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バルクス・イル・オルトロス&ノックス・イル・ダーマス112『東方大遠征:レーム北部攻略編』と『諸王の王と捕囚民3』と『巨人の戦い5』と『タルキュア擾乱part325』の物語

 ニムルが『ギナム貴族たちがハリスキーナを支配していた時代は捕囚民と超名門貴族たちが特権を分かち合っていた』という話を聞いて疑問をぶつける。


『?? 『捕囚民』の人たちも『貴族』がいたってこと?』とニムル。


 イスティが答える。

「はい。正確に言えば『ハリスキーナの各都市には必ず『捕囚民』が固まって住んで居る区画がありまして、伝統的に『捕囚民区画』では彼らの『共同体』の代表が同胞たちの『まとめ役』となっていたそうです。『捕囚民』たちは『古の法(様々な習慣)』が『ハリスコ人』たちと違っていたので、『捕囚民共同体』の中に独自の『裁判所』なども運営されていたとか。『捕囚民同士』の争いごとはこの法廷で裁いていたそうです。つまり『一定の自治権』が認められ居たわけですね」



『捕囚民共同体』は実際は『捕囚民居住区』の中だけに財産を持っているわけではなく、もともとそこに住んで居た者たちと同様に様座な商業活動に従事で来たし、現地民から農地を買い集めて大地主になることもできた。経済活動で何らかの制約は基本的に受けないものである。


 ただ『捕囚民共同体』がその国内でどういった地位にあるかは正直なところ『千差万別』である。『コロクシア』では『捕囚民共同体』は『書記官』や『技術者』としての需要が高く、かつて『暗黒時代』に『コロクシア』の各地を巡回していた『地下水道カナート技術者集団』や『製鉄技術者集団』のかなりの割合を『捕囚民』が占めていたのだった。そのため『オアシス農民』や『真珠湾』沿いの『港市(沿岸にある港を中心に発展した都市国家)』に『捕囚民』たちが固まっている傾向があった。一方『インディーン人』や『ムルディアナ人』は『遊牧民』の割合が高かったので自然と内陸の荒れ地や交通の難しい山の中に住んで居て『すみわけ』ができていた。


 他方『ハリスキーナ』では『捕囚民』たちは『ハリスコ人』たちと全く同じ職業につき、『農民』から『貴族』まで様々な人たちがいて、しかも『カリミエ人』や『ギナム人』などはもともと『ハリスキーナの外』からやってきた『外来の支配者』だったこともあって、正直なところ『捕囚民』と『ハリスコ人』達を分離する意味は薄い。だが『捕囚民』たちはもともとの故郷の文化伝統を維持していて『ハリスコ人化』することは『拒否』していた。そのためつねに『ハリスコ人貴族』たちと対立しており、結果『外来の支配者』にとっては『自分たちにしか頼ることが出来ない国内の少数派』として好まれ重用されやすい存在だった。


『新サルザリア』でも『ギナム貴族』たちは自分たちへの忠誠度の低い『ハリスコ人貴族』たちを監視牽制させるために少数派の『捕囚民共同体』を優遇しており、そのことが猶更『超名門貴族』たちを怒らせていたのである。もちろん『マニーヤ候』も『ギナム貴族』たちを抑え込むために『捕囚民』たちを利用していた(補足)。


 そして『レーム』地方や『レビーニ』ではそもそも『民族移動』が激しい地域なので『捕囚民』などの『外来からの入植者』はどのような性質の人たちであっても特段区別せず、『自分たちの土地に迎え入れて共存するor同化する』か、『攻撃して追い出すか征服して吸収するか追い払ってしまう』のどちらかの対応しかしなかった(『移住者がやってきたら土地を捨てて逃げ出す』という選択肢を取る者たちも少なくない)。


 最後に『ムンディ・アクナ』であるが、ここでは『捕囚民』たちは基本的に『辺境での国境警備』のために僻地に集団で移住させられていた(敵国に接していて危険な地域に強制的に入植させられるのである)。一方『外来の移住者』の方は『交易拠点』として『植民市』に建設を特別に許可されてそこに固まって住んだり、場合によっては『首都デイメン』に住むことも許されるなど扱いに差があった。だが『捕囚民』であっても『外来の移住者』であっても関係なくアクニ人庶民との接触を禁じられ、つける職業もアクニ人が忌み嫌う『海外交易』に従事させられたり(おかげで商業を支配で来ているが)と基本外国人の扱いはよくない。このように『捕囚民』の扱いは地域による差が大きかった。


 ハッシュが驚く。

「『捕囚民』って言ってみれば『在留外国人メトイコイ』だろ? 『カミス』に『在留外国人メトイコイ』専用の『裁判所』なんてあったか?」


 彼女たちの話は次回へ続く。










『東方大遠征:レーム北部戦役』、『アラマン中央軍:タルキュア防衛隊』


『巨人の戦い』はまだ続く。『盗賊ギルド』が前面からオルトロス隊を攻撃しているが『盾組』の圧力で崩れそうになっている。それを見かねてアピルが『湿地』の両側から飛びしてアラマン軍の後方を遮断しようと攻撃をかけた。それに対してオルトロス候も事前に軽装歩兵部隊を予備でおいており、彼が対応した。


 だが今度は『聖石矢』がないアラマン軍の方が苦境に立たされる。軽装歩兵部隊がどれだけ矢を射かけても槍を突き刺しても『アンフィスバエナ』達は無理やり攻撃してくるのだ。だが煙を作り出して視界を塞いでしまう(つまりアラマン兵にチャンスを与えかねない)『魔法攻撃』は使用せず、ひたすら『槌矛メイス』を強化された筋力に任せて縦振りか突きをしながら突撃してきた。


『GUOOOOOOOOO!!』と正規兵たち。

『くっそおおおお!! ヤアアアハッラアアアアア!!』と軽装歩兵たち。



 その時だった。『湿地』にとどまって兵士たちに『護岸』を登るように鼓舞していたアピルのもとに『エデュミン』から使い魔が飛んできたのだ。


『アピル将軍! ニラト様より『聖石矢は偽物だった』とのことです!』


 この報告を受けてアピルは驚かなかった。だが『証言』を得られたので伝令に言う。

『……そうか。お前にはこの戦いが終わったら俺から褒賞を与える。ニラトの方は大丈夫か?』

『ありがとうございます! 向こうも戦闘の真っ最中です! おそらくまだ戦っているかと!』と使い魔。


 アピルはその使い魔を自分の影にいれて『しばらく休め』と言っておき、それから思った。

(……偽物だとわかったのならすぐにでも兵士たちに言えばいい……だが『ひとひねり』するのもありか)


 彼がそう思っている横で『埋め立て地』の反対側からも遅れて『アンフィスバエナ』正規兵たちが同じ手順で上陸を試みる。そっち側にも瓦礫を盾にするアラマン軽装歩兵部隊がいて応戦していた。


 そしてその軽装歩兵たちの後ろにいるオルトロス候に高級将校たちが言う。

「……候、『(偽)聖石矢』も使わないのですか?」


 オルトロス候はまたもうなずいた。

「ああ、それも我慢してくれ。使いどころを間違えるのと作戦の全体が崩壊する……『偽聖石矢』を使えるのはミュシアスだけだ。『エデュミン』を落とすこと以外に使ってしまってはここを切り抜けても最終的には勝利できなくなる……」


 彼が心配してることは『ミュシアス隊が聖石矢を使う前に自分たちが使ってしまうと偽物だと先にばれてしまう』ことだった。魔族は使い魔行き来させて人間の伝令よりも『確実に』連絡を取ることができるからだ(スピードは早馬より速いかは計測していないので分からないが、使い魔は魔法で姿を隠しながら飛んで行けるので『確実性がある』とクノム人たちからみなされていたが、だからといって自分たちが使おうとは思っていない)。


 使い魔の存在と汎用性の高さは魔王軍が持つ最大の『強み』といえるだろう。老将軍はここで将兵たちの興奮がひと段落し、それに合わせて『盾組』がわずかに緩み始めたことを目ざとくみつけた。


「む! 引き締めなおさねば!」


 戦場では状況が目まぐるしく変わるがなれたものである。すぐにアラマン兵がも腕に装着するタイプの小さい丸盾を掲げながら馬を駆って叫んで回る。彼の護衛兵士たちも槍と盾を叩いた。


「ここはこのまま耐えろ『戦友ヘタイロイ』たちよ! 『運命の車輪』は常にくるくると回り続けて人間たちを一所にはとどめ置かぬ! われらの『勝利』は『エデュミン』を落とすことだ! ここで敵をひきつけ続ければ友軍が『けり』をつけてくれるぞ!」



 この言葉に興奮冷めやらぬ兵士たちが『こなくそ!』と再奮起し始める。もうそろそろミュシアスたちが『エデュミン』を落としてくれる、という絶大な信頼の表れである。


 だがこの時『アンフィスバエナ』正規兵たちは今回も全員が『埋め立て地』の上陸に成功していた。最後にアピルも登り、彼が突然正規兵の『密集方陣ファランクス』の横の開けた空間を走る。


 そのままアラマン兵たちが臨時で作っていた簡単な『瓦礫』の城壁バリケードの足元まで来てわざと自分の存在をアピールするかのように叫んだ。


『方陣を乱すなお前たち! 『密集方陣ファランクス』は本来魔族が発明し人間族に教授した技術(根拠なし)だ! 我らに一日の長があるぞ! 人間どもに負けるはずがないのだ!』

 

 さすがに方陣の端にいる兵士たちが驚いて、

『前に出るのは危険ですアピル様!?』

『おはやくお下がりください! 敵の攻撃を受けます!』

『あなた様が死なれたら我らは戦えなくなります!』


 さらにはアラマン兵たちも『瓦礫バリケード』の上から気づいて射撃してきた。


「あそこに指揮官がいるぞ! 攻撃しろ!」と兵士たち。

『む!? それは『聖石矢』だな!』とアピル。

『……え!?』と『アンフィスバエナ』正規兵たち。


 ドカカカカ!!


 アピルはニラトと同じく飛んできた投げ槍や矢を『結界』と『槌矛メイス』で弾き飛ばす。だが彼はわざと矢を一本だけ器用に急所を外して受けた。


 ドス!


 そしてすぐにその矢を引き抜いて兵士たちに『幻術』で『キラキラ光る矢じり』に見せてから叫ぶ。

『見ろ! これは『聖石矢』のように見せているだけの偽物だ! やつらはすでに『聖石』を失っていることがこれで『証明』された! もう我らには何も恐れるものがないぞおおお!!』

『おお! 真ですかアピル様! GUOOOOOOOO!!』


『アンフィスバエナ』正規兵たちの攻勢が勢いづいた。逆に軽装歩兵部隊が動揺し、後ろで見ていたオルトロス隊が舌打ちする。


「……魔族め! 使う前に無力化してくるとは!」

 そこでそばにいた高級将校の一人が言う。

「オルトロス候、敵もただの推測ではこんなことはしないでしゅう。たぶんミュシアス殿が『偽聖石矢』を使ったんですよ。それで敵に露見したのです」


 オルトロス候が『ふむ』と少し考えてから、

「……なるほどな。まあそう考えるのが妥当か。では『偽聖石矢』を使ってしまえ。もういいだろうな」

「は!」と将校たち。


 軽装歩兵部隊が『偽聖石矢』を使用したが当然『アンフィスバエナ』たちは特に動揺はしなかった。だがオルトロス候は『偽聖石矢』をすべての兵士たちに持たせて使用を禁じていたため、『密集方陣ファランクス』を構成する重装歩兵たちの中で『直接戦闘に参加していない』後列の兵士たちからも『偽聖石矢』を軽装歩兵部隊に譲渡させる。通常重装歩兵部隊は弓矢を持ってないので(司令官が特別に持たせない限りは所持しない)、ある程度だが軽装歩兵部隊の助けにはなった。


 これで状況はいかのようになった。


 オルトロス候の部隊のうち重装歩兵たちと下馬騎兵(軽装歩兵)たちは前面の『巨人の鎧』をはじめとする『盗賊ギルド』と戦い、もともと関所を守っていた軽装歩兵部隊は『密集方陣ファランクス』の後方に布陣し『埋め立て地』の両側の『湿地』から登ってきた『アンフィスバエナ』たちと戦闘中だ。


『第三次総攻撃:巨人の戦い』は決着へとなだれ込んでいく。次回へ続く。

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