コレノス・イル・ラムシス⑦『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『歴史物語閑話:ディメルアンキア王と『瑠璃の国』の領主10』と『州都でのさらなる戦後処理8』の物語
『コロコス帝国歴史物語:閑話』、前回の予告通りまずイスティが『ディメルアンキア王と『瑠璃の国』の『領主』の続きを語り始めた。『第一のなぞかけ』が『網で運ぶ穀物』、『第二のなぞかけ』が『木でも金属も出ない王笏』だったが、『第三のなぞかけ』はいかなものであったのだろうか? その内容を今から歌っていきたい。
……『伝令』は『大きな白い鳥』のごとく山々を超えて『瑠璃の国』に到着し、『宮殿』の『中庭』で待っていた『領主』の前で『葦製の王笏』を磨くと、『ギラギラ』と光を放つ『王笏』に『領主』は『眼がクラクラ』してしまい、またも『聖所』に引きこもった。だが今回は『重臣』たちを呼び集めたのであった。
その家臣たちに向かって『領主』が悲しい顔で告げる。
『まさに今『瑠璃国』は情けない状態で、まるでさまよえる羊の群れのようだ。今や『聖なる乙女アラ(ウドナ)』は猛々しかった『瑠璃の国』をお見捨てになられ、あの男(ディメルアンキア王)をお選びなられたようだようだ。哀れな『瑠璃の国』はどうしたらよいというのか! もはや私にはどうすることもできんようだ……』と『領主』
すると家臣の一人が告げたのである。
『我が『主人』よ、もう一度『ディメルアンキア』に『知恵比べ』を挑みましょう、私も一つ『なぞかけ』を思いついているのです』
そういってその家臣が『なぞかけ』を発表したが、他の家臣や『領主』は皆渋い顔になり、
『その『なぞかけ』は簡単すぎないか? 『ディメルアンキア』はすぐにわかってしまうと思うが……』と『領主』
『ではほかに代案があるというのでしょうか?(逆切れ気味?)』と提案した家臣。
『我らにはありません……』と他の家臣たち。
どうやら『重鎮』たちの中には『知恵の女神』はいないようだった。 あので『領主』はもっと落胆して、
『私にもないぞ……ああ! なんということだ! 本当に『瑠璃の国』はここまで情けない無様な姿に成り下がってしまったのか!? 神々に見棄てられることは腹をすかせた獅子に遭遇してしまうようなものだ! 我らは怖ろしい獅子に目をつけられてしまったためにこんな目に! おお、『神々』よ! どうか我らに『空の果て』まで逃げ出すことができるように『翼』をお授けくださいませ!(悲嘆)』と『領主』
結果『領主』は家臣たちと話し合って『苦心惨憺』し、結局最初に『一人の家臣』が提案した『第三のなぞかけ』を『苦渋の決断』で『中庭』でまた待っていた『伝令』に託したのである。
『伝令よ! 今から私の言ったことを『ディメルアンキア』に伝えよ! 『黒もでもなく、白でもなく、茶でなく、赤でもなく、黄でもなく、斑でもない犬』を探せ、そしてそんな犬を見つけてきたら私の飼い犬と戦わせ、それで今度こそ雌雄を決しようではないか!』と伝えるのだ! さぁいけ伝令よ!』と『領主』
しかし『伝令』が帰国して以下の『伝言』を聞いた『ディメルアンキア王』は玉座の上からほとばしるほどの『大音声』で(つまりものすごく声で大笑いしながら)答えたという。
『『伝令』よ『領主』にこう伝えよ! 『まずはそちらに黒もでもなく、白でもなく、茶でなく、赤でもなく、黄でもなく、斑でもない衣服を届けよう! さらに私の『ハルル神』に匹敵するほどの犬とそなたの犬を戦わせて決着をつけようではないか!』と、そのように伝えよ! ……』と『ディメルアンキア王』
さらに『アラバ(アリシーク)の王』は続けて『伝令』に言う。
『……さらには『いつまで『グダグダ』と御託を並べているつもりなのだ『領主』よ! すぐに『瑠璃の国』の住民たちに輝く金銀や『ラピスラズリ』を集めさせ、『聖なる乙女アラ(ウドナ)女神』のために『アラバ(アリシーク)』の『宮殿』の『中庭』にそれをうずたかく積み上げさせるのだ!』と、これが『二つ目』だ。伝令よ。さらには『三つ目』もあるぞ、『住民たち全員が『市場』で『価格』をつけられたくなかったら(つまり『奴隷』として売られたくなかったら)さっさと山々から出てきて『輝石』を運び出し、それら用いて我が『アリシーク』の建物を装飾せよ!』とな。伝令よいいか? まだ私が伝えたいことはこれだけではない、『領主』の物分かりが悪すぎて私は『言ってやりたい』ことがそれこそ山のようにあるのだ! さらに今から『四つ目』を話すが……』と『ディメルアンキア王』
このように『堪忍袋の緒が切れた』ディメルアンキア王はさらに多くの『伝言』を伝令に伝えたが、そのたびに伝令の口は重くなり、もうそれらを『復唱』できなくなってしまったのである。
『我が『主君』よ! あまりにも『伝言』が多すぎて覚えきれません! どうか『伝言』の数を減らしてくださいませ!(悲鳴)』と『伝令』
『む、そうか。だが私も言いたいことがまだまだある以上は『伝言』を減らすことはできない……おお!またも『知恵の女神ナバニ』が私のご助力成されたぞ!』と『ディメルアンキア王』
王はここでおもむろに『粘土』を手に取り、そこに初めて『文字』を刻んだ。この時初めてそれまで存在しなかった『文章』というものが初めて作られたのであった……、
ここまで語ってイスティの『注釈』は次回へ続く。
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『タルキュア擾乱』が(一旦は)終了したが、それでも『州都での戦後処理』はかなり長くなっている。とにかく『タルキュア州』での戦闘が苦戦続きで『アラマン王国軍』の『統合』に深刻な『亀裂』が生じていたので、その『亀裂』を何とか上から『蓋』をしてふさごうする者、『亀裂』に入り込んだ『異物』を取り除くためにひとまず『亀裂』を広げようとする者、『亀裂』のさらに奥に潜り込もうとする者……いろいろな思惑が交錯していたのである。
そして前回『葬送演説』を辞退したオルトロス候とダーマス候に後になってミュシアスとキクラネスが抗議していたが、そこで『ザカリエス族のシクロニス殿』が『提案』をしたのだった。
さらにシクロニスがその続きを語る。
「……なので我らも同じ手を使えばいいのです、『葬送演説を行えば『主君への叛意あり』と誹謗され、しなければそれはそれで『罪を自覚しているからだ』と言われるだけだ。だからどっちを選ぼうと非難されるのですから、自分はあくまで『双角王』への忠義を優先しました』……とか言いましょうよ。それなら大丈夫なずですが……皆さんどうしました? 今の理屈ではご不満でしたか?」とシクロニス。
そこで彼のことをじっと見つめていた老将軍二人が口を開いて、
「……いや、シクロニス殿はそんなに『乗り気』だったかと思ってな……ヘラスケス殿やアルキオス殿たちの方が『消極的』だったので……」とオルトロス候。
「そなたも自分の立場に納得してないだろうから、『アンフィスバエナ』たちと手を組むのを断固拒否すると思ったが……」とダーマス候。
「そりゃあ俺だって『アンフィスバエナ』と手を組むなんてまっぴらですよ。でも別に『アンフィスバエナ』しか仲間がいないわけじゃないですし、俺は彼らとは考え方が違います。『ミュシアス派』になった以上は仕方ないんですから、候たちと同じで今の状況から最善と思われる選択肢を選び取るだけですよ……それに『魔族』が身近なのは『ザカリエス地方』も同じですからね」とシクロニス。
彼自身は『低地貴族』だが彼が統治している『ザカリエス地方』は北に『ハルハノ龍族』の領域があるので確かに魔族が身近といえば身近である(実際は『ザカリエス地方』と『ハルハノ龍族』の領域の間にもう一つ地域区分があるのだが)。なのでオルトロス候とダーマス候が一応は納得した。
「なるほど……まあそういうことなら、改めてよろしく頼むシクロニス殿」とオルトロス候。
「我らの側にも『裁判』に強いものがいたとしれたら安心だな……」とダーマス候。
「いえ、自分は別に『法務官』とかじゃなくてただ偶然興味が出て読んだだけですよ」とシクロニス。
「俺たちがまるで『堕ちた』みたいな言い方が気に入らないがな……(不満)」とキクラネス。
(なんかキクラネス殿もずっと怒っててリカノスみたいな感じになってきてるな……)とミュシアス。
その後『タルキュア方面軍』は『クノムティオの古の法(慣習法)』に従って『松明競争』と『武装競走』を開催した。クノム人世界では古い時代から自国の市民の戦死者に弔いとして体育競技を行う習慣がある。そして『松明競争』とは燃え盛る松明を持って火が消えないようにしながら走る(松明の火はそう簡単に消えないが)競技である。
そして『松明』は『聖火』とも呼ばれ、つまり『イルブルス通史』で一度触れられたことがある『聖火兵すら逃れられなかった(『全滅した』という意味の慣用句)』の『聖火』である。クノム人の例に漏れず『アラマン王国軍』も『聖火』が入った壺を常に持ち歩いており、その火からエダイラ人たちから提供された『松明』に火を移し、それをもって兵士たちが競走を始める。ちなみに選手はオルトロス候とダーマス候が『くじ引き』で選んだ兵士たちであった。
さらには『武装競走』とはそのままの意味で『重装歩兵の武装をフル装備した選手たちが足の速さを競う』競技である。
そしてこれらの『儀礼』は『鍛冶神パストル』と関連が深いとクノム人たちの間では考えられていたが、そこで州都に住むエダイラ人たちがこんなこと教えてくれたのだった。
「……実は『エダイラ王国』や『テルビアナ帝国』にも『松明競走』と『武装競走』の習慣がありまして、我らの神話では『太陽の鍛冶神』や『地上の太陽女神』の儀礼と関連付けられています。前者は『太陽神』の加護を得て鉄や青銅などを鍛える神でして、またさらには『子供を捨てた者を罰する神』であり、また『竈の火を守護する神』でもあるのです。そして『地上の太陽女神』はその名の通り『地上で輝く太陽』あるいは『地下に潜る太陽』でして、『この世のすべての悪徳の母』であるともされております……この二つの神にかかわる儀礼なのでございます」とエダイラ人。
彼らがこの話を語ったのは急遽二人の老将軍から『競技委員』任命された『ルリダイア人ヘラスケス』と『法務官アンゲウス』が『競技会場』になる予定の『州都タルキュア市』の『聖なる道』を視察していた時だった。ちなみにこの『聖なる道』とは『州都タルキュア市』に存在する門の一つから市内中央の『山手』の上にある『都市神殿』へと通じる道である。本来『祝祭』のための行列など、祭りの『会場』になる場所である。また『都市のメインストリート』なので富豪の邸宅や貧民の集合住宅、様々な神への神殿に『公共の水飲み場(建物の中にある)などが所狭しと軒を連ねていたのであった。
※注:そして『競技委員』とは『祭典競技委員』や『民族競技委員』などとと同じ意味で『神々に奉納する運動競技を開催する公職』のことである。ただ『公職』とはいっても『カミス』のように全市民にその権利が開かれてるわけではなく『貴族戦士』たちにしか『公職就任権』がないことに留意しなければならない。
そしてそのヘラスケスとアンゲウスはその話を、自分たちのもとに『ちょっとお話が』と尋ねてきたエダイラ人たちを『今忙しいから』と追い返そうとしたが、エダイラ人たちが無理やり彼らの前までやってきてこの話をいきなり『ぺらぺら』喋っていたのだった。なので戸惑うだけでなく苛立って、
「我々は『今忙しいから後にしてくれ』と申したはずですが?」とアンゲウス。
「なんですか藪から棒に……『聖なる道』を使うなとか言いたいんですか? これは『クノムティオ』の『古の法(宗教儀礼)』なのですから『エダイラ人の古の法』は関係ないと申したはずですが……」とヘラスケス。
だがエダイラ人たちは弁明した。
「いえ、そうではないのです。どうかそのまま我らのお話の続きを聞いていただきたい(汗)、実は今お話しした『地上の太陽(女神)』は『松明競争』や『武装競走』が『好き』だそうでして、気まぐれにではありますが、そういう『体育競技』が開催されると『見物』にくることがあるのです……」とエダイラ人。
ここで『初耳』の話にアンゲウスとヘラスケスが身を乗り出す。
「ちょっとまて。なんだその『この世の悪徳の母』とかいう物騒な女神は。もしや『すべての魔族の母』のことか?」とヘラスケス。
「『すべての魔族の母』がいるのは『南方大陸』のはず、なぜ『東方大陸』にいるんだ……?」とヘラスケス。
二人はそう言いあってしきりに不思議そうにするが、しかし互いに絶対に目を合わせようとはせず微妙な『緊張感』が周囲に漂っている。そもそも今回に『競技委員』に二人が選ばれたのはオルトロス候とダーマス候が『リカノス派の者とミュシアスの者を一名ずつ任命してバランスを取ろう』としたからである。だが老将軍も『派閥間党争』を少しでも和らげようとは一切考えていなかった。あくまで『バランスを取ろうとした』だけである(注意)。
次回へ続く。




