表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

最終話

クリスマス・パーティー会場になっている体育館の前に、学園のヌシ“リュウノスケ”が箱座りをして、ガブリエラとハルナを待ち構える。

二人の姿を確認するやいなや、スックと立ち上がり二人に駆け寄ると頭を擦り付けた。

ガブリエラは、リュウノスケの巨体を持ち上げ、

「メリークリスマス、リュウノスケ。相変わらず、元気そうね」

そう言うとリュウノスケにキスをする。

リュウノスケは『ナーゴ』と鳴き、グルルと喉を鳴らした。

ハルナは、恐る恐るリュウノスケの頭を撫でる。

「自分、リュウノスケ言うんや。よろしくな。ウチ、ハルナや」

リュウノスケはハルナをちらりと見て、再び『ナーゴ』と鳴いた。

歓迎すると言ってるみたいた。

リュウノスケはガブリエラから飛び降りると、会場入口に歩き出しドアを頭で開け、二人を誘った。

ガブリエラは、目を細め微笑む。

「まぁ、なんてジェントルマンな猫なんでしょ。私達をエスコートしてるわ」

ハルナも笑う。

「ホンマや、ガブリィ」

二人はリュウノスケの頭を撫で、パーティー会場に入った。


会場内では、丁度、こころがみなみからの電話を切り、桜子がレーイチからの報告メールを見て、笑い合っていた。

そんななかハルナは、

「ちょっと挨拶してくる」

そうガブリエラに言い放つと、ステージに駆け上がった。

驚いたのは桜子や“はねくみ”、いや正確には、会場にいたガブリエラ以外の全員であろうか。

髪の毛の長さや色こそ違え、ハルナのルックスがあまりにも瑠奈そっくりなのだ。

桜子は驚き、ステージのハルナに問い掛ける。

「瑠奈?ううん違う・・・。貴女は誰?ハルナ?会った事有る気がするけど・・・」

藍が冷静に桜子に囁く、

「桜子ちゃん、あの()は、瑠奈ちゃんやウチらの知ってるハルナちゃんやおへん。全くの別人どす」

ハルナはニヤリと不敵に笑い、

「人に尋ねる前に、自分から名乗るのが筋違うん?アンタ?」

桜子はハルナの挑発的な態度にムッとするが、気を落ち着け、

「アタシは鷲尾桜子。この学園の生徒会会長。アナタは?」

「ウチか?ウチはアンタのライバルになる為に、遠路遥々クインシアからやって来たハルナ=スッツワルブムーア・フォン・タイラーや。よろしくな」

そう言い放つとステージから飛び降り、桜子に右手を差し出した。

桜子はクインシアと聞きかなり驚くが、何かを悟ったのかハルナの差し出した手を握り、

「ようこそ、アタシ達の聖クリストファー学園国際高等学校へ。ハルナ=スッツワルブムーア・フォン・タイラーさん。歓迎します」

刹那、ポロリと桜子の目から涙が一滴頬を伝う。

《この手の感じ、ぬくもりはまさしく・・・・、瑠奈!》

ハルナの手を引き寄せ、抱きしめた。

自然と口から出た台詞は、

「お帰り、瑠奈・・・」

ハルナは数秒抱きしめられたままでいたが、桜子から身体を離すと、

「ち、ちょっと勘違いせんといて、ウチはハルナや瑠奈って子とは違うで、生徒会長さん」

桜子が驚き現実を受け止めれずにいると、ガブリエラが近付きと声をかけた。

「メリークリスマス、桜子。そういう事だから、このハルナと仲良くしてやってね」

桜子は不思議な面持ちでガブリエラを見詰め、

「アナタはガブリエラさん・・・?にしては若いような・・・?」

ガブリエラはクスッと笑い、

「そうよ。あなたの知ってるそのガブリエラ。ある事情によりこの姿になってしまったの。ハルナもそう。詳しくはまた後で・・・」

ガブリエラは桜子を抱き寄せると、頬にキスをした。

耳元で囁く。

「私も四月からここに来るから、よろしく」

“はねくみ”のメンバーはハルナの事にも驚いているのに、ガブリエラが学園に来ると聞いてさらに驚きを隠せない。

こころは思わず、

「あちゃー、これはまた何か起こる気がするとよ」

ローズは楽しそうに、

「ワクワクスルねー、そう思わナイ?ベス」

ベスはニヤリと笑い、

「フォローがまた大変になりそうね」

皐月は深くため息を()くと、

「ちょっとベス、そのフォローするの大概、アタシなんだから・・・」

藍は、にぱぁと天使の微笑みで、

「ふふふ。ホンマどすなぁー、嵐の予感どす。でも、よろしいやおへんか。仲間が増えるのは、最高のクリスマスプレゼントどす」


同時刻、大阪府大阪市中央区平野町、豹崎モータース2階にある豹崎法律事務所。

事務所の主である真こと真矢が書類を片しているなか、2メートルを越す大男の虎谷(こたに)鉄矢(てつや)と真の姉の雪が応接テーブルに料理を広げやシャンパンを楽しんでいた。

雪はかなり酔っ払っており、

「真、早くこっち来て、アンタも料理食べ~」

鉄は両手に焼いたトリモモ肉を持ち、豪快にかぶりつくと、

「んまー!雪姉(ゆきねぇ)ーの料理、最高やわ。真、美味いぞ~。んぐっ、うっ。水、水ぅ~」

喉を詰まらせた鉄の前に、事務員の小泉(こいずみ)彩香(あやか)が、グラスに水をついで置き、

「慌てて食べるからですよ、鉄さん。奥さんはまた演奏旅行?」

鉄は、ゴクゴク水を一気に飲み、

「ぷはぁー、死ぬかと思たわ、彩香ちゃん、おおきに。そやねん、奈々は、涼太郎を連れてニューヨーク・フィルと演奏旅行。今日は確かワシントンD.C.やったはずや」

彩香は驚き、

「淋しくないんですか?鉄さん」

真が書類を片しながら、

「彩香ちゃん、鉄は奈々にベタ惚れだから、何も言えないのさ」

鉄はため息を()くと、

「確かにな・・・。まぁ、刑事なんて因果な商売やってたら余計や。家で帰りを待ってるより、演奏旅行であちこち廻ってもらってる方がええ。せやけどな、真。今日の昼過ぎ、嬉しい報告があったんや。奈々がまた妊娠したって!」

雪と彩香は祝杯をあげ、『うぉ~、おめでと~』と叫ぶ。

真は書類を放り出し、

「止めだ、止め。めでたい仕事なんかやってられるか!鉄。最高のクリスマス・プレゼントじゃないか。今日は徹底的に飲むぞ。そうだ、後でJJも呼びだそう」

皆んなが盛り上がるなか、事務所の扉をノックする音が、

「真、鉄、俺だ、龍之介だ。メリークリスマス、頼まれたワインとシャンパン持ってきたぞ」


様々な謎を残しクリスマスの夜は更けていく。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ