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第六十五話 次の地へ


 ダンジョンに潜ってから、一週間はお金稼ぎに集中していた。街にいた時、攻めてきた魔物らは全て切り伏せているから、ガリオン国は平和なモノだった。


 一つだけ、変わったことがある。それは、






「……本当に、王城へ戻るつもりはないのか?」

「ああ。自由にやらせてもらうからな」

「わかった。ちゃんとロレック国王に言っておこう。無理はするなよ」


 ここは門の前で、輪廻達と英二達がいた。

 英二達は一旦、ティミネス国に戻ることになった。絢だけは輪廻から離れることに反対していたが、ゲイルからの説得で泣く泣く従うことにしたのだ。




「うぅっ……」


 今の絢は、輪廻の服を掴んで唸っていた。




「あー、次に出会った時、今よりさらに強くなっていたら連れてやるよ」

「本当に……?」

「おい、俺もだぞっ!?」


 貴一が割り込んでくる。貴一も輪廻と旅をすることにまだ諦めてないようで、今より強くなってやる! と意気込んでいた。




「もう、輪廻を困らせないの! さらに強くなって、見返してやればいいんだから!」

「そうだ、今の僕達が輪廻達についていっても、足手まといにしかならない」

「……うん」


 ようやくわかってくれたようで、輪廻の服から離れた。




「安心しなさい。御主人様は私が命を懸けて守りますから、自称姉は何処かで野垂れていなさいな」

「むっ!! 貴女はただ恋人になっただけで、偉そうにっ!!」

「あら? 気付いてなかったかしら? 私は御主人様の部屋で寝ているのですよ」

「なっ!?」

「きゃあっ、輪廻君ったら……」


 テミアによって、別れの時に爆弾を落とされるのだった。今まで、輪廻の部屋に行っていなかったから、絢は知らなかったのだ。

 まさか、部屋が一緒で夜に何かをしていることに…………




「ふふっ……、羨ましいでしょう? 私はそれだけ愛されている(・・・・・・)のっ!」

「そ、そんな……!」


 これで、テミアの攻撃は終わった。絢は呆然として、信じたくないと言う気持ちだった。

 だが、それで終わらなかった。






「もう、テミアはいつも言い過ぎるのよ。第一、愛されているのは、私もそうだし。貴女は本気で少年のことが好きなのよね?」

「え、あ、はい……」


 呆然している所に、シエルから声を掛けられて、驚いていた。




「本気なら、諦めないことね。諦めたらそこで終了よ」

「……えっ?」


 まさか、慰められるとは思わなかったのか、変な声が出ていた。シエルから最後の言葉で、絢は少し心が満たされることになった。




「少年は貴女のことを嫌ってもないし、好きの範囲に入っているわよ?」

「え、本当に!?」

「さぁねー。後は自分で聞きなさいなー」


 最後に最後は自分でやらなければならないので、シエルは答えてあげない。ふふっ、と微笑みを浮かべて絢から離れるのだった。




 絢は好かれていると思えば、顔が少し明るくなるのだった。晴海はその様子を見て、少し安堵していた。

 帰り道に、失恋したことで、戦いに集中出来なくて死んでしまう可能性も決して低くはなかったはずだ。シエルの慰めに感謝するのだった。




 そして、輪廻達より早足にガリオン国を出て行った。






−−−−−−−−−−−−−−−




 さらに三日後、輪廻達もガリオンを出て、新たな地へ向かうことに。




「おい、無理だけはすんなよ」

「わかっているよ。自分の命を無駄に捨てるのはありえないからな」

「なら、いい」


 見送りは、メルアとエリタの2人だけだ。朝早いから、2人だけなのは仕方がないだろう。


 輪廻はまず、北の地に向かってから四つの地の中心となる湖に向かう予定だ。西の地から湖に向かおうと思っても、道がなくて途中に街もないから旅をするには不便だと判断した。

 だから、遠回りになるが、無理のない旅にするために北の地へ進むことにする。




「確か、北の地にはアレがいるな」

「アレ?」


 メルアは北の地と聞いて、一つの情報があったことに気付いた。




「ああ、全滅したと思われていた、ある種族を見掛けたと情報があったな」

「その種族とは?」


 昔に全滅したかと思われた種族だったが、最近に北の地で見掛けたのだと。その種族とは…………






「吸血鬼だ」






 吸血鬼、血を吸って生きる種族。不死身である話も聞くが、それは間違いである。

 吸血鬼は、強い代わりに弱点が多いのだ。太陽、十字架、聖水など。

 ではなければ、全滅したとは思われないだろう。何故、全滅したと思われた理由は、他の種族を魔族だと認定された時から、人間側が吸血鬼を殲滅することに力を入れていたからだ。

 人間側にしたら、吸血鬼は畏怖の存在だと知られている。危険だと思っているからこそ、一番早くに殲滅し掛かったのだ。




(吸血鬼ねぇ、この世界にはいるんだな)


 輪廻は吸血鬼と言う存在に興味を持っていた。小説などに獣人やエルフと同じように良く出ていたから、一度は見てみたいと考えていた。




「そうか。無理だけはしないから、安心しろ。次に来た時、また温泉の貸し切りを頼むぞ」

「ふっ、ここの温泉が気に入ったみたいだな。生きて帰ってきたらな」


 このように、少し話をしてから、ガリオン国から出ていく。









 しばらく歩いた先に、輪廻はボソッと呟いた。




「さっきの話に出ていた吸血鬼はどうやって生き残っていたのかな……」

「吸血鬼ですか、たまたまその一体だけが、上手く隠れていただけではありませんか?」

「あ、聞こえていた? まぁ、人間は自分より強い生き物がいたら、怖がってなんとか排除しようとするからね。徹底にな」

「確かに、人間は執念深いからね〜」


 ダークエルフの村を潰された身であるシエルもそう思っている。人間はエルフやドワーフ等と違って、全ての種族で上にいると信じている人間は少なくはない。

 もし、人間より強く、友好な関係を結べない種族がいるなら、すぐに排除に動く。恐怖の対象であって、危険だからだ。




「まぁ、徹底に殲滅と言っても、世界に散らばっていたら、全滅することなんて難しいだろうしな」

「そうですね。今も吸血鬼の目撃情報がありますし」


 人間も完璧ではないから、世界中で生きている種族を全滅させるなんて、砂漠で一粒の砂金を見つけると同様に、難しいだろう。




「ふむ……、あの吸血鬼は邪神の加護に関係ありそうかな?」

「それは私には、わかりませんね。年増エルフは何かわかりますか?」

「うーん、吸血鬼には会ったことがないし、詳しくはわからないかな……」


 情報が少ないから、わからないと言う一言しか出ない。輪廻は少し考えて…………




「よし、次の街に着いたら情報を集めてみるか!」

「え、もしかして吸血鬼に会いに行くの!?」

「うん、吸血鬼は長生きする種族だから、もしかしたら邪神の加護のことを知っているかもしれないよ? それに、一目は見てみたいしな」


 さっき思い出したが、小説のほとんどは、吸血鬼は長生きするか不老だったりするから、この世界の吸血鬼もそんなものだろうと判断した。

 長生きするほどに情報も沢山持っていそうなのだから、次の街に着いたら吸血鬼の情報を集めることに決めるのだった。




「さぁ、次はどんな街だろうかな!」




 次の地に進む旅にワクワクを隠せない輪廻であった。







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