第八十四話 第三の試練
地下40階、輪廻達はボスを倒して転移陣の前にいた。ボスの強さは地下30階のボスより強い程度しかなかったから、ボスは変わってないようだった。
ゼクス達が転移陣でカードを出して転移しようとするが…………
「畜生!! 駄目だ!!」
「最悪のパターンになってしまったな」
転移陣はうんともすんとも言わず、起動はしなかった。こうなれば、試練が終わるまでは転移陣が使えないだろう。
だが、輪廻は最悪のパターンと言っても、それはゼクス達に対してではない。転移陣が駄目なら、次の手を使わなければならない。
輪廻は既に次の手は考えていた。それは、ゼクス達をルフェアが作ったもう一つの世界に避難してもらうことだ。
(出来れば、この世界のことは知られたくはないと思っていたんだがな……)
輪廻は何かがあった時に隠れ蓑にしようと考えていたので、仲間ではない者に知られたくはなかったのだ。だが、こうなれば仕方が無いと考えるしかなかった。
「転移陣が駄目なら、シエルの”移扉”も駄目だろうな」
「やってみたけど、発動はしなかったよ」
「やはりな……、ルフェア。開いてくれるか?」
「問題はない」
ルフェアは別世界、作られた世界に繋がるゲートのようなものを発現した。転移は駄目でも、別の世界に繋げるのは出来るようだ。
「な、なんだこりゃっ!?」
急に黒い物が現れて、ゼクス達は驚いていた。
「説明は省くが、この世界は安全だ。俺らが試練をクリアするまで、待っていてくれ」
「だが……」
「説明は省くと言っていたんだろ? 時間の無駄だから、さっさと入ってろ」
「うわっ!?」
ゼクスは輪廻にお尻を蹴られて、ゲートの中に入ってしまう。皆が声を上げるが、輪廻は間髪をいれずに、ゼクスの仲間も蹴り入れていく。
そして、すぐにゲートを閉じて、こっちに戻れないようにした。ルフェアのようなスキル、魔力を無効する術がなければ、出て来れないだろう。もし、ルフェアが死んだら、解除されて外に出ることができるが、ルフェアが、簡単に死ぬとか予想出来ないのである。
「邪魔者はいないし、さっさと進むか!」
「畏まりました」
「了解〜」
「ふむ、特訓の続きだな」
誰一人も、ゼクス達のことを気にしていなかった。蹴り入れた輪廻本人も、説明もなく別の世界に無理矢理入れたことに心を痛めず、次のことを考えていた。
考えるといっても、地下100階へ行き、ボスを倒せばクリアするのはわかっていることだ。
そうわかれば、すぐに行動に移した。普通ではありえない程の強さを持った魔物が現れようが、輪廻達の相手ではない。輪廻達を止めたいなら、魔王の幹部クラスがいないと話にならない。
そのまま、地下を降りていき…………
ーーーーーーーーーーーーーーー
地下80階。玲子のパーティがまだクリアしてない階である。ここには、当然のようにボスの部屋があり、扉の前には無傷の輪廻達がいた。
「ようやく、あと20階は降りていけば、本命か」
残り20階、ここまで来るには、他の者なら攻略するのに、多大な被害と時間が必要になるだろう。だが、輪廻達は一日しか時間を掛けていない。
ここのダンジョンは他のダンジョンよりレベルが落ちるといえ、魔物が沢山現れるのでもっと時間がかかるはずなのだ。
輪廻達には、瘴気で察知ができるテミアがいるので、大量に出てきた魔物がいる道を避けて、地下へ進む階段がある道を最短で進めたのだ。戦闘も最小限に留めたので、疲れはあまり無くて、無傷どころか服に汚れも少ない。
扉を開けて、ボスと対峙することに…………………………ならなかった。
「あれ、ボスがいない?」
「調べたが、ここの部屋にはボスはいないようだな」
「これは、また奇妙ですね」
「試練に関係があるのかな?」
ルフェアが”真実の瞳”でこの部屋に隠れていないか、調べて貰ったが、何も見えなかったことからボスはいないと判断した。
向こうにあった扉を開けてみようとしたら何も抵抗もなく、簡単に開けられた。
「わからんな……」
試練なら、ボスと戦わせた方がいいのだ。そうではないと、簡単にクリア出来る試練になってしまうからだ。
(なら、別の何かが…………?)
この状況、試練と別に何かが起きているかもしれない。
輪廻は気を引き締めて、警戒しながら先に進むのだった…………




