の人間族)』における『結婚』とは『次世代の自由市民を再生産する』という『神秘的かつ政治的で神聖な行為』であるのでそもそも子供が作れないことは論外だが、子供ができてもそれを夫婦が協力して『教育』できないことも同じくらい『あり得ない』と考えられていた。なので『片親の子供』は『孤児』扱いされ、『孤児』は『健全な環境で育っていない』として『信頼できない人種』認定されてしまう。これ等の考え方が『魔族と人間族の結婚』の障害になっているようだった(補足)。
そして彼女は口を開いて話題を変えた。
「……ニムル先輩が『亜人族』でないとわかればそれで充分です。ただ以前は『通用』していた『聖石』が『効かなくなっている』のは私も『驚異』を感じています……もし『魔族化』しているのなら『逆』になっているはずですが……これは一体どういうことなのでしょうか??」とイスティ。
するとカムサが言う。
「……私は『魔法使い』でも『魔学者』でもない『素人』だから適当なことを言ってしまうけど……『ニムルと死神が融合』しているのだから、『ニムルが魔族化した』のと同時に『死神が人間化』したってことなんじゃないかしら?」
するとイスティが困惑して、
「それも『言葉遊び』ではないですか? ニムル先輩と『死神』は『融合(同一)』になっているのですから……いえ、そういえば私は『実は融合が完了していない』という立場になるんでしたね(汗)。そうなると確かに『ニムル先輩が死神により近づき、同時に『死神』もニムル先輩に近づいている』ということになるので間違いではない……」とイスティ。
言葉では認めつつも彼女は納得していない。するとハッシュが代わりに(本人はそのつもりはないが)異議を唱える。
「なんかそれおかしくねーか? だってニムルを『飲み水』、『死神』を『泥』に例えると『飲み水に泥を混ぜたら飲み水は泥にちかく、泥は飲み水に近くなった』って言ってるようなものだぜ? やっぱ『言葉遊び』じゃん。『この泥は飲み水に近くなったから飲める』なんていうのかよ?」とハッシュ。
「その例えは不適切よ。泥に水を混ぜても水でのばした泥よ。ニムルが『死神』を水でのばしてることになるわよ?」とカムサ。
『み、水でのばす……(引き攣り笑い)』とニムル。
「あー……確かによくない例えだな(あっけらかん)。じゃあなんだ? 『銅』と『錫』を混ぜたら『青銅』になる感じ? いやでも青銅になったら銅でもなけりゃ錫でもねーもんになるってことだしなぁ……」とハッシュ。
そこでイスティがいう。
「……改めて『魔族と人間族の融合』という現象がまったく解明されていないことを痛感しました。私は自然と『風の王』や『魔女』が報告しているように『魔族と融合しても人間族側の意識の連続性は保たれる』と漠然と考えていましたが、それは『精霊族との融合』に限られた話かもしれませんね。『死神』に限っては例外なのかも……」とイスティを
※注:そもそもその『大前提』すらイスティの経験からくるものでしかなく立証はされていない。というか『意識の連続性』ってそもそも『何』なのだろうか? 定義も曖昧なら基準も不明確で作者に全く分からなかった(敗北宣言)。
そこでイスティが『ふぅ』とため息を吐いた。ずっと栄養不足と常在戦場の緊張感で疲弊している。そんな状態で『怒り』に任せて喧嘩し、さらには『魔術』に関する『少々難解な議論』に踏み込んでしまったのでもう疲労感でいっぱいだった。頭が急激に回らなくなっている。
そしてそれはこの場のニムル以外全員がおなじだったので、カムサが『おしまい』にしてしまった。
「……はい、もういいわよね皆? 結局私たちは『なんの根拠もない思い込み』で騒いでたに過ぎないってことよ。だからまだ今はニムルに関しては『見』の姿勢を維持しましょう。それにどうせニムルがイスティの『教説(仮説)』に賛同していない以上は『治療』としようともしてもうまくいかないでしょうし」とカムサ。
するとニムルは後頭部を『ポリポリ』かいてからイスティに申し訳なさそうに、
『……ごめんねイスティ、僕はイスティの『世界観』が理解できないんだ。『僕』は自分を『魔族に操られている被害者』だとも、『病気』だとも思ってないから……それに『聖石が効かなくなった』のは普通に『強くなった』ってことでいいんじゃない?(朗らか)』とニムル。
「……まあ、確かに『魔法族』なのに『聖石』が効かないのはいいよな。すげぇ強いじゃんか!(前向き)」とハッシュ。
「確かにそうはそうだけど……まあでも『長所』が増えたことは心強いのは確かね。今は神々に感謝しましょう」とカムサ。
「ニムル先輩は『(クノムティオの)神々』に命を狙われてるんですがね……(不満)」とイスティ。
またデージャとゴブリンたちは彼らでいろいろ納得できないらしく騒いでいた。
『『聖石』が効かないのは『亜人族』の証拠ではない……私すんごい納得できません☆ だったらたかだか『魔族にもなれず人間族にもなれない中途半端な生き物』が『迫害』される理由がないじゃないですか☆ 私ちょっと意固地になりますよ♡』とデージャ。
「お前もこだわるな……もう滅んだ種族のことなんかどうでもよくねーか?」とハッシュ。
「どうでもよくないんですよそれが……ですが意固地になられるのも困りますね。『亜人族が聖石を受け付けなかった』という話は証拠がなく、逆の話は記録に残ってるんですよ。『四英雄』たちの証言なので信ぴょう性はあると思いますよ」とイスティ。
さらにゴブリンたちも意見を述べたのだが、そちらは次回に続く。




