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最後の一葉が散る前に  作者: (第一樹)真いかみみ (第二樹)七峰らいが
第一樹
14/23

(Ⅵ その果実の味を知ったがゆえに 後編)緊急特別対談 七峰らいが×ディーナ・カルツァ

①やっぱり「時代が違いすぎる」


七峰   水木さん……敬意と愛を込めてこう呼ばせていただきたいのですが、水木しげるさんの訃報を知ったのは30日の昼すぎでした。学校の食堂で昼食をとったあと携帯を片手にくつろいでいましたら、テレビのニュース速報テロップにその報せが映りまして。天下のNHKニュースですから、まあ一次ソースとしては信用できるだろうと思いましたが、その時はおどろいてすぐにTwitterでつぶやきました。

ディーナ それは、気持ちを整理したかったから?

七峰   たぶん、そうだと思う。なんであの人が、信じられない……という。僕が物心ついた時から長老みたいな、ひとつの頂のような場所に座っているような人だったから、その人がこの世を去ったということが受け入れがたかった。もっと長生きされると思っていたから。

ディーナ 「ピンピンコロリ」という標語があるけれど、本当にコロッと亡くなられたわよね。ああいう方の死というのはもっと事前に待ち構えるものだという印象があったから、そのような大往生のイメージとは裏腹に素早くあの世へ旅立たれた。まあ、私たちのイメージってもっと人間社会、有り体に言えば日本社会的だけどね。

七峰   身軽な人だなという印象はあったね。Twitterのアカウントで見る元気なお姿を今思い返すと、そうだな。「老獪」ということばが本当にぴったり合うお方だと思う。

ディーナ 「妖怪」とニアミスしているわね(笑)。

七峰   (笑)。そう、だから今回の対談でも水木さんを「死者」として扱いたくないと思って。死して名実ともに妖怪になった人だから、「今もまだご存命である」と考えてもいいと思うんだよね。

ディーナ 水木先生が妖怪変化されて(微笑)、先生の経験談や著書などが改めて引用されることも増えざるを得ないと思うのだけれど、特に先生のお話というのは、先生ご自身のお話であって誰にでもトレースできるものでは(なかなか)ないと思うのよね。それは私たち「七峰らいが」の総体としての考え方なのだけれど。

七峰   僕自身、「水木ロス」を埋めたくて突然目がそっちの方に行くようになっちゃった。

ディーナ ミーハーだものね。

七峰   そう。「水木しげるのラバウル戦記」を少し読んだんだけど、水木さんのとにかく楽観的な性格と、戦後の昭和日本のどんどん上に上に向かっていく姿ってぴたりと合う気がして。僕なんてまさに、自覚が無いではないけど「将来に希望が持てない若者」の典型っぽいから。水木さんの生き方、ものの見方について潜在的に興味はあるけど、やっぱり「時代が違いすぎる」……。もちろん水木さんには多忙を極めた時期もあり、非常に貧しかった時代を経験されているはずだけど、その中でも自分の姿勢を曲げずに、今日までうまく立ち回るかしこさもあった。僕の想像よりずっと過酷な苦労や挫折のようなものも……何しろ93歳の生涯ですから……多かったと思うんですよ。人間生きている限り、満足っていうのは無いんでしょうね。それと比べちゃったら僕なんてまだまだ殻付きのヒヨっ子です。

ディーナ まだ生まれてもいないわね、きっと。


②それって努力よね


ディーナ 妖怪になられる前の水木先生が、自分が好きでもないことをやっていて、そのことについて文句を言うのは間違いじゃないかと仰られているのね。どんな七難八苦が待ち受けていても、自分の好きなことに邁進しているなら自分から文句は出ないはずだって。

     そこで、私、ひとつ思うんだけれど、この場合の「好き」というのはつまり「生き方の選択」じゃないかしら。だって、そうでなければ「好きなこと」だけではとても生きてゆかれないでしょ。

七峰   それこそ「水木サンの幸福論」の「幸福の七カ条」にも言及しなきゃならないことだと思うんだけど……。第二条と第五条かな。「努力は人を裏切る」ってね。「じゃあ、努力なんてしなくてもいいんじゃない」派だったわけ。僕は。今でもそうだと思うけど。学校の授業で教わったことを復習するとか、これから教わることを予習するとか、なんかそういうのって「学校の中でする努力」で。「テストで答案用紙を埋めるための努力」だと思って。

ディーナ それは、でも、最終的には「自分の成績を上げるための努力」であり、「いい会社に就職するための努力」「いい大学に入学するための努力」になるでしょう?

七峰   うーん……。だから、僕の場合「努力に裏切られた」のか、全然わかんないんだよね。そもそも裏切られるほど努力もしてないと思うし。

ディーナ 貴方の場合、努力の方向性がおかしいのよ(笑)。それはつまり、「したくないこと」を無理やり「しないではいられないこと」に据えていたっていうことではないかしら。それはおそらく貴方自身につく評価のため、言ってしまえば世間体のためよね?

七峰   暇さえあれば一日中でもTwitterに張り付いて、誰かの文章とか絵とかをリツイートばかりしていますからね。

ディーナ それって努力よね(笑)。

七峰   ああ……。振り返ってみれば、たしかに並々ならぬ努力(苦笑)。僕にとっての「新聞を毎日読む」みたいなことなんでしょうね。そこに書いてある文字とか絵とか写真とかを見て、自分なりの考えを構築しようとする。いや、どちらかと言うと、そういうリツイートの集積から自己を分析しようとしているというか……。

ディーナ では、こう質問しましょうか。なぜ人様からの評価とか世間体を守るための努力ができなかったの?

七峰   たぶん、「結果」ばかり欲しがっていた。だから本来そこにあるべき「過程」が無かったんだよね。

ディーナ というと?

七峰   だから、その……(舌打ち)なんでなんだろうな、本当に。

ディーナ ちゃんと言って(笑)。

七峰   わかりました。……つまりね、基礎もなっちゃいないのに応用問題が来て、そのまた応用が来るわけ。そうなってくると、もう僕みたいなボンクラが打ったなまくら刀じゃ太刀打ち出来ないわけ。

ディーナ まだ、ちゃんと言えてない(笑)。たぶん貴方が根底に抱えているのは「勉強嫌い」なのだけれど、その勉強って「誰のため?」っていうところでいつまでも愚図っている。

     ちょっと、ガチで行きましょうか? 貴方、NCTをナメてたでしょう。

七峰   ちょっと他とは違う学校、っていう認識だけだったからね。他には数学が出来る子が行くようなところだよって聞いたぐらい。「数学なんて、学校で学んでりゃ自然に身につくだろう」と思っていたんだよね。実際はこうして、怠けの自分がいるわけなんだけど……。

ディーナ その「怠け」というのは、NCTでの生活、NCT生としての努力を「しないではいられないこと」に据えているからこその「怠け」よね。貴方の関心事はまったく別に向いている。

     私から言わせてもらえば、もう貴方、ほとんど再起不能よね。とても来年、卒業研究をしているふうには見えない。NCT生としての華々しい生活を送れているとも思えないわね。

七峰   仰るとおりです。僕からクラスメイトと距離を置いている面もあるし、クラスメイトが僕と距離を置いてる感もある。僕個人の主観的な見解としてね。あんまり話し合わないから情報交換も少ないし。

     なんか……。居づらいよね。それなりに必要とされてるのは言外から感じてはいるけど。

ディーナ 潔癖だものね、貴方。温室育ち? 箱入り息子? まあ、そう言い換えることもできると思うけれど……。ちょっと言い方が悪くなるけど「くそ真面目」よね。規則は守るほうだし。そう……ルールを派手に破るというよりは、息をつくための小さい穴をポツポツとあけるような。でもそのポツポツあけた小さな穴が、結局は一つの大きな穴になっちゃうのよね。

     ……ちょっと話が抽象的すぎたかしら。つまり貴方が課題やレポートを提出しそびれるようになったのは、Twitterやネット側に仁義を強く感じているからでしょう。実際夏季休業中なんて、ほとんどTwitterにかじりつきだったわけで。

     確かにNCTには、人間的なちょっとしたお目こぼしがある。でもそれにただ甘んじているようでは上には上がれない。最後にキッチリ締め上げるためのユルさがそこにはあるの。貴方にはそのユルさが規則に対して不誠実だと思っていて、けれどそのユルさがなくては上がれないような成績だった。その義理と不義理の板挟みに耐えかねて貴方は逃げ出した、ということになるわね。

七峰   ……なんなんだろうね、ほんと。


③「未練無いね?」と聞かれたら「無いです」って答えちゃう


ディーナ まとめましょう。そうやって貴方を悩ませているものの根源は、そもそも、だらしなく遊びすぎ(笑)。そんなだから、取れる単位もみすみす落とすのよ。

七峰  (苦笑)。いや、ほんと悔しいよ。というか、なさけない。こうして振りかえってみると、誰かと比較しっぱなしの数年間だったなあ。まずお手本を見てからものをいう、そんな感じだった。

ディーナ それが、貴方のいう「過程なき結果」というものかしら。

七峰   そうじゃないかなあ……。どんな言い訳を思いついても、その深層を突付いてやると、「しなければならないこと」を先延ばしにしていたら期限が来た、どうにか間に合わせなければならないけれど、しょせん付け焼き刃では自分のためにならない。……どんなに素晴らしい逸品でも、納期に間に合わなきゃ話にならない。しかし粗悪品を出しても意味が無い。スケジュールがずれ込むと、ドミノ倒し的に他も立ち行かなくなってゆく。

前期の終わりにカウンセリングを受けた時、「自分は多分これから『NCTを辞めなきゃならない理由』を作ろうとすると思う」と考えたけど、おおむねそれが的中したことになる。

ディーナ 今、「あの時、もっと勉強していたら……」と思って後悔することはない?

七峰   そういうふうに考えようとしたら、(後悔)すると思うよ。でも最近、確信犯的に怠けだす自分を理解しつつあって。「もう手遅れじゃん」っていう。そこで「努力しない」っていうこととも繋がるのかな。野球のダルビッシュ有選手も「頭を使って練習しないと練習は嘘をつく」と言われているけど、やっぱりそういうことだ。僕の場合そもそも練習すらまともにできてないわけだから、ほとんどその結果がストレートに結果に反映されてる。

ディーナ 勉強して得たものより、勉強しないで失ったものが大きすぎて、ほとんど諦めちゃってるわけね。じゃあ……。

七峰   辞めたらいいんじゃないか。そう思うんだけどね……。……そんなんじゃだめだよね。

ディーナ まあ、許さないのは貴方自身のプライドでしょうね。本当に辞めるのであれば相談も必要だし。そもそも、まだそんな時期じゃない、もっと頑張ってくれというのが大勢の本音だと思うのだけれど。

七峰   だから、毎回決断が遅いっていうか、ほとんど切羽詰まってから即断即決、もしくは、待ったなし。っていうふうにどうしてもなっちゃうんだよね。ふつうもっと早い段階で決められることを、だいぶ遠回りしてやっとどちらにするか決める席につく、というか。

ディーナ それも、ほとんど選択肢の幅が狭まっている状態になってからね。

七峰   うん。だから……技術屋を目指すのは僕の本意ではなかった、のかな。数式の羅列、記号の意味もちんぷんかんぷんになって……。

ディーナ そこ、そういう風に言い訳する?

七峰   まあ、ね……。つまり、そういうふうに、後から後からものを言いたいわけ。それが僕なりの「流れに逆らわず生きる」という生き方だった。ま、ほとんど流れの縁のところに当たりながら流されてるようなイメージだけど。

ディーナ NCTのなかで、NCT生でなかったというのはそういうことでしょうね。学生という立場にあって、学業をしないのだから、そりゃあ単位は落とすわクラスメイトには見限られるわ、仕方のない事ね。

七峰   だからそうやって「辞める理由」はリストアップできる。ただ「辞めた後」のビジョンが明確じゃない。「もっとNCTでうまくやっていれば」ってグチグチやるかもしれない。もっといいとこに入れたかもって。

ディーナ まあ、NCT生って就職してからの離職率も高いらしいけど。

七峰   それでも、まあそれなりの箔がついてて待遇もいい、なんてことを言われたらね、なかなか離れられないんだな。どんなに成績が悪くっても。

ディーナ それが、「才能と収入は別」ってことにも繋がるのではなくて?

七峰   または「成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。」かな……。この場合、栄誉になるのかな。まあ、学業にはまったく身が入らないし、「未練無いね?」と聞かれたら「無いです」って答えちゃうし、「未練あるね?」と聞かれたら「あります」と答える。相手にとってどういう答え方が最善なのか、ってつい考えちゃうね。

ディーナ それはほとんど反射的で、その場しのぎの返答でしかないわね。

七峰   そう。だから……どうすればいいんだろうな。時が来たら、どうしたって話し合うことになるとは思うんだけど。何かの節目のようなタイミングで……。

ディーナ 今「辞めたいです」って言っても、タイミングとしては中退になってしまうものね。

七峰   それも、ほとんど叩き出される形になるわけだよね。これまで積み上げてきたものもパアになって……。

ディーナ それはものすごい挫折だと思うのだけれど、もしそうなった時、次にシフトされる貴方の「しないではいられないこと」って?

七峰   それは、やっぱり小説家になる夢だな。


④とにかく長文を作りたい


ディーナ ちょっと聞きたいのだけれど、貴方の言う「小説家」と「文筆家(文章書き)」との間にはどういう違いがあるの?

七峰   それはやっぱり、小説を書いて生きていくということじゃないのかな。僕はほとんど昔からエッセイの延長線上というか、今みたいなごくごく身近で起きていることについてしか書いてこなかったようにも思うけど。雑誌のライターとか、そういうところとはまたちょっと違うんじゃないかな……。僕は「小説が書きたい」。物語を編んでかたちにしたい。

ディーナ 思うんだけど、貴方が「しないではいられないこと」って「文章を書くこと」?

七峰   そうなるんじゃないかな。小説家になりたい、自分の書いた本を誰かに読まれたいということはもっと切り離して考えられると思う。とにかく、言葉を編みたい。というと詩人的な感覚なのかもしれないけれど、そこともちょっと違うかな。とにかく長文を作りたいな、と思う。その一つの手段として、小説があると考えている。

ディーナ 今の優柔不断な貴方に、その「生き方の選択」は果たしてできるのかしらね。

七峰   出来ると言いたいよ。もう、NCTで「できるはずなのに、できませんでした」を何度繰り返すんだって感じで。それは常に他のクラスメイトを見ながら言っているわけだよね。「あいつはおれよりもずっと進んでいる」って。

     ただ、NCTを辞めること=社会からドロップアウトすること、だとも思っているけど。小説家になる、小説を書くという目的は、本当に切羽詰まってもう自分をいくら削り取ってもこれしか残らないという印象で話している。

ディーナ その前段階の、社会人としてやり直すための新しい進路も、貴方より親のほうがずっと深く考えているのだけどね。

七峰   それがね、本当に自分にとって何よりもなさけないことだった。俺はこの世の中、世間についてなんにもわかっていないんだな、と思った。そういう人間だから、わざわざ普通の社会人なら通らないような道を通っているんだろうけど。

ディーナ まわり道でね。

七峰   本当に。まわり道で……。やっぱり、激しい運動も避けてきたんで脳の伝達系の動きも鈍い、とかいうのがあるんじゃないかなと。で、考えてみると僕、体育とかクラブでやるトレーニングみたいな運動が嫌いで今までずっと避けてきたんだけど、自分からすすんで体を動かしてみると、運動って楽しいんだよね。これは本当に不思議なくらい。

ディーナ ね。それが「苦にならない努力」ってことなのよ。

七峰   小さなことからコツコツと、ね。でも、努力っていうのは必ずしも実るものでもないし、はっきり無駄だと言われちゃうこともあるわけでね。

ディーナ それでもやり続けるのよ。そうなると、やっぱり好きでも嫌いでもないどっちつかずじゃできないことよね、きっと。

七峰   嫌いでも、「これは嫌いだ!」って言いながらやることはできるもんね。好きか嫌いかどうかもわからないことじゃあ……(努力)できないよなあ。

ディーナ でも、その評価はだれがどうやって決めるわけ?

七峰   僕にはもう無理です。手遅れですから。

ディーナ そうやってすぐ手を退こうとするから、進むものも進まないんじゃない?(笑)

七峰   向いてないんです。そう思いたいんだけど、でもやっぱり「もっとうまくやれたんじゃないか」とも思う。

ディーナ それは、貴方の言う「将来」の像がつかめないから?

七峰   十年二十年先なんて、いまどきもう分かるわけないと思うんですよ。……それは結局のところ、自分にとって大局がわからないということなのかもしれないけれど。

ディーナ 逆に、先のことがわからないわからないって言って、一日一日を大事にしていないんじゃない?

七峰   あ、それはすごくそう思う。「もしかしたら明日死ぬかもしれない」なんて思うことがあっても、かと言って今日あしたに今すぐできることって少ないんじゃないかなあ。

ディーナ 貴方がそういうものだから、ここの小説の連載も捗らなかったのよね(苦笑)。

七峰   はい。反省してます。


⑤飽きたの?


ディーナ 「最後の一葉が散る前に」では今「その果実の味を知ったがゆえに」という章で貴方の苦悩を書き記しているけれど、今回の対談をその後編と差し替えるという話だったわね。

七峰   はい。本来投稿する予定だった後編の内容は、前・中編の内容を踏まえた上で、まだ自分が自分に対し嘘をついている、言い訳を重ねてものごとの本質をずらしているといった怒りをむちゃくちゃにぶつけた後、どうにもならない感情が爆発して泣くのを抑えながら眠りにつく。そして目が覚めると同じ場所なんだけれどもモヤが消えディーナがいて、自分をちょっとばかし慰めてくれる、そういう内容でした。しょせん自分の醜態をどのようなかたちで晒すか、という違いでしかありませんので、今回の対談で自分の伝えたいことが少しでも伝えられれば、と思います。

ディーナ 実際、水木先生の件を口実に貴方、大泣きしたのよね。

七峰   「昼から学校休みたいな」とか、何の関係もないことと紐付けたりしましたね。それは良くないことだと思い反省しましたが、なによりも大泣きした理由は、「水木さんに比べて、自分はどうだ」と。自分に満足できる生き方をしているかと。

ディーナ あぁ、そこでもまた他人と自分とを比べちゃったのね。

七峰   そう。何にしても中途半端で、学生としての本分にさえシャキッとしない自分がことさら矮小に思えたわけ。自分の本当に「好き」で、一時の気の迷いじゃあないことを証明したい「小説家」の夢。その夢を「生き方の選択」に指定することができない。それってつまりNCTを辞めるのと同じに見えるから。両立するための方法はあったに違いないだろうけど、そんなに手際よくやれたらもっとNCTのなかで成功してるに違いないんだよね。そこまでクレバーなら、いくらTwitterでタイムラインを回しても、繰り返しネットサーフィンに繰り出しても満足することなんてあり得ないことにもっと早い段階から気がついて、ネット生活には早々に見切りをつけてたはず。

ディーナ 今からでもそうできるんじゃない?

七峰   いや、無理です。それはこっちの水のほうが断然甘いから。

ディーナ そう……。貴方が八方美人になろうとして、結果的に四面楚歌になったということはおおむね理解できたけれど、今後の創作活動における予定みたいなものは無いのかしら。

七峰   あります。これまでの全三回にわたる懺悔の回がここで終わりまして、次回から小説内小説の「本編」に戻ります。実質二篇分、そちらの投稿をもちまして「本編」はひとまず区切らせていただきます。

ディーナ 飽きたの?

七峰   ぎくり。

ディーナ いえ、ここまで赤裸々に貴方の内情を語った以上、逆によくここまで長編の大風呂敷を畳まずに来たものだとは思っていたけれど……ね。酷くはない? プロローグ的な意味で。

七峰   いや、作品そのものをたたむのではなくて……見直しです、見直し。改めて全体を見返して、可能ならば加筆修正を加えて作品そのものの作り直しを図りたいな……と。

ディーナ まあ、そうね。序盤から少々無理がある設定を付けてしまった……とは前々から語っていたものね。

七峰   アナログハック・オープンリソースを使うと言っておきながら今までの所業、反省しております。続く二篇では、このリソースの魅力を僕なりの解釈で書きたい……そんなふうに思います。

ディーナ その二篇さえ書ければ満足だから、ではなくて?

七峰   いや、よく考えずに見切り発車で作った設定とか伏線もどきが多かったなと……。

ディーナ そう……ま、いいわ。そういうことなら。

七峰   というわけで、今後とも「最後の一葉が散る前に」をどうぞよろしくお願いします。

ディーナ 空想でも現実でも、よい着地点が見つかるといいわね。

七峰   はい、ほんとに……。

七峰らいが(ななみね・らいが)

平成7年(1995年)生まれ、二十歳。鳥取県出身。

学業に身を置く傍ら、文筆家を志し自主的に執筆活動を開始。2015年活動拠点をPixivから小説家になろうへ移し、生活密着型ノベル「最後の一葉が散る前に」を発表。

典型的な「Twitterで人生を棒に振った人」である。


ディーナ・カルツァ

七峰らいがの創作した女性キャラクター。七峰とは2011年来の付き合い。

「黒幕」を自称し、姫カットの長髪、青いバラの髪飾り、黒一色のドレスで長身。

七峰の分身体として、辛辣な指摘と柔和な寛容の態度を使い分ける。

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