ハグニアス・イル・アポロニオス120『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『魔王の『人間支配』と冥王の『最期の審判』』と『タルキュア擾乱part738』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『水の都の戦い:第四次攻撃』、戦況は前回の続きのままなので割愛する。魔王フェルゾは側面にいた『ハグニアス&テルアモス隊』が『ナルクルティオのパリス』の言葉によって自分たちを攻撃することを『ただ傍観していただけの』使い魔から知らされたが、魔王は状況が状況なので傍観をとがめなかった。
『……GU……そ、そうか。では貴様は我が部隊に戻れ! わが軍の補佐をしてもらうぞ!』と魔王。
『は、は!』と使い魔たち。
この使い魔は特に悪気があったわけではなく、どうやら『蓄積した疲労』で『ぼんやり』していただけだったようだ。現在の『使い魔』たちは『ハリスコ龍族』から最近借りたものたちだったわけだが、彼らはもともとやる気がない上に『アンフィスバエナ』たちから目立った『報酬』を与えられていないので(アンフィスバエナたち自身が空腹を耐えてる状況で当たり前なのだが)早々に『ギブアップ』しかけていたのだった。そうでなくても『夢の世界』では基本的に『奴隷』は『質の低い労働者』にしかならないものである。
『(かといって正規兵をハグニアスとテルアモスにつけていても人材不足だしな……)よし、そのまま奮闘しろ我が息子たちよ! そして聞こえているか『アサクレシス王国』の人間族たちよ! お前たちは自らの『主君』が不在であることを認識し、その間だけでも私の指揮下に入れ!』と魔王フェルゾ。
『は、は!』と使い魔。
使い魔は声だけは大きいが動きが鈍くて明らかに逃げたがっていた。魔王はそれを捨ておいて、自分はすぐに自分の部隊の隣でともに戦っている『サイマス将軍隊』へと声をかけたのであった。
『サイマス将軍の部下たちよ!? 今『主君』に代わって指揮を執っているのは誰だ!? その者は私の声が聞こえるか!? 聞こえるなら返事しろ! 聞こえないのなら手短な兵士が呼べ! 大事な話がある!』と魔王フェルゾ。
この時『サイマス将軍隊』は主君だけでなく副官のサレアスすら不在だったので自動的に『アサクレシス王国騎士団』の中で最年長の人物が代理で指揮を執っていた。本来なら指揮官と副官が不在などというのは『異常』なことでそれだけで部隊が潰走しかねないのだが、今は兵士たちに逃げ場がないし主君と副官も見捨てられないし一応共闘する味方(魔王フェルゾ隊)もいるのでなんとか戦闘状態を保っていた。
その最年長の騎士がすぐ近くにいて声を張り上げた。
「なんのようだ魔族め! いっておくが私はサレアス様とは違ってお前らと手を組むことに反対だ! 今までは『二王子(サイマス将軍とサレアス)』のご命令であったので従っていたが、この私が『指揮権』得た今は同じようにはいかんぞ!」と老騎士。
『魔王フェルゾ』は『また高等種族への恐怖かいい加減にしろ(都合の良い解釈)』と強く苛立ったが、ここでも我慢して『余裕』を見せた。
『今の状況で冷静さを保てというのは無理なことかもしれんが少しは努力することだな!(上から目線)サイマス将軍も副官サレアスも不在ならばお前たちも一時的に私の『指揮下』に入れ! 別に私に『忠誠』を誓えとか神々に誓言しろとかそんなことは要求せん! ただ今私は『魔法』を用いて戦場全体を貴様らより把握できているし、またその『魔法』を用いてお前たちに『支援魔法』をかけることも出来る! その力があればこの戦いに勝てて生き残れ、サレアスの目的も果たすことができる! 大局が貴様らに見えていないわけではあるまい!? さっさと『一時的に従う』と言え!』と魔王フェルゾ。
だが『アサクレシス王国騎士団』は──この時彼らは主君不在で初めて本音を『アンフィスバエナ』に見せたわけだが──拒否したのである。
「ぜっっったいに断る! 『魔族』に絶対に我らの『自由』は売らない! 我らはお仕えする主人を自分の意志で選ぶことができる『自由市民』だ!」と『アサクレシス王国騎士団』
『人間族と魔族』の間に広がる『断絶』の広さたるや……しかもそこで彼等の側面にいた『ハグニアスとテルアモス隊』が突然『鬨の声』を上げたのである。
「……うおおおおお!! お前たちついに戦うぞ俺たちも(目ぐるぐる)! もちろん倒すのは『アンフィスバエナ』とそれに協力している『サレアスとサイマス将軍隊』だ! 『パリス&シクロニス隊』に協力することで俺たちの『免罪』を勝ち取るぞ!」とハグニアス。
「『パリス&シクロニス隊』とともに戦えば『挟撃』になり確実に俺たちの『武功』になる! 『魔王フェルゾ』と『サレアス』の首を持ち帰れば(サレアスがこの場にいないことを知らない)あとは絶対にうまくいくはずだ! きっと『パリス殿』がなんだかんだ言いながらかばってくれるはずだ! たぶんだけど!!」とテルアモス。
「「「うへ~い!」」」と二人の兵士たち。
案の定『アポロニオス家戦士団』たちと『アシュメ市民兵団』たちは声量はあるが間の抜けた滅茶苦茶やる気のない返事を返す。このままだと突撃しても『挟撃』してるはずのこっち側が先に潰走しかねないレベルで『士気』が低かったので慌てたハグニアスとテルアモスが兵士たちを鼓吹し始めた。
「おいおい!? 気持ちは分かるがもっと『しゃっきり』しろ! ここで頑張らなと本当に俺らは破滅だぞ!? いや、確かに頑張ったところで破滅するかもしれないけど……(汗)……だ、だがそれでも『アンフィスバエナ』共を一匹でも殺せば俺たちは『英雄』だ! きっと『冥界』でも俺たちの功績は評価されるはずだ!」とハグニアス。
『ハグニアス様は神官でも何でもないのになぜわかるんですか……?』と部下たちは思っていたが当然言わない。そして本来『クノム神話』では人の死後を決めるのは『神々の王テイロン』であるが、そのテイロン神は些細な『罪』すら許さない『裁きの正義神』である。一方『冥王ディムラス』が死者を裁くという『神話』は実は存在していないのだった。あくまで『冥王ディムラス』は『冥界』を管理している神である(補足)。
そこにさらにテルアモスもハグニアスに続く。
「ハグニアス殿の言うとおりだ! 『定命の者』たちが俺たちをさげすんでも『冥王ディムラス』と『冥界の女王ミュリア』は我らを正当に評価してくださる! と言うかお前たちは知っているか!? 『冥王ディムラス』には『地下のテイロン神』という別名があり、実は『テイロン神』と同じ『人を裁く権能』を有しているのだ! だが『冥王』と『神々の王』は『兄弟神』であるのだから『冥王ディムラス』はきっと『テイロン神』とは別の『判決』を下してくださるだろう! 期待していいぞお前たち! きっと俺たちは『冥府』でいい暮らしができるはずだ! ほらもう一回『鬨の声』をあげろ! もっとやる気打を出せ! ハー! ヤーハッラー!」とテルアモス。
「「「や、ヤーハッラー!!」」」と兵士たち。
ハグニアスはまずは兵士たちの『名誉を求める戦闘民族の本能』に訴えて『武者震い』させようとしたがうまくいかなかった。なので今度はテルアモスが『教養』によって兵士たちの『理性』に働きかけたのだった。次回へ続く。
作者の歴史趣味です。本来ギリシャ語の『世界』は『コスモス』ではなく『コズモス』だそうですね。
ニムル『じゃあ『世界手国』は『コスモクラティア』じゃなくて『コズモクラティア』ってこと? ……なんかそっちの方が響くよくない?』
イスティ「やっぱり『濁音』があると『力強い』印象がでますよね。『世界帝国』の語感に寄り合ってる気が私もします」
ハッシュ「?? そうなのか?? よくわからんなニポス語は……」
カムサ「ニポス的には『アララライ』もあまり『勇ましい』く聞こえないかもしれないわね『濁音』がないから。『ア゛ラ゛ラ゛ラ゛イ゛』とかにしてみる?」
ハッシュ「喉痛めるわ(呆れ)」




