コレノス・イル・ラムシス⑥『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『葬送儀礼に関する『長命種』と『短命種』の越えられない壁』と『州都でのさらなる戦後処理6』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『州都タルキュア市』に移動した『タルキュア方面軍』たちはいろいろと『火急の事情』があるとはいえ、とりあえず『休憩』を取ろうと州都に留まる。そしてまず最初にとりかかったのは『戦死者の合葬』だった。
ちなみに『一番多かったのは戦死者たちの身に着けていた武具の一部であるが、中には『アンフィスバエナ』の体の一部を(わざと)入れる者たちもいて、『アンフィスバエナ』たちは怒って『決闘』になりかけたりした場面もあった。
『きっさまらふざけるなああああ!! ていうか『魔族』は汚らわしいものじゃないのか!? なぜ嫌がらせみたいに棺桶に入れようとする!?』とアピル。
「『戦利品』なんだから別におかしくないだろ! 貴様らに俺たちがどのような『葬式』を営もうともとやかく言われる筋合いはない! 我らの『古の法』にケチをつけるのなら『戦争』だぞ!」とパリス(怒鳴りながらも顔は笑っている)。
この時はすぐに魔王フェルゾがすっ飛んできてアピルを説得したのである。
『やめろアピル! ほかの息子たちも我慢するんだ! 『短命種』の感傷にいちいち文句をつけても無意味だろ? 人間族どもの『常識』はすぐに変わるものだ! だからしばらくだけ我慢してくれ! すぐにそんな習慣すぐになくなるから!』と魔王フェルゾ。
この魔王の言葉の意味は『人間族の習慣は『100年』もたてば全く別物に代わってしまうから、今『葬式』で行われている『戦利品を棺桶に納める』という風習もすぐに廃れる。だから今だけ我慢してくれ(なんだったら後で骨だけでも掘り出せれるから)』という意味である。ただ『今は譲歩しろ』というだけだとアラマン人に『舐められる』恐れがあったのであえてこんな言い方をしていたのである。
さらには魔王の意をくんだニラトとタバサとガムルもやってきて同調する。
『そうだ! 我らの方が寿命が長いから貴様らが死んでから墓を暴いて『同胞』の骨を引き上げてやるわ!』とニラト。
『もちろんその時は貴様の墓も無事ではすまないことを覚えておけ『パリス』とやら! 貴様の子孫すら死に絶えた後に思いっきり亡骸を侮辱してやる!』とタバサ。
『なんだパリスとかいたっか? 貴様も近々棺桶に入る予定なのか??(本気で勘違いしてる)』とガムル。
「貴様ら……! そんなに『決闘』したいのなら……」とパリス。
だがそこでハグニアスとテルアモスが両者の間に割って入って止めた。
「おっと、『決闘』はおやめなされパリス殿。オルトロス候とダーマス候の『方針』に自分から背くおつもりで?」とテルアモス。
「……あなたは少々自分の言動に気を付けた方がいいですね。いらぬ『敵』を作りますよ?」とハグニアス。
明らかにこの時の二人の目には『恨み』の感情がこもっている。もちろん『水の都の戦い:第四次攻撃』の時にパリスに『偽り』を吹き込まれたことについて言っているのだ。
そうなるとさすがのパリスもさすがに一歩下がって、
「……俺はただ『目の前の戦いに勝つために』最適の方法を選択しただけです。そして結果的にあなた方は死んでいない。ゆえに恨まれる筋合いもないですね(絶対に謝らない)」とパリス。
「あなたは『弁論術』に秀でた『狡猾』な人です。『狡猾』さは英雄の証、なのでべつに言い争うつもりもありませんよ(丁寧だが無表情)」とテルアモス。
「『知略』とはどういったものであるか俺たちもよく理解しております。ええ、『英雄叙事詩』にうたわれる通りですからね……そのことをよく覚えておいてくださいねパリス殿(鋭い目でにらんでいる)」とハグニアス。
この三者はそれ以上は喋らずそのまま解散してしまった。そして流れで『アンフィスバエナ』たちもその場を去ったが、彼らはその後こっそりと『市壁』の外に出てそこに『アンフィスバエナ専用』の墓地を作り、『三つの空の棺桶』を用意してアラマン人たちと全く同じように『戦利品』を入れてから埋葬したのであった。
『……パリスとハグニアスとテルアモス、ひと悶着ありそうですね魔王様』とタバサ。
『ありそうだな。そしてハグニアスとテルアモスはまたいくらでも操れる……ふっふっふ、亡き息子たちが『個人神』となって我らを守ってくれているのかもしれんな……(上機嫌)』と魔王。
さらにこの『葬式』では『クノムティオ』の『慣習法』に従って『葬送演説』が『当初』は計画されていた。だがいつもの流れながら『オルトロス候かダーマス候』のどちらかが行うべきだったところを『法務官アンゲウス』や『低地貴族ベルミオン』などが(もちろんリカノスとアイアス)も猛反発したので『中止』されてしまったのだった。
「『葬送演説』を務める者は『戦士』として史上の『名誉』を得ます! その『名誉』は我らが主君『双角王』にふさわしいものです!」とアンゲウス。
「そうです! 今までがそうであったように、今行うべき『葬礼』はあくまで『仮』のもの、ちゃんとした正式な葬儀は『双角王』によって執り行われるべきです!」とベルミオン。
ここであえて『オルトロス候とダーマス候は『敗北者』だから相応しくない』とはいわずに『双角王だけにその資格がある!』といわれると老将軍たちも割合すんなり引き下がったのであった。
だがミュシアスは後になってだが悔しそうにオルトロス候とダーマス候に抗議したのだった。
「なぜ引き下がってしまったのですか……! 確かにアンゲウス殿とベルミオン殿が申したことは『間違いではありません』、ですがそうやって我々の『弱い部分』を攻めていき『橋頭堡(既成事実)』を積み上げていくのが『戦術』というものではないのですか……!?」とミュシアス。
さらにはこの時『若きオルトロス』と共にキクラネスとシクロニスもいた。
「そこは『年の功』を駆使し『詭弁』を弄してでも『葬送演説』を行うべきでした! 弱気になりすぎです! あとの『裁判』で『葬送演説を辞退したのは罪を自覚していたからだ』と言われたどうするんですか!?』とキクラネス。
彼はミュシアスと一緒で『直情』が前面に出ていたが、一方『新ザカリエス族のシクロニス』の方は考えるそぶりになって、
「……確かにその点を突っ込まれると弱いですが……いや、仮に『リカノス派』からその突っ込みをうけても対処可能ですよ……だってもしオルトロス候とダーマス候が『葬送演説』を行おうとすれば、それはそれで『本来双角王が行うべきことを勝手に自分たちで行っている。これは『双角王』を弑逆して自分が王になろうとしているに違いない! 今回の裏切りも長年そんな『野心』を持っていたから選択したんだ!』と……皆さん『カミスの法廷弁論家』たちの『弁論集』を読んだことありますか?」とシクロニス。
言われてその場の全員が彼を見る。するとシクロニスは『にやり』と笑いながら、
「……自分はタルキウス先生の『大学校』があった時代に先生方が持ち込んでいたいろいろな『書物』を読んでいたのですが、その中に似たような状況があったんですよね。『ある貧しい男が『30人』が支配する『山手』に留まっていたが、その時の状況は『30人』に抵抗すれば確実に殺され、かといって協力したくもなかったので特に何の貢献もしなかった。そして逃げたくても亡命先がなくて逃げられなかった。どっちも選べなかった者たちを『30人』の支持者とみなすのはおかしい』と……そして彼の弁論は認められて『陪審員団』から『無罪』の判決を得ているので……」とシクロニス。
『30人』とは『カミス』だけでなく『クノムティオ』の歴史の中でもおそらくほかに類を見ない『恐怖政治』を行った者たちのことである(今後イルブルス通史に登場すると思われる)。そしてこの『30人』の名は『紺碧海の女王』に限らずほかのクノム人都市国家でもその悪名がまことしやかに語り継がれ、クノム人たちの『都市国家内部での『内戦への恐怖』をさらに強化していたのだった。
次回へ続く。
イスティ「……あと前回の『あとがき』の続きではないですが、『アリシーク第一王朝』の時代の『支配』とか『宗主権』とかは今の私たちの時代のそれとは『言葉が同じだけで全く中身は違う』ものです。ですので『『アリシーク第一王朝』や『ラムン第一王朝』が『フェイダーン地方』を支配した』といっても、今の私たちが考えるものとは性質が違うと考えるべきでしょうね」
カムサ「でも少なくとも『アリシーク第一王朝』は『フェイダーン地方』に攻め込んで『ハリスコ人(スキアン人)』を植民させているんでしょう? つまり土地を奪い取って『市民居留地』を作ったってことなら私たちがよく知る『支配』じゃない?」
イスティ「フェイダーン人の土地を奪って『海外領土』を作っただけならそれは『支配』ではありません。『カミス』の『帝国支配』も重要な要素は『貢租』を科すことであって領土を奪うのは副次的なものだからですね(たが欠かすことができない)。ですが『カミス』の例を出すのはよいと思います。つまり『アリシーク第一王朝』や『ラムン第一王朝』による『フェイダーン地方支配』の実態もおそらく『交易拠点』を設け、そこを介して『フェイダーン人』たちと『金属交易』を行っていたと思われるからです」
ニムル『?? それだと『フェイダーン人から土地を奪って拠点を作り、そこからフェイダーン人と交易する』ってことだよね? そんなのフェイダーン人が許したの??』
イスティ「許さなかったから憎まれているわけですが、ハリスコ人側は自国が『強勢』であれば軍事力で恫喝しフェイダーン人に無理やり交易をおこなわせていたと思われます。つまり『ディメルアンキア王』が叙事詩の中で言ってることと同じですね……とはいえどれだけ『上から命令』しても『フェイダーン人側』が『おとなしく従おう』と思わなければ『商売』もうまく行えないので、その『合意形成』こそが最も重要な点であったと言えますね。なので『ディメルアンキア王』は『知恵比べ』なんて話にも乗ってるんですよ。結局どれだけ『威勢』がよかろうと、『瑠璃の国』側が自分の意思で恭順を示さなければどうにもできないので。おそらくそのことを『瑠璃の国は山の上にあってハリスコ人の軍隊でも攻め込めない』と歌の中で表現しているのかもしれませんね」
ハッシュ「確かに『知恵比べ』なんて実際の『政治』で行われたら『バカバカしい話』だよなぁ……だから最初の『網で運ばれる穀物』でわざわざ敵国に『食料』を送るなんてことしてるわけだな。つーことはイスティが歌ってる『英雄叙事詩』は『敵国との和解のプロセス』を喜劇的に描いている、割と『教訓的な話』ってことなのか?」
イスティ「そういう解釈もあるということです(笑顔)。そしておそらく『史実のアリシーク人やラムン人』は『フェイダーン地方』に攻め込んで『交易拠点』を作った後、そこを介して『フェイダーン人』たちと交易をおこなっていたわけですが、恐らく『フェイダーン地方の交易網』をそのまま利用し、『フェイダーン人の鉱山所有者(王)から鉱物を買い付ける』ことを行っていたと思われます。つまり相変わらず多くの『協力的なフェイダーン人有力者』がかかわっていたわけですね。こういう『交易』スタイルは現代ですと『オリシア・アルド人』が各地に造っている『交易拠点』と同じ性質だったと思われます。つまり『叙事詩』では威勢よく書かれていても、実態は全然別で『ハリスコ人』たちはわりと『腰を低く』して『フェイダーン人』たちと交易していた可能性もあるというわけですね……」
これももしかしたらまた同じ話が出るかもしれません(悪しからず)。




