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ハッシュ・イル・カスラース63『東方大遠征:彼女たちの『サガサ族からの逃避行』と『暁の女神の降臨』の話

『東方大遠征:レーム北部戦役』、『彼女たちのサガサ族からの逃避行』


 前回カムサとイスティが『魔族の憑依・融合・寄生』についての『議論』を行っていた。しかし現状この3つの違いは『魔族たちが感覚で行っていて『言語化(マニュアル化)』されていない』ことと『秘密主義』が相まって『なにも分からない』が正直なところであった。


「それにしても、『魔法』の研究は『魔法族』にも価値と利益を齎すはずなのにどうしてここまで『秘密主義』なのか私にはわからないわ。人間族への憎悪に凝り固まり過ぎよ(義憤)」とカムサ。


「……『秘密主義』に関しては私も魔族に『共感エウノイア』を抱いてしまうのですよね……もし『魔法の真理』の研究が大々的に進めば、より多くの魔族たちが『実験台』にされる可能性が高まりますから……またこちらさあまり共感は出来ませんが、魔族たちの中には『魔法の価値を極限まで高める』ことでかつての『魔族崇拝』の文化を復興させたいと思っている者たちもすくなくないので……(汗)」とイスティ。


『クノム人が死後『半神の英雄(へーロース)として祀られ自分の名を歴史に剞みたいように、私達も『生ける神』と呼ばれて崇拝されたいんですよ♡』とデージャ。

「なるほどね……『英雄ヘロス』になりたい気持ちの方が私は共感エウノイア出来るわ……アサランシス家の名を全陸海の知らしめたいわね……」とカムサ。

「本当に高慢なお嬢様だなお前は(呆れ)」とハッシュ。


 だが『魔法』の議論の内容を理解できないし理解する気も興味もないハッシュは横で唖然とした顔で、


「マジで話についていけん……つーか『憑依』がどうたらとかホントどうでもいい(正直)。しかも全然面白くもねーし、もういいや、本当に寝るか……」とハッシュ。


 そうやってハッシュが座ったままあくびをかますとデージャが羽を広げて伸びをしてから、


『……なんだか嫌な感じなのでご主人様の体内に潜んでます☆ 皆さんも戦闘準備すればいいとおまいますね☆』とデージャ。

「戦闘なんていってもニムルがこの状態じゃあ……」とカムサ。


 他方ゴブリンたちはすでの身構えていて使い魔を周辺に放っている。そしてデージャはちょうどあぐらをかいて座っているハッシュの前面にたつと、右の翼の先でハッシュの腹のあたりを指し、そのまま翼の先端を下にゆっくり下げる。


「?? お前なにして……てうぎゃあああああああ!?」とハッシュ。


 なんとデージャの翼が下に下がると同時にハッシュの腹も服ごと『縦一文字』に切り裂かれたのだ。


 だか不思議なことの裂け目から血は一切でず、それどころか裂け目の中は『陽光の反射で煌めく海』のようの輝いていた。その中にデージャが入っていきながら、


『……ご主人様、魔法はこんなこともできるんですよ、改めてちゃんと勉強したくならないですか?』とデージャ。

「こんなんただの『幻術』じゃねーか! つまんねーことしてんじゃねー阿呆ニワトリ!」とハッシュ。

『『幻術』だとわかってたるのになぜ破れないんですかねぇ??♡ やれやれ、ご主人様は『魔法使い』にはない稀有な才能をお持ちというのにもったいないですよ☆』とデージャ。


 そういってデージャがハッシュの腹に開かれた『燦燦と碧く輝く海』の中へと身を投じ、内側から『窓』をしめてしまったのである。あとには特に何の異変もないハッシュの腹が残り、彼女は服を何度も確認したりお腹をのぞき込んだり触ったりして無傷なのを確認して、


「……あほデージャめ。なーにが『魔法をもっと勉強しろ』だぁ? うだうだと『理屈』を学ぶだけで強くなれるんだったら苦労しねーっつーの。『戦闘技術』は実際に戦う現場で培われるものなんだっつーの(文句)」とハッシュ。

『いやですから私体内にいても聞こえてるんですって☆』とデージャ。

「聞かせるために言ってんだよ(不機嫌)」とハッシュ。


 その時だった。突然『パッ』と『黒い馬車』の『幌』の内側が『赤い光』で包まれたのである。


「!?」とイスティ。

「うわぁあああなんだぁ!? デージャなんだこれ!? 敵襲か!?」とハッシュ。

『コケケケぇ!? わかりませんよ!? ていうかなんで血の色!?』とデージャ。

「一体何!? もしかして『暁の女神(エーオース)』が降臨したの!?」とカムサ。

『確かにこれは『赤気エーオース』か……!?』とゴブリンたち。


『クノム神話』の朝焼けを司る『暁の女神(エーオース)テーティ』は実は『オーロラの女神』でもあり、『空に現れる血のような赤い光』はこの女神が地上に顕現したものと考えられていた(つまり『吉兆』)。そして他方では『オーロラ』の中に現れる光の縞模様は『槍や剣で武装した重装歩兵の列』とみなされることもあるが、こっちも『神々が次の戦争に勝つことを予め知らせてくれた』とみなされるのでやっぱり『吉兆』だった。そもそも『夢の世界』では『東西』に関係なく『人間族のものと明確に分かっていない血』は全部『清いもの』とみなされるため(つまり犠牲獣の血の連想)、『不吉』とは見なされないようだった(補足)。



 なのでカムサの言葉に『暁の女神』から持たされた『吉兆』かと思ってその場の全員が反射的に『安堵』しそうになったが、『神々』を全く信用していないイスティだけは鋭く訂正する。


「皆さん待ってください……! こんな『黒い馬車』の中に『オーロラ』が現れるわけないじゃないですか! やはり今ニムル先輩はひそかに敵と交戦中で……」とイスティ。

「おいおいイスティ何動じてんだよ、『幻術』は動じなければ気合で破れるんだぜ?(ごろ寝)」とハッシュ。

「先輩のそれは『油断』というんですよ(指摘)……ですがまぁ、確かになにもありませんね……」とイスティ。


 相変わらず彼女たちは『赤い光』に包まれたままだがだからと言ってお互いが見えなくなるというわけでもなく、他にも何か異変はなさそうだった。どうやら『黒い馬車』自体が赤い光を放っているだけのようだ。やたらまぶしく感じられたのは暗い空間に目が慣れていたためだったようである。


 そしてゴブリンたちはちゃっかり調べているようで、

『先生。光だけで特に他の攻撃はなにも……使い魔たちも『何ら異変はない』と申しております』とゴブリンたち。

「そうですか……では本当にニムル先輩が光ってるだけなねんですね……なぜ??」とイスティ。

「そもそも『ニムル』が苦戦する相手なんて私たちがどんな小細工を為そうとどうしようもできないし、『黒い馬車』という鉄壁の守りを貫通してくる敵にも対処方法なんてないわよね(悟り)」とカムサ。

『滅茶苦茶身もふたもないですが事実ですね☆』とデージャ。


 彼女たちの『冒険エンポリケー』は常に『努力する』だけでなくしばしば『諦める・逃げる』でここまで来ていた。なので今回も半ば諦めて『暴走するニムル』に身を任せざるを得なかったのだった。次回へ続く。

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