プロローグ
【大樹イルスンミール】遥か昔からこの世界に存在する神木である。
その大樹の核から無限に生み出される魔源は世界に魔法を作り出し、人間やその他の生きとし生ける全ての生命の暮らしと命を繋ぐこの世界にとって無くてはならない源であった。
星の誕生から数千年に渡り大樹から放出された魔源は今では世界の隅々までに拡散、貯蓄されて自然と生命に常に活力を与え続けている。
いわば【大樹イルスンミール】はこの星にとっても無限の活動力と生命を維持していく為の核融合炉のようなものであり、また星を守護する命の神木なのであった。
こうして世界に満ちた魔源は人間には視認することは難しいが、人々は大樹の恩恵である魔源をエネルギーとして魔法に変換して行使することでその存在を実感することが出来ていている。
この世界で生きる上で人間という種族は魔法がなければあまりに脆く弱い存在ではあるが、大樹の恩恵と知恵を掛け合わせ人間が人類誕生から4000年の長きに渡る年月を生き延びられてきたことを否定はできない。
故に、【大樹イルスンミール】と我々人間との共存関係は切っても切り離せない一心同体であり、この世界の為にも我々は【大樹イルスンミール】を未来永劫慈しみ、感謝し、愛して護り続けていかなければならない義務があるのである。
「私達人間は、未来永劫に大樹を愛していかなければならない……か。この文書を執筆した人物は今はもう大樹の存在すら忘れられていることなど思ってもいなかったんだろうな。」
青年は手に開いた六法全書ほどもあろうかという分厚い書籍を見開き少し切なげな表情でそう呟いた。