はじまり
「同じクラスだったね。」
「そうね。嬉しいわ!」
僕と八重は他愛ない会話をしながら教室に向かって歩く。
「週末に僕の好きなサーカス団の公演があるんだ。」
「どちらのサーカス団?」
「Variant」
「知ってるわ!最近有名よね。」
「そうなんだよ。型にはまらないところが良い。それが彼らの個性なんだ!」
「橘楽しそうね。」
八重はVariantについて話す僕を見て微笑んでいる。なんか恥ずかしい。
「私も行ってみたいわ!」
「僕は構わないけど。八重、サーカス嫌いじゃなかった?」
「昔は嫌いだったわ。でもいいじゃない。」
「わかった。これ、パンフレッ…」
ドスッ。
「痛ってぇなぁ。おい!」
不良とぶつかったみたいだ。めんどくさいな。
「すいませんでした。」
「気にくわねぇ態度だな…。」
「彼も反省してます。ごめんなさい。」
不良は八重のことをじっと見る。
「叶八重、知ってるぜ。」
「しかも、このパンフレット。最近話題の奇妙な連中じゃねぇか。」
そう言うと、不良はパンフレットを破いた。
「あなたなんてことするの!」
そして、八重の腕を掴んだ。
「いたっ!」
何なんだこいつ。ふざけてる。
「…おい、お前っ!!」