■■ 「……ミカちゃん、これの素材代はいくらぐらいなの?」
翌日の朝。
懲りていないと言うのか、華子はまたもや公太郎の家に訪れていた。ただ一つ学習しているのは学校にいく支度をしたままではまたもやヒトミにそれを奪われる恐れがあるため、今回は手ぶらである。
先日と同じように玄関先でこれは彼の両親に頼まれたことだからと自分を言い聞かせ、合鍵を使って家の中に入る。
土間にはミカの赤い運動靴が追加された他に、ヒトミが購入した色とりどりの靴があり華子の靴を脱いで置くところが無いほどだ。
それでも根が真面目なので脱いだ靴は邪魔にならないようにきちんとそろえ、抜き足差し足で廊下を進み階段も一段ずつ慎重に上がり、二階の一番奥、彼の部屋の前に立った。
ここまで誰にも見つかっていない。
はたして公太郎は起きているだろうか? 彼女がそっとノブを回すといつものように鍵はかかっていなかった。
そのまますーっと扉を開くと静かに静かに彼のベットに近づいた。何となく逆に夜ばいをかけているようだがそこは「彼のため」と言う建前に黙殺した。
そもそもフタバが居るのだ、華子が起こす必要も無いのである。だがしかし、もしもそうもしもフタバが寝坊したらどうする? そんな懸念から彼女はここに訪れている。
〈と言うか、ロボットも寝坊するのかな〉
それには自信が無いがとりあえずベットを見てみると、公太郎はまだ夢の世界の住人のようだ。掛け布団が規則正しく動いている。
時間的に余裕があるが早く目が覚めるのに問題無いだろう。
「公太郎、朝だよ!」
当然これくらいで起きないだろうと思いまず布団の上から身体を揺すってみる。
「ほらほら、朝だってば!」
この呼びかけで起きないとすれば夜更かしの結果だ。ならば次の段階に進む。
掛け布団を少しめくってみると、彼の身体は横向きで顔はあっちを向いている。
わりに寒がりなので冬は上下共に厚手のパジャマを着込み、布団をすっぽりかぶって寝るせいかそれをはいだだけで起きることがある。
今も寒さに背中を震わせ肩が大きく動いたと思うと仰向けになった。そして目をこすりながら華子の方を見る。
「おはよう、朝だよ公太郎」
「んー、あ、おはようヒトミ……」
「違うわよ! よく見なさいよあたしの髪を!」
華子の声はいきなり最大ボリュームになっていた。
公太郎はさらに目をこすって彼女の顔を見たのだが、
「あれヒトミ、髪切ったの?」
「だからあたしは華子だってば!」
「……あ、ホントだ」
本当に判っているのか疑いたくなるがこれ以上怒鳴っていると喉がダメになりそうだった。
「……全くもう、わざわざ起こしにきてやったのにその態度は何?」
「んー、なんでハナが起こしにきてるんだ?」
「そ、それはあんたのご両親に頼まれているからでしょ」
「フタバたちがいるから、もう起こしにこなくても大丈夫だと思うけど」
「でもでも、まだあんたのおばさんから『もういいよ』って言われてないから」
「そーだっけ。相変わらず真面目だなあ」
そう言いながら大きなあくびをしまた目がとろんとしている。その彼に活を入れようと布団に目を向けた時、彼女は妙なものを見つけた。
「公太郎、その赤い帽子は何?」
華子が指さす先、布団から赤い毛糸の帽子がちょこんと出ていた。位置は彼の胸元付近、公太郎も不思議に思ったらしくそっと布団を腰までめくってみる。
そこには彼の身体にしっかりと抱きついているミカの姿があった。
「むにゃむにゃ、おにいちゃまー。すごすぎますぅ……もうダメぇ」
ロボットが夢を見るかは別として、ミカはとても幸せそうな寝顔を浮かべている。
「……ああ、そうか、朝方に何か潜り込んできたと思ったらミカちゃんだったのか」
「ま、まさかあんた、この子相手に……」
拳をぶるぶると振るわせ華子はすでに爆発直前なのだが、寝ぼけている公太郎はそれに気がつかず優しくミカの身体を揺すった。
「ミカちゃん、もう朝だよ」
「……あれぇ、ここはどこですぅ?」
「目が覚めた?」
傍らで自分を優しく見つめる公太郎に気がつきミカはぺこりと頭を下げた。
「おにいちゃま、おはようございますですぅ」
「はい、おはよう」
ミカは身体をゆっくりと起こすとベットの横に立っている女性にも気がついたらしい。
「……ヒトミおねえちゃまも、おはようございますですぅ」
「だから、あたしは華子だって言ってるでしょう!」
ミカはその大声に驚きびくんと背筋を伸ばしたあと、ベットサイドの目覚まし時計を見て大きく目を見開いた。
「た、大変ですぅ、朝ご飯とお弁当の支度しないとですぅ!」
ミカは大慌てでベットからぴょんと飛び降りると、そのまま大急ぎで部屋を飛び出ていった。
「どうしたんだろうミカちゃん?」
「寝坊したんでしょ」
やはりロボットでも寝坊するんだ……華子はヒトミと間違えられたと言う敗北感を覚え、唖然としながらミカが開けっ放しにした扉を見ていた。
§
寝坊したミカのどたばたのおかげで朝のリビングもやや混乱したが、遅刻しない程度の時間に朝食にありつくことができた。
忙しかったせいかそれとも朝食はあまりバリエーションが無いのか、メニューはいつもと変らずトーストだったが食べられるものがあれば特に文句は無い。
公太郎を起こしに来た華子はフタバから、
「ご一緒にどうですか?」
と、屈託のない笑顔で誘われたが、彼女は丁重にお断りし自宅へと帰っていった。
少々猫背で朝食をとっていた公太郎だが、実のところまだどこかぼんやりしていた。
昨日の夜は寝る前に少しだけ自分のロボットを見ようと工作室に入った。そしてプログラムを再チェックしているうちに気になるところがいくつも出てきていつの間にか時間が過ぎていたのだ。
慌ててベットに入ってからうつろな意識の中でミカが布団に潜り込んできたため、そのまま眠ってしまったのである。
だらしないと思うのだがトーストをくわえながら何回もあくびをしている。そのダイニングで彼が気がついたこと……一人足りない。
「ヒトミはどうしたの?」
「まだ寝ています」
フタバがミカを手伝いながら教えてくれた。
家事に参加しないし学校へもいかないのでいつまで寝ていてもかまわないのだろうが、ご主人様を差し置いてぐっすり就寝しているメイドは問題なのではないか?
そこにフタバが寝坊の理由を説明してくれた。
「徹夜で家の周りの監視システムを組んでいたようです」
「監視システム?」
「賊が襲来しても素早く対処できるようにセンサーやトラップを仕掛けていましたから」
なるほど、それなりの仕事をしているのか……ぐうたらで寝ているわけでは無いのだと自分の偏見を反省した。
それに関連して、ミカと同じくアンドロイドでも睡眠時間が必要なんだなと思った。唯一フタバは寝ているところを見たことが無いが、どこかで休眠しているのだろう。
そのフタバは学校についてくると言うので準備のためリビングに引っ込んでいた。
そうこうしているうちに家を出る時刻になったのだが、台所からミカが飛び出してくる。右手にフライ返しを持ち頭にハチマキを巻き割烹着姿で公太郎に何度も頭を下げた。
「おにいちゃま、お昼のお弁当は必ずあとで届けますですぅ!」
「間に合いそうになかったら、俺のケータイに連絡してくれればいいから」
「ぜぇったい作りますから、待っててくださいですぅ!」
そう叫ぶとまた台所に戻っていった。
〈んー、何となくハナが弁当持ってくるような気がするし、久しぶりにあんパンとクリームパンの昼食もいいかな〉
そう思ってカバンを取り上げるとリビングに声をかける。
「フタバ、そろそろいくよ」
「……かしこまりました」
いつもと異なる消え入りそうな声で彼女が返事をすると、おそるおそるリビングから姿を現し彼の後をついて玄関に向かった。
そして二人で学校に向かうのだった。
§
フタバの様子が先日と少し違うのは彼女の服装に原因があった。
家から末禅高校までは新たに購入した深緑のコートを着ていたのだが、教室に入ると恥ずかしそうにそれを脱ぐ。そしてますますうつむく彼女に平蔵が感嘆の声を上げた。
「わーお、良く似合っているねえフタバちゃん」
「そ、そうでしょうか」
「うん、とても良く似合っている」
公太郎もフタバの背後で平蔵に同調する。華子も声こそ上げなかったが男子の意見に笑顔でうなずいていた。
それはとても口に出せないはしたない格好や外見年齢に比べると幼いフリフリの洋服でも無い。彼女が身に着けているのは末禅高校の女子制服だった。
この高校の制服は男子が標準的な黒の詰襟、女子が濃紺のブレザーとプリーツスカート、同色のベストに白のワイシャツとえんじ色のネクタイだ。
ネクタイには学年に合わせて白いストライプが斜めに入る。フタバは二年生なので二本入っていた。
転入日が正式に決まっていないが身分証さえ着けていれば校内でこれを着ることに何の問題も無い。
それが証拠に朝のホームルームでも、フタバを見た担任の碧は、
「なかなか似合うな」
そう感想を漏らすとそのまま職員室に帰っていった。それがクラスの男子の総意でもある。
だがフタバにしてみるとメイド服があまりに定着しているのか、公太郎以外の前でほかの服を着ることに大きな抵抗があるようだ。
それを何とか説得し学生服を着てもらったのだが、頭の上のフリルだけは外してくれなかった。
それともう一つ、フタバが気にしているのは席順だった。
一昨日の窓際の並びが平蔵、公太郎、フタバの順だったのだが今日はフタバと公太郎が入れ替わっている。
これは授業を見学するのだし現在使用している教科書を見るのが良いだろうと言う碧の提案で入れ替えたのだ。一番後ろの予備席では隣が居ないため教科書を見せてくれる級友も居ない。
余っていた机を持ち込むと公太郎は一番後ろの席に着いてそのまま机に伏すと寝てしまった。
フタバの横は華子なので意地悪することも無いだろうと思い、安心し夢の世界に直行したのだ。
それは以前と同じように午前中はしっかりと眠り続けた。休み時間になるとフタバがその寝姿をじっと見ているが彼は全く起きない。
そのまま静かにお昼まで時間が過ぎたのである。
§
「……華子さん、ご主人様はいつもこんなに寝ていらっしゃるのですか?」
そして昼休み、今もフタバの後ろの席で健やかな寝息を立てている公太郎を見ながら、彼女は少し心配そうに尋ねる。
「もしかしたら何か具合が悪いのでしょうか?」
そんなフタバに答えるように華子はふっとほほえんでみせた。
「授業中に起きている方が珍しいわよ」
「そうだよな、全然居眠りハムタロウじゃなかったぞ」
フタバの前に座る平蔵も公太郎の頭頂部を見ていた。今日はフタバが近くに居るのでいつもより舞い上がっているようだ。
「そのくせ俺たちより成績がいいなんて許されないぜ」
「ホントホント」
珍しく共闘する平蔵と華子、一人だけフタバは静かに公太郎の広い背中を見ていた。その横顔に華子が語りかける。
「今日はお弁当、持って来てないの?」
「実はミカが寝坊したので間に合わなかったのです。昼休みまでに届けると頑張っていたのですが」
「お弁当ってあのチビッ子が作っているんだ」
「そうです。ミカは家事専門ですから」
「なるほど、それで昼休みになってもこいつが寝ているのね」
しげしげと公太郎の寝顔を見る華子、もちろん今日も彼のために「ついで」の弁当を作ってきている。しかしフタバからその話を聞くとどこか出しづらい。
「おーい萌葱」
教室の後ろの扉が開きそこから顔をのぞかせたのは担任の碧である。それにすぐ答えたのはフタバだった。
「近松先生、何かご用ですか?」
「いやフタバくんではなくて、公太郎の方なのだが」
碧に指名されてもまだすやすやと寝ている。
「そうだな、フタバくんでもかまわないが、お客さんが来ていて……」
「おにいちゃまぁ、お待たせしましたですぅ!」
碧の言葉を遮って彼女の前に割り込んできたのは、赤がベースの可愛らしいメイド服の上に割烹着を着けたミカの姿だった。
大事そうに抱えて持っている包みは公太郎の弁当なのだろう。まるでそれが呼んだのか公太郎が目を開けてゆっくりと上半身を起こした。
「……おやミカちゃん。間に合ったみたいだね」
「ごめんなさいですぅ!」
公太郎の背筋が伸びたタイミングに合わせミカが戸口からダッシュする、起き抜けの彼がその勢いを止められるはずも無く二人は声を上げイスから転げ落ちた。
下敷きになった公太郎の胸の上にミカがぺたんと座り込む、直後ふわりと浮かんでいたフレアスカートが彼の顔を隠した。
その惨状を気にすることなく碧は教室内に声をかけた。
「……萌葱、あとでハンコ取りに来いよ」
「は~い」
顔はスカートの中なので少しこもった声になっているが、その返事を聞いて碧は教室をあとにした。
「ミカ、ご主人様になんてことするの!」
「えへへ、勢いよすぎちゃったぁ」
「とりあえず胸の上からどいてくれ」
公太郎が小声でそう頼むとミカはよいしょっと彼の上からどいて立ち上がり、小さな手を差し出した。
「大丈夫ですかぁ?」
「ふう、すっかり目が覚めた」
その後フタバと二人で彼を起こしイスを直すと、ようやくミカがにっこりと笑顔になる。
「その子は誰なんだ?」
一連の様子を見ていた平蔵が興味深げにミカを指さし公太郎に質問した。しかし答えたのはフタバだった。
「わたしの妹でミカと言います」
「ヘー、さすがフタバちゃんの妹だけあって可愛い女の子だね」
平蔵にほめられたミカだがそれは軽くスルーし笑顔と弁当箱を公太郎に向けた。
「これ、お弁当ですぅ」
「はい、ありがとう……ここまで一人で来たの?」
ミカは自慢げに大きくうなずく。
「ヒトミおねえちゃまにここまでアシストしてもらいましたぁ」
「アシスト?」
彼の疑問に小声で答えたのはフタバである。
「衛星で追跡したのです。道順を通信で伝えていたのでしょう」
「そっか、そういうところは便利だね」
そこで華子もうらやましそうにうなずいていた。
「ホント、道に迷わなくていいわよね」
「あれ、ヒトミおねえちゃま、どうしてここにいるんですかぁ?」
「だから、あたしは華子だって言ってるでしょう!」
「そうよミカ。姉さんはもっと大人っぽいでしょう」
あまりフォローになっていないフタバの言葉が華子の顔を少し歪ませる。しかしミカは大きくうなずいて同意した。
「うぅ、そうですねぇ、ヒトミおねえちゃまに比べるとこっちの方がガキっぽいですぅ」
「なんだとこのチビッ子!」
「ハナ、むきになるなよ」
「ホントですぅ、ガキだからむきになるのですぅ」
「や、やんのかこのチビッ子!」
「やりますですかぁ、このニセモノ!」
「まあ、ハナもミカちゃんも落ち着いて……せっかくの昼休みなんだし」
目の前でおこなわれている低レベルな言い争いを制し、公太郎はミカが持ってきた弁当箱の包みを開くとフタをあけた。
大きさは華子がいつも持ってくる公太郎用のそれとほぼ同じである。作りすぎて残してももったいないと考えているのだろうかごはんもおかずも適量に収まっていた。
公太郎は無造作に箸を入れようとしたのだが、そこに華子が待ったをかけた。
「なんだよ、これから食べようと思ったのに」
「これは……そんな……」
華子としては幼児が作る弁当だと高をくくっていたのだが、その内容に衝撃を受けていた。
それは『弁当道』を極めようとする者だけに判る完成度の高さだったのだ。華子でもよほどコンディションが良くなければここまでの作品を作れない。
「……ミカちゃん、これの素材代はいくらぐらいなの?」
「んっと、昨日スーパーで買った材料から作っているのでぇ、おそらく一五〇円くらいですぅ」
「……な、何ですって!」
「どうしたんだハナ、もう食べていいのか?」
「もうちょっと待ちなさいよ! それでこのお弁当のカロリーは?」
「えっとぉ、七二〇キロカロリーですぅ。おにいちゃまは一日に二二〇〇キロカロリー必要なので、お昼は一〇分の三くらいで計算していますからぁ。
ちなみにタンパク質は二一グラム、炭水化物が一二一グラム、脂質が一九グラム、塩分は二グラム、食物繊維はキャベツ八分の一玉程度ですぅ」
ミカの説明を耳にした華子が見て判るように肩を落とす。彼女の真上だけ蛍光灯が切れたかのように暗くなり、周囲に低温域を乱打したピアノの音色が流れていた。
つまり、負けを認めたのである。
味のことについて全くふれていないが、華子ほどになると匂いをかげばだいたい予想がつくのだ。
「なあ、もう食っていいだろ?」
それにも華子はかくんとうなずいただけだった。そのあと巾着から公太郎用の弁当箱を引きずり出すとそれを平蔵に差し出した。
「里中くん、あげる」
「え、俺がもらっていいのか!」
それに対しても力無くうなずくだけ、彼女は自分用の弁当箱を取り出すとそれを抱えて教室から静かに出ていった。足下がふらふらして少し危うい。
「どうしたんだ、ハナは?」
「こう言う時、敗者に何もくれてやってはいけないんですぅ」
ミカはまるでチャンピオンシートに腰掛けるように華子の席に座った。高校生用のイスなので深く腰掛けるとミカの足は床に届かず、ふらふらと来客用のスリッパが揺れていた。
「おにいちゃま、お味はどうですかぁ?」
「うん、とってもおいしいぞ」
食せずして華子に負けを認めさせただけあってそれはとてもおいしいものである。ただ公太郎にしてみると味は甲乙付けがたいのだが、ここは素直にミカをほめることにした。
とても微妙な判定だと思うので、あの負けず嫌いの華子がこのままで済まさないだろうと容易に想像できる。彼は咀嚼しながらその対決の時は遠くないと感じていた。
公太郎にほめられて上機嫌なミカなのだが、彼女の視線は華子が平蔵に渡した弁当箱に向いていた。
「おー、これうめえ、やっぱうめー、すっげーうめえ」
平蔵の語彙は貧相なのだがその弁当がとてもおいしいと言うことは十分伝わってくる。また普段は公太郎の腹に収まっているそれを間近で見るチャンスである、他の男子も平蔵に近づいて弁当箱をのぞいていた。
「……これは、勝って兜の緒を締めよ、ってことですねぇ」
「手強そうか?」
「華子たんは強敵と書いてともですぅ」
やはりそうなのかなと思いつつ、フタバを見るとノックアウトされた華子を思ってかどこか心配そうだ。
「フタバ、お弁当を食べたらこの学校の中を案内しようか?」
「……よろしいのですか?」
「今後正式に転入することになるんだろうし、意外とおもしろい施設もあるから見て回ろう」
「ハァイ、ミカも見学したいですぅ」
「そうだね、一緒にいこうか」
「では、よろしくお願いします」
三人で見学の相談をしていると、そのすぐ横で『究極の弁当』を取り合って男子が醜い争いを起こしていた。




