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第五十八話 鬼のトリオ



 鬼達は既に門を破っており、中に入られていた。まだ街に被害はないが、足元には大量の死体があった。門番をしていた兵士、近くにいた冒険者、逃げ遅れた市民が死んでいた。




「酷い……」


 鬼達の前に出た英二達が放った最初の言葉はその言葉だった。

 英二達の周りには市民が逃げ周り、冒険者が集まっている。ここにいる冒険者はある程度のランクを持っている。

 ガリオン国の外はランクが高い魔物が多いからランクが高い者が集まっているが、数は少ない。

 王城から兵士達が現れるが、門番の人との実力は変わらないから無駄死する可能性が高い。




「兵士達が来るまでに決着をつけるしかないな」

「そうですね……」


 今いる、冒険者は英二達を含めて21人。中にはAランクが3人はいるが、昨日に聞いたSランクの人はまだ来てないか、外へ依頼を請けているのどちらかだろう。




「それぞれの鬼に7人ずつでかかれ。いいな!!」


 Aランクである男が指示を出す。その男は実力があり、Aランクの魔物でも1人で勝てる自信があったが、嫌な臭いを感じ取ったから、数で攻めることに決めたのだ。


 その判断は正しかった。鬼達は魔物だが、変異魔物と別にして、普通の魔物ではない。

 鬼達は北の地では『鬼のトリオ』と呼ばれて、いつでも一組になって暴れるのだ。その鬼達の1体が変異魔物になっているのだから、実力はただのAランクではないと警戒が必要だろう。




「俺達は変異魔物とやるみたいだな。さらにAランクの冒険者も2人も一緒だ」

「そうみたいだな。貴一、油断はするなよ」

「はん! ギルド長の時で懲りているぜ。もう油断はしねぇよ」


 貴一はメルアの見た目で油断していた。実際は貴一より年上なんだが、年下に見えない少女からガキと言われたことに激怒していた。

 だが、実際にも貴一はまだガキだと思い知られた。それを反省し、後のことを考えて行動することに決めたのだ。


 勇者パーティ、ゲイル、Aランクの男が2人が変異魔物に挑む。姿は人間に近いが、ローブを着ているため、どんな姿をしているのかわからない。




「どう見ても前衛的には見えないが、不気味だな……」

「まず、魔法を撃ち込むわ! ”氷雫”」

「”火球”」


 まず、様子見として魔法を撃ち込む。2人の魔力は高いから、威力が高くて範囲も広い。絢は数発か撃ち込んでおり、晴海は氷柱つららが雨のように落ちていく。


 これだけで、弱い魔物が10体ぐらいは倒せる威力になっているが、ローブの鬼は動かなかった。



 そのまま受けるつもりなのかと思ったが、横から巨体の鬼が横槍に入ってきた。ローブの鬼に覆いかぶさり、守ったのだ。






「全く効いていない!?」

「防御が高い鬼なのかしら……?」

「相手をしていた冒険者はどうした…………っ!?」

「あれは、小さな鬼!?」


 巨体の鬼を相手にしていた冒険者がいる場所を見ると、小さな鬼が巨体の鬼の分も相手をしていた。

 既に、2人が地に倒れて血を流していた。小さな鬼は素早くて、攻撃が全く当たっていなかった。メルアほどではないが、英二達が見ても速いと感じるほどだった。




「速い、Aランクの動きじゃない!!」


 ゲイルはAランクの領分を超えていると判断した。つまり、小さな鬼はスピードだけならSランクに近い。Aランクの魔人よりは遅いが、魔物としてはSランクのスピードを持っているのだ。




「こっちで、巨体の鬼は耐性と魔耐が高い鬼と言うわけか……」

「筋力も凄そうだが、大きな鉄棍棒を振る時の速さは俺達が普通に振るのと変わらない」

「油断せずに、距離を取れば当たらないわね」


 冷静に分析していく。2体の鬼の戦い方はわかったが、ローブを着ている鬼は全く何もしないため、何もわからない。




「……仕方がない。お前ならそのスピードについていけるか?」

「なんとかな……」

「よし、お前がそっちを援護してやれ」

「わかった。そっちこそ、死ぬなよ」


 一緒にいたAランクの冒険者は、同じパーティなのか、相談して1人が向こうに行くことに決めたようだ。


 こっちのメンバーは1人減ってしまうが、ローブの鬼は何もしてこないなら、問題はないだろうと判断して巨体の鬼を相手にする。

 6人が巨体の鬼に向かい合うと、ローブの鬼が声を発し始めた。




「……左鬼、早く、叩き潰せ」

「ギガァァァァァ!!」

「右鬼、片付けろ」

「ガゥ」


 単語だけだが、前に戦ったことがある変異魔物よりも流通に話していた。魔人ではないのかと思う程だった。

 巨体の鬼が左鬼、小さな鬼は右鬼と呼ばれていた。では、ローブの鬼は?




「魔人、儀式、成功、死体……」


 単語はわかったが、要領は得なかった。魔人? 儀式? まだ繋がらないからまだ続きを話すのでは? と思ったら、左鬼が前より大きく暴れ始めた。




「ギガァァァァァァァァァ!!」

「……様子がおかしくない?」

「さっきより、速くなってないか!?」


 鉄棍紡を振るスピードが上がったような気がしたのだ。これでは、避けるのがせいっぱいで、反撃する暇がない。




「ぐぁっ!」

「何ぃ!?」


 右鬼がいる場所も変異が起こったようで、さっき、援護に行ったAランクの男が倒れていた。まだ生きているが、脚をやられているのが見えた。




「今まで力を抜いていたわけ!?」


 英二と貴一が剣を斬り付けるが、身体の硬さは普通ではなくて、皮一枚しか斬れない。




「”聖光剣”!」


 光魔法を纏う剣で、ようやく左鬼にダメージを与えるが、それでもまだ浅い。




「ふざけんな、これはAランクじゃねぇだろ!?」


 貴一は普通に攻撃してもダメージは与えられないとわかったので、関節、目、口を狙っていくが、上手くはいかない。




「”炎狼”!」

「”氷裂波”!」


 絢は炎の狼、晴海は地を砕きながら氷の刺と衝撃が左鬼に迫るが…………




「ウィィィィィ!!」


 鉄棍紡で纏めて振り払われた。2人は今、出せる最大魔法だっただけに、簡単に振り払われてしまうとは思わなかったのだ。

 さらに、悪運にも、英二はその振り払い攻撃を避ける時、氷のカケラを受けてしまい、倒れていた。




「ギガァァァァァァァァァ!!」


 左鬼はチャンスだと思ったのか、英二に向けて鉄棍紡を振り下ろそうとする。




「させるかっ!」


 Aランクの男とゲイルが動き、その鉄棍紡を弾き、狙いを逸らせる。続けて、左鬼の咽を狙おうとするが、脚での攻撃が増えたため、回避に専念するしかなかった。

 英二も起き上がって、後ろに下がろうとするが、膝を着いてしまう。




「英二! 速く下がれ!!」

「くっ、脚が!」


 脚が動かないのは、脚にダメージがあり、殺されそうだった恐怖もあってだ。

 結界の中ではないのはわかっているから、殺されそうになった恐怖は脚を縛ってしまっている。




「クソッ! 今から行く!」


 貴一が英二の元に行こうとするが、左鬼に邪魔される。Aランクの男とゲイルは頑張っていたが、傷は浅くしか付けられず、足蹴りによって吹き飛ばされてしまった。

 2人とも後ろに跳んでいたため、ダメージは少ないが英二から距離が出来てしまった。

 これでは、助けに行けない。




「う、うぅ……」


 英二は泣き叫びたくなるのを意志の力で抑えている。英二は覚悟を決めて、戦いをしているのだから、泣き叫ぶのはしたくはないと思っている。


 左鬼は鉄棍紡を振り上げる。それは英二にとってはゆっくりに見えたが、脚は動いてくれなかった。

 他の人が助けにこっちへ向かっているが、間に合わないだろう。




 もう終わりなのか…………




 英二が思い浮かべていた言葉はそれだった。

 ゆっくりに見えた鉄棍紡はついに、英二へ向かって振り下ろされた。









 ドガァァァァァァァァァンッ!!









「いやぁぁぁぁぁ!!」


 絢は叫んでいた。いつも一緒にいた友達が死ぬ。そんなのは怖いと、心が恐怖に包まれて、無意識に叫んでいた。






「……ぎぃ?」




 左鬼は困惑していた。振り下ろして殺したはずの死体が無かったからだ。左鬼の後ろに、誰かが立っていた。いや、もう1人もいて、襟を掴まれて引きずっているように見えた。立っている方の人が溜息をして、愚痴を零していた。






「やれやれ、こっち側が勝っていれば良かったんだが、上手く動いてくれないものだな」

「…………え?」


 襟を掴まれているのは、振り下ろされた先にいた英二だった。




「…………あ」


 絢は助けていた人の姿を見るなりに、声が出ていた。ずっと捜していた人がいたのだ。

 だから、戦場の中でも大きな声で呼んでしまうのは仕方がないのことだろう。




「輪廻君ッ!!!」

「やぁ、久しぶりだね」




 英二を助けに現れたのは、絢の愛し人であり、11歳の少年。輪廻君だったのだ。







輪廻の登場になりました!!

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