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1.その、視線の行き先

 2005年に執筆したハロウィン話をまるっと転載しています。

 そのため、表現等古いところがいくつかありますが、「時代って変わったんだなあ」とお考えいただけると幸いです。

 大きなところは以下の二点です。

 昔はスマートフォンとかなかったですしィ!

 ハロウィンもメジャーじゃなかったんだよォ!

「ねえ、坂上」

 私は声に力を込めて呼びかけた。

「私の話、聞いてる?」

 問いかけたものの、聞かずとも答えはわかっている。

 っていうと、ちょっと違うか。問いかけてはみたけれど答えが返ってこないのはわかってる。

 放課後の教室に二人きりなこの状況。そんな中で坂上は私の目の前にいる。

 なのに坂上の視線はどう見てもはっきりきっぱりと窓の外を向いているのだ。

 私は思わずため息をついてしまった。

 坂上の視線を追うと、その先にいるのはあの人。名前を知らないってワケじゃない、でも素直に名前を呼びたくないあの人。

 同性の私から見ても、とってもきれいでうらやましくなってしまう、あの人。

 坂上は彼女が去るまで一点を見つめたまま微動だにしなかった。彼女がその場所から移動してもまだしばらくはそのまま。

「もう、坂上。やる気あるの?」

 しびれを切らして呼びかけてしまう。

 三日も続けば彼があの人を見つめるのにも慣れてくる。何でもないように、坂上が何を見ていたかなんて気にしてないそぶりをするのは慣れないけど。

「ん、ああ」

 坂上ははっと我に返った。整った顔に照れ笑いが浮かぶ。

「ごめん、ついうっかり」

「ついうっかりで視線そらすな」

 私は目を細めて、きっと坂上をにらんだ。この怒りは正当なものだ。

 あの人なんて関係なく。

 嫉妬でも何でもなく。

 放課後の貴重な時間を割いて、坂上の勉強を見てあげている私はここで怒る理由がある――と思う。

 坂上が中間の古文が激烈に悪かったから教えてって私に言ってきたのは三日前だ。

 私はいろんな意味で驚いた。一つめは坂上が激烈に悪い点を取ったって事実。だって坂上は私よりもよっぽど成績がいい――そんなことをちらほらと聞いてたから。

 二つめはその提案を私にしてきた、そのこと。

「坂上、頭いいんじゃないの?」

 不躾な私の言葉にそのとき坂上は笑って、

「昔っから国語って苦手なんだよねー、俺」

 なんてけろりと言った。

「しかも何で私に?」

 私は坂上のことが気になってる。気になってるから坂上に好きな人がいることを知ってる。

 あの人は去年坂上と同じクラスで、坂上ととても親しいことも知ってる。

 そしてあの人は、学年で一、二を争うくらい優秀な人なんだって事も知ってる。

「未夏ちゃんが国語に強いって聞いたし」

 坂上の提案は私にとって予想外のものだった。

 私は坂上ほど頭がよくない。でも確かに、国語系の科目限定なら学年の上位にいると思う。

 だから申し出としては間違ってないけど、でもそれならあの人に教えてもらった方が坂上にはよっぽどいいはずなのに。

 これは私にとってチャンスなんだろうか、それとも坂上はあの人の手を煩わせるのは申し訳ないから、手近な私に頼んだんだろうか――そんな風にとても悩んだ末にうなずいた。

 わざわざ私に言い出したって事に期待してもいいんじゃないかって、そう思ったから。

 でも、願望はかなうことはなさそうで。私に少しも期待させることなく坂上は毎日あの人の姿を見つけ出しては見つめてた。だから今ははっきりと後者が正しいってわかる。

 本当は最初っからわかってたけど、さ。

 坂上はあの人がどうしようもなく好きなんだ。私が坂上のことを好きなように。

「そんなに怒っちゃカワイイ顔が台無しだよ、未夏ちゃん」

 怒っていいんだか悲しんでいいんだか、わからない。私がそんなだっていうのに、坂上は気付かずにけろりとそんなことを言ってしまう。

 そもそも坂上は口が軽い。何でもぺらぺらと口にしてしまう。あまりにも軽く口にしてしまうから、どこまで本気かわからない。

 好きな人に可愛いって言われたらうれしいけど、坂上の言葉は重さに欠ける。

 まして、坂上が好きなのはあの人なんだから。

 だから――。

「何言ってんの、坂上」

 だから何でもないことのように、私はそう応じる。

「馬鹿言わないでよ」

「馬鹿なこと言ったつもりないけど」

 高校生にもなって、面と向かってカワイイなんて言うもんじゃないんだよ坂上。彼女でもない私に、けろりとそんなこと言うのは反則だ。

 あの人が好きなのに、私なんかにそんなこと言っちゃ駄目だよ。

 思わずもらしてしまったため息は、呆れたような感じに見えたらいいなって思う。

「何見てたのをごまかそうとしてるの?」

「え?」

 私はぐっと坂上に顔を近づけた。

 いっそのこと、はっきりと坂上に言ってもらえばいいのだ。

 あの人を見てたんだって。

 あの人が好きなんだって。

 想像してやきもきするよりも、きっぱり言い切ってもらって諦めた方がよっぽど健全。

 坂上が私を見てくれるなんて思えない。あの人は学年一きれいな人だし、坂上は私と釣り合いがとれないくらいかっこいい。

 さあ、饒舌な口から本当のことを言って坂上。

 一言一句聞き漏らさないように集中して、私は坂上をじっと見据える。

 坂上は私の迫力の驚いたのかわたわたと椅子ごとずりっと後退した。まったく、失礼な。

「何を見てたって、ほら」

 坂上は顔をそらすように再び窓の外を見る。その視線の行く先はさっきあの人がいた辺り。

 私は身を乗り出して、そこを確認するふりをする。確認するも何もない、あの人はもういないんだから変わったところは何もないそこを。

「なにか、面白いものでもあった?」

 見落としがないように眼鏡をごしごしぬぐって曇りを取り払って、他に何かないかとそれでも必死に見つめた。校舎裏の一角、降り注ぐ柔らかい日差しに照らされる緑。

 続く言葉を本当は望んでいないのに、それでも先を促して坂上を見上げる。

「ああ、見えないかなあ」

 独り言のように呟いた坂上がおもむろに窓を開けた。

 十月も半ばを過ぎるとひどく風が冷たい。

「うっわ、さっむ」

 坂上はぶるりと体を震わせながら半分身を乗り出す。

「ちょっと、危ないよ坂上」

 忠告したときにはもう遅かった。

 もちろん坂上だって馬鹿じゃない、ちゃんと落ちないようにはしているようだけど見た目に危険すぎる。

 はらはらする私にお構いなしに、坂上は身を乗り出したままさっきあの人がいた辺りを見回す。

 心配なのと、そうやってあの人のことをごまかされたら諦められないじゃないっていう八つ当たりじみた感情と。

 その間でどうすればいいか迷ってしまう。

 そりゃ、八つ当たりなんてみっともないけど、さ。

「未夏ちゃん」

 私の葛藤なんて坂上はお構いなしだった。

 でもそれだって仕方ないだろう。私の気持ちを慮る必要なんて坂上にはこれっぽっちもない。

 振り返った坂上はくらくらしそうなくらい満面のほほえみ。

 苛立った気持ちも悲しい気持ちもその笑顔で吹き飛ばしてしまった私は現金だ。

「なによ」

 それでも答える声はまだ苛立ちの残滓が残ってしまうんだから可愛くない。

「ちょっと椅子に上ってみて」

 坂上はやっぱり私のことなんて気にしていない。その坂上の柔らかい声での要望は妙な強制力を持っている。

「何?」

 上履きを脱いで、言われたとおりに指し示された椅子に上がった。

「未夏ちゃん、いーい?」

 見てよ、って言って坂上は手をまっすぐ突き出した。私なんかよりもよっぽどかきれいな手。

 指差す先を目で追った。

「見える? オレンジの」

「うん」

 坂上が指差す先には、本当にちろちろとオレンジの何かが見える。周りの緑に囲まれて、風が吹かないとわからないくらいみたいだけど。

「のぞき込まないと見えないモノ、見てたの?」

 自然と声がとんがった。

 驚いたように坂上が振り返る。予想外のことを言われたみたいなそんな顔。

「いや……見えるんだけど未夏ちゃんにわかりやすいようにって思って」

「ふぅん」

 ぼそぼそっと珍しく坂上は口ごもる。

「よく見えたね、のぞき込まないと見えないものを」

 皮肉混じりに言うと、彼は苦笑した。

「いやー、座ってたら見えなかったよさすがに」

 そこは素直でよろしい。坂上が見てたのはオレンジの何かじゃなくってあの人なんだから、早いとこそれを素直に言えばいいのに。

「あれ、何かわかる?」

 坂上はまだごまかす気だ。

 仕方なくもう一度オレンジを眺める。

「花でしょ?」

 他の答えなんて出ようがない。風に揺られて時々見えるそれの名前まではわからないけど。

 きっぱり言いきった私を見て坂上は楽しそうに笑った。きれいな顔をくしゃりと歪めた、子供みたいな微笑み。

「花くらいでしょ? あんな色の」

 坂上の笑みは違うよとでも言いたそうで、私は眉間にしわを寄せてオレンジと坂上を交互に見る。

「ちっがうんだなぁ」

 心底楽しそうに坂上は言った。

 その声は弾むようで、節がついている。

「あっれはねぇ」

 ますます顔をくしゃりとして、坂上は今にも歌い出しそうだ。

「かぼちゃだよ、か・ぼ・ちゃ」

「かぼちゃ?」

 私は楽しそうな坂上に馬鹿みたいに問い返した。

「オレンジだったよ?」

「でっかいかぼちゃ、知らない?」

 坂上が意外そうな顔をした。

「知ってるけど――なんで学校にそんなものが」

 オレンジのかぼちゃは知っている。実物を目にしたことはない。テレビで巨大かぼちゃのニュースで見たくらいかな。

 それも「うわっ、でっかっ。乗ってみたい!」なんて言うにーちゃんの言葉に突っ込むのに夢中でじっくりとは見てなかった。

 テレビで見たのより鮮やかで色が濃いような気はした。遠目で見ただけでそうだから、実際そうなのかな。

「育ててんの」

 にっこりと告げる坂上の瞳は、馬鹿なこと言って騒いでたにーちゃんにそっくりだった。

「乗りたいの?」

 そんなことを思い出したもんだからとっさにそんなことを聞いてしまった。

 坂上は一瞬間の抜けた顔をして、それから吹き出した。

「あ、ごめんちょっと坂上が育てたって言葉が意外すぎて」

 慌ててフォローをしても遅い。

「育てたと乗るのがどうつながるのさー」

「えーっと」

 坂上はお腹を抱えてひーひー言っている。そりゃそうだろう、かぼちゃを見て乗りたいってどういう発想だって思うもの。

 私だって昔、にーちゃんにどういう意味か激しく突っ込んだんだから。

「やっばいお腹よじれそう」

「ごめん」

 くそうにーちゃんめ、変な洗脳しやがって。

 この場にいないにーちゃんに八つ当たりをしながら、苦しそうな坂上に謝ってみせる。

「謝ることないけど」

 坂上はそう言って、ようやく笑うのをやめた。でも顔が引きつっててちょっとのことでまた笑い出しそうな気はした。

「ねえ、未夏ちゃん。乗ってみたいの?」

 それじゃあ悪いと思ったのか、坂上は真剣な顔になってそんなことを聞いてきた。

 鏡で見たら私の顔は真っ赤だろう。それもこれもにーちゃんのせいだ。

「違うわよ」

 にーちゃんへの怒りにまかせて、坂上にとんでもないことを言ったらいけない。

 私は冷静にと自分に言い聞かせた。

「テレビで見たときににーちゃ……兄が、乗ってみたいって言ってたから。あの人、ちょっと変なの」

 坂上も変と言えば変だけどにーちゃんの方がもっとずっと変なの、って言葉は一応飲み込んでおいた。

「なんだ」

 拍子抜けしたように坂上はぽつり。

「未夏ちゃんが乗りたいって言ったんなら、すっごいかわいいだけどなあ。おにーさんはちょっと怖いかなあ」

「坂上、それ論点が違わない?」

「そう?」

 きょとんと坂上は首を傾げる。

「そうよ。それよりも坂上があれ育ててるって、どういうこと?」

 迷いなく私はきっぱりうなずいて、尋ねた。

 むしろ、あの人が何で坂上の育てたかぼちゃのそばを毎日通るのかっていうことが聞きたいような気もした。三日間、毎日毎日坂上はあの人がいるときにそっちを見てたんだから、何かしら関係があるはずだ。

「俺、園芸部だし」

「えぇ?」

 けろっと坂上が告げたのはそんな一言。

「その反応傷つくなー」

「だって、ちょっと意外で」

 本当は驚いたから裏返った声を出してしまった。

 私が知る限り、坂上が部活に入っているそぶりはなかった。ためらうことなく放課後の勉強を決めてしまったから、てっきり帰宅部かと思ってたのに。

「確かに園芸部は影が薄いけど。どーっしてもあのでっかいかぼちゃをこの手にしたくてねえ」

「最近、入ったの?」

「うんや、去年の三学期。あー、じゃないや今年。今年の初めくらいかな」

 一年の時の事なんて去年っぽい気分だよねえなんて言い訳のように坂上は続ける。

「かぼちゃのためだけに?」

「ほぼ? 家で育てるのは限界がありそうだし、ちょっと畑の一角を借りられればよかったんだけど。そしたら当時の園芸部長が園芸部に入れと」

「命令なんだ?」

「卒業秒読みの三年だったし、園芸部には一人しか在籍してなかったから存続に必死だったのかも」

 アレはものすごい気迫だった、記憶を思い起こすように坂上は遠い目をする。

「ってことは、坂上が部長さん?」

 それもまた意外なことだった。

「名前だけね。俺は先輩のように情熱がないので、再来年には園芸部消えてるかもだよ」

「うわ、それは託してくれた前部長さんに悪いんじゃない?」

「そうかな……でも、目的がかぼちゃだしなあ。他にらしい活動してないのに園芸部ですなんて胸張れないし」

 坂上はぶつぶつとつぶやいた。

「かぼちゃ部って名称変更したら存続に燃えるかも」

「何真顔で馬鹿なこと言ってんの」

「私立中之城高校 かぼちゃ部、どんな活動しているか謎で来年の新入生の目を釘付けにッ」

 いやほんとに。真顔でそれはないから坂上。

 にーちゃんに負けず劣らず変かもしれないって、一瞬思ってしまった。なんでそんなにかぼちゃにこだわるの!

「坂上がいいなら私は生暖かく見守るけど」

「生暖かいのは嫌だなあ」

「でもそれ、ウケは狙えても入る人いないと思うよ。少なくとも私は絶対入りたくない」

「女の子受けはしないか……」

「男女関係ないよ絶対」

 がーん、なんて呟いて坂上は目を見開いた。

「そ、そうか」

 ショックを受けたようで、何か申し訳ない。坂上だからオーバーな態度を取ってみただけでそこまで気にしていないとは思うけど。

「あー、でも。家の兄がいたら喜び勇んで入るかもしれないし、例外はあるかもよ。でっかいかぼちゃに乗りたい人だから」

 とは言っても、だいぶん昔の話だから今どうかは知らないけど、一応フォローしてみる。

「美夏ちゃんのお兄様はうちの学校の三年とかじゃないですか?」

 にーちゃんが坂上の中でおにーさんからお兄様に昇格した。現金だなあ坂上も。

「鷹城高だったし、もう大学生だよ」

「ちぇ」

「あと三年を入部させても先に卒業してくからね、坂上」

「ああ、そんな罠が!」

「罠じゃないから」

 あーあ、なんて坂上は真剣にぼやいている。

「いいお友達になれるかと思ってちょっと期待したのに」

「さっきは怖いとか言ってなかったっけ」

「それは言葉の綾ですよ未夏ちゃん」

 丁寧口調が、怪しい。

 私はじっと坂上を見て真意を探っていると、彼はぱちくりと目を瞬いて視線をそらした。

 ほらやっぱり怪しい。

「そんなに見つめられると照れるなあ」

「冗談ばっかり」

 坂上はバツが悪そうに笑って、息を吐いた。

「今週末に、収穫するよ。よければおにーさんと一緒に見に来ない?」

「ありがと。でも兄は県外の大学に行ってるから」

 よっぽどにーちゃんに興味を持ったらしい。でも残念、にーちゃんは家にいないし、仮にいたとしても坂上をにーちゃんに近づけたくない。坂上がにーちゃん菌に冒されたら困るじゃない。

「ありゃ残念。未夏ちゃんのお兄さんがどんな人だか見たかったのに」

「私はにーちゃんが嬉々としてかぼちゃに飛びつくのはあんまり見たくないなあ」

「飛びつきそう?」

「もう二十歳超えてるからさすがにしないとは思うけど、読めない人だから」

 坂上は何でか残念そうだ。

「見てみたかったなー。でもいないのは仕方ない、そんじゃあ未夏ちゃんだけでもおいでよ。楽しいぞきっと」

「そんなこと言って、手が欲しいだけなんじゃないの?」

 からかうように言ってみた。

「そんなに手間じゃないし他のメンバーがいるから、未夏ちゃんの手は借りませんとも」

「え、一人じゃないの? 園芸部」

「一人とは言ってないよ?」

 私が驚いたことに坂上は満足げに笑った。

「他に三人いる。言い出しっぺは俺だけどねー」

「なんだ、だったらいいじゃない」

「えー。可愛い女の子の応援があれば俺張り切るのにー」

「いやいやいや」

 坂上はにーちゃんに興味を持っただけでしょう。にーちゃんが駄目なら来るなとも言えずにそんなことまで言わなくていいのに。

「嫌?」

「そーじゃなくて、知らない人に交じるのも気が引けるからお気持ちだけで充分です」

 残念そうに聞かないで欲しかった。行きたくなってしまうから。

 私は気持ち坂上から目線をそらしてきっぱりと言い切る。

「そっか、だったら仕方ないなあ」

 坂上は本当に残念そうで、そんな風に言われると私の気持ちは揺れるに決まってる。

 やっぱり行く、と口が勝手に言い出したら困るから私は今日はもう切り上げようと坂上に言った。

 提案されたばっかりの最初の日はともかく、昨日と今日の分はちゃーんと計画立ててきたんだけど予定通りに進みやしない。

「あ、ごめんね、未夏ちゃん。俺、集中力がなくて」

 それは嘘だ。

 授業中の坂上は滅多なことじゃ気を散らさないって、私は知ってるんだから。

 逆に放課後は、私の説明が下手なのか――あの人の存在が気になるのかぜんっぜん集中していないから、完全に嘘とは言えないけどさ。

「明日はちゃんとするわよ」

 宣言すると坂上は神妙な顔でうなずいた。

 さあ、もう一回計画を練り直さなくちゃ。

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