ハグニアス・イル・アポロニオス178『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『クノムティオを救う『英雄軍』たち』と『タルキュア擾乱part799』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『水の都の戦い:第四次攻撃』の『最終章』、『黄金宝剣の帰属』を決める方法を決める『第二審』の法廷弁論でサレアスが『アンフィスバエナたちに聞かせる』ていで『民族史』を流ちょうに語り始める。だがその内容は『事実』が多分に混じっていてもあくまで『神話』であり、本来の目的は『陪審員団』に『自分にとって優位な歴史観』を植え付けることで自分の主張を通そうとしるものだった。この方法自体は多少手が込んでいるが『法廷弁論家』たちがよく使用する『弁論術』の一つである(補足)。
「……以上が『普遍平和協定』の『概要(意訳)』であるわけですが、きっと『アンフィスバエナ』の皆さんはこう思ったのでしょう、『もうクノム人都市国家たちは『コロコス帝国』の『宗主権』を認めているではないか』と……その認識は何も間違っていません。せっかく『同族』たちは『世界帝国』に対して『栄光』の『勝利』で我らの『父祖の土地』を飾ったはずですのに、『オラクス戦争』でその美しい土地を荒廃させ、復興する暇もなく『夷荻軍』の使嗾によって『アリアディス戦争』を始めてしまったのです。結果この時『戦場』になった『アリアディス』は往時の勢力を取り戻せなくなり(だが逆に『ウーシュティオ』が勢力を拡大させている)、またその後まもなく起こった『タルル独立戦争』によってついに『バンドゥーラ』は『覇者』の地位を失ったのです……」とサレアス。
この話を聞いていてリカノスは『イライラ』と『気分の高揚』と『同胞への哀惜』の念がないまぜになったものすごく変な感情に支配されて体が硬直していた。
(サレアスにこのまま喋らせ続けたらまずい! 奴のこの『弁論術』はこの場にいる『戦友』たちの感情を『押し流して』しまう! 例え『裁判の掟』を破ってでも止めないといけないが……だがしかし、言ってること自体は間違っていない、その通り俺たち『同族』たちは『コロコス帝国』にずっと苦しめられ続け、『バンドゥーラ』も『カミス』も『タルル』も皆その手のひらで愚かにも踊ろされていただけ……)
そして、そこでリカノスだけでなくその場の『貴族戦士』たちはこう思っていたのだった。
(……そう、そうやって『世界帝国』に『200年』の間苦しめられ続けていた『同族』たちの『救世主』となるのが我ら『アラマン王国』だ……!)と『貴族戦士』達。
この『コロコス戦争の復讐』という『美しい大義』を、それ自体は『所詮はアリアディス同盟を成立させるためのプロバガンダに過ぎない』と分かっていても、『アラマン人』達は皆『心底興奮』しないわけにはいかなかった。あたかも『古代マムール帝国』の栄光を思い出すときと同じように、『シェルファス湾の戦い』でみた『奇跡』が『想起』され、その『魔力』に誰もサレアスの口を止めることができない……!
その『魔力』を自覚し、最大限に利用しつつサレアスは『演説』を続ける。
「……その『バンドゥーラ』の代わりに新たな『覇者』となったのが『タルル』ですが、この国は他の『同族』たちの中の誰よりも『狡猾』に『普遍平和協定』をある時は盾として利用し、またある時は逆手にとってたびたび『同族』達を惑わしながらことごとく戦闘に勝利し、ついに『カミス』が奪い取ることができなかった『バンドゥーラ』の『覇権』を奪い取って見せました! ですがこの『タルル人』の動きすら実際のところは『コロコス人』の思惑の内側にあり、その後『全クノムティオ』は恒常的な戦争状態に陥って『タルル』の栄光も長くは続きませんでした。そして間もなく『カミス』が『海上帝国』を復活させはじめ、『エルディオス連合』も大国化を目指し、また『バンドゥーラ』も再起を目指して『国制改革』を行い、それらを阻止するべく『タルル』は『知略』を用い最終的に『第三次聖域戦争』へとなだれ込みました。この時も『コロコス帝国』が陰に日向に介入して戦争の趨勢を操作しようとしましたが、それを阻止し『マストラン大神殿』を『擁護』したのが先代『ユート王』であります……と、偉大なる『英主ユート・イル・キナン』陛下の『功業』は本当に『同族』たちにも、そして当時『ユート王』の名声が届いていた『東方』にいた『アンフィスバエナ』の皆さんにもあえて説明する必要はないでしょう……」とサレアス。
彼(彼女)は同じことを繰り返すことで自分の主題を強調し、また最後に『ユート王』をちょっと持ち上げることで『貴族戦士』達の『愛国心』を盛り上げつつも、自分の話の主題はあくまで『コロコス帝国によって同士打ちさせられ続けたクノムティオの悲劇的歴史』を前面に出し続けた。
「……以上のように、『民族史』を思い返せば我らは如何に『狡猾かつ残虐な夷荻』どもによって『苦難』をなめさせられ続けたかわかろうというものです。そしてこれまで多くの『英雄』たちが『コロコス帝国』の力を利用して自らの目的を達成しようと目指し、中には一時的に達成できたものもいたでしょう。ですが『全クノムティオ』を『戦乱の渦』から救い出すことだけはついぞできなかったのです。そしてそれを『ライエントランの戦い』によって『覇権』を確立した我ら『アラマン王国軍』が今『道半ば』まで達成できています……」とサレアス。
そこで彼(彼女)はタバサたちからジェスチャーで『もうすぐ時間だぞ』と合図されたので『締め』に入った。
「……そう、『道半ば』なのです。我らは『アッスス地方』に上陸して『夷荻軍』の幾たびの妨害にあいながら──しかもそれらすべてが我らにとって不利な条件でありながら──すべての『貴族戦士』達が『統合』して強大な『夷荻軍』を追い払うだけでなく、『あのシェルファス湾』で『不死軍団』を真正面から打ち破るという『功業』を達成できたのです! ですがそれでも『コロコス帝国』はまだ滅んでおらず、いつでも彼らは『再侵攻』をかけ我らが奪い取った領土を取り戻しにくるでしょう、いやそれだけでなく次『全クノムティオ』にどのような恐ろしい『復讐』が降り注ぐかもわかりません! となればこれまで私が散々述べた通り、まず『コロコス帝国』を完全に滅ぼすことのみを優先し、『アンフィスバエナ』たちとはその場限りでもいいですからまず『講和』すべきということです! ……」
と、そこまで述べてからこの『裁判』の『主題』を述べた。
「…………私はかような理由で『アンフィスバエナ』たちと行動を共にし、また『貴族戦士』達に『講和』を説きましたが槍を向けられたままでしたので不本意ですが応戦したのです。故に私たちは決して『アラマン王国へ敵意』を持って居るわけではなく、もちろん『双角王』に対しても一貫して忠義を貫いており、私の『同志』であるミュシアス殿も当然『黄金宝剣』の発見者の『名誉』に浴する『権利』を持っているのです。そしてこの場を借りて私は何度でも述べましょう、『150年の長きに渡り……我々『同族』たちを世代を超えて分断し相争わせ事実上『奴隷化』していたコロコス人たちこそが『主敵』であり、まだ彼等は『世界帝国』としての力を保っている以上はその他の者たちは大事の前の小事にすぎない。故に今我らは『コロコス帝国』以外の敵を全て味方とするべき』……私の弁論時間はまだありますか?」とサレアス。
ここで確認するとアピルが空の兜を見せて、
『ちょうど終わりだ。時間調整が上手いな』とアピル。
このようにしてサレアスの弁論時間も終わったのだった。次回へ続く。
作者の歴史趣味です。本来古代ギリシャ語の『ヘタイラ』は『娼婦』の意味ではないそうです。通常『娼婦』は『一回限りの関係を持つ娼婦』のことをさし、他方『ヘタイラ』は『継続的な関係をもつ遊女』の意味で区別されていたとか。どうやら日本でいうところの『夜鷹』と『芸者』みたいな違いがあったそうです。
ニムル『どっちも『娼婦』だったら同じじゃん』
イスティ「江戸時代だと『夜鷹』は最下層の『娼婦』だったらしいですが、『古代ギリシャ』の場合だと法律上区別されていたとか。『古代ギリシャ』において『娼婦』は『法で認められた立派な職業』でしたので、『ヘタイラ』と『娼婦』はそれぞれ法律で権利なり義務なりが明確化され国家の管理下におかれていたそうですね」
カムサ「『クノムティオ』も同じで『娼婦』は法律で認められたれっきとした職業よ……といっても『奴隷や解放奴隷』が就きべきもので『自由人女性』には全く相応しくないけどね(見下し)。法で認められることと『名誉』を与えられることは『イコール』ではないわ。『ニポス』の国ではどうかしらないけど少なくとも『クノムティオ』ではそういうことよ」
ハッシュ「そりゃあ不名誉極まりない『奴隷』も法律で認められたりっぱな『所有物』だからな(鼻ほじ)」




