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くらがり

作者: 夜人

 

 友達っていうのが何かって?そんなの決まっているじゃないか。

 薄っぺらい友情を振りかざしてその量を競うただの競争の道具だよ。

 それ以上でもそれ以下でもなければそれ以外でもない。

 だいたい、親友とかニコイチとかっていう言葉も薄っぺらいどころかあれはほとんど虚言の域に達しているね。そう。ただの戯れ言だよ。

 だってそうだろう?例えばその親友だとかニコイチだとかを100%揺るぎなく、まごうことなく、完璧に、どうしようもないくらい、果てしなく、止めどなく信頼することができるかい?

 例えば自分の生年月日や年齢、性別、血液型、身長体重、家族構成を教えることが出来るかい?

 はたまた、自分の好みや性的嗜好、趣味、性癖まで秘密と呼ばれるその全てを包み隠さず大っぴらに教えることが出来るかい?

 出来るのだとしたらそりゃ凄いね。

 何が凄いって「人間」というモノを過信しすぎちゃいないかい?

 人間っていうのはね「自分」と「他人」から成っているんだよ。

 その他人が自分に対して、他人に対して、周囲に対して、世界に対して何を想い何を考えどう感じているのかが分かるかい?分からないだろう?

「信じている」だとか「一生友達だとか」そんな「言葉」に騙されちゃいけないよ。

 だってね。人間の「内側」っていうのはどうしようもなく、どこまでも汚いんだよ。排泄物や言葉、心でさえも汚れているんだよ。

「言葉」や「心」の厄介なところはね排泄物と違って内側から外側に排泄するときに綺麗にして発する事ができるんだよ。

 つまりね、思ってもないことを、むしろ思っていることと逆の事でさえ偽りの仮面で顔を隠して平然と言えてしまうんだよ。人間っていうのは。そうやって他人に自分は綺麗な存在だって言いたいんだよ。

「優しさ」なんていうのはそれの最たるものだね。誰かに優しくすることでその誰かよりも自分が優位であり優等であり立派であるということを証明したいが為の行為であり心の底ではその人間を嘲笑い侮辱し蔑視し優越感に浸っているに過ぎないんだよ。

 なのに人はそれを羨んでしまう。

 でも他人を羨む心なんて言うのもねただの嫉みであり妬みでしかないんだよ。

 他人を好きになるのはね相手の事を見下しているからなんだよ。

 自分より醜悪で劣悪で憐れだからこそ好きになるんだよ。

 だって自分より優秀で優れている幸福な人間なんて妬ましいだろ?鬱陶しいだろ?目障りだろう?消し去りたいだろ?

 友達なんて多ければそりゃ楽しいかもしれないけれど居なくたって人生になんの遜色もありゃしないんだよ。

 実際に友達が多いと自慢するやつを見てみなよ。

 確かに多いかもしれないけれどその友達と呼ぶ人間全てと分け隔てなく対等に均等に平等に接することが出来るかい?

 無理に決まってるよね?

 友達なんてね多けりゃ良いってもんじゃないんだよ。

 なんだってそうだろう?過ぎたるは尚及ばざるが如しだよ。

 それでもまだ君は友達が多ければ勝ちだと思うかい?

 それでもまだ君は友達に価値があると思うかい?

 心の底で侮辱し蔑視している者同士を友と呼べるかい?

 もう一度考えてみるといいよ。

 ちゃんとね。価値や意味を。

 けど忘れないでほしい。

 僕が今言ったことが人間の本質であり根底なんだよ。



 それでも、それでも俺は…………!!



 友を信じたい、かい?

 そんなのは綺麗事だよ。綺麗で憐れで浅はかで愚かだ。

 けれど僕はそんな君を──





──美しく愛しく素晴らしく思うよ。純粋で愚直なその姿を、ね。




その言葉を最後に男の存在は薄れ、消えていった。

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