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第七十三話 披露会



 英二達がティミネス国に戻ってから三ヶ月経っている。英二達はティミネス国に戻り次第に、ダンジョン斑になり、ダンジョンを攻略している。




 そして…………、








 日が落ちた頃、英二が泊まっている部屋に、エリーと英二とパーティの仲間が集まっていた。




「え、明日はエリーの誕生日なんですか?」

「はい。その時に、勇者達の披露も兼ねているので、英二に挨拶をして貰いたいのです」

「はぁ、挨拶ですか……」


 今までは民衆に勇者を召喚したことは伝えてあるが、まだ顔合わせをしていない。まず、強くなってもらってから、顔合わせをした方が良いと考えて、まだ正式に披露はしていなかったのだ。




「それでは、宜しくお願いしますね」


 エリーは忙しそうに、準備をしに戻って行った。英二達は主賓だから、何もしなくてもいいと言うことで、今日は訓練もお休みだった。




「明日はエリーの誕生日なのに、忙しくしているわね?」


 隣で話を聞いていた晴海がそんなことを言っていた。今年は誕生会もやるが、勇者達の披露を優先されているので、英二は心苦しいと思っていた。




「本当なら、今の状況では誕生会をやるべきじゃないんだがな。魔人イアが近くに現れたんだからな」

「誕生日を祝って貰えないのは悲しいことだけど、騒ぎが大きくなると、魔人を呼び寄せる可能性が高いのもあるしね。今回は勇者の披露も兼ねているけど、祝ってもらえるだけはいいと思うよ」

「……そうだな。せめて、僕達だけでも、盛大に祝ってやろうぜ」

「おっ、いいな! 堅苦しいのは無しでやるならな!!」

「それは良い考えね」

「そうだね!」


 明日の誕生会と勇者達の披露会では、民衆は披露会の方に注目するだろうから、エリーは良い気分ではないだろう。国の生き残りが懸かっているのだから、仕方がないが…………


 だから、英二は自分達だけでエリーを呼んで、日本式の誕生会をやろうと提案を出したのだ。




「そうなると、準備が必要になるわね」

「ケーキは…………売っていないよな」

「作るしかねぇだろ? 今から作って、晴海の氷魔法で保存すればいいしな」

「ええと、プレゼントとかは?」

「それなら準備出来るな。お金も貰っているからな」




 4人でサプライズとなるエリーの誕生会について話し合った。それは、日が変わるまで続いたのだった。









 翌日、勇者達の披露会となる日になった。街はお祭りみたいに、道には人々が埋め尽くされていた。見かけた者もいるが、ほとんどは初めて見る人が多く、勇者とその仲間達に期待していた。


 当の英二とそのクラスメイト達は門の内側で待機していた。




「これから、皆を披露するが、勇者である英二が挨拶をするだけで、特別なことをさせるつもりはない。だから、安心してくれ」

「わかりました。黙って見ていればいいのですね?」

「はい。向こうから手を振ってきたら、手を振るだけでもいいので答えて頂けると嬉しいです」


 ロレック国王とエリー王女がこれからのパレードについて、説明をしていた。その2人ほかに、英二達、クラスメイトの全員と菊江先生もいて、今日までの訓練や実戦で、一人も欠けずにここまで頑張ってきた。




「本当なら、輪廻にも出てもらいたかったが、ここにいない者のことを言っても仕方がないか」


 輪廻の姿はないが、披露会はやるつもりだ。民衆の皆に早く安心させたいからだ。ティミネス国の兵士達も万人はいるが、もし魔王の幹部が攻めてきたら防げる自信はない。

 だから、勇者達を召喚したのだ。この国を魔王から守るために…………






「皆の者! この日、集まってくれて嬉しく思う!」




 まず、ロレック国王の演説から始まる。




「始まったか……」


 ロレック国王の演説が終わったら、英二達が門から現れて、披露となる。英二は挨拶を頭の中で復唱をして、出番を待っている。






「ん? なんだ、緊張しているのか?」

「啓二……」


 声を掛けていた者は、わるのリーダーで仲間思いの不良。田村啓二が緊張している英二を見て、声を掛けていた。




「そりゃあ、民衆の挨拶となれば、緊張するからねー」

「エイたん、周りはカボチャなど野菜だと思えばいいんだよ〜」


 エイたんとは、英二のことであり、続いて話してきたのは、啓二のパーティ仲間である野吹裕美と戸上勲だ。

 クラスメイトの中では、啓二のパーティが一番レベルが高い。この三ヶ月で、英二達は平均50まで上がっているが、啓二達は平均75だ。啓二だけはレベル81になっており、クラスメイトの中では一番高い。

 ティミネス国にあるダンジョンも啓二のパーティは地下79階まで行っており、レベルをここまで上げられたのだ。




「……そうだな。カボチャだと思えば、少しは楽になれそうだ」

「それでいいんだよ、勇者に選ばれたといえ、お前も俺達と同じ人間だ」

「そうだよ〜。あ、演説が終わるみたいだよ〜」


 勲から、教えられて門へ向く。ロレック国王の演説が終わり、門が開く。






 目の前には、大量の人。道は一杯になっており、蛇のように長い人の列が見えた。




(こんなに、人がいたんだな……)


 英二はティミネス国のことを良く知らない。歴史の勉強もしているが、国の本質と言うものは、自分の眼で見なければわからないこともある。今まで、強さを求めてばかりで、国を良く見ていなかった。今も、こんなに人がいるとは思っていなかったのだ。




「…………」


 皆が前に出た英二を見て、勇者と呼ばれる者はどんな人なのか、好奇心な目で見る者や期待する目、不信な目などもあった。不信な目で見ている者は、国を任せるのに足りえる者であるのか、まだ信じられない人である。まだ功績がないから、仕方がないけど、英二は様々な目を大量の人から向けられるのは初めてで、なかなか声を出せないでいた。




「……英二殿?」

「……すぅ、はぁ……、すいません。大丈夫です」


 英二は覚悟を決めた。前から戦うことに覚悟を決めてあり、声を拡張する魔道具を受け取り、マイクのように見えるモノを口に寄せる。




「……僕達、この世界に召喚されて半年ぐらいになります」




 召喚されてから、大体半年も経っており、英二には時が進むのを早く感じられた。




「召喚された時は、まだ力を持っていなくて、兵士に何回も負ける弱い存在だった」




 訓練の時を思い出していた。まともに兵士と戦えたのは、輪廻君だけだったな……と。




「皆が想像する勇者は、勇気があって、強い存在だと思う。だが、僕は勇者に選ばれたとしても、貴方達と同じ人間でもある」




 異世界から来た者は、様々な恩恵を受けている。召喚された者のほぼ全員が加護を受けたのも、特別な称号、『異世界者の覚醒』もここの世界にいる人にとっては羨む恩恵である。この称号は召喚者にしか与えられないし、加護は何もせずに受けられるものではなく、この世界では、半分の者しか持っていない。

 加護はあるとないだけで、差が生まれて人生を左右こともあるのだ。




「僕は勇者としてだけではなく、人間である英二として(・・・・・)、皆と一緒に平和を勝ち取りたいと思う!」




 勇者らしくはない、挨拶だったが、目の前の民衆からパチパチと拍手をしてくれる者がいた。次第に、拍手の音が大きくなって挨拶をした英二に送られた。


 ただ、俺が魔王を倒すから、安心しろ! と挨拶されるより、今の英二みたいに恥を捨てて皆と一緒に平和を掴みたいと言ってくれた方が信じられるだろう。




「ありがとう。皆を安心させてくれて……」

「い、いえ!」


 ロレック国王からお礼を言われて、驚く英二。




「そうだぜ、やるじゃねぇか」

「うん、必ず平和にしようね」

「クスクス、少しは男になったんじゃない?」


 貴一、絢、晴海からも称賛を貰う。これから、前を音楽隊を並べてパレードを始めようと動くと…………






「た、助けてくれぇぇぇぇぇ!!」






 門に近い場所で、1人の冒険者が、クタクタになりながらも、大声を上げていた。


 何事だ!? と、近くにいた兵士達が駆け寄る。




「だ、ダンジョン前に魔人が現れたんだ!! 強すぎて、逃げて来たんだ!! 仲間達を助けてくれぇぇぇ!!」

「何だと!? 魔人が現れただと?」


 強い魔人と聞けば、最近、西の地に現れた魔人イアのことを思い浮かべる。




「くっ、こんな時に……」

「俺達に行かせてくれ!」

「僕も行く!!」

「お前達……」


 英二と啓二が声を上げ、次々とクラスメイトが自分も行くと言ってくれている。


 近くに強い魔人が現れたとなるなら、最強戦力を行かせる必要があるだろう。ゆえに、ロレック国王はすぐに判断した。




「……英二と啓二、お主らが中心になって、仲間を半分とゲイル隊長の率いる兵士達を連れて魔人を討ってくれ!」

「わかりました!」

「任せとけ!」


 召喚者を半分に分ける理由は、ここの守りを薄くさせるにはいかないからだ。数人の召喚者は、前線に出たくないと言っており、ここに残る。他の者は逞しいので、半分は送っても大丈夫だと判断している。




 パレードは急遽に中止して、ダンジョン前に現れた魔人を討つことになった…………







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