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移住計画。  作者: 山狩楚歌
2/5

第1話「トリップ計画」


僕は桜舞い散る中「東北大学」に入学した。


部活のチラシのアーチをくぐり抜けると、

ピンクの生き物が風で流されアーチの流線型を撫でながら僕に向い飛んできた。

「う、風強ぇ…」

髪の毛の中にピンクの生き物が迷い込むと僕は1年生の名簿にサインを付け名札を受け取った。


「はい。理工学部の本間忠文です。」


 何食わぬ顔で教務から教科書の袋を受け取ると、地図を畳み研究室棟にあるロッカーまでの最短距離をゆっくり歩く。

花壇をジャンプし、PCラボに入り裏口から出て、ピロティの脇を抜け

研究棟の階段を上り自分のロッカーに教科書をぶち込む。そして、3段式ペットボトルロケットに向かって歩く。


 考古学を選ぶのは気の迷いだった。

いつも汗だくにして眺めていた3段式ペットボトルロケットは今はとても近く高く見えている。

僕は土木や復元に興味を持っていたのでは無く、その先の根っこに詰まっている夢と

3段式ペッドボトルロケットをかぶらせて情熱を燃やしていたんだ。


実際史学の現場では、草を刈ってシャベルを持ってひたすら日雇いと一緒になって硬い砂を掘り返す。


土器の破片が見つかるだろう?

 そうしたら現場に居る先生が四方5mにマーカーコーンを立てて黄色いテープを張り巡らせ、

僕と日雇いは次に貝塚を掘り当てるんだ。日が変われば鉱山で穴を掘り出た石をタンカーで日雇いに運ばせる。

それで僕と日雇いは額の違う給与を貰う。

それで先生は僕と目を合わせず書類と地図に墨を入れ筆に持ち替える。

そんな日々が嫌になった。


君が雑草だったら嫌にならないかい?やっと緑の蕾を付け気力を振り絞っていたら、

鼻水垂らした子供に蕾をむしり取られるの。ただただ僕はひざが笑うだけだった。

そんな日々を春夏秋冬の1周回ったら心の限界点に到達し、教授の元に到着した。


僕は今先生の隣では無く、教授の隣に立っている。


「中谷教授。もう片付けですか? 」


「おぉ、君は。史学の。須藤教授はもう居ないよ東京理科に移動だそうだ」


1年生の名札をポケットから取り出すと教授の表情が変わる。


「また入学したのか。今度は何処に?ここ?」


「そうです。理工学部に」


「そうか。さぁ、手伝って」


 僕と教授は今まで打ち上げたペットボトルの残骸を拾っては袋に集めながら、

今までの事や、仕事の事や、今興味を思ってる事を話した。特に食いつく事は無いものの”昆虫の化石”には

異常な興味を持ってくれ目を輝かせていた。



「昆虫の化石からは色々な事が分かる。なぜ進化したのかがな。

顎が発達していたり、羽の骨格が違っていたり…

しかし顕微鏡は化石に対して一つしか用意されていない狭き門さ。

そう、まあ落ち込むな。この世には地球よりも地球らしい星がある。


ケプラ452b、グリーゼ832c、ケプラー186f…」


 最後の3個を惑星に見立て、拾いながら説明をする。

回収し終わってもなお、話が止まらないようだ。

種類、特徴、地球との互換性、特異性質…

ワンツーマンの講義を受けながら研修室に戻るなりホワイトボードの前に座らさられ、

スラスラとボードを数式で埋めながら説明が続く。



「見つかっているだけでも3種類。

この宇宙の中で地球以外にも同じような惑星を発見出来たのは、非情に鉱石があることだ。フフ…

いや、君と掛けてない掛けてない。掛かってるのは水だけでもうたくさんだ。


 それでこの中で実際に今のロケットで行ける星は、ない。

タイムワープができるか?ロケットの限界速度で492光年だぞ?

492光年先にあるケプラ186fでは我々の寿命がつきてしまう。

でも諦めてはいけない。ティコブエーラもケプラーと惑星に名前を付けた上で没日し、

その星をケプラーに学ばせた。誰も行けないと知って置きながら、手が届かないと知っておきながら。」


「それはなぜですか?誰も手が届かないと知っているのに」


「それはな。火星に行くというのが現実味を帯びるからだよ。

例えば火星までの距離で2年2ヶ月に1度最短で3ヶ月で行けるが、

帰りはまた1年10ヶ月後に軌道をあわせなければ地球へ行けない。

そうすると食料の量の関係や固形燃料の算出まで出さいないと片道切符になってしまう」


「火星に行く時に前もって計算しておけば良いんじゃないんですか?」


「それは違うんだよ学生君。そのロケットは火星に行く専用機になってしまうのは分かるかな?

火星に行くための物理計算に、火星に行くための固形燃料の質に、火星に行くための酸素ボンベの量。

それってもし物理演算が本当の物理の方程式と間違ってたら、もしブラックホールの引力の測定方法が間違っていたら、

もし人間が風邪を引いた時の呼気のサンプルがすくなかったら…

まぁ大体がブラックホール関連のことなんだがね…

本当のブラックホールのデータなんだろうか?」


「え、大変なことですよそれ、本当ですか?」


「本当かどうかは分からないが、私は直観的にそう思うということだ。

例えばブラックホールの引力の重力場は観測に一眼レフと同じものを使ってレーザーでの反射率で算出しているが、

レーザーは遠くのものであるほど曲がる。距離もレーザーで測定しているので条件不一致により特殊計算が必要だし、

ブラックホールをもし目の当たりにしたら表と裏や側面と上面の重力場をどのようにして見分ける?

ブラックホールを観測したのは2001年で本当にその時観測したブラックホールが全てに当てはまるのか?」


ガチャ、ドン


山積みのように音を立てて置かれたものは答案用紙だった。


「教授!何をやっているのですか!学生の期末テストの採点お願いしますよ?

明日試験結果の掲示板掲載日ですからね!わかりましたか?」


白衣をスーツの上から着ると僕に目を向け、こちらに向かってくる。

教授は渋々採点に入る。


「何だ君、教授は忙しいんだ。帰った帰った。それともあれか?誰も来ないここのゼミに入りたいのか?」


「そうだ。この学生はここのゼミのガイダンスを受けに来ているが、

僕の採点時間が長すぎて研究員なるかもしれない学生を取り逃してしまうかもしれない」


「それじゃあ、時間を考えてください。あなたには時間が無いんですよ。

良いですか?研究の発表会だって来週ありますし…」


教授は大変だ。学生のテストの採点に学会の発表会に物理コンテストの問題作成etc…大変だ。ん?



 視界の中で助教授の胸ポケットがゴソゴソしている。

細長い緑色が足を伸ばしくつろいでいた。

僕は助教授の話の腰をおらぬ様、そっと助教授に尋ねる。その間も細長い緑色は足を曲げたり伸ばしたりしている。


「なんですかこれは。」


「あ、忘れてたやばい巡生殖隔離いじってる途中だった」


助教授があたふたしながら隣の研究室に急ぐ。最後に教授に目で「採点しろよ?」みたいな

ニュアンスで威嚇すると僕もなぜか同じジェスチャーをして隣の研究室へ付いて行く。


そこにはあらゆる実験装置とバッタの飼育カゴが軽く100個はあり、

ビーカーには頭、翼、後ろ足で分けられた山も実験台を占領している。

助教授がNo9975-436号の飼育ゲージに胸ポケットのバッタを戻すと、僕の方を見た。


「驚いたでしょ?これじゃあゼミを受けたいと思わないさ。分かっている。

でも教授と僕は理工学部で生物学の境地まで立てたんだ。誇りに思う。それで、君はどう思う?」


僕はバッタがは好きだがここまでの量は見たことが無いからゾッとしつつも、少し興味を持った。

校正:H29.08.23

最後の一文おかしかったので文を修正しました。08.21

火星に行く用の→火星に行くための に統一しました。

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