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君と歩む未来のために。

作者: 紫ヶ丘
掲載日:2016/06/11

「…すまない香音。君とは結婚できなくなった。婚約を…破棄して欲しい。」


ずるい人。

ずっと待っていたのに。

ずっと待っててとあなたが言ったのに。


「香音さんゴメンなさい!私、奏さんと香音さんが婚約してるってわかってたのに…どうしても奏さんへの思いが止められなかった。奏さんが好きなの!愛してるの!!」


ひどい人。

私から何もかもを奪うのね。

親友のように振る舞いながら、大切なものを一つ一つ壊していったわね。

これが最後の仕上げって事かしら。

里砂さん、とても楽しそうね。

笑顔が隠せていないわ。


「香音さん。…奏と私の事を認めて欲しいの。」


あら呼び捨て。

私もしたことなかったのに。

羨ましいわ。


「…香音」


あなたが私を呼び捨てにし始めたのはいつからだろう。

気付けば当たり前のように香音と呼ばれていた。

あなたの声で紡がれる私の名前が好きだった。

あなたが呼ぶだけで特別な名前のように感じたの。

あなたは私の特別だった。

今も昔も…きっとこれからも。


「お願い香音さん。奏のことはこれから私が支えていくから!」


はらはらと涙を流す里砂さんはきっと愛らしく見えるのだろう。

か弱く痛ましく庇護欲を煽られるのだろう。

ずっと一緒にいたいと思ってしまったのだろう。

私との約束を、婚約を破棄してしまうほどに。


ずっと一緒にいようねと約束したのは遠い昔。

遠い遠い昔の事だ。

覚えている私が可笑しいのだ。


『あんたが奏さんの婚約者とかあり得ないわ。でも安心して?私が奏さんを幸せにするから。』


奏さんを婚約者として紹介したその日、里砂さんは豹変した。

最初からどこかよそよそしくて、でも友人としてはそれなりに親交があったと思う。

なのにまさか。

私を全否定してくるとは思わなかった。

あなたが私以外の誰かを選ぶなら色んな意味で里砂さん以外が良かったわ。

でももう今更よね。


「…わかりました。婚約破棄をお受けします。」


さようなら大好きなあなた。




今日はあなたと里砂さんの結婚式。

招待状が届いたとき自然と笑みが浮かんだわ。

ああ、これで漸く終わるんだって。

繰り返される茶番劇。

貶されて奪われて。

中身のない謝罪を何度聞いたことだろう。

ねぇ里砂さん、貴女は今満足しているのでしょうね。

約束通り奏さんを幸せにしてください。



二人でよく来た思い出の丘。

今日は独り風に吹かれる。

空を見上げて深呼吸。


奏さん。


あなたを想っています。

あなただけを想ってここにいます。

あなたと共にいることが幸せでした。

あなたと出会って十五年。

あなたの隣を歩いて十五年。


私はこれからあなたの隣を取りかえしに行きます。


『香音ちゃん、ずっと一緒にいようね。』


「ええ、奏くん。ずっとずっと一緒よ。」


さようなら…奏さん。




▲▽



「…はじめまして。響谷奏です。」


緊張気味にぺこりと頭を下げる幼い奏くん。

懐かしい初顔合わせ。

何十何百回も繰り返される出会い。

そして十五年後に待つ何百回と繰り返される同じ結末。

それでもいいの。

私にとってあなたが全て。


さあ始めましょう。

あなたと始めるこれからの十五年。

あなたの隣に立てる日を。

あなたとの約束がいつか果たされることを夢見て。

いつまでもいつまでも私は待っています。


「…はじめまして。要香音です。」







「ちょっと奏が居なくなったってどういうことよ!?鍵を掛けて閉じ込めていたんでしょう!?」


「ご命令通り控室から抜け出せないように万全の体制を整えておりました。…しかし、まるで忽然と消えてしまったようにどこにも見当たらないのです。」


「……ふざけやがってあの女!!どこまで私の邪魔をするのよ!」


「お、お嬢様?」


「五月蝿いこの役立たず!!いいから奏を探して!絶対に見つけだすのよ!!」




▽▲



今回こそはとあらゆる手を尽くしたはずだった。

何物にも邪魔されないように万全を尽くしたはずだった。

けれど。

意に反して埋められていく外堀。

望まぬ手を取らなければ香音を守れなかった。


『わかりました。婚約破棄をお受けします。』


何度も繰り返し君に言わせてしまうその言葉。

その手に触れることも今の俺には許されない。


ああ香音。

君が好きだよ。

君だけをただ愛している。

今も昔もこれからも。


だから。

絶望なんてしている暇はない。

裏切り者は誰だ。

仕掛けた罠を掻い潜ったのは誰だ。

今出来ることは何だ?

次に活かせることは何だ?

綿密に下準備を整える。

君の隣に立てる日を。

君との約束を果たせるその日まで。


何度だって君に、あいにいくよ。



《登場人物》

要香音(かなめ かのん)

響谷奏(ひびきや そう)の婚約者。

奏との出逢いから奏が結婚するまでの十五年間を何度も繰り返している。


響谷奏。

香音の婚約者。

人生で一度だけタイムリープが使える。

毎回香音との恋路を邪魔する音無が嫌い。


音無里砂(おとなし りさ)

香音に奏を紹介された瞬間結婚式が台無しになった記憶を取り戻す。

香音が世界を巻き戻していると勘違いしている。



三人とも記憶持ち。

記憶持ちであることは誰にも話せない為お互いが記憶持ちだと知らない。

香音は奏の結婚式の日に世界が巻き戻ると思っているが実際は奏のタイムリープに巻き込まれているだけ。

奏は香音が結婚式当日に海外にいるため安全だと思いタイムリープしている。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  奪い取ろうとしたもので、幸せになれることはないと思います。 [一言]  親友ほど醜くなるものはない、そういうものなのかもしれません。
2016/06/11 10:33 退会済み
管理
[良い点] 決して交わる事のない三人の想いが、延々と繰り返されていくストーリーは面白いと思います。 [一言] 後書きでの説明ではなくて、小説本文の中で全てが表現されていたら、もっと良くなると思いました…
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