ベニーカ・イル・キナン103『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『エルレイアーの永遠普遍の聖法』と『タルキュア擾乱part363』の物語
前回からですが、『ハリータ語』では『預言者』は『エルレイ『ヤ』ー』と表記されているので、コロコス人の発音は『ヤ』に統一します。ですがクノム語やトゥルエデ語では『エルレイ『ア』ー』になるのでそっちで表記する方式に変えます。これまで投稿された分はおいおい直していくつもりです(汗)。変更すみません。
マストカ「前確か『エルレイアー』と『エルレイヤー』の表記がまじりあってたから『ア』に統一したんじゃないの?」
シュナーヘル「作者は非常に移り気なのですわ(呆れ)」
ほんとうにすみません(滝汗)。
「『エルレイアー教』の『古の法』が『改変できない』って言ってるけど、『光明神オウレスオルマス(ウルスアルマ)』が『上書き』したりしないのか??」とハッシュ。
「伝統的に『古則(古の法)』は上書きされませんね。『すでに聖典で教えを啓示しているので必要ない』ということでしょう。あるいは『聖典を正しく伝承することが善行』であるからかもしれません。『邪心マルマンサ』が常に『聖典』を捻じ曲げようと画策しているという話ですので、それを避けるための最大の『防御』が『そもそも聖典の内容を一切変更しない』ということです」とイスティ。
『転生者』にはちょっとわかりづらい話かもしれないしそうでないかもしれない。『夢の世界』における『神々』は『生きている』ので『神託』を伺えば常に『応答』があり、必要と感じれば人間の都合に関係なく『古の法』を変える。なのでクノム人などにとっては『神々が神託を返し続け、気まぐれに、つまり人間の都合に関係なく古の法を変更すること』が『生きている証』になるのだ。
逆にもし『神託』が神官や巫女によって『捏造』されたものだったり、『古の法の変更』が『人間にとって都合のいい内容やタイミングになる』ことは『不敬な人間が捏造しているのに神々が何の反応もしない=神々が死んでいる(本来は不死なので『子孫のもとを去った』と表現する)』ということになるので『考えられないこと』なのであった(補足)。
「やっぱりコロコス人は自分たちの神を『弱い神』だと思っているわけね……分からないわ……なぜ『強き神』を崇拝しないのかしら……(理解不能)」とカムサ。
『まあでもその分人間が努力しないといけないってのは結構合理的な教えじゃない……?』とニムル。
「何言ってるの蛮族の教えよ! 同族の神話を馬鹿にしてるのが分からないの!?(憤激)」とカムサ。
『ご、ごめんなさい……(この話題センシティブすぎる……)(汗)』とニムル。
「東夷の『教え』を真に受ける奴は『同胞』じゃねーぞニムル(怒)。特にコロコス人のはな(生理的嫌悪)」とハッシュ。
(『コロコス人を恨むこと』がクノム人たちの『アイデンティティ』になっているので参考にするのは無理なんですよね……『歴史作家』たちが口をそろえて『東方には学ぶべき『驚異』がある』というのも一般的なクノム人たちの『反東方人意識』が強いせいですし……)とイスティ。
そういう意味ではクノム人も『エルレイヤー教徒』も変わらないだろうと彼女は思っていた。
『コロコス帝国歴史物語』、『エルレイヤー教の根本教義のために聖典の内容を改変することはできない』といわれてアンダゼブが『がっかり』した。
『えぇ……『新しい伝統』を造れないのならどうしようもないじゃないですか。なんで私に長々と話をさせたんですか? もっと早く言ってくださいよ時間の無駄です(不満げ)』とアンダゼブ。
ダイモーヤ王がついに怒った。
『だーかーら! 私は最初から貴様の話に乗り気ではなかったではないか! それでも貴様が何か画期的な『提案』が出来るのかと思って話をしていたのだ! なのに『聖典を捏造する』などと言ったから『無理だ』といっただけだ! 人のせいにするな! がっかりしているのは私の方だ『雑種』が!(怒)』
怒鳴られたアンダゼブの方はニヤニヤしながら肩をすくめてみせて、
『……神官でないあなたがそういうのなら、ここでさらに神官の話を聞いても無駄そうですね(溜息)』とアンダゼブ。
『『エルレイヤー教の根本教義』を理解してない『雑種』め……(忌々し気)。まあだが、実際に父上の時代から『異民族』たちの中で『エルレイヤー教』を正しく理解できたものなど居なかったからな、お前がその程度の知識しかなくてもそれは仕方ないのであろうな(見下し)』とダイモーヤ王。
『言っておきますけど私がお手上げになったらあなたは『ミナワンダ王妃と結婚』する以外の道がなくなるんですけど分かってます?』とアンダゼブ。
『う゛……そ、そうであった……(大失敗)』とダイモーヤ王。
若き『専制君主』が頭を抱えてしまった。そしてこの場にいるのはアンダゼブと、あと扉の外にいる衛兵たちでだけである。衛兵たちはハラハラしていたが『王の許可なく部屋には入れないし会話も遮れない』ので黙って入り口から顔を出して見守ることしかできていない。
ダイモーヤ王がそんな自分を見て、ふと自嘲した。
『……これが『諸王の王』か。確かに、人間的な感情を持ち合わせていたら発狂して死んでしまうかもしれんな……』とダイモーヤ王。
彼の言葉はとても重く、アンダゼブも深く頷いたのだった。
『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』
『埋め立て地』に帰還したダーマス候とモストルスが自分たちがおこなった『バスタイ』方面回復の経緯を語る。二人が『バスタイ』に到達した時にこの町でベアン隊からもたらされた情報を尋ねる。
「……気になるのは『モルバタエ』の内情だ。今ベアン隊はどういう状態だ?」とダーマス候。
彼が聞いたのは『バスタイ』のエダイラ人貴族たちだった。ベアン隊と連絡を保っていたのは彼らだった。
「『モルバタエ』の大部分は問題なく掌握できておられます。『モートラ』や『フィロルス河・マウハナー河上流域』には多くの木材がありますので今それこちらに送ってこられています。すでに必要な荷車は用意してありますよ」
もともと『モルバタエ』の土地は開発が進んでいないので原生林が多く残っている。『シクリクート攻囲戦』の時にこの町の周辺の木材は枯渇したまままだ復活していないが、その他の地域から切り出しが可能だった。どうやら『バスタイ』の街は『盗賊ギルド』から身を守っていてその間に色々と必要なものを用意していたらしかった。
ダーマス候とモストルスが素直に感謝を告げた。
「それはありがたい。感謝申し上げる」とダーマス候。
「…………感謝しましょう」とモストルス。
「あ、ありがとうございます……」とトゥッシラタ市長。
(今までのこと薄々思っていたが、ダーマス候の方が話がしやすい……? モストルス将軍は何だか寡黙で怖いな……)とカルッパタ。
続いて他の部隊の動きもあらましを知ることが出来た。
「やれやれ、やっとこれで『戦場の霧』が晴れた。『盗賊ギルド』たちが引き起こした混乱は収束、あとは『エデュミン』を回復するだけだな」とダーマス候。
「ええ、なんでしたらエダイラ人たちも連れて行きますか?」とモストルス。
これは『エデュミン』を開城させるためにカルッパタたちを城壁の外から呼びかけさせるか? という意味である。ダーマス候が答えた。
「……いや、彼らには『バスタイ』の安定に努めてほしい。モストルス隊も輜重隊を担当してくれ。私は迅速に『エデュミン』に戻って向こうの戦闘に参加する」
「……分かりました」とモストルス。
かくしてモストルス隊はまず『輜重隊』第一弾として『バスタイ』から提供された補給をロバに曳かせる荷車に積み込んでから彼らが『エデュミン』を囲む湿地へと急行したのだった。
そして場面は『2023/3/29投稿分』まで戻る。ダーマス候とモストルスがこれまでの経緯を話し終えて、最後にこう締めくくった。
「……以上が『バスタイ』との連絡回復までの経緯ですな。『モルバタエ』方面もおおよそ安定しているようですし、あと『エデュミン』だけです」とダーマス候。
「『エデュミン』を速攻で回復し、すぐに『ベニア』のサイガス隊を救援するか、あるいは陛下の本隊のもとに駆け付けるかすべきでしょうね」とモストルス。
そこでダーマス候が尋ねた。
「それで? ミュシアス殿が『エデュミン』に先行して『奇襲』をかけたとのことですが、彼からなにか連絡は来ていないのですか?」
ミュシアス隊はすでに『川舟』を用いて『エデュミン』に迫っており、そこで『アンフィスバエナ』のフェルゾ王、アピル、ガムル、ニラトの部隊相手に『川船の戦い』を演じていた。この時点ですでに戦闘を一時『中断』して『エデュミン』のすぐ近くの丘の上に居座っている(2023/3/17日投稿分参照)。
アルキオスが答えた。
「ミュシアス殿たちから伝令が来てましてどんな状況になってるかはわかってます。どうやら彼の部隊は『エデュミン』のすぐ近くに陣取って動かないようでして、そこに『アンフィスバエナ』の魔王が『交渉』を持ち掛けてきてるようですよ」
「どうやら相当『無理難題』を要求してきているようですがね……」とサイマス将軍。
どうやらミュシアスの方が色々と忙しいらしい。だが彼の部隊が健在だと分かれば善は急げである。
オルトロス候が頷き、ダーマス候とモストルス、アルキオスとサイマス将軍を前にして宣言した。
「……ではこれより、すでに『エデュミン』を攻撃しているであろうミュシアスの部隊に合流する! 川船はすでに用意してあるが、まだ足りないかもしれんからまずは必要な数の確認だな! それまで将兵たちは『補給』を摂取し休息して体力を回復させよ! 十分に体力を回復させてから『エデュミン』を攻撃するぞ! ハー! ヤーハッラー!」
『ヤーハッラー!』と全将兵たち。
そして場面は少し時間をさかのぼり『2023/3/17日投稿分』の続きへ戻る。『川船の戦い』を激戦の末一度『中断』させたミュシアスのもとに『アンフィスバエナ』の魔王フェルゾが『交渉』を持ち掛けていた。
『我の話し合いに応じよアラマンの将軍よ! ここで『交渉』しようではないか!』とフェルゾ王。
ここで彼はあえて『和平』という言葉は使わない。そしてこの呼びかけに『高所』の上で『テント村(陣営)』の中に居たミュシアスも出てきて答えを返した。
「……『交渉』だと!? 我らに全面降伏するということか!?」とミュシアス。
『たわけめ! 貴様らがここで武装解除して降伏すれば無事に友軍に返してやろうといっているのだ!』とフェルゾ王。
まずは『交渉』の席に着く前の軽い『舌戦』である。ここでミュシアスがすぐには返事をせず、ペルクロス、アイアス、リカノス達将校を集めて告げた。
「……『戦友』諸君に問いたい。恐らく『盗賊ギルド』と思われる『トロール族』の声が聞こえなくなりました。戦友諸君たちはこのことをどうとらえますか?」
問われた将校たちが一斉に答える。
『当然、『埋め立て地』の『戦友』たちが勝利したと解釈します』
「…………私もそう思います。友軍の強さを信じましょう」とミュシアス。
『はい、戦友ミュシアス殿』
仮に『埋め立て地』が敗北していたのなら彼らもまた敵地に孤立して『死』である。だがそういう『宿命』が織り上げられても彼らは逃げない。ただひたすら死んで『名誉』を残すだけである。この悲壮な覚悟こそが彼らの勝利の原動力なのだろう。
ゆえにミュシアスはすぐにテント村から顔を出し、『腹の探り合い』をしようとするフェルゾ王にきっぱりと言い放った。
「『降伏』以外の言葉は受け付けない! 死にたくなかったら立ち去れ魔族め! 私たちは気が短いぞ!」
その横でミュシアスのもとにいた『王の友』であるアイアスがリカノスに冗談めかして言った。
「……俺と『投げ槍競技』をしてみないか? どっちが当てられるかどうか試すんだ」とアイアス。
「的は『あれ』か? ふっふ、いいでしょう、乗りますよ……それ!」とリカノス。
ヒュヒュ!
『な!? おのれぇ!』と護衛兵たち。
ガキィン!
二人がおもむろに放った『投げ槍』をフェルゾ王の護衛兵たちが撃ち落した。
『ムゥ!?』とニラト。
『貴様らあああああ!! ふざけるな野蛮人どもがああああAAA!!』と護衛兵たち。
『GUOOOOOOOOO! やつらを殺せぇえええ!!』と『アンフィスバエナ』の兵士たち。
最大級の『挑発』に場は戦闘開始五秒前の雰囲気になったのだった。次回へ続く。




