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第七十八話 敵対?

 輪廻以外の全員が魔族だとバラした後、しばらく皆は固まったままだったが、先に再起動したのは、啓二だった。




「ちょっ、まて!? お前以外が魔族ぅぅぅ!?」

「そうだが、何か不都合が?」

「おおありだと思うぞ!? 何処から見ても、人間とエルフにしか見えないぞ?」


 ここでようやくロレック国王が起動し始め、輪廻に詰めよっていた。




「そ、その話は、本当なのか……? なら、何故、一緒にいられる? 魔族は出会ったら襲われると言う認識だったが」

「それは間違いだと思うぞ。何故、そうなっているのか、こっちが聞きたいね」


 出会うだけで、襲われるなんて、獣か魔物と変わらないではないか。魔族と認定されているダークエルフや吸血鬼などは対話する知性もあるのだ。




「むっ、種族を教えて貰っていいか?」

「そこまで教える必要を感じられないが? それに、テミア達は俺の仲間だ。それでいいじゃないか。もし、手を出そうなら……」


 輪廻から殺気が膨れ上がって、実力がある者は警戒し、まだレベルが低い者は身体を震えわせる。そして、輪廻はいつもより低い声で言う。






「魔王より先にここを潰すぞ?」






 そして、すぐに殺気を引っ込める。警告だから、これ以上怖らせても意味はないので、すぐに引っ込めたのだ。周りにいた者はヒヤッとしたが、すぐに引っ込めたから、輪廻は敵対する気はないということがわかったようだ。




「警告をするなら、少しは穏やかに言ってくれよ。俺は手をださねえからよ」

「私も貴方と戦うのは勘弁させてもらうわ」


 クラスメイト中で二強である啓二と玲子が輪廻と敵対するつもりはないと表明してきた。英二達ももちろん、初めから戦うつもりは全くなかった。ナザド副隊長は眉をピクッと動いていたが、勝ち目がないのはわかっているのか、動かなかった。




「わ、私も敵対したいとは思わないから急に殺気を出すのはやめてくれない……?」


 エリー王女は、戦える実力はないので、殺気に耐えられなくて、座り込んでいた。




「おっと、すまなかったな。立てるか? 立てないようなら、テミアが手を貸してやりな」

「畏まりました」


 ずっと黙っていたテミアが動き、エリーの襟を掴んで無理やり立たせていた。




「キャアッ!? テミア、少しは優しくしてよ……」

「手を貸してやれと言ったんだが」

「いえ、御主人様に御意見する者にはこれくらいがちょうど良いかと思いまして」


 テミアは輪廻に意見を言ったと判断したようで、雑に扱っているのだ。




「ううっ……、優しかったテミアがどうして?」

「私は一生、仕えるのに相応しい御主人様に出会えたのですから、貴方に優しくする必要性が見当たりません」

「お、おい、輪廻以外は魔族と聞いたが、まさか……」

「はい、私も人間ではありません」

「なっ、ここに入った時から?」

「教える必要を見出せませんね」


  輪廻はテミアが病魔であることを秘密にするようにと厳密にしてあるから、テミアから漏れることはない。




「そんなことより、俺は目的があるからここに立ち寄っただけだ。そろそろ行ってもいいか?」

「……ちょっと待ってくれ。最後に一つだけいいか?」

「答えられることならな」


  ロレック国王は立ち上がろうとする輪廻を止め、一つだけ質問をする。




「輪廻は、魔王を倒すつもりはないのか?」

「そうだな、襲ってきたら殺すが、俺達に何もしてこないなら、無視をするだけだ」

「っ……!?」


  ロレック国王だけは、輪廻が言いたいことを正確に読み取っていた。つまり、輪廻は自分の邪魔をしないなら、ティミネス国が魔王に襲われても、無視をするつもりなのだと。

  正確に読み取れていなかった者は、今日、助けて貰ったこともあり、魔王と戦うことになったら力を貸して貰えるだろうと、楽観視していた。

  啓二、英二、絢等もロレック国王と同様に、輪廻の本心を理解していて、輪廻が言っていたことに苦い顔をしていたが、何も言わなかった。守られてばかりでは駄目だとわかっているからだ。




「話は終わりか? なら、シエル、やってくれ」

「任せてー。”移扉”!!」


  シエルが黒いゲートのようなモノを作り出して、輪廻が先に入っていく。




「行かせてもよろしいので?」

「ああ、敵対は駄目だ。敵対したら、ティミネス国が終わる。そんな予感がするのだ……」

「はっ」


  ナザド副隊長がロレック国王に伺っていたが、敵対はしないことに決まった。確かに、輪廻達の仲間は全員が魔族で、輪廻本人も得体がしれないと感じていた。だが、実力は向こうの方が上だと理解しているから、手は出せない。




  絢は輪廻達について行きたそうにしていたが、まだ実力の差が大きく、むしろ離されていると理解していた。だから、グッと我慢して立ち尽くしていた。横にいた晴海はそんな絢を見て、母親が子供を見守るような目をしていた。

  英二と啓二はまだ自分は弱いなと輪廻達を見て、そう思っていた。玲子だけは何か考えるような素振りをしていたが、すぐに輪廻が入って行った黒いゲートを見てニヤッと笑っていた。ここに菊江先生もいたのだが、輪廻の殺気で気絶をしていて、この場では、何も一言を言うことはなかった。エリー王女は、テミアに何か言いたそうにしていたが、テミア本人は、エリー王女に眼中はなくて話しかけられないでいた。




  そして、輪廻達は黒いゲートの中に消えて、ここから立ち去ったのだった。



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