コレノス・イル・ラムシス30『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『カミス人貴族戦士:パリスの『独壇場』』と『州都でのさらなる戦後処理30』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『州都でのさらなる戦後処理』は続き、『同族』たちの『宿痾』である『党争』が早速勃発してしまい、それを阻止するために『サイマス将軍』が『暴力』をちらつかせる。
「お三方も『喧嘩』は控えていただきたい。だが今の場ではおそらくパリス殿の方に『勝利の女神』がお味方することでしょう。なぜなら『勝つために手段を選ばない』ことは『クノムティオ』においては『美徳』だからです。しかしパリス殿にも『瑕疵』はある。なぜならハグニアス殿とテルアモス殿は『魔法』によって『錯乱』していたのですし、その『魔法』をかけた張本人である『アンフィスバエナ』どもが今ここで我らの『味方』になっているからです。ですからパリス殿の批判も『的外れ』と言わざるを得ない。よって両者とも認識に『誤り』があるのですから、即時『和解』を勧告させていただきます。ですがもしそれができないと申しされるのでしたら『決闘』を、しかしその場合は三者の間で決し、ほかの味方を呼ぶことは厳禁とする……そうなるのが『道理』でしょう。お三方はいかがか?」とサイマス将軍。
これはもちろん『決闘』を煽っているのではなく『決闘を阻止』するための方便である。ずるがしこいパリスが不利な条件で『決闘』に訴えるはずがないし、また『決闘』はほかの『貴族戦士』たちが必ず反対してくれるだろうと踏んでの『威圧』である。
そしてサイマス将軍の読み通り、パリスによって召喚されたペルクロスが『阻止』に動かないわけにはいかなかった。
「はいはいダメです! そこまでです皆さん! ここで『決闘』だなんて、いったい何のために『裁判』までやったのかわからなくなるじゃないですか! パリス殿は煽らないでください! それにハグニアス殿とテルアモス殿も『自分たちは騙された』などと自分の被害をことさらに言いつのりますが、すでに我らは『貴族戦士』同士で兵士を『密集方陣』をぶつけ合って『戦争』までしてるんですよ!? 『被害』などと言い始めたら自家の戦士団を一名でも失った者全員が該当しますし、その基準に当てはまらないものなどこの場には一人もいない! ですからあなた方の言い分は受け入れられない! 少し冷静になっていただきましょう! いつまでも『魔法』にかかっていいわけじゃありませんよ!?」とペルクロス。
「「な……!? 我らを『驕慢』するかペルクロス殿……!?」」とハグニアスとテルアモス。
誇り高い『貴族戦士』たちは『正論』にだって『暴力』で応酬しようとする。だがそこで見かねて魔王フェルゾが告げた。
『……言っておくが我らはもうハグニアスとテルアモスに対する『精神支配』を解除している。だから貴様ら二人は『正気』だぞ、我らが保障する』と魔王フェルゾ。
「なにをいうか魔族が! 『精神支配』はそもそも一度かけられたら二度と解除できないと聞いたことあるぞ! 嘘をつくな嘘を!(猜疑心)」とハグニアス。
「どうせそういって私たちを操り続けるつもりだろ! もう見え見えなんだよ貴様らの魂胆が!(涙目)」とテルアモス。
『もし貴様らの言う通りなら『自分は精神支配にかけられているに違いない』なんて思いこませない。むしろ逆に『自分は絶対に操られていない』と思い込ませるはずだ。違うか? こうやって貴様らにいちいち反抗されるのは本当に面倒くさいんだ……それに『精神支配は解除できない』などと一体誰が言った? 貴様らは嘘を吹き込まれたんだよ。いちどかけたら解除できないような危険な魔法を魔族は好まない、制御できない術など無用の長物だからな(嘘)。それとも貴様らは我々より『魔法』に詳しい自信でもあるのか? ずいぶんと根拠のない自信ではないか?』と魔王フェルゾ。
「……うぅ……」とハグニアス。
「た、確かにその通りだ……」とテルアモス。
二人はペルクロスだけでなく魔王フェルゾにも『正論』をぶつけられ、また『安心』を(ひとまずは)与えられたことでなんとか落ち着きを取り戻した。
(……確かにまぁ、あの場のすべての『貴族戦士』たちは皆互いに戦ってましたからね……)とハグニアス。
(……あれ? でも確か直線戦闘に参加してない人たちが結構いたような……まあでも、今騒いでもパリス殿は追い出せそうにないですし、かといって俺とハグニアス殿だけここを出ていけるわけでもないですし……あきらめるしかなさそうですね……)とテルアモス。
実際のところ二人がこの場で騒いだのは『敵視しているパリスを仲間から排除したかった』からだが、ペルクロスが阻止に動きほかの『貴族戦士』たちもおおむね同意見そうだったので早々に引っ込んだのである。
そして、そのパリスの方は自分が連れてきたペルクロスを見て内心満足した。
(……ふふ、やはり『知恵』をはたからせてペルクロス殿を俺の手で引っ張ってきたのは正解だった。まずここで俺は一つ『点数』を稼ぎ、さらにこの後『ミュシアス派』の議論を主導していく……そうなればこの『友愛組織』で『頭領』になれるのは俺になる……必ずその流れをつかむ……)とパリス。
彼は以前にも述べたが、『カミスの『元』植民市ナルクルティオ』の統治を『ユート王』とその息子『ベニーカ王』に任せられた『貴族戦士』であるが、彼自身の『血統』は『アラマン人』ではなく、『ユート王』に忠誠を誓ってその『特権』を許された『ナルクルティオ市民』である。ということは祖先は『カミスの純血種』であり、そのために彼の育った環境は『民主政』なのである。
ここでパリスは改めて自分の周りにいる『貴族戦士』(と魔族)たちを見まわして、
(……アラマン人どもは皆『君主制』か『寡頭制』の国で生まれ育った者達ばかりだからこういう時どうすればいいのかよくわかってないんだ。だが俺は違うぞ、『カミスの植民市』では『同等政治参与権』が重んじられるから市民全員に平等な発言権があった。そういう場所でいかにして『名誉を追求』して『政治家』になれるかお前たちにわからないだろうさ……だからこそ今この『市民集会』を支配するのはこの『政治家パリス』だ……!)とパリス。
彼はこのように『野心』を燃え上がらせ、ハグニアスとテルアモスがしぶしぶパリスと『和解』を行い──具体的にはパリスと二人がそれぞれ『以後恨みをすべて忘れる』と『誓言』してから『握手』し、さらに最初に喧嘩を売ったハグニアスとテルアモスが各々パリスに『贈り物』をするという儀式──それらを終えた後、パリスが皆に対してこんな提案をしたのである。
「……さてこれより『統合』して自分達の『家』を共同で守るべく戦うことを誓い合った『貴族戦士』諸君、まず早速我らは今後を『占う』べきだとここに提言したい……」とパリス。
彼がいきなりその場を仕切って流ちょうにしゃべり始めたことにミュシアスやサイマス将軍たちは困惑したが、二人とももともとあまり口が回るタイプではない。そしてほかの貴族戦士たちも似たり寄ったりなので『ナルクルティオのパリス』が必然的に『主導権』を握った。
「……何してもまず我らが考えるべきことは『双角王主催の裁判』であることは当然だ。だが今諸君らが自覚したように、我らの勢力はまだまだとても『弱い』、そうなるといざ『裁判』になっても我らの負けは目に見えてしまう……だからその前に、今だからこそできる『作戦』を提案したい……まだ『双角王』が我らの状況をしっかりと把握為される前に『リカノス殿』を『暗殺』するのです」とパリス。
彼はこう言いながら故郷『ナルクルティオ』で子供時代に寝物語で聞かされた『機略自在のシミュアルデス』の『伝説』を思い浮かべていたのだった。次回へ続く。
ニムル『『クリュ人』って『エダイラ人』だよね? なんか別の呼称になるとわかりづらいね』
イスティ「『クリュ人』は『民族名』、『エダイラ人』は『エダイラ王国の住民』という意味で本来は使い分けがなされていたわけですが、『コロコス帝国期』ではその区別は意味を成さなくなってますね。そして『エダイラ王国』建国以前は『エダイラ人』という意識は当たり前ですが存在しなかったので、その時代なら『クリュ人』と呼ぶのが適当だと思って私はそういう使い方をしてますね」
ハッシュ「…………こういう『本編に直接絡まない大昔の話』って大抵『フレーバーテキスト』でやるもんだろうが、『フレーバーテキスト』にしては執拗に何度も言及してくるな。作者の趣味か?」
カムサ「また『メタ』な話を……(嘆息)。確かに『エダイラ王国』の話って私たちの時代から『1200年前』らしいから、『1000年前』の出来事って『フレーバーテキスト』で十分といえば十分よね……でもそれを何回でも取り上げるのは確かに作者の趣味よ(断言)」
最初からですがずっと趣味全開で書いてます(笑)。




