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高橋大輔②高校入学の日の話

 僕は『復讐は何も産まない』という言葉が大嫌いだ。

 なぜなら復讐したい人間にしてみれば、特に何かを産み出したい訳じゃないからだ。

 ただただ恨みを晴らしたい。何かを手に入れたいんじゃなくて、捨てたいんだ。捨ててすっきりしたい。

 だから必死にこの感情のゴミ捨て場を探している。そんな感じだ。


 僕の名前は高橋大輔。金沢に住んでる高校1年生だ。

『非モテ』と言えばすぐに連想できる容姿。

『オタク』と呼べばすぐにわかる趣味。

『陰キャ』と称すればすぐに理解できる性格。

 日本が世界に誇るアニメに沢山の愛情と、そして類まれない恥ずかしさと、ほんの少しの優越感を持つ、そんな高校生だ。

 今までの経歴は……小学生時代の事は思い出したくもない。いつもイジメられてずっと泣いていた記憶ばっかりだ。

 僕の小学校は1クラスしかなかったので、『あいつ』とは6年間ずっと同じクラスだった。1年生の頃は友達だったのに、いつの間にか僕をいじめるようになっていたんだ。

 僕をすっかり女性恐怖症にしてくれた『あいつ』とは中学は別だったので、中学校3年間は平和そのものだった。極力目立たないように教室の隅っこでオタ友達とオタトークに花を咲かせていたものだ。

『あいつ』は一体どこに居るのやら……いや、興味もないし知りたくもない。もう二度と関わりたくないし……。

 中学を卒業すると、僕は金沢の郊外にある高校に入学した。なんとか進学校に入れて良かった、またオタ友達を見つけようと意気込んで入学式に出た、

 まさにその日だったんだ……。


 登校初日、自分の名前が書かれた机に座り、これから自分が通うことになる教室を眺める。

 同じ中学の人間の姿は見当たらなかった。オッケーだ、同じ中学の奴が少ないと分かって入ったんだし。

 ふと右隣りの席に座る男子と目があった。眼鏡をかけて髪はボサボサで猫背。

 僕なら一発で分かるね、こいつはオタクだ。

「あ、こんにちは。僕は高橋大輔。南中学から来たんだ」

「こんにちは、斎藤和也です。中央中学からですね。突然ですけど高橋君って深夜アニメ好きですか?」

 うお、なんだこの人。

「本当突然だな……好きだけど」

「やはりそうですか。いかにもヒョロいオタクって感じですもん」

「……いかにも眼鏡オタクな奴に言われたくないんだけど」

 だいたい斎藤の性格はこれで把握できた。

 こいつは変人だ。

 そこで担任のゴリラみたいな男性教師、大田原が入ってきて言った。

「よーし! まだ入学式までは時間があるからな。先に自己紹介をしちまうか! それじゃあ出席番号順に……あーいや、出席番号の逆からやるか! いつも『あ』のやつからやらされるからたまには後ろからでもいいだろ!」

 なんか異様にテンションの高い先生だ。

 ということで番号最後尾の『渡辺』さんから自己紹介が始まった。

 自己紹介は『名前』『出身中学』『趣味』を言えばいいらしい。暫くすると僕の番が回ってきた。

「初めまして、高橋大輔です。県立南中学から来ました。趣味は漫画やゲームです。よろしくお願いします」

 頭を下げてから座ろうとして、ふと1人の女子と目があった。

 思わず顔が赤くなるほどの美少女だった。長い黒髪を腰まで伸ばし、左目の下に泣き黒子がある。カーディガンが似合っていて、大人びていて色っぽい。なんだか強い母性を感じる女子だった。

 その女子はびっくりした目でこちらを見ていた。一体なんだ? 僕は動揺して固まった。

「おい高橋何してるんだ? もう座っていいぞ?」

「あ、はい、すみません……」

 先生に言われて僕は慌てて座った。

 例の女子も視線を逸らして前の席の女子となにか話している。


 ふぅ、とりあえず落ち着こう。

 ちょっと美少女と目があっただけで何かを期待してしまう、悲しいかなキモオタの性だ。はぁ……、

 うっさい! 妄想するのは自由だろうが!


 そのまま自己紹介の順番はどんどん先に進み、ついに最後の列に差し掛かった。『あ』行に入ってから、例の美少女が席を立って自己紹介した。

 立ち上がると意外に身長が高く、そのスタイルの良さに見惚れてしまう。

 だけど彼女が発した言葉は僕にとっては氷水の入ったバケツだった。

「皆さん初めまして、粟島優莉です。中央中学から来ました。趣味というか、実は私、女優を目指してまして、放課後養成所に通ってるんです。あとは料理とか好きです。以上です」

『女優』の単語に教室中がどよめく。斎藤がなぜか嫌そうな顔で、

「ケッ、女優ねぇ……美人だと自慢したいんですかね? まあ私には関係ないですけどねぇ、3次元なんかに興味ないですし。高橋君もそうでしょ?」

 僕はそれどころじゃなかった。

 今あの美少女、いや、あの女は何て言った?『粟島優莉』て言ったぞ!

「う、嘘だろ……あいつがあの『粟島』だって言うのかよ……」

 小学校時代、僕をいじめていた『粟島優莉』はショートカットで、身体を動かすのが好きでいつも男子に混じって遊んでいた。腕力はクラスで1番強くて、まさにガキ大将的なポジションで恐れられていた。

 もう一度、粟島優莉と目があった。まるで道端のカラスでも見るような感情のない視線。僕は慌てて目をそらした。

 最悪だ……! この世で最も会いたくない奴と再会してしまった。

 まさか自分をいじめていた女子と同じクラスになってしまうなんて!

 これからの高校生活3年間、僕にとっては下手すると懲役3年間になるんじゃないか……?

 かくして僕の高校生活は始まった。


閑話休題(?)ですね。

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