ハグニアス・イル・アポロニオス43『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『魔王の蛇のごとき執念と交渉術』と『タルキュア擾乱part650』の物語
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『水の都の戦い:第四次攻撃』の最中、『ダーマス隊』や『アルキオス隊』たちが『アンフィスバエナ』と戦う間ずっと『我関せず』を貫いていた『モストルス&ヘラスケス隊』に魔王フェルゾ自身が『偽の貴族戦士』に化けて『交渉』を持ちかけていた。この時ダーマス候やアルキオスたちは『モストルスとヘラスケス隊』にまで気が回っていなかったり、そもそも存在を知らなかったりで全く干渉できていない。なので魔王フェルゾが余裕をもって彼等を『丸め込もうと』していたのである。
だが前回そんな魔王が告げた言葉にモストルスとヘラスケスが『不快感』を示した。
「なんだその言い方は? 『東方大遠征に参加したくない』だなんて『世界最強の軍隊』の恥だぞ!(怒)」とヘラスケス。
「アラマン人にあるまじき言葉だ。本当は『アンフィスバエナ』なんじゃないのか?」とモストルス。
「『友軍』たちの『建前』ではそうだろうが、『本音』は私の言った通りだろうが。実際に過去に多くの兵士たちが『東方で死にたくない、西方で死なないとクノム神話の冥界に行けない』と嘆いていたじゃないか。それは私の記憶違いか?」と魔王フェルゾ。
「それはすでに解決済みの問題だろうが! 『双角王』は『コロコス帝国』を滅ぼすお方だ! ならば『東方』もいずれクノム人たちが支配する土地になる! だから兵士達が東方で死んだとしてもなんら問題はない!」とヘラスケス。
「そのことは別に私も知っている。繰り返す必要はない。私が言いたいことは『つまりアラマン兵たちの本音は東方にきたくなかったのに王命だから逆らうことが出来なかった』ということではないか。人間は子供の時ほど正直に話すように、兵士達も遠征初期に述べていたことが『本音』であろう、つまりは多くの兵士達は内心『遠征に参加したくなかったが参加させざるをえなかった』と考えていたことで間違っていない。反論はできんだろう? 我々は確かに『生き残るために』遠征に参加していたのだ」と魔王フェルゾ。
「いいや、貴様の行ってることは『おかしい』、そもそもアラマン人であれば『アラマン人らしい』言い方をするはずである。それをしないということはお前が『アンフィスバエナ』である疑惑が強まるだけだ。うまく化けたつもりでもうっかり癖がでたか? お前は『アンフィスバエナ』だな!?」とラレース。
速攻でばれた(?)が魔王は特に動揺も見せずにわざとらしく肩をすくめてみせて、
「そなたらがそう思うのなら別にいい、私にとってはそんなこと優先順位の低い問題だ。我等にとって大事なことは『相手がアンフィスバエナか友軍か』ではなく、『話が通じるかどうか』……お前たちもそうは思わんか?」と魔王フェルゾ。
彼の物言いは『偶然』だがヘラスケスの先ほどの物言いと『そっくり』だった。ここであえて捕捉すれば、魔王フェルゾは断じてヘラスケスやモストルスの心を読んだわけでも使い魔に聞き耳を立てさせたわけでもなく本当に『偶然』だったのだが、これにヘラスケスとモストルスとラレースは『ゾッ』としてしまった。
「貴様!? やはり『アンフィスバエナ』が化けた偽物か!? 我らの心を読んだか!?」とヘラスケス。
「我等を説得しようとして焦ったか!? ついにしっぽを出したな『アンフィスバエナ』め!」とラレース。
「?? 何の話だ!? 一体何を言ってるんだ!?」と魔王フェルゾ。
フェルゾ王はヘラスケスとモストルス隊が突然『色めきだって』自分たちを攻撃しよう構えたことがあまりに予想外で一瞬頭が真っ白になり、本能的に自分たちも応戦しようとして『ハッ!?』として部下たちに叫んだのだった。
「待て!! 攻撃するな! 武器を捨てろ!」とフェルゾ王。
「「「!? は、は!」」」と『アンフィスバエナ』たち。
フェルゾ王の咄嗟の命令でアラマン兵に化けて居た『アンフィスバエナ正規兵』たちも何か考える前にとりあえず持って居た『長大槍(本当は槌矛)』を捨てた。さらにフェルゾ王が『両手を広げるクノム人の降参ポーズ』の態勢になったのでわけもわからぬまま正規兵たちもまねる。
これによって今まさに攻撃しようとしていたヘラスケスとモストルス隊も思わず攻撃をためらって『止まって』しまったのである。
「!? う、くそ……」とヘラスケス。
「……チッ、とりあえず止まれ! モストルス様のご命令だ!」とラレース。
(『カマ』をかけてみたが、反応はかなり『友軍』っぽいな……)とモストルス。
そう、実は今の一連の流れはヘラスケスとモストルスの『カマかけ』だった。いや、正確には『アラマン人らしくない』と言っていたあたりまでは『確率は友軍五割、アンフィスバエナ五割だな』と思っていたのだが、フェルゾ王側が偶然ヘラスケスの『作戦』と似たようなことを言ってしまったので『もしかして九分九厘の確率でアンフィスバエナか!?』とちょっと『天秤』が傾いただけである(といっても『確率』という概念はまだ『夢の世界』には存在していないのだが)。
なので攻撃するタイミングを逸してしまったヘラスケスは罰が悪そうに、
「……それは我等クノム人世界では『降参』を示すポーズに他ならない。つまり『アンフィスバエナ』であるあなたが我等に戦わずに降参したということだな?」とヘラスケス。
「まだいうか(呆れ)。我らは『友軍』との戦闘を避けるためにこのポーズをとっただけだ。『同士打ち』は『友軍』にとって一番避けたいことだからな。『アンフィスバエナ』どもを利するだけだ」と魔王フェルゾ。
「(うーん、どんどん友軍っぽく見えてきたな……)演技のうまい魔族だな。さすがの我らも感心する役者ぶりだ。故郷に帰ってそこで『劇場』でも作った方がいいんじゃないか?」とラレース。
「しつこい連中だな(溜息)……だが貴様らが私のことを『アンフィスバエナ』だと思いたいのならそう思えばいい。それにそなたらは忘れてるかもしれんが、そもそもそなたら自身が『アンフィスバエナ』でないことを証明できていないではないか。私もそなたらを疑っているのだぞ」と魔王フェルゾ。
それを言われるとヘラスケスが『ムッ』として、
「証明する必要などない。どうせ『幻術』でどうにもごまかせるのだから求めるだけむだだ」とヘラスケス。
「貴様らその言葉そっくりそのまま返してやるぞ(いら立ち)。だったら私に『証明』を求めるなよ!(正論)」と魔王フェルゾ。
魔王フェルゾはちょっと『素』が出た。一方モストルスとラレースとヘラスケスは口ではあたかも『決めつけている』ようにみせているが、内心は相手が『アンフィスバエナ』か『友軍』か判断できずにいたのだった。次回へ続く。
ニムル『前回の『狼王ランムズ』さんについての神話さ、なんでランムズさんの一族はそんな執拗に『テイロン神』に人肉を食べさせようとしたの? 『クノム神話』では神々が人肉を食べると何か起こるとか言われてるの??』
カムサ「さぁ? 理由は不明よ。でも『人肉食』なんておぞましいじゃない? ただそれだけよ。あとは『哲学者』の間でよく言われている説は『オリシア人が好む『人身御供の因習』を批判するため』だといわれてるわね。『暗黒時代』のクノム人の間にもオリシア人の影響を受けて『人身御供』の習慣が普及した時期があって、それに対する攻撃として作られた神話なのかも……という説が有力ね」
ハッシュ「そもそも人肉を食うなんて『鬼族』と同じじゃん。『人肉食』を嫌うのは理屈じゃねーと思うけどな。あたしは『人身御供』なんて習慣を持ってるオリシア人どもも『亜人族』なんじゃねーかと思ってるぜ(カラカラ)」
イスティ「『神話』は確かに忘れさられた古い時代の習慣を私たちの時代に教えてくれることもありますが、すべての『神話』がそうではありません。恐らく『ランムズ王』の神話には『合理性』というものがないのではないかと私は思っています(神話には意味不明が話が多い)。しかしもしかしたら、彼の一族が『血族』たちの肉を神に何としても食べさせようとしたのは、もしかしたら自分たちが『神』と『合一』することをもくろんでいたのかもしれませんね(これはあくまで推測)」




