ハグニアス・イル・アポロニオス180『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『タルキュア擾乱:終結』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『水の都の戦い:第四次攻撃』の『最終章』、サイマス将軍は『アラマン王国』も『守護女神』でもある『掟のトレア女神』を筆頭とする『神々』に『宣誓』して自分たちに『呪詛』を使った。ちなみみにだが『冥界の女王ミュリア』はトレア女神の娘なのだから当然として、『クノム神話』では『アラマン王国』も『英雄神一族』であるのでその始祖神として『エリュシオン神』の名が挙げられている。
また『英雄叙事詩ローメイダ』の主人公である『英雄神バルテース』の領地は『ホッティオ(ホッティス)』と呼ばれて『エルディオス地方』に存在していたとされており、現在その名のちなんで『ホッティオティスのトーラン地方』の名前が命名されていた。そしてこの地方には『イルブルス通史』でも語られていたが『マストラン神聖同盟』の発祥地である『神聖同盟のトレア神殿』が鎮座していもいた。そういう関係で『韋駄天バルテース』もまた『アラマン王国』の始祖神に数えられているのである。
また『雷神テイロン』は『聖山ディマティオ』にある『テイロン神殿』における名前の一つである。この神殿の『テイロン神』は『雷神』以外にも『神々の王』や『救済者』などの異名があった。そして『救世主テイロン神』は実は『その年の大晦日に来年の幸福を祈る神』なので仰々しい名前に反して割と庶民的な権能の神である。なので『救主テイロン神殿』は『カミス』など多くの都市国家の『中心市』にも存在している。
また『神々の女王クリアー』は『英雄神エリュシオン』と深い関係にある女神であり(エリュシオンはクリアー女神の養子とされている)、そして『クノム神話』では夫である『テイロン神』すら恐れる『本当の世界の支配者』でもあり、また『夫』のせいとはいえ『神話の中で最も多くの英雄たちを呪い死に追いやった恐るべき狂乱の女神』でもある。また一方で『結婚神』や『縁結び神』、女性の守護神などやっぱり庶民的な異名ももちかなりクノム人にとって身近な女神でもあった。
つまりこれらの神々は『アラマン王国』に非常にかかわりの深い神々であり、しかもすべて『偉大なる12神』に名を連ねる存在だった。これらに誓ったのであれば絶対に破ることは出来ないというわけである。
閑話休題、くわえてオルトロス候とダーマス候は地面の土をこねて『手のひらサイズの牛をかたどった像』を作り、これを盛り土で作った『祭壇』の上で捧げる儀式を行った。
さらにはその場を代表してミュシアスとリカノスとサイマス将軍の三名が『七重城壁』の外側に広がる『湿地』から泥水を組んで『灌奠』を行う。これらはすべて本来なら生きた牛か牛の形をしたパンや飲料できる真水か葡萄酒が必要なのだが、当然手に入らないのでこれらの代替物で済ませられたのである。
そしてその儀式の間『アラマン人』達は皆で『跪拝礼』の姿勢で、かたや『アンフィスバエナ』たちは自分たちの翼を『人間の手』に変化させてから『肘を曲げまま開いた両手を胸の前で掲げる礼拝のポーズ』で(人間の)神々に祈りを捧げる。『アンフィスバエナ』達の祈りのポーズは『東方諸国』に複数存在する伝統的な礼拝方法の一つであり、実は『クノム人』世界でも使われる場合がある(補足)。
これで『神々への誓言』は済まされる。『ハリスコ龍族』の者が上空をぐるぐると回ってまるで『ラッパ』か、いや『ほら貝』のような低い咆哮を上げたのである。
それらの所作が終わった後、『陪審員団』が軽く審議した後に以下の判決を出したのだった。
「……ミュシアス殿の『勝訴』とし、『くじ引き』で『黄金宝剣』の帰属を決めましょう」とペルクロス。
「では一応俺たちで『くじ引き』を作らせてもらいます」とアイアス。
すぐさまアイアスの部下たちがマントの細切れを利用して『くじ引き』を作り、それをミュシアスとリカノスが引き……案の定ミュシアスが『黄金宝剣の発見者』となったのであった。
その『若きオルトロス』は『当選』を意味する『先端が赤くなってるマントの細切れ』を手でもてあそびながら、
「…………リカノスは本当にこれでいいんだな? もう異議申し立てはしないな?」とミュシアス。
リカノスはそこで犬歯を向いて今にも噛みつきそうな顔になったが、すぐにベルミオンとアンゲウスとキュライノスが腕をつかんだので『舌打ち』してから乱暴に振り払い、
「……男は一度約束したことは絶対に曲げん!(怒)では次は『アンフィスバエナと裏切り者たちの処遇』について『裁判』を開くことを……」とリカノス。
予想していたサレアスがすぐさま仕掛ける。
「おっとそれは残念ながら通りませんよ!なぜなら『裏切り者』であるミュシアス殿に『黄金宝剣発見の名誉』が認められた時点で彼の処遇も必然的に確定したからです! もし彼が『処罰されるべき罪人』なら『神与の宝物発見の功績』が認定される道理がなく、その功績が認定された時点で彼の『恩赦』をこの場の全員が認めたこと以外の解釈が成り立ちません!(声はデカいが無表情)」とサレアス。
何度も述べたが『クノム人世界の法廷』は『法廷で争われている内容』そのものよりも『原告被告がどれだけ国家に貢献してきたか・あるいはこれからの貢献を期待できるか』の方を重視する傾向が強く、ゆえに『極悪な犯罪者であっても過去に国家に貢献した実績があると免罪される』ことがごく当たり前におこっていた。だからこそサレアスは自分たちの『免罪』を勝ち取るために『黄金宝剣』をめぐる裁判を仕掛けたのである。
そうなるとリカノスたちにはこのサレアスの理屈に反論することは難しいわけであるが、それでも不可能というわけでもない。なぜなら『クノム人世界の法廷』では一度『恩赦』された人物をさらに訴追するために『以前の裁判では恩赦されたけど○○の理由でそれは正当ではなかった。だから恩赦撤回を要求する』という『弁論術』がよく使われるからである。
なのでさらにアイアスとペルクロスが『釘を刺した』のであった。
「確かにサレアス殿の言う通りだ。『俺たち』は『黄金宝剣発見の名誉』をミュシアス殿に認定した。だが『双角王』はその限りではないな」とアイアス。
「そうです。『双角王』の御裁可はまた別です。ですので必然『アンフィスバエナと裏切り者の皆さん』への『恩赦』は『双角王主催の裁判が開かれる前』までです。『法廷闘争』はまた次の戦場があることをお忘れなきよう」とペルクロス。
……つまりは以前サレアスたちが述べていた『友軍を裁けるのは『双角王』だけだから彼が主宰する裁判まではサレアスたちの身の安全を保障する』という落としどころに落ち着いただけであった。なのでまだ『アンフィスバエナ』たちが『アラマン王国軍』に参加できる保証もない。扱いは『宙ぶらりん』なままだった。
なのでガムルが怒りの声を上げる。
『なんだそれは!? 『この裁判で決する』という約束はどこに行ったんだ!? 嘘つき人間族ども……もががが!(全身拘束された)』とガムル。
『これでいいんだよ馬鹿! 騒ぐな! 折角まとまった話がこじれる!(口をふさいでいる)』とニラト。
『最初から我々が狙っていたのはここだ! 予定通りなんだ安心しろって!(体を縛っている)』とアピル。
『ここまでアラマン人どもを妥協させるのに我々が支払った犠牲は大きすぎるからガムルの言うことももっともだがな……だが黙れ。とにかく今はな(尻尾を踏んづけてる)』とタバサ。
これにて『タルキュア擾乱』はやっと『終結』したのであった。次回へ続く。
イスティ「本編の補足です、作者は補足説明を忘れていましたが、『夢の世界』には『植物の病気を治す薬』なるものは存在しません。そもそも『病気になった植物は焼けばいいのでは?』と考えているので『薬』を作る意義すら理解されないのが現状ですね」
ニムル『でも家畜には薬をつかうことあるんだよね。やっぱり『植物に命がある』ってことが認められてないってこと??』
カムサ「だってないじゃない実際に。呼吸もしてないし血も流れてないのに生きてるわけないでしょ??」
ハッシュ「コロコス人たちも『動物は命があるから殺すな』ってきもい『古の法』を守って肉食わねぇらしいけど、『植物にも命がある』っていったらなんていうだろうな! 本格的に食うものなくなるな!(大笑い)」
ニムル『うーんこの。なんていえばいいかな……実際は呼吸してるし血みたいなものも流れてるんだけど、意外とどうやったら納得してもらえるのかわからないね……』




