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バルクス・イル・オルトロス&ノックス・イル・ダーマス141『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『脱線話:北方世界の神話時代』と『タルキュア擾乱part455』の物語

 前回の『王族ダレブ人』についてですが、『ダレブ』はトゥルエデ語やコロコス語の単語でクノム語では『センマルク』です。ただクノム人もクノム語訛りで『ダレブ』という場合もあります。

『コロコス帝国歴史物語』、ここで一旦イスティが『ダレブ・ソラース人世界』についての簡単な歴史を語り始めた。


「さて、先輩方には『王族センマルク(ダレブ)人』という人たちが一体どのような人たちだったかを理解してもらうためには彼らの『歴史』を語らなければならないでしょう……まず『クノム神話』ですが、神話では『もともと『北方諸族(ダレブ・ソラース人)世界』は『古代マムール帝国』の一部だったそうですが、この『理想の王国』が崩壊してしまった後その混乱を見て憐れんだ『天空神テイロン』が現地に流れる『運河』の女神と交わって三人兄弟が生まれたと述べられています……」とイスティ。


 これは『クノム神話』で語られる話なのだが、イスティの話の通りかつて『北方』は『全世界を統一した帝国』であった『古代マムール』の支配下にあった。


 だが『古代マムール滅亡後』全世界が混乱のるつぼになったように、『北方』も騒乱がはげしかったそうだ。そんな地上の様を見て憐れんだ『テイロン神』は川の女神と交わって『英雄へロス』の三兄弟を生ませた。


 その後この三兄弟が地上で川の女神に養われながらすくすく育つと、ある時天から『黄金の短剣』が地面に落下してきた。三兄弟がこれを見つけてまず長男が手に取ろうとしたが『黄金の短剣』は燃え上がって触れず、次男が触っても同じだった。だが末っ子が手を伸ばしても燃えなかったのでその短剣は末っ子のものとなり、その後三兄弟は建国して『北方世界(範囲は不明)』を三つの国に分割したという。そして末っ子の末裔が『王族ダレブ人』となったというのである。


 ニムルが言う。

『あ、確か『アラマン王国』の建国神話でも末っ子が王朝の開祖になってたよね。なんか決まり事もであるのかな?』とニムル。


 するとハッシュとカムサが顔を見合わせて、

「……言われてみれば確かに多いな、国の開祖になる末っ子って」とハッシュ。

「普通に遊牧民たちの『古の法』にある『末っ子が家を継ぐ』からってことなんじゃないの?」とカムサ。

「あ~、そうか、そういえばあたしらの祖先も大昔は遊牧民だったんだっけか」とハッシュ。

「本当に遥か大昔の話だけどね」とカムサ。


(言ってみれば『民俗学』における『末子成功譚』ですが……まあ『民俗学』なんてクノム人は興味も示さないでしょうからここでは言いませんが……)とイスティ。


 また実は『クノム神話』には上記とは全然別の説もある。そちらでは『英雄神エリュシオン』が当時無人の地だった『北方』に渡ってきて現地の『魔族』の女と交わって生まれた三人の男の子がやはり『北方』を統治したという。もちろんこっちでも『王族ダレブ人』が『末子』の子孫である。つまりこの伝説では『ダレブ・ソラース人』たちは『英雄神一族ヘラクレイダイ』となるわけである。



 そして『歴史の父カナシオン』は自著の中で『遥か昔『王族センマルク人』たちはもっと東の土地に住んで居たが、そこに移住していた『サルマナス(シュミルネ)族』に追い払われて『水晶海沿岸』まで逃げてきた。他のダレブ・ソラース人部族は『王族ダレブ人』が逃げてる途中にはぐれてしまったり、別の道をにげた者たちの末裔』と語っている。



「……これらの説がどの程度信用のおけるものかは正直なところ私もわかりませんが、どの説を採用するにしても『王族センマルク人』たちが古い時代『北方』で主導権を握る存在であったことは確かといえるでしょう。実際『九頭竜王の乱』当時『水晶海沿岸』に住む『ダレブ・ソラース人』たちの王族はみな『王族ダレブ人』の王家の遠い親戚だったそうです」とイスティ。


「え? そうなのか? でも今までそんな話全く出てなかったよな?」とハッシュ。

「『遠い親戚』というだけで別に『王族センマルク(ダレブ)人』の家臣ではないからですよ。まあそれは順を追って説明します」とイスティ。


『王族ダレブ人』は『神話』に語られる通り、かなり古い時代から、少なくとも『九頭竜王の乱』の当時でも100年以上は『黄金海』沿岸を支配していことは分かっていた。なぜなら『文字記録』を持たない『ダレブ・ソラース人』たちは歴史の伝承を正確にたどれるのが大体100年くらいだからである。それより昔になるとかなり『誇張』が入ってしまい、しかも各部族同士の伝承のずれも大きくなって本当のところが分からないからだ。まだ100年以内の話なら各部族同士の伝承のずれも小さかった(補足)。


 以上が『ダレブ・ソラース人』に関する『神話の時代(ただしクノム人の)』の話であった。次回へ続く。


















『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』


 戦況全体を見て『魔王フェルゾ』はこんなことをぼやいていた。

『……『追撃』をしかけても『決着』には至らなかったか……だがこの程度の『想定外』は『想定内』だ。こうなるといかに『タバサ』と『アピル』を『転進』させるかが問題になるな……』


 そこで近くにいたサレアス(右手は使い魔ポイユス(ファイユ)が化けている)がアラマン軍から見えない位置で言う。


「……転進させたら友軍が立て直して再攻撃するだけですが?」とサレアス。

『わかってないな貴様は。『アンフィスバエナ』は体力面で人間族をはるかに凌駕している。持久戦になったら有利になのは我らの方だ』と魔王フェルゾ。

「その分あなた方は数が少ないので兵士一人当たりの負担が大きいでしょうから、結局同じだとおもうんですけどね」とサレアス。

『使い魔たちも支援させているから兵士の数が少なくとも我らの方が持久戦では有利だ。貴様は魔法というものを理解していないからそういうのだ』と魔王フェルゾ。


 魔王がこんな言い方をしているのは『高等種族のプライド』もあるが、彼の体内や周りにいる使い魔や正規兵たちを経て実際に戦っている部下たちに『弱気』が伝染して戦意に影響するのを恐れているからでもあった。


 当然サレアスもそのことは理解していたので、

「……実際のところ、あなた方『アンフィスバエナ』たちは自分たちの『限界』を知らないのではないですか? あなた方が『疲弊して動けなくなるまでアラマン軍と戦った経験』がありません。でしたら自分たちと戦友ヘタイロイたちの『体力差』がどの程度であるかも把握できてないでしょう、その強気は『空威張り』ですよ」とサレアス。


『やかましい(怒)。なんだ? まさか貴様の右手ファイユが私の心でも読んだのか? 生意気な人間族め』とフェルゾ王。

(俺は読心術なんて使えないぞ……まあ使い魔の種族に感心なんてないわな……)とファイユ。

「『奴隷(使い魔)』と見くびってた相手に心を読まれるなんて情けない『高等種族』ですね(挑発)。さあ私にもっと頼りなさい、またあなたたちを勝たせてあげますよ(自信)」とサレアス。

『ちょっと待て俺を当て馬にしないで(ビビり)』とファイユ。



 そんな彼らの視線の先では、戦意の低下した部下たちとは違ってガムルだけは興奮して叫ぶ。

『面白すぎるぞアラマン兵ども! 俺は『偉大な敵』が狂おしいほど好きだ! これほど強い敵には『魔界』で出会ったことはない! 『アラマン軍』との戦いは楽しいことづくめだ! 今回も存分に楽しませろおおおOOOO!! GUOOOOOOOOO!!』とガムル。


『何言ってんですかガムル将軍んんん!! 俺たちは勝てる戦争しかしたくないんですよおおお!!(魂の叫び) 逃げますよおおおおおおOOOO!!』と部下たち。

『GU!? おい離せ!? こら! 俺様を戦わせろおおおおOOOOO!!』とガムル。


 部下たちは疲労を押してガムルを羽交い締めにし、一旦『第一城壁』に逃げ帰った。ガムル探知で元気でも他の兵士たちが戦えなくなったら意味がないからである。



 そんなガムル隊をアラマン兵は『投射攻撃』するだけで走って追いかけはしなかった。サイマス将軍『陸地』の上に散開する部下たちに『目抜き通り』左側の『城壁(瓦礫の山)』の上に乗って叫ぶ。

「我々は『第一次攻撃』の弓兵たちのように死ぬ気で『陸地』の上にとどまる! 今の状態なら『第一城壁』の防御は手薄だ。『アンフィスバエナ』たちもすでに疲労していて我らの排除はうまくいくまい!」とサイマス将軍。


 その場に集まってきた兵士の中の『貴族戦士ヘタイロイ』の一人が尋ねた。

「……サイマス将軍は敗走したオルトロス候とハグニアス殿が兵士たちを立て直してここに戻ってくると信じておられるのですか?」

「むろん信じているし、まだアルキオス隊も、そしてダーマス隊もいるからな」とサイマス将軍。


 そう言ってから振り返ると、『目抜き通り』左側の『城壁(瓦礫の山)』の『外側』をゆっくり進んできた『ダーマス隊』が接近してきたのが視界に映りこんだ。彼らはずっと『攻城兵器』を作りながら向かってきていたのだ。


 そしてニラトはずっとアルキオス隊を『幻術』で牽制しつつ周囲を監視していたのでサイマス隊より先に気づていた。すぐに魔王フェルゾのもとに走って報告する。


『魔王様! アラマン人の援軍です! どうやら『攻城兵器』を作りながらこちらに向かってきていたようです!』とニラト。


 それを聞いてサレアスが呟いた。

「……つまり友軍たちは最初『右翼・中央・左翼』で『第一城壁』を真正面から攻撃しつつ『目抜き通り』左側の『城壁(瓦礫の山)』に『階段』を作って、より『七重城壁』への攻撃を強めようとしたわけですか。前回(第二次攻撃)で『攻城兵器』が失われていたので新造しながら、しかし兵器の作成をのんきに待ってる余裕もないので攻撃だけ先に……なるほど……」とサレアス。


 彼(彼女)が脳内で『現況』を整理して一人で納得する。すると右腕に化けた状態のポイユス(ファイユ)が言った。

『……アラマン軍は『世界最強の軍隊』の割にはやってることが似たり寄ったりだな。『第二次攻撃』はちょっと斬新だったが、今回は『第一次攻撃』の焼き直しに過ぎん。芸がないなアラマン人は』とファイユ。


「それは『言いがかり』です。そもそもこの『新魔王城』が障害物だらけで『攻囲』できないように設計されているので取れる手段が限られてるんです。この『山手アクロポリス』の構造は結構私も評価してるんですよ。よくぞ短期間でこんなものを仕上げられましたね」とサレアス。

『まあもともと『エデュミン』の街が破壊されていて市民も激減してるからこそできた作戦だな……(つまり再現性がない)』とファイユ。


 サレアスに褒められては工事担当だったアピルも鼻高々だろう(アンフィスバエナの鼻は穴が二つあるだけだが)。


 そして、件のダーマス候の方もアルキオス隊を見つけて、すぐに近くに『上陸』した。もちろんそれを見てニラトは『偽ガムル隊』を『撤退』させて『第一城壁』に退かせる。


『GAHAHA! またアラマン人が増えたか! 追いかけてこい間抜けどもが! 『第一城壁』で相手してやる!(挑発)』と偽ガムル(ニラト)。


 これはアルキオス隊とダーマス隊がそんなことしないと読み切っての『捨て台詞』であった。アルキオスは無視してダーマス候を迎えて質問した。


「『攻城兵器』はどれくらい作れました? 道中敵の攻撃は? 敗走したオルトロス隊とハグニアス隊は把握してましたか?」とアルキオス。


 ダーマス候が手を振って笑い、

「待て待て、『耳は二つあるが舌は一つ』というではないか。そういっぺんに問われても答えられん。『攻城兵器』はこの通りだ(自分の後ろを指しながら)」とダーマス候。


『耳は二つあるが舌は一つ』は本当はクノム人世界の『金言』で『舌は一つしかないが耳は二つある』の変形である。意味は『話し上手より聞き上手』でそれを踏まえた『機知ウィット』だった(補足)。


 アルキオスが(まだ思いっきり戦闘中であるのだが)一旦落ち着いて『攻城兵器』を数え上げてから、

「……失礼しました。とりあえず『攻城兵器』は私が期待してた数より多くて大変喜ばしく思います。矢や石弾もあれだけあればいけそうっすね」とアルキオス。


 次回へ続く。

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