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コレノス・イル・ラムシス25『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『リカノスの『矛盾』と『異質な貴族戦士』』と『州都でのさらなる戦後処理25』の物語

『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』


『州都でのさらなる戦後処理』は続き、ひそかに『州都タルキュア市』の市壁の外にあった『要塞』に『リカノス派』の貴族戦士ヘタイロイたちが集結し、互いに結束を確認するための『歓迎祭アパトリア』を開いている。


 だがその場にアイアスがいたことにキュライノスが疑義を呈する。それに対してアイアスは前回以下のように答えた。



「俺が『陪審員団ディカスタイ』になったのはあくまで『あの場を納めたかった』からというだけですよ。あんなにみんな疲れ切ってる状況であれ以上『魔法マギア』を受け続けるのは嫌だったでしょう? 俺はあくまで敵の『魔法』を解除させるために『機略』を駆使しただけですよ」とアイアス。


 そこでちらっとキュライノスがリカノスを見ると彼の眉毛の角度がどんどん上がっていくのが見えて、


(……うわ、また感情的に怒鳴るぞ、まさか俺たちが止めないといけないのか……!?)とキュライノス。


 だが、


 …………、



「…………」とリカノス。

(……あれ? 何も言わない…………!?)と周りの貴族戦士ヘタイロイたち。


 皆は横のリカノスが真っ先に反論すると思ったが、彼は黙ったままだった。なので戸惑いながら『エルディオス地方の植民都市クレルキアユーテティオンのアンゲウス』がおずおずいう。


「……いやしかし、アイアス殿は先の『裁判』で結局『ミュシアス派』に有利な判決をだしたわけで……」


 と、そこまで言ってアンゲウスが『しまった』と自分の『ぽかミス』に気づいたが遅かった。その疑問をあらかじめ『想定問答』していたアイアスが流ちょうに答えたのである。


「それはあくまで『公正な裁判官(陪審員団)』としてその『公職アルコス(本当は公職ではないので俗語)』に徹しただけですよ。俺はもともと心情的にはリカノスの側です。それにこれはこの『友愛組織ヘタイレイアー』を率いるリカノスも承認しているんですから」とアイアス。


『裁判官(陪審員団)は私情を挟まず公平公正であるべき』は『夢の世界』全域で『理想』とされていることである。なのでこの場合アイアスは『あえて先に友であるリカノスの利に反することをしたあと、今度は一転してリカノスの味方になる』ことで『ほら? 自分は公平でしょ?』とアピールする材料にしたのである。


 そして今この場で起こっていることにアンゲウスだけでなくキュライノス、ベルミオン──そしてそれ以外のまだいるが決して多いわけではない『貴族戦士ヘタイロイ』たち──はアイアスと、そしてリカノスの『真意』を理解していたのである。


(((……これで我々のこの『友愛組織ヘタイレイアー』の『頭領アルコーン』は完全に『リカノス』殿になったわけか……)))と『貴族戦士ヘタイロイ』たち。


『転生者』には妙な言葉に聞こえるかもしれないが、少なくとも彼らのこれまでの認識では自分たちは『リカノス派』といつつも『リカノスと彼に率いられる集団』としては認識しておらず、あくまで『リカノスと対等な立場で彼の意見に賛同する者たちの集まり』だったのである。そして今で『言論レートリケー』でリカノスが『主導権』を握っていたのは単に彼が『一番大声で騒ぎ裁判の原告的立ち位置だったから』にすぎない。


 そして『クノム人の常識』では裁判の原告被告が友を『証人や援助弁護人シュネーゴロスとして法廷に召喚した』としたとしても、そのことを持って『原告被告が証人や援助弁護人シュネーゴロスの庇護下に入った』ことにはならない……なんというか『ややこしい』話なのだが、友人が『裁判』に原告被告両方で参加した場合は『友人フィロス』であれば『無償』で助けるのが『常識』なので、そこに『恩義』はもちろん発生するが、それをもって『上下関係』は発生しないのである。


 そしてでは『上下関係』が発生するのはどういう場合かというと、厳密には『庇護嘆願の儀式(ヒケテイア)』が行われた場合である。この場合は可能であれば『嘆願のオリーブ』を差し出すが、もしそれがないのなら『両手を広げて降参のポーズをとる』とか『相手の顎の下に指をあてて『クイッ』と軽く持ち上げる(キスしようとしているように見えるが嘆願の一種)』とか『足や手にキス(あるいは額を軽く押し当てる)』などがある。通常はこういう『儀式』を経ないと『支配関係』は成立しない。


 ……だが『カミス』で『市民生活』になくてはならない『友愛組織ヘタイレイアー』なる『同じ政見を持つ者同士が集まる集団』は原則『構成員は対等』だが、実際のところは誰でも自分の派閥を作れるからこそ、他人を自分のもとに惹きつけることができる者しかこの『友愛組織ヘタイレイアー』を作ることができない。ゆえに必ず一人か多くても3~4人くらいの『まとめ役(アルコーン)』が登場するのである。


 つまりなので、実はこの場の『貴族戦士ヘタイロイ』たちは全員『これから双角王主催の裁判を戦い、もしそこで『自分たちの要求を通せなかったとしても()()()()ともに戦い続けるとして、いったい誰が音頭を取っていくのか』を考えていたのである。


 そして、これはもしかしたら『君主制モナルキア』である『アラマン王国』の人々だからこそそういう発想になるのかもしれない。なぜなら『カミス』ではたとえ『友愛組織ヘタイレイアー』に『頭領アルコーン』がいたとしても、それは『結果的に生まれてしまったもの』でしかないので、例えば『愛国者パトリオテスオルシモス』が死んだあとも彼と『ブライモン』が作った『誓約団体シュンモシア』は消滅しなかったように(分裂はしたが)……という見方もできるだろうが、実際のところは何とも言えなかった。


 そこでリカノスが口を開く。


「俺たちは見ての通り『ミュシアス派』に対して決して『数』の面で有利なわけではない。そしておそらく『アンフィスバエナ』たちとサレアスは『粘りに粘り続ける』だろうから、今後連中との『戦い』は長くなるだろう。だからこそ俺たちはより多くの『仲間』を必要としている。アイアスは俺が個人的にも信用している男だし、こいつが本心から『魔族や裏切り者を許す』などありえないことだと俺は知っている。だから許可したんだ。皆もそれでいいな?」とリカノス。


 そして、そうやって『貴族戦士ヘタイロイ』たちが『アイアス』の加入に困惑しつつも結局『黙認』になったのを見て、実質上リカノスがこの場の『主導権』を握ったことが確立したのである。理由は単純、『皆が戸惑うことをなし崩し的にも認めさせた』からだ。つまり『権威があるから認めさせた』のではなく『認めさせたから権威が生まれる』という風に『反転』させたのである。


 そうなると基本的には『嘘』をつけないリカノスは自然と『上機嫌』になったわけだが、いっぽうほかの『貴族戦士ヘタイロイ』たちには『嫉妬』の念が生まれたのだった。


(……確かに俺たち『貴族戦士ヘタイロイ』同士は『名誉』と『主君の寵愛』をめぐって『競走アゴーン』する関係……)とベルミオン。

(……だが今はあくまで『王国に巣くう魔族』を討伐するためだが……)とアンゲウス。

(……いや、だからこそ、その『魔王』を倒した者は『歴史』に名を残せるんだ……!)とキュライノス。


 にわかに彼らの間で『競争アゴーン』の炎が『めらめら』と燃え上がり始めていたのだったわけであるが……ここである一人の『貴族戦士ヘタイロイ』が手を挙げて立ち上がり告げたのだった。


「……リカノスさん、『おいら』は別にアイアスさんがおいらたちの『味方』になることに不満はねぇんですがねぇ、そんだけんど、アイアスさんは『魔族をおいらたちの国に引き入れる決定』をだしたこと自体はかわんねーんですよねぇ? ですから『浄化』したほうがいいんじゃないすかねぇ?」


『美しいディレトス方言のクノム語』をしゃべる『貴族戦士ヘタイロイ』たちの中でこの人物の言葉遣いは『異質』すぎて浮きまくっていたのだった。次回へ続く。

 ニムル『……そういえば『歴史物語閑話』で『ギルミーナ地方の都市国家カルシャン市は『フェイダーンとハリスキーナの『迂回貿易』』って大儲けした』って話してたけど、その中で『カルシャン市がテルブ人諸都市と個別に『もしアバーム半島に『アリシア人(ハリスコ人)商人』がやってきたら自分たちに殺させてほしい』って『条約』を結んでいたって話、『ガチ』なの……?』


 イスティ「『ガチ』も『ガチ』ですね。そもそも『夢の世界』には『領事裁判権』とか『治外法権』とかそういう文化はないので、どの民族の商人でも『外国』に赴けば『その国の支配者』が『命運』を握ります。ですのでこの条約を『カルシャン市』と結んでいた『テルブ人領主』は自国に『アリシア人』がやってきたら本当に全員捕まえてから『カルシャン市』の『交易拠点カールム』に住むギルミーナ人商人に引き渡していたそうですね。ですので『交易拠点カールム』には勇敢なアリシア人商人の骸骨が敷き詰められていたとか……という『巷説』もあったそうですよ(真偽不明)」


 ハッシュ「……その『交易拠点カールム』ってつまり『カール』ってことか?」


 イスティ「あ、いいところに気づきましたね先輩。そうです『カールム』の意味です。『アバーム半島』にギルミーナ人が設けた『交易拠点カールム』は『テルブ人都市国家の山手アクロポリス』にあったそうですが、この都市国家自体が『プラガイ河』のほとりにあったので『カール』と呼んでもまちがってはないそうですね」


 カムサ「『ギルミーナ人が暴利をむさぼっていた』ことに『ハリスコ人やテルブ人』たちが怒るのはわかるとして、『フェイダーン人』はどう思ってたのかしら? 自分たちの金属貿易の利権は守られてるからノータッチってこと?」


 イスティ「ノータッチだったそうですが、一方で『フェイダーン人』も『アバーム半島』への関心を強く持つようになり、ですが『ギルミーナ人』が『壁』になって阻むのでたびたび『ギルミーナ方面』への軍事遠征も行うようになるようです。なので次第に『ギルミーナ人』との間にも『緊張関係』が生まれていったとか……フェイダーン人が『鉱物資源豊富なファラーン方面』に植民を続けつつも執拗に『ハリスキーナ方面』への遠征を計画し、何度も『アドマジア州』や『タルキュア州』のあたりに兵隊を派遣しているのはそのためだそうですね」


 ニムル『いや、僕たちそんな細かい『東方の歴史』知らないから(困惑)』

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