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ハグニアス・イル・アポロニオス74『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『歴史物語閑話:『歴史、政治、魔法、飛び交う梟』』と『タルキュア擾乱part693』の物語

 ついにひらがなにもルビが触れるようにもなりましたね。感無量です(涙)。

『コロコス帝国歴史物語』、イスティが相変わらず『ディメルアンキアルガルと『瑠璃国アラッタ』の領主エンシ』の続きを語っている。


 内容は前回述べられているのでイスティがそこに順次注釈を入れていく。


「……はい。ではまず最初に『ディメルアンキア王』が自分の軍隊の中から『弁舌爽やかな者』を選んで『使節デミウルゴイ』としていますが、このさりげない描写の中にも非常に多くの情報が含まれています。まず『東方諸国』にとって歴史的に『『王』とはいかなる存在であったか?』という話になるのですが……これもまた非常に入り組んで複雑かつ長大な議論が存在するため、やはり今は『割愛』させていただきます。実は『『王』とは一体いかなる存在なのか?』は『東方諸族』が長い年月をかけて議論を積み上げまた試行錯誤を繰り返してきた存在であるからです。つまりは『同族ヘレネス』が言うところの『政治学ポリティケー』が『東方アッス』にもあったと考えていただければいいでしょう」とイスティ。



 前にイスティが『そもそも『スキアン語』には『王』という単語は存在しなかったために『大人ルガル』や『主人エン』や『領主エンシ(だが実はこの単語も本当は『主人』を意味していて『主人エン』とニュアンスが同じだった)』と述べていたが、ゆえに『王という存在は一体何なのか?』は『東方諸国数千年の歴史』の中で最も難解な『問いかけ』であった。もちろんそれは『諸王(クシャーシヤ・)の王(クシャーシヤーナーム)』も同じである。


 そしてその『王という存在は一体何なのか?』という問いに対する『回答』こそが『東方数千年の歴史を貫くメインテーマ』であると述べてもいいすぎということはないだろう……というくらいに難解であり、『東方諸族』を長いこと悩ませ続けていた問題だったのである(そしてその問いかけは『コロコス帝国』になっても答えが出ていない)。


 ……という、それ自体で個別に長々と語らなければならないほどの『遠大な議論』なのでイスティは立ち入らなかったわけであるが、案の定『煙に巻く』ことになってしまい先輩たちはさらに混乱した。


「東夷にとっての『王』は『現人神アタナトイ』なのでは??」とカムサ。

「それもまた数ある『回答』の一つでしかなく、さらには『では神とは何か?』という問いが発生してしまったのでもっとややこしい議論があります(汗)」とイスティ。


「ますます『哲学』めいてきたわね……。『神とは何か』についても『哲学者』達は実にさまざまな議論を展開してるわよ」とカムサ。

「『東方諸国』に場合『議論』で終わらず『実践』も行われているのでなお難解になってますよ。なにせ各地の『神殿』が独自の『神観』を提示して『氏子』の奪い合いをしていたので……(汗)」とイスティ。

「神殿同士の寄進獲得競争は『西方』にもあるけど……でもたぶん実情は違うんでしょうね……(興味津々)」とカムサ。


 すると途端にイスティの『脱線エンジン』にギアが入って『弁舌』の速度が上がった。


「……そうですね……その話をはじめるとなりますとその前に『東方』と『クノムティオ』の『神殿組織』の違いに言及しないといけません。まず『クノムティオ』における『神殿組織』は、例えば『カミス』の『国庫』が『処女宮パルテノンラクレミス神殿』と『古ディレトーニス神殿(守護神ポリアスディレトーニス神殿)』の『聖財』と同一視されている事実からも分かる通り、『クノムティオ』において『神殿組織』は『国家』の一部です。ですが一方『東方諸国』では元来もともと『神殿』が『王権』より先行して出現していたことから『神殿組織』と『国家(正確には『王の家政組織』)』は全く別の『共同体コイノン』なのです。といってもすでに『初期王朝時代』には『王が自分の財産で神殿を建設し神官も自分が任命する』ことが常態化、というか『神殿の再建や新造は王の責務』と考えられるようになったので『王権を支える神殿組織』も存在したのがここでも非常に説明をややこしくしてまして、ですがその『王権を支える神殿組織』すら結局は慣習的に『国家とは別組織』ととらえられていまして……まあここも割愛で。とにかく『神殿組織』は東西で大きく実態が違うとだけ申しておきましょう」とイスティ。


「また気になる話がいっぱい出てくるわね……!」とカムサ。

「カムサとイスティは存分に自分らの『知的興味フィロソフィア』を満たせばいいからその間あたしら寝てていいか?(開き直り)」とハッシュ。

『ハッシュがすでに諦めてる……(汗)』とニムル。


 するとハッシュの頭上にデージャが出現して、


『ご主人様☆、これも『知的な訓練』ですよ☆ 『魔法使い』は元来『書記階級(教養人)』なのですから強くなるためにもっと『教養』を身につけてください☆』とデージャ。


「だったらお前が勉強してもいいじゃんか。そんであたしに教えてくれよ『トゥルエデ語』みてーな感じでさ(不満)」とハッシュ。


『それだと根本的な解決にはならないのですよ☆ 今イスティさんやカムサさんたちが話しているような『抽象的な思考』ができないと『幻術』は使えないからです☆ 私は以前に『変身魔法が得意』だといったことがあると思いますが、『変身魔法』は『幻術』に通じていて『魔力(魔法を使用する感覚とでもいうべきか)』が根本的には同じなんです♡ そして元来『下級魔族』である私の種族がなぜ『絶滅』せずに今まで生き残れているか分かりますか? 『幻術』を駆使してきたからです☆ この『幻術』という魔法は『現状最強の魔法』でありながら『必要な魔力(魔族の体力)は他の魔法と同じ』という大変な優れ物ですので『下級な魔族』ほど『幻術』を得意としているんです♡。いえ、正確な言い方をすれば『幻術が得意にならないと生き残れなかったから必死に習得して得意になった』とというのが正しいのですが……ですのでご主人様にはぜひ私の一番の強みを使いこなしてほしいのです☆ 私はただでさえ『魔力(使用できる魔法の威力)』が弱いので、『幻術』を多用することでその『魔力(戦闘能力)』をある程度補うことができ……』とデージャ。


 するとハッシュが暴れだした。


「だー! お前ら寄ってたかって『小難しい話』をするんじゃねー! 『哲学』なんて知らねーし『王は王』だし『神は神』だし『魔法』の勉強なんてしないってずっといってんじゃねーか! イスティ早く『英雄叙事詩』に話を戻してくれ! あたしこのままだと本当に『狂乱女マイナス』になっちまうぞ!? それがいやならもうやめろその話! あたしがついていけねー話は面白くない! 詰まらんからもう寝る!」とハッシュ。


 そういって転がって駄々をこねていたハッシュが『ふて寝(する振り)』してしまった。


『ダメですね☆ やっぱりご主人様に『魔法使い』は荷が重そうです☆』とデージャ。

『つくづく思うのですが、なぜこうも『勉強』の嫌いな奴が『魔法使い』になってるんですか……?』とゴブリンたち。

「冒険者の魔法使いは割と多いですよハッシュ先輩みたいなタイプ。ですのでおかしいことでもありません(寛容)」とイスティ。


『正直魔法使い適正はカムサの方が上なんじゃ……?』とニムル。

「『女王バシリンナ』が『魔術師マゴイ』になれるわけないじゃない、無理よそればっかりは(真顔)」とカムサ。

「お前ついに自分のこと『姫』じゃなくて『女王』とか言い出したのかよ……(思わずふて寝をやめた)」とハッシュ。


『歴史』、『哲学』、『魔学』、様々な『教養』が『黒い馬車』の中を、今まさに獲物を襲おうとする音もなく飛び立った梟のごとく襲来しそうになり……ハッシュが暴れたことで強引に元の話に引き戻されたのだった。続きは次回へ持ち越す。














『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』


『水の都の戦い:第四次攻撃』はまたも『変転』を迎えている。『ハグニアス&テルアモス隊』が『サイマス将軍隊』に『突発的』に襲い掛かるという、ダーマス候も魔王フェルゾも全く想定していない形で『戦端』が開かれていた。


 この動きにはさすがの『戦争の神々』も興味深げに『エデュミン』の街を見下ろしていた。『軍神レブレス』が『神酒ネクタル』を傾けながら、


『……この展開すら『アンフィスバエナ』たちの『魔法』の範疇か? いやはややはりこんな危険な『魔法』は『汚らわしい』ものにしておいてよかったな。さすがにこれからどうなるかは『運命モイライ』どもでも分かるまい』とレブレス。


 彼等の前に並ぶ『酒の肴』は『神仙草アンブロシア』だけである。そもそも『クノム神話』の神々は食事は極めて『質素』であり、その代わりに『酒』を滅茶苦茶飲むのである。『質素な食事をする大酒飲み』はそれ自体が『神々』に近い趣向であるとされていた(補足)。


 それに対して『闘争の女神(エリス)』も寝椅子に身を横たえ酒を傾けながら答える。


『こんな『術者』自体も理解できない状況を作りだしているのならそもそも『魔法マギア』なんて欠陥品だろう。馬鹿馬鹿しい、どこもをとっても『術知テクネー』とは呼べないではないか。結局我らが『古の法(テスモイ)』を定めて『禁止』しなくても人間族は自分で考えて『魔法』を見の周りから排除していたさ。いずれは『魔族』すら『魔法』をすてるかもしれん、まあ、そうなると本当に『魔族』が存在する意味もなくなるがな……ていうかいつまでやってるんだ、そろそろ飽きてきたぞ』


『ああ、確かに。私もそろそろ眠くなってきたな……寝るか』とレブレス神。


 人間と魔族たちが長々と殺し合いをしているのに、彼らは傍観するどころかそろそろ飽きてきていたのだった。




 そして視点は地上に戻る。『ハグニアスとテルアモス隊』の動きはまだ『資材調達部隊』を指揮する『キュライノス隊』には伝わっていないし彼等も背後の動きに気づいていなかった。この時彼等は『取り合えず瓦礫を一か所に集めた』のだが、ここで『どうやって効率的に運ぼうか』という問題にぶち当たってしまったのである。


「……そういえば俺たち台車とか何も持ってないですねキュライノス様。俺達に抱えて運ばせますか?」と部下たち。

「……いや、それはできる限り避けたい……となると『工夫』するしかないか。いや、単純に『転がす』ってのはだめか? ここは『山手アクロポリス』だから『第七城壁』から『第一城壁』に向かって斜面になっているし……」とキュライノス。

「…………試してみますか?」


 彼等は集めた瓦礫を『斜面を転がしながら』運ぼうと考えていたわけだが、それを実際にやってみてどれだけ大変そうかを検証していた。だが思ったより効率は良くならなさそうだったのでキュライノスは渋い顔になって、


「うーん、やっぱり持ち上げて運んだ方が数運べるか?」とキュライノス。

「それはやっぱり俺たちがきついですよ……転がせる形のものを選んで運びましょうよ」と兵士たち。

「しかしそれだと『転がせるタイプの瓦礫』しか運べなくないか? 瓦礫を選別すると余計に時間がかかるうえにより広い範囲の『瓦礫の山』を捜索しないといけなくなる。手間が増える一方だ。それに行ったきり来たりする回数も極力抑えたいんだよなぁ……『アンフィスバエナ』が襲って来たときに戦える状態にもなってないといけないし……」とキュライノス。


「キュライノス隊長! ダーマス候からの『方針変更』です! すぐさま瓦礫を捨てて『ダーマス隊』に戻ってください! 『第六城壁』で戦闘が始まっています! ですが『リカノス&ミュシアス&アイアス隊』はそのまま待機とのことです!」と伝令。


 もしこの伝令が『転生者』だったら『石を転がして運ぼう』と大真面目に検証している『キュライノス隊』に絶句したことだろう。だがこれまでの『タルキュア擾乱』の経過で彼等に駄獣も荷車もあるわけないのである。だがこんな『信じられないくらいひどい状況』でもアラマン兵たちは涼しい顔で『対策』を考えていたのである。彼等の『どんな苦しい状況でも最善を尽くせる能力』は素晴らしいのだが、こんな能力を発達させたから『補給』はずっと軽視されたままでもあった(補足)。



「なんだと!?(ここでやっと『第六城壁』の騒音に気づいた)分かった! そなたはリカノス殿たちの所に行くのか? 我らはすぐに戻るぞ!」とキュライノス。

「は!」と伝令&部下たち。


 伝令はすぐに『リカノス&ミュシアス&アイアス隊』にも報告すべく立ち去る。何気に『資材調達部隊』を務める能力『皆無』の『キュライノス隊』にとってこの展開は『大変な幸運』であろう(自覚無し)。彼はすぐに兵士達に武器を抜かせてからその場に整列させる。瓦礫はそのまま打ち捨てておき、しかし投射武器になりそうなものは兵士たちが個人的に回収していた。そのまま特に妨害もなく『行軍縦隊』になったので『ダーマス隊』に向かって進み始めた。


 その斜め腕は『リカノス&ミュシアス&アイアス隊』も伝令から報告を受けて遠くを眺めていた。


「……騒ぐなよリカノス。俺たちが候の命令を無視して『第六城壁』に駆けつけるなんてなしだからな」とアイアス。

「『第七城壁』から動くわけないだろ分かってる(ガチ切れ)。だムカつくくらいの自由はあるはずだ!(瓦礫を蹴った)『直接戦闘』は俺が一番槍になりたかった!」とリカノス。

「『直接戦闘』が……こんな『まだどっちも有利とは言い難い状況』で……『アンフィスバエナ』側の『ミス』、いや、『裏切った友軍ヘタイロイ』たちの『反乱』か?」とミュシアス。


 するとリカノスが『チッ』と舌打ちして、


「……『反乱』だったらなんだというんだミュシアス殿。祖国を裏切って市民全員を死に追いやった売国奴が過去に捨て猫を拾って育てていたら『善人だが何か理由があったんだ』とでもいいだすのか? 最低限『善悪の天秤』が釣り合って初めて『罪人ではない』というべきだな(ふん!)」とリカノス。


「う、厳しい……まあ正論ですけど……」とミュシアス。


 クノム人には『例え極悪人であっても過去に一度でも善行をしたのだから地獄から這い上がるための蜘蛛の糸を垂らす』という精神は存在しない(補足)。


 ゆえにこの『苛烈』な言葉にアイアスもミュシアスも反論しなかったのであった。ただアイアスは苦笑して、

「……ならば俺たちこそが『アラマン王国』の『正義の番人』になるべきだな。どうですかミュシアス殿も一緒にやりませんか? 俺たち三人で『正義』を守る活動をするんですよ。オルトロス候はもう捕まってしまいしたし、ダーマス候もすでに『裏切りをこれ以上増やしたくない』と『腑抜け』になってしまわれている。彼等は今後『裏切った友軍ヘタイロイ』たちを表立って非難しにくくなるでしょう……ですが俺たちは違うということですよ(意地の悪い笑み)」とアイアス。


 言われたミュシアスはちょっと『ムッ』として、

「父はまだ『敗北の罪』にはなってません(断言)。ですが、もう『黄金宝剣クリュセイオン・アオル』も『アンフィスバエナ』に奪われたわけですから私たちは協力しあえますよねリカノス殿? 一緒に『正義の番人』をやるのでもう俺を敵視しないでください(疲労)」とミュシアス。


「『黄金宝剣クリュセイオン・アオル』のことを思いだすと全身の毛が逆立つ!!(また瓦礫を蹴った)。いいだろうミュシアス殿にアイアス! 俺たちは老いぼれ腰抜けになった老将軍に代わって『正義の番人』になろうじゃないか! 今のうちに神々に誓いを立てるぞ! 『贖いのない罪人どもを一人でも見逃せば神々が我らを呪い殺し『奈落タルタロス』に落としてください』とな!」とリカノス。


 小さい変化ではあるが、今この段になって『若きオルトロス』と『高地貴族リカノス』は『仲直り(?)』したことになる。といってもミュシアスはもともと争う気はなかったのだが(だがこの後もリカノスに対する苦手意識は消えなかったのだった)。




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