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第八十三話 VSケルベロス

 

  地下36階にいるはずはない強敵であるケルベロスが輪廻達の道を邪魔していた。実力的には、ゼクス達では、死人が出ると判断したため、輪廻達が相手をする。

  それは、正解であった。何せ、ケルベロスが”瞬動”を使ってきたのだから。




「ゼクス達はルフェアから離れんな!!」

「魔物の癖に、瞬動を使うなんて!!」

「年増エルフは使えないですものね」

「う、うっさいよ!!」


  3人とも、ケルベロスの瞬動に驚きながらも、避けることが出来た。この程度の瞬動では、ルフェアとの特訓を受けた3人からにしたら、遅いぐらいだ。

  それ程に、ルフェアの瞬動が凄いことがわかる。




「瞬動を使えることから、S~SSランクってとこか」

「おそらく、そうかもしれません。SSSランクには届いていないと思われます。年増エルフが死んでいませんから」

「うおぃ!? 私の死を基準にしないでよっ!!」


  テミアの言い方は少し酷いが、ある意味間違ってはいない。SSSランクの魔物が使ってくる瞬動だったら、シエルは攻撃を受けていた可能性が高い。シエルは”視領”を持っているが、見えていても、反応が出来ないのでは意味がない。ルフェアとの特訓でも”視領”を使ってもルフェアの攻撃を避けきれていない。




「”居絶”!!」


  輪廻が紅姫で攻撃をするが、ケルベロスの身体には魔力の刃は通らなかった。

  先程の黒光りする蟲と違って、魔力による攻撃が効かないのではなく、硬いのだ。




「魔耐も高いのかよ!」

「私にお任せを! ”地剛剣”!」


  既に地喰の準備を終わらせており、ダンジョンの土を使った力で押しつぶす剣。”地剛剣”をケルベロスに振り下ろすが、三つ頭の一つから、雷撃の放射を吐き出して、地喰の土が粉々に砕かれた。




「むっ?」


  別の頭から、火炎の放射をテミアに向かって吐き出される。ケルベロスとテミアの間に大盾を持ったシエルが入って、火炎の放射を防いだのだった。盾は少し溶けてしまったが、2人共は怪我はなく、無事であり。




「下僕、良くやったわ」

「この人はなんで、素直にお礼を言えないのかしら……」

「下がれ!」


  輪廻はもう次の攻撃の準備を終わらせており、手の側には透明に近い手が見える。その正体は”虚手”であり、重力の塊がケルベロスを狙うが…………






「「「ガウガウ!!」」」






  ケルベロスは三つ頭が同時に火炎、雷撃、氷結の放射を吐き出して撃退しようとする。このまま、激突すれば、相殺するだろうと予測出来た。それ程の威力があるのが見とれた。






  だが、輪廻はニヤッと笑っていた。思い通りに動いてくれたからだ。




  ケルベロスの攻撃が撃ち出された瞬間に、輪廻は”虚手”を解除した。

  強力な攻撃を撃ち出された瞬間は、必ず、大きな隙になると考え、攻撃を誘ったのだ。

  ”虚手”を消してしまい、防ぐ術はないと思われたゼクス達だった。


  防ぐ術はまだあるのだ。輪廻はケルベロスの攻撃に対しては何もしないが、側にはテミアとシエルがいる。




「”水遁弾”!」

「”雷豪”!」





  攻撃はテミアとシエル、2人が引き受ける。二つの魔法が、ケルベロスの攻撃とぶつかり合い、爆発が起きる。




「うわぁっ!?」

「キャァッ!!」

「なんて威力だよ!? …………あれ、輪廻がいない?」


  離れていたゼクス達は、その場に輪廻がいないことに気付いた。まさか、爆発に巻き込まれて、消えてしまったのか? と青ざめていたが、それは違っていた。




  当の輪廻は、ケルベロスの背に浮いていたのだから。




  ”空歩”で、空中に立っており、背中にそぉっと触れる。ケルベロスも触れたことで、輪廻が背中にいると気付いたが、既に遅かった。






  ”重気撃掌”が背中にぶち込まれ、ケルベロスの身体は地に伏せることになる。三つ頭から血を吐き出されて、苦しんでいるのが見えた。


  ”重気撃掌”とは、重力と気の合わせ技であり、防御を無視して体内を壊して殺すのだ。ケルベロスの内蔵はズタズタになっており、体外には傷がない姿で転げ回って…………………………動きを止めた。


  ケルベロスの身体は光の粒になって魔石が現れたことから、ダンジョンの魔物であることがわかった。


  やはり、外から来た魔物ではなく、ダンジョンで生まれた魔物で間違いないことから、魔人が現れて魔物を召喚したなどの線はなくなった。

  初めに思い付いた試練の仕業だと考えた方が良いと輪廻は思った。




「やったな!!」

「ああ。やはり、異変が起きていて、深い階層にいる魔物がここに現れているようだ」

「やはりか……、で、輪廻達はどうするんだ?」

「決まっているだろ。そのまま先に進むだけだ。それに、お前達を地下40階にある転移陣まで送ってやる」

「なっ、なら、俺も……」


  ゼクスも輪廻を手伝うと進言しようとするが、輪廻に話を切られた。




「足手纏いだ」

「な、俺でも駄目なのか!?」


  ゼクスもSランクの冒険者であり、足手纏いと言われて、ハイと言って、下がれるわけでもない。




「お前だけなら、ケルベロスに勝てる可能性があったかもしれないが、無傷で勝てるのか? それに、もっと強い魔物がいるかもしれない」

「…………」

「わかったみたいだな? 元から、この異変は俺達が引き起こしたみたいなものだ。お前達が命を無駄に落としてまでも、俺達について行く義理はないんだろ?」

「…………わかったよ」


  ゼクスは輪廻の言うとおりだと、理解している。足手纏いになってしまうのはケルベロスを見てから分かり切っていたことだし、仲間を放って、ゼクスだけが着いて行くのはおかしなことだ。




「あ、あの……、異変が起きている中で、転移陣が正常に動くのでしょうか?」

「成る程、その最悪のパターンも考えないといけないな……」


  確かに、リダの言う通りに転移陣が正常に動く確証はない。実際に地下40階まで行って、確かめないとわからない。駄目だった場合は、逆に階段を上がって行くことになる。だが、上の階にももしかしたら、強い魔物がウヨウヨしているかもしれない。




「はぁっ、地下40階に着いた後に考えるか」




  まだ安心出来ない状況が続くのだった…………




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