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英雄の影にいた僕らの物語(旧版)  作者: 眞汐 あこや
意志強き女王の章
30/79

意志強き女王の頁 〜3〜

 元帥任命の一ヶ月後、アナスタチア王国の宣戦布告により、戦争の火蓋が切られることとなった。


バルトとアイリスの方針により、少ない人数かつ、犠牲を減らすことのできる、固い守りを重視とした戦法で挑んだ結果、スラスタは序盤から圧倒的に有利な立場に立つことになった。


──が、それにも関わらず、中を見ると、スラスタ国内の大臣たちの意見は真っ二つに割れていた。


内容は戦法のことだった。


「だから何が不満あるのかって聞いてるんだよ。あんた等はこの戦争を敗戦で終わらせるつもりか?」


「貴方は他の経済面やそこらのことを考えて行動なさっているのですか?一度財務をやってみればいい。あの戦法で使われた資金は巨額なんて言葉じゃ済まされないんですよ?このままでは税で賄いきれません」


睨み合うは、元帥のバルトと財務大臣のベルディ。


「そこについてはこの戦法を取る前にあんたから了承を得たはずだ。予想してた額よりも寧ろ少なかったはずだが?」


「そうですが、それでも少し多すぎると私は思っていたのですよ?」


「納得して判子まで押しといてそれは今更じゃねぇのかい?」


バルトの言うことは最もであり、毎回起きるこの言い争いも、必ずバルトは勝利している。


しかし、バルトの味方は、アイリスと、志願兵を始めとする平民が多く、実質はアイリスだけが頼りという、実はとても頼りない状態だった。


一方のベルディは、税をより多く納める貴族や、残りの他の大臣と、とても味方は無視できない人物揃い。


何時(いつ)ひっくり返されてもおかしくはなかった。


「貴方は戦争を早く終わらせたくないんですか?」


「お前、流石にその質問は愚問じゃねぇか?」


「ならば、早く決着をつけるためにも戦法を変えていただきたい。これでは最初から長期戦に持ち込む気にしか見えません」


「逆に焦って兵を全滅させてもいいというなら俺は喜んでその意見を聞こうじゃないか。俺は、これについては決して折れない」


「…もう時間だ。ここで終わりにする」


反論しようとしたベルディの口を、アイリスが締めの言葉で封じた。


不服そうに退場していくベルディ等を見送ると、アイリスとバルトのみがその場に残った。


「…すまないな。私もできれば言い返したいところなのだが……」


アイリスはあくまでも国王。大人数を前に一人の肩を持つことは、逆に肩を持たれる側の人間に少々リスクがあった。


「別に何の苦もねぇし気にすんなよ〜?それにどれもこれも論破できる内容なわけだしな。何ら問題ないさ!」


どんな状況でも笑顔を崩さない彼を、アイリスは羨ましいと思った。


自分が逆の立場ならきっと折れているだろう。


「頼もしいな。まぁだから市民たちもついてくるんだろうが…」


市民の間で、名も知られていない元帥の評判は、戦争に勝ったわけでもないのに、既に英雄扱いだった。


兵士たちからの尊敬も集め、人気は老若男女問わずだ。


──王の私よりよっぽど王に向いているんじゃないか…?


そう考えると少し悔しくなり、アイリスは無意識に頭を振っていた。


「いきなり何してんだよ…っくくくっ…」


気付いた時にはもう遅く、バルトは腹を抱えて笑い出した。


それを見てアイリスは思い直す。


──向いてない!!絶対向いてない!!!!


「う、ううう煩い!!!!!笑うな!笑うなと言ったら笑うな!おい!余計に声をでかくするんじゃない!!!!」


「はははははははははははははっ!!!!」


──これではもう主従関係などあってないようなものじゃないか

──これじゃもう主従関係なんてあってないようなもんじゃねぇか


二人同時にこんなことを考えていたなどと、二人が知る由もない。


「おい!笑い死ぬつもりか!?いい加減笑うのを止めろ!やめろって言ってるだろうがぁああ!!」


「笑いたいから笑ってんだよ〜はははははははっ!!」


「全く…………もう知らん!!」


とうとう恥ずかしさに堪えられなくなったアイリスは、足早に部屋に戻っていってしまった。


「あ〜あ、ははっ、流石にちょっとからかいすぎたか?」


まだ笑いを完全に抑えられないまま、バルトは大きめの声で独り言を言った。


「さて…俺はどうしますかね〜?っと、その前に………」


バルトがアイリス向かう先と真反対を向くと、柱に向かって柱の向こう側の人物に声をかけた。


「ベルディさんよぉ?さっさと出て来たらどうだい?」


モノクルをした若者は、そう呼ばれてやっと柱の陰から姿を現した。


「どこから気付いておいでで?」


「わりぃな。始めっからだ」


ニヤニヤと、しかし目だけは笑っていないバルトに対し、ベルディの方は心の奥底から湧き出ているかのような邪悪な笑顔を、取り繕うこともなく晒している。


「何か俺に御用かい?」


「……あぁ、その通りだ」


口調まで変わったベルディに、とうとうバルトは口に笑顔をまだ残しながらも、警戒心を剥き出しにした。


──なーんか面白いこと始めてくれる感じかい?


「少し話を使用じゃないか。バルティオ元帥」


──…面白いねぇ?


そうまだどこか呑気に構えていた自分を、バルトは呪うことになる。


「バルティオ元帥…お前は──」


ベルディのこの後の発言により、バルトは生まれて初めて、頭の中を真っ白にした。

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