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第七十五話 登場!


 まだ距離はあるが、土煙が上がっているのが見える。




「魔物を遠距離攻撃で攻撃しつつ、魔人を暗殺出来れば、最高ですが……」

「無理だろうな。空を飛べる奴はいるか?」

「いないですね……」


 クラスメイト達とナザド副隊長が作戦を話し合っていた。魔人を先に倒せば、魔物の制御がなくなり、ただの烏合の衆に成り果てると予想している。種類が違う知恵無きの魔物が協力して、こっちに向かって来るのはありえないことだ。魔物だって魔物同士で争うこともあるのだが、今回は協力し合っていることから、空に浮いている魔人が操っているで間違いないと考えている。

 だから、先に魔人を倒したいが、空に浮いている。こちら側では”浮遊”、”飛翔”と言うスキルを持った者はいない。というわけで、暗殺は不可。




「全員で魔法を放てば倒せるんじゃないか?」

「……難しいな。魔物を放って魔人だけを狙うのは賭けだ。それに、ここを攻めると決めた魔人が簡単に遠距離から放たれた魔法に当たってもらえるか……」

「確かに、魔物を放っておくのはちょっとね……、もし、半分に分けて魔物を放ったとしても、威力が低くなってしまうし、魔人の方は当たるかわかんないしね」




 あー、こうだーと、様々な策を出し続ける。魔法の範囲に入るまでは約5分の時間が残っている。その時間を有効に使って作戦会議をしていたが、なかなか決まらない。

 そして、ベターに魔人を狙うのは無駄弾だと判断して、魔物だけを狙う。魔物を倒したら次は魔人と決め、途中にダンジョンへ向かった者が帰ってきたらラッキーだと考えておく。


 英二達がダンジョンに向かった時に、こんなタイミングで魔物と魔人が現れたことから、罠を掛けられたのと等しい。つまり、向こうで足止めされているから、戦っている途中に、ダンジョン斑が帰って来たらラッキーに近いだろう。

 ナザド副隊長はそう考えており、皆にもそう伝えた。予想出来ない希望は持たずに、今を見て、自分が何を出来るか考えろと。




「作戦はこれでいいだろう。すぐに配置へ着け!」

「「「はっ!」」」


 指揮をするのは、クラスメイトではなく、ナザド副隊長だ。指導者をしてくれたのもあり、クラスメイト達と兵士はナザド副隊長を信頼している。




「よし、お前達も召喚者達についていけ。俺は魔法部隊がいる場所に向かう」

「「「はっ!」」」


 ナザド副隊長は筋肉質で、戦士のような体格をしているが、本来の職業は魔術師である。なので、ナザド副隊長は魔法部隊がいる場所に向かう…………






−−−−−−−−−−−−−−−




「……なぁ、勝てるか?」


 クラスメイトの1人が自信なげに、ここにいる皆に聞いていた。




「わからんな。数はこっちが勝っているが、身体能力は基本的に魔物の方が上。さらに魔人がいるとなると……」

「五分五分というわけね」


 細身の男は眼鏡を上げながら答える。隣にいたお下げの女は互角だと読む。




「魔物を倒せたとしても、俺達で魔人を倒せるのか? もし、アレがアルト・アルグに現れたと言う、危険な魔人のイアだったら勝てる気がしないぞ?」


 クラスメイトの皆は知っている。魔人イアとウルの兄妹は魔王の幹部であり、危険な魔人だと。もし、出会ったら戦わずに逃げろと、ナザド副隊長にいつも言われている。

 つまり、英二達や啓二達でも勝つ見込みがないと言われているのと同義だった。




「いえ、あれは魔人イアやウルじゃないわよ。2人とも、子供の姿をした魔人と聞いているよね? ”鷹の目”で見たけど、大人だったわよ」

「本当か?」


 始めに質問してきた男はホッと安堵していた。魔人イアやウルじゃないなら、自分達でもなんとか時間稼ぎぐらいは出来るだろう。

 その後に、帰ってきた英二達に任せればいいと考えているのだ。ちなみに、残っている召喚者達のレベルは、平均55である。


 レベル60以上は6人いて、啓二達とあともう一つのパーティである。




玲子れいこのパーティをここに残せば良かったか……」


 一番目が啓二のパーティで、二番目は英二達ではなくて、クラスメイトの1人が言うもう一つのパーティ。玲子が率いるパーティ、レベルが平均70と二番目に高いのだ。そして、英二達が三番目になる。




「今、いないパーティのことを話しても仕方がないだろうが、確かにそう思うな」

「今回の作戦は玲子達にピッタリな役割だったからな」

「さすが、魔法狂いのパーティね……」


 玲子の率いるパーティは玲子も含む3人が魔術師であり、前衛なしの偏ったパーティである。接近されたら、対応出来ないのでは? と思うが、玲子があるスキルを持っているため、魔術師だけのパーティでも、クラスメイトの中で二番目の実力派である。

 その証拠が、高いレベルと攻略した地下の階数にある。啓二のパーティは地下79階に対して、玲子のパーティは地下76階まで進んでいる。

 バランスが良い啓二のパーティと違って、魔術師の集まりであるパーティが地下76階まで進むのは凄いことなのだ。






「おい、話は終わりだ。来るぞ」

「お、おう」

「殆どが獣系の魔物……」


 向かって来る敵は、殆どが獣系の魔物で、門を突き破りそうな勢いで土煙を上げて、突っ込んでくる。指揮者であるナザド副隊長は、タイミングを計り…………









「撃てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」









 合図と同時に、様々な魔法と大量の矢が撃ち出される。火、水、雷、風、土と、彩りの魔法が戦場にぶち込まれて地形を変えていく…………






−−−−−−−−−−−−−−−




 足止めされた英二達の方では…………




「クソが、当たらねぇ!!」

「落ち着きなよ。ケイたん〜」

「空中をジャンプだけで戦える啓二は凄いけど、ここは魔法の出番でしょ」


 今まで啓二がジャンプをして、浮いているロロイに切り付けていたのだが、全ては空振り。ロロイの近くに啓二がいたから魔法を撃てないでいたのだ。




「貴方ね、早く倒して戻りたいのはわかるけど、他の人の邪魔をして、どうするのよ?」


 啓二の元に1人の女性が近付いて、睨んで文句を言っていた。




「ぐっ!」

「わかったら、下がりなさい。ここは私達がやるわ」


 その女性は王城にいたクラスメイトの話に出ていた出雲玲子いずもれいこであり、立派な杖を持っていた。この杖はダンジョンの宝箱から見付かった紫陰しおんの杖で、特殊な効果を持つ魔杖である。

 さらに、玲子は魔術師だけのパーティで地下76階まで進める実力者で、特殊な魔法を使える。そう、特殊な魔法とは…………






「邪魔者は捻れていなさい。”歪空”」






 玲子は杖を掲げると、それが起こった。ロロイの右肩前に渦巻きのようなモノがが浮かんだのだ。


 ロロイはこれに嫌な予感がしたのか、とっさに浮かぶ渦巻きから逃れようとするが、少し遅かったようで、右手の肘辺りで渦巻きと重なってしまい、渦巻きを中心に捩られていた。




「ウガァァァァァッ!? て、テメェ!?」

「まず、右一本」


 玲子は続けて、次の翼を指定して”歪空”を発動しようとしたが…………




「やらせるかよ! ”風刃裂波”!」


 ロロイは玲子に魔法を撃たれる前に風魔法で玲子に向かって攻撃する。




「危ない!」

「大丈夫よ。”歪面”」


 とっさに、攻撃を中止にして、”歪面”を発動した。空間を歪めて風魔法を横に曲げたのだった。横へ曲がった風魔法は木に当たり、木は真っ二つになって風圧で吹き飛ばされていた。




「この攻撃は受けない方がいいわね」

「貴様、あの魔法……特異魔法か!?」


 見たことがない魔法に、ロロイは特異魔法であることにすぐ気付いた。


 そう、玲子の魔法は輪廻と同じ特異魔法であり、『歪曲わいきょく魔法』を使う。『歪曲魔法』とは、曲げることに特化した魔法であり、空間を操作をしているとも言える。


 玲子が特異魔法を使えて、周りには玲子を守る仲間もいる。ロロイは勝てないと判断したのか、風の結界は解かれた。




「ちっ、俺じゃ勝てねえな。だが、時間稼ぎは充分だろうから、もういいだろう」


 ロロイは立ち去ることにした。上司の命令は足止めであり、死んででも殺せ、止めろとは言われてない。だから、時間を充分稼いだロロイは役割を果たしたことになる。

 ロロイは何も言わずに飛び去る。




「待て!?」

「……駄目。距離が遠すぎるわ」


 玲子は逃がさないように”歪空”を発動しようとしたが、もう範囲から離れてしまっており、発動しなかった。

 だが、風の結界は解除されたから街に戻ることが出来る。




「皆、急ぐぞ!」


 ゲイルが前に出て、皆を急かす。土煙が見えているから、そう遠くはない。急いで戻ろうとした時、玲子が前にあるモノを見て、呟いた。






「…………あれは、ヤバくないかしら?」

「……!? あれは!」




 遠くにあるのだが、空中に大きな黒い隕石が街がある方向に向かっているのが見えていた…………






−−−−−−−−−−−−−−−






「何だと……!」

「デカイ……」


 空を見上げると、黒い隕石が落ちているのがわかった。そんなのが街に落ちたら被害が計り知れないモノになってしまう。何としてでも、魔法で撃ち落とそうとするが、隕石の表面を削るだけだった。




「終わった……」

「い、嫌よ、助けてよ!」

「あ、あぁぁぁ……」


 クラスメイトの中で絶望する者が現れ、嘆いていた。このままでは、街もろ自分達が死んでしまうと思われたが、






「”魔隕石”!」






 何処からか声が聞こえて…………、もう一つの黒い隕石が現れて、隕石同士が激突して、魔物がいる場所に落ちていった。魔物はこの攻撃で、300体ほどの数が潰れて死んだ。




「何だと?」


 始めに黒い隕石を落とした犯人である魔人が驚愕したような声を出していた。






「……え、助かったのか?」

「あ、あぁぁぁ、まだ生きている!」

「一体、誰が……?」


 ナザド副隊長が呟いた瞬間に、クラスメイト達の前に黒い穴のようなのが現れ、警戒する。そして、穴からまず脚が出て来て…………




「まさか、戦争が起きていたとはな」

「えっ……?」


 現れた者の顔を見て、クラスメイトの皆、全員が呆気に取られていた。




「隕石は魔物側に落としましたよー」

「それは当たり前でしょうが、年増エルフはッ」

「ククッ、戦争をしている途中とはな。あなたと一緒にいたら退屈はしないようだな」


 続いて、美女と美少女が3人も現れて、男子は見取れてしまう。

 そう、黒い穴のようなモノから現れたのは…………






「面倒だが、助けてやるか」






 旅に出ていた輪廻とその旅仲間であった…………







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