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四番星の頁

「さて、どうするか…」


カインはその言葉を聞くと、腰につけていた懐中時計を見た。


「夜中の三時…少し押してるな…」


「んん?そうなるとバルトの方も遅れてるな。あいつ何やってんだ…」


ウルズは土竜(もぐら)モンスターの開けた大きな穴を顰めっ面で見つめた。


バルトが来そうな気配は無い。


「まさかだがあいつ、マジで正面突破してくるつもりじゃねぇよな…?」


「それだったら上で騒ぎが聞こえるのでは…?」


「此処は地下は地下でも結構深いから、地上の音は轟音でもない限り聞こえないんだ」


「此処を出てみるまでは解らないのか…」


全員が頭を悩ませていると、不意に扉の閉まる音がした。


「ヤバいっ…?!」


 ウルズがそう言うと同時に一人の男が姿を現した。


「おや…?」


様子を見て緊急事態と悟った男は、すぐに踵を返した。


が、それよりも速くレシカがその男を飛び越えて道を塞ぐ。


「…どういうことですか、ウルズ?脱獄者が私の目の前にいるようですが…それに、そちらの方々は?」


モノクルの奥の翠色の瞳は、真っ直ぐと同じ五芒星であるはずのウルズを捉えた。


テオはその顔に見覚えがある。


いや、正確には似た顔に見覚えがあった。


「…さぁ…お前なら解るんじゃねぇの?『記憶の冒涜者』ガルディさんよぉ?」


ウルズがそう言って右手と左手で形の違うダガーを引き抜くと、テオもレシカもそれぞれの武器を構えた。


「…厄介ですね。やはりこの少女は手に掛けておくべきでしたか」


レシカを一瞥すると、腰の柄から細剣を抜き出した。


「おいおい、正気かよ。一対三だぜ?」


「こんな廊下と言ってもおかしくない部屋では、実質一対ニですよ。」


そう言った瞬間、ガルディはウルズに斬りかかった。


左腕だけで堪えたウルズは、そのまま右手のダガーでカウンターを狙う。


ガルディがそれを躱すと、今度は後ろからレシカが斬りかかった。


しかしこれは大きな失策で、ガルディはそれを再びひらりと躱すと、そのまま再び扉の方へ走り出した。


「させるかっ!!」


そう言って投げたウルズのダガーは、見事ガルディの脹脛(ふくらはぎ)に命中した。


どうっと音を立てて勢い良く倒れ、ダガーの刺さった左の足を抑えるガルディを、レシカは再び飛び跨いで扉への道を塞いだ。

 

しかし余りの苦痛でガルディは立てそうにもない様子だった。


「さて、早速一人目だが…どうしたもんかな」


「バルトからロープはもらってるけど、此処ならもっと頑丈に捕縛できると思うよ」


テオがそう言ってガルディの腕を引っ張ろうとした。


「待て待て待て待て待て待て迂闊に近づくな!」


ウルズがテオを引き離すと同時に、不意に動いたガルディの手はテオの頭があった辺りを掠った。


「こいつに頭を触れさせんなよ?記憶を抜き取られんぞ」


「え?!!」


驚いてテオが見ると、ガルディは獲物を仕留め損ねた猛獣の様な、心底悔しげな顔をテオに向けていた。


しかし次の瞬間には、ウルズを地獄の鬼のような形相で睨みつけていた。


「貴様!!何故裏切った!!」


「裏切る?何を?」


「何もクソもあるか!!お前のしたことは、この国への裏切り行為だぞ!!!」


「兄弟揃って怒ると見境がなくなるから怖いねぇ。それになぁ…」


ウルズは一旦間を置くと、今度はガルディを超える、閻魔のような形相で睨み返して吠え返した。


「俺はてめぇらみたいな似非(えせ)臣従じゃねぇんだよ!!!!」


ウルズの迫力と言葉の内容に、ガルディは返せる言葉が無く小さく唸った。


「そいつの足持ってくれ!こいつをそこの牢に繋ぐ」


言われたテオは、彼の傷をこれ以上痛めないように器用に足を持ってガルディを引きずった。


テオがガルディを部屋に押し込めると、ウルズはガルディの抵抗を器用に避けながら手枷と足枷をガルディの四肢に付けた。


「まぁすぐに出られるだろうさ。二、三時間だけ堪えててくれよ」


ウルズはそう言って牢の鍵を閉めた。


「苦戦すると思ってたけど、案外簡単だったなぁ…」


拍子抜けしたというようにテオが言うと、ウルズは「チッチッチ」といって指を振った。


「それはガルディが直接戦闘に関わらない能力所持者だからそう思うだけさ。残る奴らは厄介者揃いだぜ?」


「そうね。本当に厄介」


レシカが珍しく弱気な言葉を見せる。


「さっきの人の様子を見る限り、バルトさんは到着してないみたいだけど…」


「ま、待ちますか?」


カインとリルは、言葉では問を投げながらも、瞳は「彼を待ったほうがいい」と訴えていた。


「いや、行く」


即答したのはテオだった。


「アイリス様が到着するまでに、全員を捕まえないと」


「うーん…まぁ一理あるよなぁ…」


正直、アイリスの護衛隊が束になっても、五芒星に勝てるとは誰も思っていなかった。


だからこそ、隊と五芒星の直接対決になりそうな接触はなるべく防ぎたいというのがメンバー全員の考えである。


――そうなるとやはり行くべきか…


バルトの代役であるウルズが判断に迷っていると、意外な人物が言葉を発した。


「ごちゃごちゃ言ってるくらいなら、行動したほうが早いと思うんだけど」


レシカの言葉は、全員を頷かせるのには充分すぎる効力があった。


「……よし、じゃあ行こう。ただし!!無茶は絶対(ぜってぇ)するなよ?」


ウルズの言葉を完全に聞き終わる前に、テオとレシカは出口に向かって走り始めていた。


彼らが走っていった後を、一人の老人が見詰めていたことに、誰も気付くことはなかった。

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