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ハッシュ・イル・カスラース67『東方大遠征:サガサ族からの逃避行』と『イスティが作り上げた『世界観』の戦争』の話

『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』


 前回『光る幌』に映し出される『二人のニムル』の会話を聞いてイスティは『一つの世界観』を短時間で構築し、それに従って『ニムルを助けよう』と言葉を紡ぎ始める。果たしてその『世界観』が『真実』を指しているのか、彼女のとった方法が本当にニムルを『救える』のか、そもそも『ニムル』はどんな状況に置かれ何を必要としているのか……それは誰にもわからない。そんなイスティを見ながら前回カムサはこんなことを考えていた。


(……イスティ、やっぱり『ニムルが魔族になる』ことを受け入れられなかったのね……そんな気がしてたわ、一番魔族に詳しいからこそ魔族の恐ろしさがよくわかってるのよね……)とカムサ。


 果たして彼女の言葉はイスティの『本心』を突いていたのだろうか? それもわからない。何もかもわからず、ニムルだけでなくイスティもカムサもハッシュもひたすら『無明長夜』を歩んでいるのである。


 そしてどれだけ信頼し合った友の間でも『万言』を本当に交わすわけではないので『行き違い』は数限りない。だがそんな『行き違い』を覆い隠してしまうのが『仲間意識』であろう。『仲間意識』は理屈が先行するのではなく感情が先行するのだ。だがその癖理屈に簡単に負けてしまう不甲斐ないものでもあるようだ。



 そして『光る幌』のまで『観客』たちが右往左往していた時、『もう一人のニムル』は相変わらず『過去のカルシャーナ帝国軍』と戦いながらニムルに叫び続けていた。


『『君』はまだ完全に『死神バルバン』と『融合』できているわけじゃない! だから『記憶へのアクセス』がまだ弱くて『カルシャーナ帝国』の時代までさかのぼって『想起』することができないのさ! だから『君』は知らないんだ、覚えてないんじゃなくて完全に知らないんだよ! そして『死神バルバンの記憶を完全にものにできていない』ということは『死神バルバンの力』も完全に引き出せていないということ! だから『君』は過去の『サガサ族』との戦いに『妥協』を強いられていたんだ! すべては『君』が『中途半端』だったこと以外の何物でもない!』と『もう一人のニムル』


 そこで今まで戦っていた『カルシャーナ帝国軍』と『亡者の軍隊』たちが『ピタッ』と戦闘をやめて一斉にニムルを見た。思わずニムルがたじろいでしまい、観客たちも固唾をのんで硬直する。


 もちろん『もう一人のニムル』はその場に立ち尽くす兵士たちの先頭に『馬』に乗りながらたち、地に足つけて立っているニムルを見下ろして、


『……本当に『何もできない』んだね『君』は……『転生者』のくせに人ひとり救えないどころかどれだけの生命をその手で殺し、また見殺しにすれば反省するんだか……『君』は『死神バルバン』に遭う前から立派に『死神タナトス』だった。つまりは『同じ者同士がひかれあった』に過ぎない。君がもっと早く『この事実』に気づいていたら『ギルモ村』は滅ばずにすんだのに……』と『もう一人のニムル』



 さらに『亡者』と『カルシャーナ帝国軍兵士』たちが口々に同調した。


『口では『差別はよくない』などといつつ、結局は『魔族』をその身に受け入れることができないではないか』


『『寛容』とは『己の可能性を拡げる』ことを言う。お前のような愚か者にそんなことはできない。自分で自分を縛って苦しみ、さらにははた迷惑にも他人も巻き込むだけだ』


『お前は『優しい』のではない、ただ『何もできない無能』というだけだ。『優しさ』とは他人を助けることができる力のことを言うのだ』


『『正義』を叫んで殺すのは楽しいか? 感情に任せてさんざん殺しておいて、『罪悪感』を抱き続ければ許されると本気で思ってるのか?』


『『戦争はダメ』などと言いながらお前は暴力をふるってる時が一番輝いてるぞ』


『『フランムス』で『転生者』同士の争いを止めようとはしなかった。なぜ止めなかった? 『悪人同士』だから勝手につぶし合えとでも思ったんじゃないか? 町の人間が巻き込まれることくらい分かっただろうに……』


『『カミス』での顛末こそ『無能』の極みだな。お前が口だけだってことが善くわかるよ』


『『アラマン王国』に協力して行った『悪事』は数知れないなぁ? 『恩返し』とか言いながら何『国家ポリス』の破壊に協力してるんだ? なぜ『戦争』を止めなかったんだか……『庇護される立場だったから』というのなら、それこそ『力不足』だぞ」


『あの時はすでに『死神バルバン』を受けれいていたから本当は『力』があった。だがお前は無意識に拒み続けていた。己の差別性に無自覚なのに他人の差別性には目くじらを立てる、下種だなお前は……』


『『東方大遠征』などという愚か極まりない事業は一体『西方人と東方人』にどれだけの苦難をもたらすことになるか……しかしお前は『東方に行くため』と相乗りすることを選んだ。自分たちが『理想郷』にいくために多くの人々を『踏み台』にすることになる……そういう発想ができなかったのか? いいやできたさ、でも自分に都合が悪いからしなかったんだよお前は……』



 これらの『罵倒』にニムルはじっと黙ったままになっている。だがそこでついにイスティが『世界観』を固めて『反論』した。


「さっきから好き勝手適当なことを! 他人の『無能無策』を非難することは誰にだって容易いが、そういうお前に非難する資格はないぞ『死神バルバン』! お前はただ『ニムル先輩を攻撃』するためだけに詭弁を並べ立てているだけ! 『ニムル先輩は言行が一致してない』などというのならお前の言行も同じだろ! 人を非難するのなら自らの行いもちゃんと正すのが『筋』! ただ手当たり次第に『詭弁を弄して』人間族を襲っていただけの『通り魔』にニムル先輩を罵る資格なんてない! ……」とイスティ。


 彼女は『ニムルを助けたい』という気持ちだけでなく『自分の大切な思い出に土足で踏みこまれた』という『怒り』で口調が変わっていた。ハッシュが聞きなれない喋り方に目を丸くしていたが構わずさらに続ける。


「……それに『戦争を止めなかった』だなんて、一介の『冒険者エンポロスや『食客クセノス』身分だったニムル先輩にできるわけないだろうが! 『カミス人』がああなったのは『100年も前』からずっと彼らが続けていたことの『必然(因果応報)』のためであってニムル先輩や私たちに止めることなどできなるはずがない! もちろんそれは『タルル人の破滅』だって同じだ! それに『アラマン王国』でも、そもそも私たちは『役に立つこと』が求められていた! 『食客クセノイ』とはそういう身分なんだ! 人のことを『無能』とののしるのは簡単だが、『人生』にはいつも『実現の難しい課題』が存在してそれを克服するための『努力』が求められる! 人間族でも魔族でもそれは変わらない! そういう事実を無視して『一段高いところ』から好き放題放言することこそ『下種』だぞ!(激高)」とイスティ。


 彼女がここまで感情をあらわにするさまを仲間たちは初めて見たのだった。次回へ続く。

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