ベニーカ・イル・キナン104『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『カルマン神官長についての振り返り』と『タルキュア擾乱part372』の物語
『コロコス帝国歴史物語』の『アニス島線戦』の話、去年の12月以来触れてなかったとか驚いてます。そんなに経ってるとは思ってませんでした(汗)。今回はイスティがこれまでの『九頭竜王の乱』を纏めてくれてます。
『コロコス帝国歴史物語』、ダイモーヤ王がアルマス卿とカルマン神官長に対して『やっぱりミナワンダと最善婚すべきか?』と問いかけた手紙に二人から返事がきた。アルマス卿は『不死軍団と異民族の正規軍団の総意として『最善婚』すべきでしょう』と答える。
次に『カルマン神官長』からの返事がきたのだが、内容がダイモーヤ王が思っていたのと『かなり』違った。
『諸王の王よ。ミナワンダ様との最善婚も大事ですが、それより先に『アニス島』の窮状を知っていただきたいのです。今我らは非常な『困難』に見舞われております。このままでは『アニス島』は『ビカルニア王国』と『クノム人』たちの手に落ちまする』とカルマ神官長。
カルマンはここで『アニス島』にいる彼が率いる『アクニ人軍団』の現状を語るのだが、それを述べる前にイスティが前置きした。
「……ここでずっとそのままになっていた『アニス島戦線(2022/12/13投稿分以来)』に話を移しましょう。まずは『これまでの振り返り』です」とイスティ。
まず『アニス島』の『位置』だが、場所は『中つ海東部』、『アバーム半島』の南側で『レーム北部』の『リプリ州』と『ウレナ州』の対岸に存在する大きな島である。伝統的に『オリシア人とクノム人たち』がともに肩を並べて住んでおり、『クノム神話』の『豊穣神ハーニス』と『オリシア神話』における『豊穣神ウルシャハト』の『聖地』とされている(この二女神は同一視されている)。古来から『銅』の産地としても名高かった。
そしてこの島は『カイバーン二世』と『カラミスヤ三世』の時代は『インディーン・フェイダーン王国』の宗主権に服してはいたが『封建騎士』は配置されておらず『自治権』を享受していた。
この島の北に面する『ファラエ(ファラティオン)地方』も『インディーン・フェイダーン王国』の支配下であったので『ビカルニア王国』に面してはいないが、それでも島内の住民は『クノム人世界』とつながりが深いため『ビカルニア王国』の影響は無視することもできない地勢である。だが『九頭竜王の乱』が発生しても『アニス島』は一応は『ダイモーヤ王』に忠誠を誓ったままだ。
そしてこの島の趨勢には『九頭竜王の乱』においても『ビカルニア王国』と、さらには『レーム北部の封建騎士』たちが深く関係する。実は『リプリ州』と『ウレナ州』が『ビカルニア王国』の支配地域である『ネイウエ(ネイアティオン)地方』に船で向かう際には必ず『アニス島』に寄港しなければならなかった。なので『ビカルニア王国』と『レーム地方封建騎士』たちが『同盟』を結ぶ際には『アニス島』の占領が不可欠だったのだ。
そして『レーム地方全域の封建騎士』たちだが、彼らは『九頭竜王の乱』の当初は反乱こそ起こさなかったが『中立』を宣言し、『ダイモーヤ王』と『マニーヤ候』の争いにも一切協力しなかった。なので『サルザリア回復後』に『ダイモーヤ王』は『レーム北部封建騎士』たちを敵視して圧力をかけた。そうなると焦った『封建騎士』たちが今更になって『反乱』を画策し、『ビカルニア王国』の『軍事同盟』を欲していたのである。具体的に『封建騎士』達が欲していたのは『ビカルニア王国』が使役できる『西方傭兵団(クノム人傭兵団)』たちであった。
なので逆に『ダイモーヤ王』にしてみれば『アニス島』を抑えれば『ビカルニア王国』と『レーム全域の封建騎士たち』との『同盟』を『阻止』できるわけだ。なので『ダイモーヤ王』はすでに『ファラティオン地方』に駐屯していた『カルマン神官長』率いる『アクニ人軍団』に『アニス島』占領を命じ、『カルマン神官長』は命令通りに『アニス島』に北から上陸していた。
そこでハッシュが首をひねる。
「…………あり?? なんで『ハルマノス(カルマン)』が『ファラティオ』にいるんだっけ?」
「それは『ファラティオ地方』が『ダイモーヤ王』にとって『対ビカルニア王国』の最前線だからよ。もともと『ファラティオ』は『カイバーン二世』によって『ビカルニア王国』から奪取されて『封建騎士』が設置されてたけど、それを『九頭竜王の乱』発生時に『ビカルニア王国』が追い出したじゃない。でもその後イスティが語った『リュワニス(リユバニシュ)二世VSマナユス(マニーヤ)VSサノス(スネシュ)VSダーイムレス(ダイモーヤ)一世』の『四巴え』の戦いで『ビカルニア王国軍』が疲弊してしまったからその隙に『ダーイムレス一世』が『臨時ムンディ・アクナ総督』だった『カルマナス(カルマン)』に『アクニ人軍団を率いて『ファラティオ』を守れ』って奪取させたじゃない。もう忘れたの?」とカムサ。
「…………なんだって?? もう一回行ってくれ(白目)」とハッシュ。
『できれば文章に起こしてほしい……あと絵もあるとなお嬉しい……』とニムル。
「私の胸(頭)の中を直接伝える魔法ってないかしら?」とカムサ。
「一応研究されてるそうですが、『伝えたい情報』に『よけいな感情』……例えば今カムサ先輩がニムル先輩とハッシュ先輩に抱いている『こんなことも理解できないの?』という感情まで『強く』伝わるのでお勧めしません(汗)」とイスティ。
「二人は私にそういう目で見られるの慣れたものでしょうから別に気にしないんじゃない?」とカムサ。
『慣れてないから(ねーぞゴラ)!(怒)』とニムル&ハッシュ。
次回へ続く。
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
前回の続き。ミュシアスが『エデュミン』市民への『罰の内容』を何度も同じ内容を叫んでいた。
「『エデュミン』市民たちよ聞け! 『双角王』はすでにお前たちの『裏切り』の処置を決定しておられる! お前たちは武装解除された後都市から戸数50以下の農村への移住することになっている! そして賠償金も課されその支払いが完了されるまでは再武装も禁じる! そしてお前たちが誇りを持っている『エデュミン』の町も完全に破壊だ! お前たちへの処罰は以上だ! だがもし今すぐ降伏しないのなら更なる『重罰』が課されることにもなりかねないぞ!」とミュシアス。
だが何回か叫んでいると喋ってる言葉が急激に『ゲシュタルト崩壊』してきたので今度はちょっと内容を変えていく。
「……聞けエダイラ人たちよ! 我らが主君『ベニーカ』様は貴様らへの『懲罰』を決定しておられる! すべての市民は武装解除して都市を引き払い、50戸以下の農村への移住を決定なされた! 『エデュミン』の都市そのまま『アラマン王国』の駐屯軍をおく基地となり……じゃなかった! 都市は破壊だ! 都市は破壊! ……さらにはお前たちへの賠償金支払いも命じる! 支払いはもちろん銀貨で完済すれば武装は許可しよう! 貴様らは全員奴隷となるが奴隷は奴隷なりの処遇は行う! 奴隷をむざむざ殺すほど我らは無能な主人ではないぞ! さぁ死か奴隷か選べ野蛮人ども!」とミュシアス。
その後彼は一旦自分の戦士団の者たちとこんな相談をした。
「……同じ内容をずっと喋ってると自分が何を言ってるのか分からなくなるな(汗)。あと同じ繰り返しは物凄くつまらないというか、精神的につらい。もうちょっと別の言い方できないだろうか?」とミュシアス。
「いや、処置の内容は変えられないので(汗)……繰り返しはそんなに嫌なんですか?」と部下。
「嫌じゃないのか? 私はなんだか妙に嫌だ……でもだからといって『ひねり』も思いつかないし……どうするべきか……」とミュシアス。
「妙なこだわりをお持ちですね若は……(困惑)」と部下たち。
ミュシアスは部下たちと『あーでもないこーでもない』と話し合ったが結局名案は思い付かず、とりあえず勢いで喋ることにした。
「聞け『勇士』たちよ!……ってこれはだめだな……(小声)、聞け……エデュミン人たちよ! コロコス人に武装を許されていた者たちはその武具をすべて捨ててもらうが……捨ててもらう! あと50戸以下の農村へ移住だ! あ、いや! もともとある50戸以下の農村へ行けって意味ではなく市民たちが分散して50戸以下の農村を造れって意味だ! お前たちはよく耕す畑を求めて各地を転々とすると聞いているぞ! だからそんなに困らんだろ! ……えーと、お前たちは奴隷……じゃなくって、えーと……」とミュシアス。
「若! 『賠償金』が抜けてますよ!(小声)」とオルトロス家戦士団の者。
「(あ、そうだった……)あと追加で賠償金! 払うまで再武装禁止だ! あ、えーと、武装も解除だが賠償金払ったら再武装大丈夫だ! ……えっほ! えっほ!」とミュシアス。
「あ、大丈夫ですか!? 水飲んでください!」と部下。
「す、すまない……」とミュシアス。
「きけエダイラ人たちよ! ……本当に聞いてるるのか東夷ども!? 貴様らの処置は……あ゛ー……(のどが痛い)……こ、こえが……さっき咳き込んだら急に痛くなってきた……(喉ヒリヒリ)」とミュシアス。
「あ―わかりますそれ。ずっと歌ってるときに何かの拍子にせき込むと途端に声が掠れるんですよね~自分も結構ありますよ若」と部下。
「咳はのどの体力を奪うのか……と、とりあえず他の将校に替わってもらおう……」とミュシアス。
『若きオルトロス』はのどが痛くなったのですぐに他の将校にバトンタッチする。その後は皆が交代で同じことを叫びながら、ついでに『エデュミン』の城壁を観察して回った。
その城壁を見ていたペルクロスがすぐに気づいてうなった。
「……なんてことだミュシアス殿。考えてもみれば当然でしたが、『エデュミン』の町がずっと水につかっているせいで地面が緩んでいるようです。そのせいで城壁が歪んでしまっていてひびが入ってますよ。あれは『破城槌』でついたらすぐに『裂け目』ができます」
確かに彼らの眼前にそびえる城壁はあっちこっちひびが入り中には一部崩れ始めている場所まであった。壁を支えている地面に水がしみ込みぬかるんでいるせいらしい。巨大な城壁全域に『幻術』をかぶせ続けるのも大変なので『アンフィスバエナ』たちも特に隠す気はないらしい。
ミュシアスがのどの痛みを我慢しながらいう。
「(イガイガするな)……そもそも町の中も水浸しでしょう。『アンフィスバエナ』たちはその環境で戦闘になっても問題ないと思っているんだと思います。『城壁』はあくまで障害物でしょう……えっほ!(軽い咳)」とミュシアス。
そうやって町の周りをまわっているミュシアス隊をガムル、ニラト、タバサの部隊が後ろから追跡していた。
ガムルがいら立って、
『なぜやつらに好き勝手言わせている!? さっさと殺すべきだ!』
『魔王様は『籠城戦』の準備を進めておられる。あいつらは無視でいい』とニラト。
『そうだ。どうせ攻撃できないからああやって少しでも我々の注意を引こうとしているんだ。こうやって動き回られるだけでも我々の手を制限してきている。いやな連中だ』とタバサ。
もしミュシアス隊が『高所』から動かないままならこっそり彼らの兵を『エデュミン』市内に移して『籠城戦』の準備に回すこともできたのだが、動き回られるとなるとさすがにそれは心もとない。地味なことだが微妙に籠城戦準備を遅らせていた。
アイアスは後ろをついてくるそんな『四天王』たちを一瞥して、
「……これが終わったら別の『高所』に移動してそこを拠点にしましょう。同じ場所に舞い戻るのは危険です」
「そうですね。そうしましょうか」とミュシアス。
「しかし、こうやって呼びかけても市民たちから何の返事もないとは……彼らの我々への恨みはかなりのものかもしれませんね」とリカノス。
「まあそれはそうでしょうよ。『復興のための和平』を蹴った時点で一筋縄ではいかないでしょうよ。もうすでにこじれにこじれて長期戦になってますけどね……」とペルクロス。
彼らはとりあえずは別の『高所』にたどり着いてそこで警戒しつつ休憩し、それが終わるとまた『エデュミン』の周りを移動しながら呼びかけて~を繰り返す。そうしながらミュシアス隊がアイアスを呼び出して彼に任務を与えた。
「アイアス殿はどうか手勢を率いて『伝令』としてオルトロス候のもとに報告をしてください。一度我々が『エデュミン』から離れるのでその時に大急ぎでお願いします」
アイアスはノリノリで、
「わかりました。すぐに状況を報告してきます」
「はい。気を付けてお願いします」とミュシアス。
ミュシアス隊はまず船に乗ったまま一度『エデュミン』を離れ始めた。その動きにすぐにニラトたちも気づいて途中まで追跡するが、どんどん遠ざかっていくので途中で止まった。
『……なんだあいつら? 撤退する気か?』とニラト。
『何してる!? 追うぞ!』とガムル。
『……いいや追わなくていい。敵の友軍が近いのか? 深追いせず『エデュミン』に戻るぞ』とタバサ。
『言われなくてもわかってる』とニラト。
『なぜ!? なぜやつを追わんのだ!?』とガムル。
『お前は言われなくても理解しろ(呆れ)」とタバサ。
かくして『アンフィスバエナ』たちから距離が相手比較的安全になったので、アイアスが少数の手勢だけを連れて『埋め立て地』へと急行する。もちろんミュシアス隊は追跡がないように警戒を続けた。
だが『四天王』三人もアイアス隊は無視した。ミュシアス隊のもとに向かってきているであろう『友軍』と鉢合わせないためである。『埋め立て地』に近づけば近づくほどオルトロス候たちが駆け付けやすくなり、逆に『エデュミン』から遠ざかってしまうのでそれを避けたのである。
ミュシアスもそんな『四天王』たちの動きを見て、
「……敵は伝令の妨害をやめましたか。今は次の戦いの『準備段階』といったところという我らの推測がさらに補強されましたね」
横でペルクロスが震えるジェスチャーをして、
「こういう時に敵の奇襲を受けると潰走してしまうので思い込みは危険ですよ……ええ、俺はネガティブですとも、ええ。でも敵の方が体力があるはずなのでその線もあるんじゃないですかね?」
彼は割と後ろ向きな性格だった。リカノスも去っていくアイアス隊とそれを相変わらず体の上側だけ水面から出して見送っている『アンフィスバエナ』たちを見比べて。
「……まあ、敵が無理を押して攻撃してきたら我々も『埋め立て地』に逃げ帰らないといけませんね……それでも今この状態なら逃げやすいですけど」とリカノス。
もしこの時『四天王』三人がガムルの献策でアイアスの伝令隊を妨害に動けばすぐさまミュシアス隊と戦闘が始まる。そうなると体力の差で『アンフィスバエナ』たちが勝つかもしれない……だがやっぱり『友軍』の存在がネックになる。『エデュミン』から少しでも離れたところで戦闘するわけにはいかない。だから『アンフィスバエナ』たちにはアイアスを攻撃する選択肢は最初からなかった。
だがミュシアス隊の将校たちも別にそのことを見抜いていたわけではない。『アンフィスバエナ』たちの余力がどれほどのものか分からないので『いざとなったら戦闘になっても仕方ない』と賭けたのである(だが友軍がすぐに駆け付けてくれると信頼しているので分のよい賭けだと思っていた)。
アイアスが見えなくなって彼をめぐる『駆け引き』は終わる。だがすぐに次の『戦闘』が恥なった。『エデュミン』から少し離れていたミュシアス隊が方向転換し、『四天王』たちを迂回しながら『エデュミン』に戻り始めたのだ。
当然ガムルが叫び部下たちに命じる。
『おめおめと『エデュミン』の近くにまた居座らせるのか!? 折角近くに張り付いていても何もしなければ奴らにとっては路傍の石ころ、道端に捨てられている陶片も同じだ! ここは我らの存在をアピールしなければ何の意味がある!? 前を塞げ! 敵を『エデュミン』に近づけさせるな!』
この時『四天王』の三人はそのままミュシアス隊に立ちふさがるという選択肢もあった。もちろんミュシアスもそれを理解していたので兵士たちに『長大槍』を構えさせ、ラッパと太鼓を鳴らしながら向かって来た。完全な『戦闘態勢』である。
だがこれに対してガムルは『前を塞げ!』と主張したがニラトとタバサは『まだ籠城戦の準備もできていない!』と制して後ろに回り戦闘を避けようとした。
次回へ続く。




